今月の臨床 産婦人科画像診断のセカンドチョイス
婦人科画像診断─どこまで可能か
6.卵巣癌の臨床進行期診断
金西 賢治
1
,
塩田 敦子
1
,
秦 利之
1
1香川大学医学部母子科学講座周産期学婦人科学
pp.982-987
発行日 2010年6月10日
Published Date 2010/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102408
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はじめに
卵巣癌の罹患率は,子宮頸癌の罹患率が1980年をピークに減少傾向にあるのに反し,近年わずかずつ増加し,死亡率も婦人科悪性腫瘍で最も高いものとなっている.わが国における,少子化や晩婚化また高齢化といった社会的な背景がこれらの要因と考えられるが,卵巣癌の病因はいまだ不明であり,有効なスクリーニング方法がないことも大きな問題と考えられれている.卵巣癌は臨床症状が乏しいことより,III期以上で診断されることが過半数を占め,そのことが予後不良である一因と考えられ,原発巣の診断とともに播種や転移巣の術前の正確な診断を行い,より適切な手術を行うことが,予後の改善につながると考えられている.しかしながら,従来の超音波断層法やCT,MRIなどの画像診断では,局所の診断には有用であるが,遠隔転移や播種巣の同定には,まだまだ満足できるものといえないのが現状である.
18F─FDG(2-deoxy-2-fluor-D-glucose)を用いたpositoron emission tomography(PET)検査は,従来の形態画像検査だけでは得られない癌組織の代謝情報も評価でき,さまざまな悪性腫瘍患者の診断において大きな役割を果たしてきており,婦人科悪性腫瘍例でも,主にリンパ節転移の評価やその他の転移巣の評価に広く臨床に応用されてきている.今回,卵巣癌における術前の進行期の評価におけるFDG─PETの有用性をほかの画像診断と比較し,当科での成績をふまえ検討した.
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