呼吸と循環 21巻3号 (1973年3月)

  • 文献概要を表示

 麻酔中,重度外傷後,大手術後の患者のようなクリティカルな状態にあるものの管理に当って,最も重要な問題は酸素をいかに与えるかということである。患者の側からするとどれだけ酸素を消費しているかということである。アノキシヤということは十分な酸素が消費されていないのであるが,必要がないのか,必要だが使えないのか不明の場合も多い。こういう点についての理解は,われわれの生理学的知識の段階に応じて,古くから段々と深化して,常に新しい問題となっている。

 使用される酸素の量は〓(CaO2—CO2)であるから,多くの因子によって決定される。まず第1は心搏出量で,第2は動脈血酸素含量,第3は〓・CaO2,第4は静脈血酸素含量,第5は動静脈血間酸素較差である。

  • 文献概要を表示

 atelectasisは,語源的には"不完全"な"不十分な"という意味のatelesと,"拡張"を意味するectasisとの合成語であり,厳密には,かつて空気でふくらんだことのない肺組織、すなわち,胎児にみられる無気肺に適用される言葉であり,脱気によって生じた場合には,collapse"虚脱肺"という言葉を使う方がより正確であるが,日本語でもこの点混同しており,日常遭遇することの多い虚脱肺を無気肺とよんでいる。本稿でも慣習に従って広義に解釈して,あえて虚脱肺とせず,"無気肺"の用語を用いた。

 無気肺は,1845年Mendelssohnが気管支の閉塞によって発生する機序について発表して以来,日常臨床的に遭遇することの多い所見であり,急速かつ広範に発生すれば著しい呼吸困難をみることになり,慢性に存在すればシャント血流の増大による低酸素血症の原因となる。最近はこの発生機序に関して肺の表面活性の観点から検討され,病態生理ならびに病態生化学的に興味ある知見がえられつつある。

  • 文献概要を表示

Ⅰ.頸動脈洞神経(CSN)電気刺激の臨床

 近年,ペーシングの進歩で,CSNの電気刺激ができるようになり,これによって,交感神経緊張を阻止して,心拍数,動脈圧,および,心収縮性を抑制し,心の酸素需要を減らすことができるようになった1)

 外科的に電導子をCSNのまわりにおく。これらの電導子はradio frequency receiverに連結され,系を完全に植込む。Battery powered external pulse generatorは,そのインパルスをアンテナ・コイルに指向させ,アンテナ・コイルは,レシーバーをおおう皮膚の上におく。inductive couplingを介して,generatorからの信号はレシーバーに伝えられ,波形のshaping後,インパルスは電導子を介してCSNに適用される。このインパルスは血管運動神経中枢への求心インパルスを増し,交感神経緊張を抑制し,迷走神経(副交感神経)緊張を亢進させる。Dunning, A. J. (1971)2)の症例は,いずれも,長い狭心症の既往歴をもっており,内科的には手当に不応のものばかりであった。全12例に,ニトログリセリンとβ受容体ブロック薬を使ったが,自覚症は良くならず,心冠疾患の合併症のために入院したものである。全例とも既往歴,ニトロ薬の消費,一定条件下の運動負荷によって,いわゆる労作不能型に入るものであった。

講座

給湿 侘美 好昭
  • 文献概要を表示

 ここでいう給湿とは吸気に対する給湿の意である。吸気のconditioningは上部気道構造が持つ重要な生理機能の一つであるが,その構造上および生理的条件の妙や微生物等の異物の侵入に対する防衛機能を除くと,上部気道が吸気に対して行なっていることは加温加湿というごく単純な物理的操作にすぎない。上部気道が正常な機能を維持している限り生体に障害を与えるような吸気のconditioningの失敗が起こるはずは無いかにみえるが,実際には吸気を前もって加湿しておくことが術後の肺合併症の予防や治療に有効であり,特に小児外科領域において近年重要視されるようになっている1)2)。かかる給湿が有効であるためには上気道の持つ生理的な給湿量では不足するような事態が発生したか,または上気道自体の機能が低下したかのいずれかが起こっていなければならない。吸気の加温加湿は上気道内だけで終るものではなく,程度の差こそあれ末梢気道までの全気道内で行なわれている8)。したがって上部気道は下部気道が正常な生理機能を保持している時にのみ至適な給湿力しか持たず,下部気道に異常が発生すれば上気道の給湿能では不足することも当然起こりえる。他方,上気道自体の機能低下も生体自体の脱水,胃管等による鼻腔閉鎖,乾燥した酸素の鼻や咽頭内吹き込み等で容易に起こるものである。

  • 文献概要を表示

 心臓に対するジギタリス効果は,一つは心筋収縮力の増強(positive inotropic action)としてみられる。うっ血性心不全の根底にあるものは心筋の収縮不全1)であり,その結果,心室拡張終期圧の上昇,心拍出量低下,心拡大,静脈圧上昇,浮腫等の循環異常を招来する。ジギタリスはこれら異常の循環動態を改善し,うっ血性心不全の治療には不可欠の薬である。

 もう一つのジギタリス効果は,細胞膜の電気現象に関するもので,不整脈のコントロール,あるいはジギタリス中毒に大きな関連をもっている。

  • 文献概要を表示

 呼吸機能の臨床的評価の一手段として,スパイロメトリーの重要性は論をまたない。ことに,近年大気汚染による呼吸器疾患が大きな問題となっており,スクリーニングとしてのスパイロメトリーの必要性がたかまっている。従来のスパイロメーターは,Benedict-Roth型レスピロメーターをはじめとして,ほとんどが気体の容積変化を機械的に検出するもので,装置の抵抗や慣性による流速や過渡応答への影響をのぞきえない。また,スパイログラムからFVC, FEV1.0, FEV1.0%などを求めるにはかなりの時間と労力を要し,多人数を対象とするスクリーニングには必らずしも適当ではない。これに対し,中島1),実川2)らは,熱線風速計を呼吸機能測定に応用すべく基礎的研究を行なってきたが,最近,これが自動式スパイロメーターとして実用化されるに至ったので,その性能と実用上の問題点を検討した。

  • 文献概要を表示

 Polygraphyは,二つ,あるいは,それ以上の現象を同時にグラフに記録する方法である。Marey (1870)はグラフ的な記録を試みた最初の人であり,また,動物に心カテーテル法を行ない,心内,および,心外の拍動を比較したといわれる。Wood32)によれば,polygramを臨床に用い,その応用と発展に努力したのは,Mackenzie(1902)である。Mackenzieは,頸静脈波と櫨骨動脈波を同時に記録し,多くの不整脈を各グループに区分した3)。しかし,今世紀の初めにおけるpolygraphyの発展とともに,すぐれた心臓病学者達を悩ました問題は,観測誤差を別としても,いろいろな装置によりえられたpolygraphic recording相互間の時差,換言すれば,装置に由来しない,各現象における同時性の確定であった30)

 近代の循環器病学においては,心脈管現象を,電気的,聴覚的,および,機械力学的ないろいろの面から,同時に記録し,そのできごとについての一連の情報をえようとする。Polygraphic recording発展の歴史を眺めると,二つの大きな傾向をみることができる。一つは,そぼくな臨床における現象の記録から始まって,次第に高度な病態生理の理論化に向かう傾向であり,もう一つは,polygraphyにより複雑で,被検者検者・双方に負荷の多い観血的検査法から,より負荷の少ない非観血的方法に向かおうとする傾向である。

Bedside Teaching

心アミロイドーシス 日野原 重明
  • 文献概要を表示

 心アミロイドーシスという言葉が日本の内科医にやっと取り上げられ始めたのは,過去2〜3年来のことと思われる。欧米の臨床家の間でも,これが注目され出したのは,わずか10年余り前からである。日本では,胸痛の訴えのない患者に心電図の低電位や胸部誘導(V1—V3)にQの出現を見ると,まず知らない間に経験した古い前中隔の心筋硬塞のあとであろうという診断が普通なされるのであるが,新しい心臓病学を学んでいるアメリカのレジデントは,心アミロイドーシスを必らず鑑別診断にあげるのが常識となっている。アミロイドという物質の本質はまだはっきり解明されていないが,現在は一種の糖蛋白とみなされている。これは早くも1842年にRokita—nskeyによって記載され,Virchow (1855年)によってヨードに対する反応が,殿粉に似るということから,amyloid (starch-like)という名称が与えられている。これはまず,すぐれた病理学者により注目された病気である。

 臨床医が今日いう心アミロイドーシスを,いつ発見したかということを調べてみると,それは英国におけるWilks1)で,彼は1856年に早くもThe Guys Hospital Reportの中で,2例の症例を"lardaceous disease"という名称で報告している。これはラード(lard)のような心臓という表現である。

  • 文献概要を表示

 実地臨床にあたり,低心拍出量症候を示す合併症ほど嫌なものはない。心手術後に,また肺予備能の減少している患者の肺手術後に,低心拍出量症候が発来することはしばしば経験するところである。また拘束性肺機能障害患者の末期に低心拍出量を示し,如何なる治療も奏功しないことがあることも事実である。

 このような低拍出量の原因がいちがいに右心機能不全といって良いものであろうかという疑問をいだいていた。たまたま,肺胞内圧上昇試験を行なっていたところ肺胞内圧上昇が極度に心拍出量を減少させることに気づいた。この場合,肺動脈圧はさほど上昇せず,これが右心不全を諾起しめた原因とは考えられなかった。

  • 文献概要を表示

 中脳中心灰白質の刺激が血圧,心拍数を含めて,イヌおよびネコの循環系に与える影響に関しては,いくつかの報告がある1)−3)

 しかしながら,従来の研究は,単なる心拍数や血圧,あるいは心室収縮力の測定にとどまり,心拍出量,左室内圧,左室仕事量,tension-time-index4)などのより興味ある心血行力学的パラメーターに対する影響は究明されていない。それゆえ著者らはこの点を検討すべく実験を行なった。

基本情報

04523458.21.3.jpg
呼吸と循環
21巻3号 (1973年3月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

文献閲覧数ランキング(
5月18日~5月24日
)