臨床婦人科産科 64巻6号 (2010年6月)

今月の臨床 産婦人科画像診断のセカンドチョイス

  • 文献概要を表示

婦人科診療で経腟超音波のつぎに選ぶ画像診断には何があるか?

 現在,ほとんどの施設において婦人科画像診断のファーストチョイスは経腟超音波だと思われる.経腟超音波は,(1)外来で簡便に低侵襲で施行できる,(2)骨盤内の婦人科臓器の範囲であれば臓器・病変の描出に優れており,簡易検査としては高い画像診断能を有する,(3)繰り返しの検査が可能であるため,経時的な変化を追うことができる,(4)内診等と同時に行うため,その所見を考え合わせながら診断することができる,(5)カラードプラ,ソノヒステログラフィ,3D画像などの特殊な方法でさらに診断能が向上する場合もある,などの特長があり,画像診断のファーストチョイスとして最適な診断法であることには異論がないであろう.逆に欠点としては,描出範囲が比較的狭いこと,診断者の能力に依存する部分が比較的大きいこと,記録が通常は静止画像のみでレトロスペクティブな評価やほかの症例との比較において客観性に劣ることなどが挙げられ,これらを補う目的でさらに精査が必要と判断された場合にセカンドチョイスとして追加の画像診断を行うことになる.悪性腫瘍の診断を含めて,婦人科疾患で経腟超音波の次に現在主に用いられている画像診断はMRI, CT, PET(PET─CT含む)であり,この3検査以外の画像診断をセカンドチョイスとして行うことは特殊なケース以外はほとんどないと思われる.

画像診断,最新の進歩

1.MRI 山下 詠子 , 三上 幹男 , 今井 裕
  • 文献概要を表示

はじめに

 産婦人科領域の画像診断において,組織コントラストの描出に優れたMRIはもはや欠かすことのできない検査法として確立されている.近年めざましく発展した高速撮像法に加え,超高磁場装置3 teslaの登場によって,1.5 teslaより高い信号対雑音比(signal to noise ratio : SNR)が期待されている.しかし3 tesla MRIによる体幹部検査においては,RFパルスの不均一な貫通性による信号むらや比吸収率(specific absorption rate : SAR)の制限,消化管ガスや内容液,腹水などによるアーチファクトのため画質の最適化は困難を極め,体幹部領域での運用は敬遠されがちだった.しかしRFパルスの均一化を可能とした新しいMultiTansmit RF system(MTシステム)の開発によりこれらの問題は改善した.

 ここではシネMRI,拡散強調画像とADC値,高分解能T2強調画像,3D─T2強調画像(VISTA)といった技術革新に注目し,女性骨盤領域におけるMRIの有用性を概説する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 64列マルチスライスCT(multislice CT : MSCT)は,その高速性により,全身どの部位においても,1回呼吸停止下での広範囲のCT検査を可能とした1).腹部領域においては0.5 mmという薄いスライスによる多時相撮影を容易に行えるようになり,得られる等方性ボクセルから作成される多時相の多断面再構成像(multiplanar reconstruction : MPR)やCT Angiography(CTA)の情報は,血管造影よりも術前情報としての有益性が高いので,最近では腹部外科・泌尿器科の術前血管造影の依頼は皆無となり,CT精密検査のみで術前評価がなされるようになってきている.さらに,320列面検出器CT(area detector CT : ADCT)はMSCTでみられるスキャン時間,座標精度,データの同時性,被曝の重畳などに関する問題点を解決するために,さらに進化した装置である2, 3).本稿では64列MSCT・320列ADCT技術の進歩と産婦人科領域における臨床応用について概説する.

3.PET─CT 畑澤 順
  • 文献概要を表示

はじめに

 平成22年の診療報酬の改正で,PET─CTと18F-fluoro-deoxy-glucose(FDG)による悪性腫瘍診断の適用が大幅に拡大し,早期胃癌を除くすべての悪性腫瘍の保険診療が可能になった.「ほかの検査,画像診断により病期診断,転移・再発の診断が確定できない場合」に行う.原発巣の周囲への浸潤を診断するためにはMRIが用いられるが,遠隔部や骨盤外リンパ節への転移診断にはPET─CTが役立つ.産婦人科領域の悪性腫瘍診断にPET─CTを活用する際に必要な事項をまとめた.

  • 文献概要を表示

はじめに

 子宮頸癌の進行期は術前の診察および検査で決定される臨床的進行期であり,CT, MRI, PETなどの最新の画像診断を進行期決定に用いてはいけないことになっている(子宮頸癌取扱い規約).ただしこれらの画像診断所見を治療方針決定の参考とすることは当然認められる.子宮頸癌の膀胱・直腸への浸潤は,予後推測や治療法選択のうえで非常に重要なポイントであり,治療前の評価で見逃してはならない.粘膜におよぶ浸潤は膀胱・直腸鏡により診断可能であるが,漿膜や筋層に留まる浸潤はMRIなどによる画像検査が必要となる.子宮頸癌の局所浸潤の評価法には,軟部組織のコントラスト分解能が高いMRIが最も有用で,研究報告も多い.本稿ではこれらの報告を基にMRIの膀胱・直腸浸潤の判定における精度や問題点について検討した.

  • 文献概要を表示

はじめに

 子宮体癌も含め,婦人科領域における悪性腫瘍の診断にはMRIの有用性が非常に高く,超音波検査に次に施行される検査となっている.子宮体癌取扱い規約に沿った体癌の進行期の評価においてもMRIは欠かせない検査となっている.筋層浸潤の術前評価もMRIで最終的に判断されることが多く,本稿ではMRIによる筋層浸潤の評価方法およびその画像所見について解説する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 子宮筋腫(leiomyoma : LM)は,子宮の腫瘍性疾患で最も罹患頻度の高い疾患であり,微小なものを含めれば,全女性のほぼ90%が罹患し,摘出子宮の約75%に存在する1).症状(腹部腫瘤,過多月経,不妊,月経困難)を有するものは,そのうち30~35%といわれている2).一方,子宮肉腫は,子宮平滑筋より発生する子宮平滑筋肉腫(leiomyosarcoma : LMS)と子宮内膜間質より発生する子宮内膜間質性肉腫(低悪性度,高悪性度)(endometrial stromal sarcoma : ESS)および希少ながら線維芽細胞由来の線維肉腫,悪性線維組織球腫(malignant fibrous histiocytoma : MHF),などに分類される.従来子宮肉腫として扱っていた癌肉腫は,子宮内膜腺細胞より発生し,上皮性の内膜癌に分類される1, 2).本稿では,主として良性の子宮筋腫と子宮平滑筋肉腫における治療前鑑別診断につき述べることにする.

  • 文献概要を表示

はじめに

 悪性腺腫は,超高分化型の粘液性腺癌で頸部腺癌全体の1~3%を占める予後の悪い稀な疾患で,臨床的には大量の水様性帯下や子宮頸部の嚢胞状病変を特徴とする.腫瘍細胞は細胞異型に乏しく,頸部細胞診や生検では診断が確定できないことも多い.

 病変が深部に及ぶナボット嚢胞は悪性腺腫との鑑別診断上,しばしば問題となる.また1999年にNucciら1)により提唱された分葉状頸管腺過形成(lobular endocervical glandular hyperplasia : LEGH)は,形態的にも悪性腺腫に類似するが,良性の経過をとる病変であり,悪性腺腫との鑑別上,最も重要な病変であるといえる.

 悪性腺腫で大量に産生される粘液は胃型(幽門腺型)の粘液の特徴を有し,胃型粘液を特異的に認識するHIK 1083抗体を用いた頸管粘液に対するラテックス凝集反応(関東化学)で陽性を示し,またパパニコロウ細胞診において,胃型粘液をもつ腺細胞は黄色調(通常の頸管腺細胞はピンク色)に染色される2).これらの特徴は,ナボット嚢胞などの良性病変との鑑別に有用であるが,LEGHは悪性腺腫同様に胃型粘液を産生する3)ため鑑別できない.悪性腺腫,LEGH,ナボット嚢胞の臨床的な特徴について簡潔に表1に示す.

 このようにLEGHの登場により,悪性腺腫の術前診断はますます困難になったため,われわれは日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会の研究として「子宮頸部悪性腺腫(adenoma malignum)とその類縁疾患の術前診断および治療ガイドライン確立にむけた臨床研究」を施行した.この研究では,全国24施設から計約110症例の悪性腺腫および類似疾患が集積され,MRI画像診断と病理組織診断の合同検討会(以下,合同検討会)が行われた.本稿では,この合同検討会で得られた知見を中心に,ナボット嚢胞,LEGH,悪性腺腫のMRI所見上の特徴について解説する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 卵巣からは多種多様な組織型の腫瘍が発生し多彩な画像を呈する.また異なる組織型の腫瘍が混在することも少なくない.さらに機能性や炎症性,内膜症性など多彩な腫瘍類似疾患も発生し,腫瘍との鑑別が問題となる.近年,MRIの進歩により水や脂肪,線維成分の多寡,出血の有無,組織の細胞密度や拡散の状態,血管増生の程度など,組織推定に有用なさまざまな情報が得られるようになってきた.本稿では,現時点でのMRIを中心とした画像診断による卵巣腫瘍の組織推定がどこまで可能であるかについて概説する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 卵巣癌の罹患率は,子宮頸癌の罹患率が1980年をピークに減少傾向にあるのに反し,近年わずかずつ増加し,死亡率も婦人科悪性腫瘍で最も高いものとなっている.わが国における,少子化や晩婚化また高齢化といった社会的な背景がこれらの要因と考えられるが,卵巣癌の病因はいまだ不明であり,有効なスクリーニング方法がないことも大きな問題と考えられれている.卵巣癌は臨床症状が乏しいことより,III期以上で診断されることが過半数を占め,そのことが予後不良である一因と考えられ,原発巣の診断とともに播種や転移巣の術前の正確な診断を行い,より適切な手術を行うことが,予後の改善につながると考えられている.しかしながら,従来の超音波断層法やCT,MRIなどの画像診断では,局所の診断には有用であるが,遠隔転移や播種巣の同定には,まだまだ満足できるものといえないのが現状である.

 18F─FDG(2-deoxy-2-fluor-D-glucose)を用いたpositoron emission tomography(PET)検査は,従来の形態画像検査だけでは得られない癌組織の代謝情報も評価でき,さまざまな悪性腫瘍患者の診断において大きな役割を果たしてきており,婦人科悪性腫瘍例でも,主にリンパ節転移の評価やその他の転移巣の評価に広く臨床に応用されてきている.今回,卵巣癌における術前の進行期の評価におけるFDG─PETの有用性をほかの画像診断と比較し,当科での成績をふまえ検討した.

  • 文献概要を表示

セカンドチョイスはPET検査

 卵巣癌は死亡率70%と婦人科悪性腫瘍のなかで最も予後の悪い疾患であり,その原因は早期発見の有効なスクリーニングがないことである.卵巣癌は自覚症状に乏しく70%は臨床進行期III/IV期の進行癌で発見される.ほとんどがI/II期の早期癌で発見されれば再発死亡率は30%に改善される.しかし早期発見を目的とした「経腟超音波検査と腫瘍マーカーCA 125測定」による大規模試験は有効性が認められていない1).その試験は1993年から約34,000人を対象に毎年検査を行ったが,検出した卵巣癌の72%はIII/IV期の進行癌であった.むしろ偽陽性例のため不必要な手術が多くなったと報告し,早期卵巣癌を発見できる有効な検診方法は現在のところない.

 化学療法の進歩により卵巣癌の初回治療で80%は一時軽快し退院できる時代となった.しかしその70%は2~3年以内に再発をきたす.しかも瀰漫性腹膜播種や多発性リンパ節転移といった転移形式をとるため再発初期に画像診断で検出することは困難である.腫瘍マーカーCA 125値の再上昇にもかかわらず従来の画像診断で検出できず患者の精神的ストレスの原因にもなることもある.このようなときPET検査が「画像診断のセカンドチョイス」となる.

  • 文献概要を表示

はじめに

 卵管癌は婦人科性器癌のなかで稀な悪性腫瘍であり,全性器癌のなかで0.13~1.6%を占めると報告されている1~3).卵管癌の発症頻度は卵巣癌の1/20程度であるとの報告もあるが,進行卵管癌と卵巣癌との鑑別は病理組織学的にも難しく,臨床上は卵巣癌として分類されることが多いと考えられる.本稿では卵管癌の術前診断について概説する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 卵巣子宮内膜症性嚢胞,いわゆるチョコレート嚢胞は生殖可能年齢層に多くみられる良性疾患であり,近年増加傾向にある.すべてが治療対象となる訳ではないため,正確な数字は不明であるが,生殖可能年齢層の5~10%の女性に生じるとされている1).小林らは,17年間におよぶ前方視的疫学調査により,子宮内膜症の0.72%から卵巣癌が発生することを報告し2),過去の報告とあわせると,卵巣チョコレート嚢胞の0.5~1.0%が卵巣癌に移行する可能性が示唆される.

 卵巣チョコレート嚢胞の診断に,外来で行われる経腟,あるいは経腹超音波がスクリーニングや精査に重要な役割を果たしていることに疑問の余地はない.しかし,特に癌化が疑われるような症例,病変が大きく全体像が把握しづらい症例などでは,より客観的な診断モダリティとしてMRIは重要な役割を果たしている.本稿では,卵巣チョコレート嚢胞から生じた癌化の診断における画像診断のセカンドチョイスとしてMRIとCT,特にMRIを中心に概説する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 リンパ節画像診断は,これまであまり重要視されてこなかったと思われる.もちろんリンパ節転移の有無は予後因子として重要であるが,手術例では郭清により確認されるため,「大きな腫大リンパ節さえなければ」あるいは「リンパ節の存在部位さえ確認できれば」と,転移の有無の鑑別を期待される役割が小さい感は否めなかった.また放射線療法例では,局所stagingによるリンパ節転移のリスクに基づいて,解剖学的にリンパ節が存在するとされる部位に対して照射がなされている.

 このように,リンパ節画像診断の役割が大きくならなかった一因は,これまでの画像診断が主治医の要求する情報を提供し得なかったことにある.本稿ではこれまでの画像診断におけるリンパ節転移診断の現状,診断能向上の試みを紹介し,さらに機能画像診断として注目されるpositron emission tomography(PET)やultrasmall superparamagnetic iron oxide(USPIO)を用いたMR lymphographyについて紹介する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 婦人科臓器以外からの転移性腫瘍は卵巣が最も多く(86.5%),さらに少ないながら子宮体部(3.8%),腟(5.8%),外陰(2%),子宮頸部(3.4%)への転移も報告されている1)

 転移性卵巣腫瘍の38%は原発巣より先に発見され,特に胃癌,大腸癌に多いとの報告もある.転移性卵巣腫瘍と原発性卵巣癌は治療指針が根本的に異なり,侵襲の大きな手術,化学療法(あるいは放射線療法)を避けるためには両者の鑑別はきわめて重要であるが,鑑別困難なことも多く,摘出後の病理組織診断により判断せざるを得ないこともしばしば経験される.さらに,病理組織学的検索でも原発か転移か,転移であった場合の原発巣はどこなのか診断に難渋するケースにも遭遇することがあり,臨床医のジレンマの1つともいえる.本稿では転移性卵巣腫瘍の臨床的特徴および画像所見に関して概説する.また,転移性子宮腫瘍もきわめて稀ではあるがときに経験されるため,その特徴に関しても略述する.

  • 文献概要を表示

エイズは他人ごと?

岩室 1981年にHIV/AIDSが確認されてから四半世紀以上が経ち,抗HIV薬も進歩しHIVに感染してもAIDSの発症を予防したり,母子感染することなく出産することが可能な時代となっています.私自身,1994年に初めてHIVに感染している人を診療して以来,今まで厚木市立病院では94名の患者さんを診させいただきました.一方で,いまだに多くの医療関係者はHIVに感染している人に会ったこともないため,診療の現場での混乱が少なくないと感じています.

 今回,私の患者さんであり,ご自身が妊婦健診でHIVに感染していることが判明した石田さんにお話を伺い,当事者の目線からどのような対応やサポートが求められているのかを考えたいと思います.まず最初に,石田さん自身にとってHIV感染を告知される前の「エイズ」のイメージってどんなものでしたか?

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール・54

  • 文献概要を表示

症例1

■患者 29歳,女性,初産婦

■主訴 胃部不快感

■既往歴 特記事項なし

■現病歴

 最終月経は2003年12月.2004年7月下旬(妊娠32週1日),胃部不快感,血圧144/92 mmHg,尿蛋白(2+),著明な下腿浮腫にて,19時18分,救急車にて当院へ母体搬送となった.

■入院時現症

 身長154 cm,体重62.3 kg(非妊時58 kg),血圧148/82 mmHg,脈拍78/min,体温37.1℃,上腹部に軽度圧痛,下腿に著明な浮腫を認めた.胎児心拍陣痛図はreactive,経腟超音波子宮頸管長31 mm,胎児推定体重1,281 g(29週0日相当),AFI 7 cm,臍帯動脈血流,胎盤に異常はなかった.

連載 病院めぐり

西神戸医療センター 片山 和明
  • 文献概要を表示

 当院は,神戸市の西の端,明石市の真北,三宮からは地下鉄で30分ほどの距離にある西神中央という町にあります.ポートアイランドの埋め立てに用いた土を採取した跡地にできた町で,病院は高い丘の上にあるため,病室からは淡路島や明石大橋が遠望できます.

 神戸市と神戸市医師会の出資による第三セクターの病院で,平成6年に開院しました.総病床数は500床で,そのうち100床は結核病床ですが,結核患者の減少により結核病床50床を休床としており,現在,総病床数450床で運営しています.

  • 文献概要を表示

 後腹膜線維症は,1948年にOrmondにより後腹膜腔の非特異的炎症として報告された,比較的稀な疾患である.後腹膜の線維化により尿管狭窄をきたして水腎症,腎後性腎不全へと進行する.画像診断で後腹膜の肥厚がみられ,理学所見と合わせて診断がつけばステロイド治療へと進む.

 今回の症例では,典型的な画像所見が得られず,また骨盤内腫瘍が鑑別として挙がったため,腹腔鏡検査および生検による病理検査で確定診断しえた.その後の全身検索で胃癌が発見され,治療中である.

  • 文献概要を表示

 HELLP症候群は溶血,肝酵素上昇,血小板減少を主徴とする血液検査をもとにした疾患群をいい,適切な診断,管理がなされないと母児ともに予後不良となる疾患である.血小板減少いわゆるgestational trombocytopeniaが先行することが多いが,その病態はいまだ明らかにされていない.

 そこで今回われわれは,当院で経験した分娩症例のうち,Sibaiの基準をすべて満たしたHELLP症候群とHELLP症候群の疑いにて早期対応しterminationに至った症例について,後方視的に検討した.

 その結果,HELLP症候群と診断してからterminationを決定した場合と,確定診断には至らずともHELLP症候群の疑いにて早期診断しterminationに至った症例を比較すると,後者のほうが母児ともに予後がよいことがわかった.

--------------------

編集後記 倉智 博久
  • 文献概要を表示

 医師数全体が増加し,多くの診療科の医師数は増加しているのに,産婦人科のみが例外的に減少するという由々しい事態が長く続いてきました.しかし,大変うれしいことに,ここ1~2年は産婦人科医数が増加に転じつつあり,昨年度の日本産科婦人科学会への新たな入会者数は495人でした.この数は,学会の医療改革委員会(海野信也委員長)が試算した,「わが国での周産期医療の維持・発展には,毎年500人の新たな産婦人科医をリクルートする必要がある」という数に迫るものでした.山形などの地方都市でも,やっと,若い仲間が増えつつあります.これは,何にも増して嬉しいことです.

 この嬉しい傾向もさらに続くよう,さらには,もっと発展していけるよう今こそ,われわれが頑張るべきところかと思われます.そのためには「若手の活性化と育成」が必須です.日本産科婦人科学会でも,学術集会中に全国の若い産婦人科医が集まり「若手の会」が催されました.この会は大変熱気に富んだもので,私も参加していて,将来の産婦人科学会の発展を確信しました.今後,この「若手の会」を学会が公認し,支援することが必要であると感じています.

基本情報

03869865.64.6.jpg
臨床婦人科産科
64巻6号 (2010年6月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

文献閲覧数ランキング(
9月21日~9月27日
)