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はじめに
悪性腺腫は,超高分化型の粘液性腺癌で頸部腺癌全体の1~3%を占める予後の悪い稀な疾患で,臨床的には大量の水様性帯下や子宮頸部の嚢胞状病変を特徴とする.腫瘍細胞は細胞異型に乏しく,頸部細胞診や生検では診断が確定できないことも多い.
病変が深部に及ぶナボット嚢胞は悪性腺腫との鑑別診断上,しばしば問題となる.また1999年にNucciら1)により提唱された分葉状頸管腺過形成(lobular endocervical glandular hyperplasia : LEGH)は,形態的にも悪性腺腫に類似するが,良性の経過をとる病変であり,悪性腺腫との鑑別上,最も重要な病変であるといえる.
悪性腺腫で大量に産生される粘液は胃型(幽門腺型)の粘液の特徴を有し,胃型粘液を特異的に認識するHIK 1083抗体を用いた頸管粘液に対するラテックス凝集反応(関東化学)で陽性を示し,またパパニコロウ細胞診において,胃型粘液をもつ腺細胞は黄色調(通常の頸管腺細胞はピンク色)に染色される2).これらの特徴は,ナボット嚢胞などの良性病変との鑑別に有用であるが,LEGHは悪性腺腫同様に胃型粘液を産生する3)ため鑑別できない.悪性腺腫,LEGH,ナボット嚢胞の臨床的な特徴について簡潔に表1に示す.
このようにLEGHの登場により,悪性腺腫の術前診断はますます困難になったため,われわれは日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会の研究として「子宮頸部悪性腺腫(adenoma malignum)とその類縁疾患の術前診断および治療ガイドライン確立にむけた臨床研究」を施行した.この研究では,全国24施設から計約110症例の悪性腺腫および類似疾患が集積され,MRI画像診断と病理組織診断の合同検討会(以下,合同検討会)が行われた.本稿では,この合同検討会で得られた知見を中心に,ナボット嚢胞,LEGH,悪性腺腫のMRI所見上の特徴について解説する.
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