呼吸と循環 21巻2号 (1973年2月)

巻頭言

MDFをめぐって 藤田 達士
  • 文献概要を表示

 最近ショック研究の動向としてはlysosomeの崩壊による protease (acid-phosphatase,β—glncuronidase,cathepsinなど)の放出によって膵臓のlysosome破壊や血漿蛋白の破壊によって血管作動性のポリペプタイドを発生させることに主眼が置かれ,治療の方針として従ってprotease inhibitorが主に用いられるに到った。

 腸管の虚血がこの様なポリペプタイドを放出して血圧の下降を生ずることを,1963年Koboldらが見出している。ただ,この血管作動性ポリペプタイドが何者であろうかということになると問題である。

綜説

赤血球のレオロジー 松信 八十男
  • 文献概要を表示

 最近,血液に関するレオロジー的研究が著しく進展し,数多くの成果が発表されつつある。生命維持の見地から,赤血球およびこれを生体組織内に送り込む血流や血管の受け持つ役割は重大であり,これらの機能をレオロジーの立場で究明する必要性はますます増加する傾向にあるといえよう。また,物理的な性質を比較的容易に定めることが可能であるために,血液は実験的にも理論的にも取り扱いやすく,このためにも血液レオロジー(hemorheology)が生物レオロジー(biorheology)の中でもっとも研究者の関心を集めている分野であるといえる。

 血液レオロジーに関して,これまで多くの綜説が発表されている1)〜12)。しかし,血液の中の主要な成分である赤血球については,血液の一部として断片的に取り上げられているに過ぎない。ここでは,特に赤血球に注目し,これを中心とするレオロジーないしは流体力学的研究のいくつかを綜説の形にまとめてみよう。

  • 文献概要を表示

 冠不全とは,冠動脈の血流量が心筋の需要に不足している状態である,臨床的に,冠不全を診断することは容易でなく,急性心筋硬塞の臨床症状と心電図変化の経過を明かに認めた場合を除くと,冠不全の診断は常に間接的であり,心電図上のST, Tの変化特に運動や低酸素負荷や狭心発作に伴う変化,硬塞心電図,狭心発作,患者の年齢や冠硬化に多い合併症,あるいは心仕事量の増加や心肥大など心筋の酸素消費量の増大,などがその根拠となる。

 冠動脈造影法は,臨床的に冠動脈の形態的変化を明かにできる唯一の方法であり,1958年Sones1)の選択的冠動脈造影法の開発以来,比較的安全にいくつかの方法で広く行なわれている。冠動脈造影法で見た冠動脈内腔の変化は,そのまま冠不全の状態を明かにするものではないが,冠不全を起す基礎病変としての冠動脈の病変を知ることは,冠不全の診断の裏づけとして重要である。近年,重症冠不全に対する冠血行再建手術が行なわれるようになり2)3),その適応を考える上でも,冠動脈造影所見が不可欠となっている。そこで,冠動脈造影の所見と臨床的に認められる冠不全の関連について主としてわれわれのJudkins法による4)経験を述べ文献的考察を加える。

講座

呼吸の制御 島田 久八郎
  • 文献概要を表示

 生体の調節機構の解明に自動制御理論が応用され,電子計算機によるシミュレーションが多く報告されている。呼吸の生理学の分野においてもGrodinsら14)によるものから,ごく最近のDuffin9)のモデルまである。CO2による換気量の調節機構から発展して,CO2,O2,Hを入力信号とし,中枢性の化学受容や末梢からの化学反射がモデルにくみこまれてきた。初期のモデルでは呼吸の最終の反応を換気量としこれを連続変数として取り扱ったが,その後のモデルでは呼吸の周期的換気が取り入れられてきている。しかし,モデルの周期的換気は呼吸運動の神経性の機構をsimulateするにいたっていない。一方,呼吸の生理学においては,換気量の化学的調節機構の解明と独立に神経性調機節構の研究がある。換気がPCO2,やHの調節を行なっている以上化学的調節をシミュレーションの主体とすることは当然であるが,今後の発展には神経機構をモデルの中に加えてゆくべきであろう。そうすることにより化学的因子以外の原因による呼吸の変化の説明や,さらに呼吸の機械学との対応もよりよくなるであろう。しかし呼吸の神経機構の研究で,モデルの製作に十分なものがすべて現在用意されているわけではない。現象は実験的に認められていても,その神経機構や生理学的意義の不明のものもある。ここでは,できるだけ単純でしかも必要なものを具えている呼吸の神経機構を求めてみよう。

  • 文献概要を表示

Ⅰ.In vitro法

 光学的ドップラー効果は,天文学で毎秒何百キロメートルの速度で動く天体の動きを知るのに用いられた。これに対し,ミクロ的には気体の原子や分子の熱運動をしらべるのに,スペクトル線のドップラーによる広がりが利用されてきた。これらの研究は,分光写真器によってなされたため,分解能に限りがあった。分光写真で数%の精度をえるには,波長のズレΔλ/λが少くとも10−4でなくてはならず,これは速度約3×104m/秒に相当する1)。光学的ヘテロダイン(または光混合法)は,良い分解能を有するが,レーザーの出現以前は使用困難であった。

 光学的ヘテロダイン法は,Forresterら2)(1955)により,ゼーマン効果の要素としてレーザーの出現以前に用いられた。コヒーレント光でなかったため,S/N比は非常に低かった(3×10−5)が,捻りは観測された。レーザーの出現とともに,光合成法は研究室で実用的になり,主として光学通信分野で開発された。光学的ドップラー計測は,コミュニケーション系に及ぼす大気の乱流の影響を研究するのに,光合成法を用いて行なわれた。翻って,光合成法を用いて光のドップラー周波数測定による流速計測も可能であろう。

ジュニアコース

aADN2 大塚 洋久
  • 文献概要を表示

 肺疾患における低O2血症の要因として換気血流比不均等分布の意義は大きい。換気血流比不均等分布を評価する手段としては,肺胞気動脈血間ガス分圧較差(O2,N2),肺一酸化炭素拡散能力,種々の不活性ガスの洗い出しを利用したコンパートメント解析,放射性ガス(xe—non, krypton)による換気血流比の地理的分布などの方法が現在主として行なわれている。肺胞気動脈血間のO2分圧較差および肺一酸化炭素拡散能力は,肺胞レベルのガス交換障害を換気血流比不均等分布もふくめて総合的に評価する指標である。これに対し,本稿でとりあげる肺胞気動脈血間N2分圧較差は純粋に換気血流比不均等分布だけを,反映する指標と考えられてきた。

  • 文献概要を表示

 心臓カテーテル法により現在の心疾患診断の精度が上昇したことはいうまでもないが,この検査法の中心の一つである心腔および大血管内の圧測定は,その数量的あつかいに十分耐えられるデーターであるか否か常に問題を含んでいる。

 心臓病学の教科書の始めに必ず書いてある,大動脈,左心室,左心房の圧曲線を等感度で重ねてある図は,心行動の理解に有用であり,うたがいもない事実のように考えている場合が多いが,細部にわたってみると,あの模式図がどこまで正しいのか疑問がいくつも出てくる。

Bedside Teaching

  • 文献概要を表示

 発作重積症"status asthmatics"とは,Stedman's Medical Dictionany (The Williams & Wilkins CO., 1961)によれば,"a conaition of severe and prolonged asthma"である。しかしながら,それがどのようにsevereであり,どのようにprolongedであるのか,さらに詳しく調べようと思って,教科書の類を繙いて見ると,以外なことに,そのような言葉が使われているにもかかわらず,そのへんの定義がなされていないことに気づく。いずれにせよ,status asthmaticsとは喘息という疾患または症候群の特殊な一断面にすぎないのであるが,治療,予後等に様々な問題を含んでいる点では重視せねばならない状態である。また診断の画においても,近年とくに問題となりつつある諸種の気道系疾患との鑑別上,注意せねばならない種々の問題点を含んでいる。

 本稿においては,症例にもとづき,それに関連する臨床肺生理学的な問題点を主として解説する。

  • 文献概要を表示

 心臓の機能あるいは収縮力を判定する方法はいくつかあるが,intact heartとしての機能を調べるにはFrank—Staringの心臓法則にもとづく心室機能曲線を求めるのが一般的である。心室機能曲線は心室の拡張終期圧と心室の拍出量,仕事量あるいは仕事率(power)との関係をみるものである11)。1962年Goodyerら6)は心室の拡張終期圧と心室の収縮期圧との関係(pressure function curve)を求め,これが心臓の収縮力と相関することを報告した。著者らは心臓の機能は圧発生にあるとの観点から,Goodyerらの報告に注目し,大動脈狭窄による左室のpressure function curveについて実験的検討を行なったので報告する。

  • 文献概要を表示

 絨毛上波腫の肺転移の多くは肺血管外組織への浸潤であり,腫瘍細胞が肺血管内で増殖し肺塞栓の型をとることはまれである1)われわれは,内容に絨毛上皮腫細胞を含む多発性血栓により広範な肺血流障害をきたした1症例を報告する。

基本情報

04523458.21.2.jpg
呼吸と循環
21巻2号 (1973年2月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

文献閲覧数ランキング(
3月23日~3月29日
)