呼吸と循環 27巻12号 (1979年12月)

巻頭言

Humidification 侘美 好昭
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 本年5月,Br. J.Anaesthのeditorialに給湿に関する文章が載っていた。この問題が同誌のeditorialに取り上げられたのは9年前にも一度あり,この間の進歩に対する関心から二つの文章を読み較べてみたが,内容にあまりに差がないのには非常にがっかりした。雑誌の性質上,話の中心を手術室内での吸入麻酔ガスの給湿の必要の是非にしており,たとえ上気道がbypassされていても(気管内挿管により),数時間の麻酔時間ならば,積極的に給湿したガスを吸入させねばならないという根拠は乏しいとしている。これはそれなりの結論として納得できるものである。

 しかし,吸入ガスを積極的に加湿する要があるのは長時間に亘って上部気道がbypassされた場合で,この場合の給湿の適応を疑う人はまず居ないと思われる。

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 体表面上から心臓の電気現象を記録することは,心臓の生理的および病理的状態を把握するための最も基本的な手段である。この目的で現在一般的に行なわれているのが,標準12誘導心電図とベクトル心電図法(Frank法など)である。これらの誘導法は,理論的にも経験的にも十分検討がなされており,その臨床的有用性がきわめて高いことは論を待たない。しかし,これらの誘導法にも問題があることが指摘されている。すなわち,単極誘導心電図は心臓局所の変化の診断に有用であるが,誘導点の数が限られており,特に右胸部および背部には誘導点が無く,心臓の電気現象を十分に表現できるかどうかが問題である。また,ベクトル心電図フランク誘導法は心臓の電気現象を平等に表現するよう工夫された誘導法であるが,心起電力を単一の定位の電気双極子と仮定して考え出された誘導法1〜3)であるので心筋局所の変化の表現にはあまり敏感でないきらいがある。

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 高拍出性心不全を生じる前には,高拍出状態が先行するので,まず高拍出状態より説明する。高拍出状態は,色々の原因によって起り,各々に特長があるが,最初に共通の血行動態臨床症状について説明した後,原因別に特長を説明する。

Leriche症候群 松本 昭彦
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 Leriche症候群という言葉は,循環器疾患を専門にしているものにとってはきわめて馴染みの深い言葉ではある。これは周知のように,1940年にRené Lericheが彼の経験例をもとに発表したものがそのはじめになっているのであるが,彼自身の発表が多少不正確さがあるにせよ,今日彼の考えていたであろう通りの概念として使用されてはいないように思われる。これは脈なし病あるいは大動脈炎症候群の概念が研究者により多少異なっているのに似ている。そこで発表当時Lericheが考えていた概念を正確に伝え,この上に立って今日的な考え方からLeriche症候群について解説を加えたい。

呼と循ゼミナール

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 心筋虚血は心筋内に不均一に生じてくるのが特徴である。心臓のポンプとしての機能は特に心臓病の予後を判定するには重要なものである。しかし早期に心筋虚血を検出する問題となると局所の心筋の変化を検出することが心筋全体の変化の結果として出現してくるポンプ機能異常よりも必要となってくる。

 ところで実験的成績から,今日では虚血によって生じてくる心臓壁の異常運動は心電図異常よりも先行して生じ,しかも特異的変化であることが認められている1,2)。その理由は不詳であるが,Ca++の変化,収縮蛋白の変化,高エネルギー燐酸の変化組織内pHの変化等によって心筋の壁運動異常が認織し易いのだろうと思われる。しかしながら虚血によって生じた組織学的変化と壁運動異常の相関は必ずしも同一ではないとされている。従って壁運動の異常は実際の虚血に伴う変化と厳密にはくい違いを生じてくると思われる。

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 近年,冠動脈疾患に対する外科的手術の進歩は目を見張るものがある。しかし一方,術後の心筋梗塞,再建したグラフトの閉塞あるいは術後肝炎などの合併症も少なくない。もし,狭窄した冠動脈を非手術的に合併症なく再開通できれば患者への侵襲も少なく,手術という言葉に怯えて辞退するものもなくなり,恩恵を蒙むる患者の数はさらに増加するに違いない。

 Grüntzig1〜3)は非手術的,すなわち,経カテーテル式に限局性に狭窄した冠動脈を物理的に圧迫することによって再び開大させようと試み,非侵襲的という理想を現実に一歩近づけることに成功した。この治療法を試みている施設はまだほとんどなく日本には紹介されていないと思われるので簡単にのべてみたい。

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 加湿療法あるいはミスト療法を行うさいに,おろそかにしてはならないことは菌による汚染あるいは肺感染の問題である。吸入療法中のネブライザの使用の増加に伴ってグラム陰性菌肺炎の激増が報告されているが,とくにこのような療法を必要とする慢性肺疾患や衰弱した患者は抵抗力が減弱しているため,発病しやすいのであろう。最近,アメリカでも吸入療法におけるもっとも大きな関心事は,この細菌汚染の問題であり,この対策に頭を痛めている現状である。ネブライザを購入しての家庭療法が普及しているので,器具の洗浄が不十分になりやすく,細菌の増殖を容易にしているという警告も発せられている。

 呼吸・吸入装置では貯水槽,ネブライザ・カップ,誘導管,接続器具,いずれの器具も感染源たりうるが,見落とされやすいのはネブライザ・ジェット部分である。この部分は通常のクリーニング法で完全に清浄化されがたいからである。

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1)非動化,無麻酔下で最適化された換気条件における呼吸性ニューロンの分布

 呼気ガス,PO2, PCO2動脈血PO2の連続的測定を行ないつつ換気条件を最適化して可及的に生理的状態に近い実験条件下において,微小電極法による呼吸性ニューロンの橋,延髄網様体の系統的探索をおこなった我々の実験成績をまとめると次の通りである。

 ①呼吸性ニューロンは橋,延髄網様体の全域に散在分布し,②吸息性,呼息性および「その他」の型の3者は混在していて,集合する部位は見出されない。③他の領域に比べて延髄外側網様体に多数の呼吸性ニューロンが局在している。④吸息性,呼息性ニューロンの大多数は延髄外側部に局在し,「その他」の型は橋および延髄内側部に多い。

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 肺の局所機能検査法としては放射性ガス,放射性微粒子などを用いる換気シンチグラフィー,血流分布シンチグラフィーや換気・血流動態検査法などの核医学的方法およびfluorodensitometry1,2,3),videodensitometry4,5)などのX線学的検査法が代表的である。

 核医学的検査法はシンチカメラの改良,コンピュータなどの周辺情報処理器機の発達,新しい放射性核種の導入などにより,長足の進歩を遂げてきたが本法の利用はいまだ特殊な施設に限られ,一般的な検査法となりえていない。

Bedside Teaching

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 体外循環,人工肺等の進歩,心筋保護法の改善等により開心術は著しく安全となり,それに伴い術後の呼吸管理もより簡略化されつつある。しかしながら巨大左房,肺高血圧,右左シャント,Post perfusion lung等,開心時に特有な肺の病態は依然として存在しており,またわずかの呼吸障害が,循環抑制を引き起すような重症例や,長期挿管によるRespirator lung等,呼吸管理上解決されるべき問題は少なくなく新しい方法の開発と同時に従来法のより綿密な施行が肝要である。

コントラスト心エコー図 田中 元直
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I.心臓内血流測定の診断的意義

 心臓病には心雑音を有する疾患が多く,心雑音の有無は診断を決定づける大きな根拠になることはよく知られている。この心雑音はすべて,心臓内の血流状況の変化によって生ずると言っても過言ではなく,心雑音の性質の変化はいずれも解剖学的構造異常などの兼ね合いで生ずる心内血流状況の変化の反映であるといえる。

 従って,心内血流状況を客観的に評価することは雑音を有する疾患の本態を知るためには不可欠であるだけではなく,血流に関する情報は心臓の解剖学的異常の存在の有無とその状況や心機能の判断,更には将来起りうる2次的病変(例えば血栓形成,栓塞)の発生などと深いかかわり合いがあるたあ,臨床的にも大きな意味をもつことになり,きわめて重要な診断情報である。

研究

体表面加圧下の肺気量分画 市瀬 裕一
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 口腔,鼻腔といった換気を行う部位以外の体表面に圧を加え,気道に体表面に対して相対的に陰圧を施して呼吸することは呼吸生理学上の実験手法としてしばしば用いられて来た。従来はこの加圧の方法として,被検者が坐位にて頸部まで水につかり体表面に静水圧をかけて呼吸する方法(water immersion)1)が多く採用されてきた。

 体表面加圧下では,肺の換気力学的特性あるいは循環動態は種々に改変する。その変化は肺気量分画にもっとも顕著に現われる。現在までの報告によれば,全肺気量(TLC),肺活量(VC),機能的残気量(FRC),呼吸予備量(EVR)は,胸部圧迫の効果を受けて減少するとされているが,残気量(RV)については一定の見解がない。他の肺気量と同じく減少するとする説もあるが一方体表面加圧下では胸腔内へ血液の移動をおこし,肺のうっ血のため気道の早期閉塞を招きRVは増加するとする説もある。

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 急性心筋梗塞症でみられる心室頻拍症は重篤な血行力学的障害を伴うのみならず,心室細動へと移行し患者を死に至らしめる危険がきわめて高い。従ってその発生および停止機序の解明は,その発生を予知し,適切な抗不整脈剤を選択する上で重要である。

 古くからHarrisの実験的心筋梗塞モデル1,2)で生ずる不整脈がヒトのそれと類似していることが知られ,広くこの分野の研究に用いられてきた。第1報において,虚血心筋内で著しく遅延した興奮が虚血部心内膜下プルキンエ線維網を介して正常心筋へとリエントリーし,心室性不整脈が発生することを示したが3),ここでは,如何なる機序でリエントリーが持続して頻拍症となり,また,それが停止するかについて検討を試みた。

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 大動脈弓発生異常の中で頸部大動脈弓症(以下Cervi—cal Aortic Arch, CAAと略す)は,まれな疾患である。我々は,無症状に経験した成人の左側頸部大動脈弓症(以下LCAAと略す)を経験したので現在まで文献上記載の明確な報告例を含めて本症の発生,臨床像,診断と治療などに関して考察を加えて報告する。

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基本情報

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呼吸と循環
27巻12号 (1979年12月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

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