臨床外科 75巻3号 (2020年3月)

特集 一般・消化器外科医のための できる! 漢方

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 一般・消化器外科医は自分の専門領域はもとより,かぜ,便秘,不眠などの一般診療もカバーしており,一般外来,周術期管理,がん化学療法などで見られる諸問題に漢方を生かすことは,外科医にとって強みともなる.では外科医にとって漢方はどのように学び,どのように診療に生かせばいいのか.本特集では,西洋医が知っておくべき漢方の知識や,よくきかれる漢方の疑問について解説いただくとともに,譫妄,免疫,栄養,体重減少抑制など,消化器外科手術全般の周術期に有用な漢方についておまとめいただいた.また,消化器がん化学療法にともなう副作用や諸症状を,漢方によって和らげdose intensityを保つ工夫,さらには,緩和ケアにおいて身体面,精神面を含めて基本的生活の維持をサポートするための漢方の使い方を解説いただいた.本特集を手に,外科医が漢方を日常診療の場で生かせるようになれば幸いである.

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【ポイント】

◆確たる有効性を主張できるエビデンス(1,000例規模の臨床試験)を有する漢方薬はいまだに存在しない.

◆漢方診療(漢方的腹部診療など)を加味して選んだ漢方薬が,漢方診療を行わずに選んだ漢方薬よりも有効というエビデンスはない.

◆漢方理論を駆使しても,古典を読破しても,有効性にあきらかな統計的有意差がないのであれば,西洋医は自信をもって,漢方理論を用いず,古典も読まずに,漢方薬を使用すればいい.

◆上記の意見に抗う明らかなエビデンスが出るまでは,漢方診療や古典の読破は,やりたい医師,興味がある医師が行えば十分である.

◆上記の意見に対して反論があれば,エビデンスを出す努力をすればいい.

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【ポイント】

◆日常臨床において,よく耳にする漢方薬に関する疑問を解説した.

◆特に,薬物相互作用,副作用,食前投与の意義について解説した.

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【ポイント】

◆外科医の直感が,漢方医学では最も大切になる.

◆病態生理から漢方医学の診断結果を導き出す.

◆漢方薬名よりも,含まれる生薬に注目する.

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【ポイント】

◆何でも漢方が勝るわけではないが,日常診療に有用で便利なことは多い.

◆漢方薬を処方するときは,漢方の理論と薬理に基づいて使用する.

◆漢方理論は「浮沈」「寒熱」など定性的で曖昧かもしれないが,実践的である.

周術期を漢方でサポートする

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【ポイント】

◆個々の患者の周術期の訴えに対応するためには,気血水の状態から個人に相応しい漢方薬を処方する.

◆治療原則として虚証には補法で,実証には瀉法で対応する.

◆周術期の漢方処方に関して,エビデンスがあれば病名投与を優先しても構わない.

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【ポイント】

◆六君子湯(りっくんしとう)のグレリンを介した食欲増進作用や,胃内容排出改善効果等による胃切除症候群の諸症状の改善がみられる.

◆腹腔鏡下幽門側胃切除術後の六君子湯内服により,退院時の食事摂取量が増加している.

◆六君子湯の服薬による有害事象は認めず,服薬コンプライアンスも良好である.

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【ポイント】

◆現在漢方薬は,西洋医学的解析が進み少しずつエビデンスが蓄積され,使用しやすくなってきた.

◆大腸癌手術における漢方薬は,主に周術期の合併症予防を目的に用いられることが多いが,術後侵襲による「虚」の状態に用いることもある.

◆漢方薬は,その特性を理解し利用することで,外科領域でも重要な役割を担う薬剤となりうると考えている.

肝胆膵手術 中村 育夫 , 波多野 悦朗
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【ポイント】

◆肝臓・胆道手術を受ける患者において,術前減黄不良の閉塞性黄疸や術後遷延性黄疸に肝細胞保護や利胆作用を目的に茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)を,肝再生のための門脈血流維持とbacterial translocationによる肝不全予防のために大建中湯(だいけんちゅうとう)を用いる.

◆膵臓手術を受ける患者において,術前減黄不良の閉塞性黄疸に茵蔯蒿湯を,術後麻痺性イレウスの予防に大建中湯を,周術期の食欲低下や上部消化管運動機能低下に六君四湯(りっくんしとう)を用いる.

◆術後せん妄の予防に抑肝散(よくかんさん)が用いられる.

がん化学療法完遂のための漢方

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【ポイント】

◆がん治療,特に化学療法の進歩によって生存率が向上し,全国に治療中の患者数は150万人以上いる.

◆漢方薬をがん治療における支持療法に用いることは国策として推奨されているが,その普及は道半ばである.

◆漢方薬は薬物動態をはじめ多くの知見が集積されつつあり,化学療法完遂のために安全かつ有効な投与タイミングが明らかとなってきた.

末梢神経障害 進藤 吉明
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【ポイント】

◆CIPNの機序は未解明の点が多いうえ,評価法も主観的なものが多く,客観的に評価できるものが少ない.

◆CIPN出現時には,原因薬剤の投与延期,減量,またStop & Goなどが重要である.

◆CIPNに対する漢方薬の効果はエビデンスが少なく,積極的な使用は推奨しないが,試用は許容される.

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【ポイント】

◆口腔粘膜炎は外来化学療法の15%に生じ,約半数がgrade 2以上である.

◆半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)は①フリーラジカル消去作用,②抗炎症作用,③鎮痛作用,④抗菌作用を有する.

◆半夏瀉心湯の口腔内浸透法は口腔粘膜炎の鎮痛除去に有効である.

食欲不振,嘔気,嘔吐 大西 俊介
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【ポイント】

◆がん化学療法に伴う嘔気・嘔吐・食欲不振に対する現在の標準的な支持療法はいまだ十分とはいえない.

◆六君子湯(りっくんしとう)はセロトニン受容体に対する拮抗作用およびグレリンを介した食欲増進作用が明らかとなっている.

◆六君子湯は標準制吐療法に対する上乗せ効果が期待されているが,プラセボを用いた質の高い臨床試験の結果が待たれる.

緩和医療

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【ポイント】

◆身体面,精神面を含めて基本的生活の維持をサポートする.

◆衰弱に伴う諸症状,食欲不振,便秘,痛み,不眠,不安・うつなどを漢方で支える.

◆最期までその人らしく生きる時間を大切にするために漢方を活用する.

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はじめに

 近年の世界規模での肥満人口の増加に伴い,メタボリックシンドロームの肝臓における表現型と考えられる非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)は増加している.NAFLDとは,予後良好の非アルコール性脂肪肝(non-alcoholic fatty liver:NAFL)から,肝機能障害を呈し,炎症細胞の浸潤や線維化を呈する慢性進行性疾患である非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH),肝硬変までの広範なスペクトラムを有する疾患概念である.米国では約600万人がNASH,約60万人がNASH関連肝硬変とされ1),肝移植の原因疾患として,C型肝炎に次いで2番目(17.4%)に多い2)

 NAFLD治療の原則は内科治療,すなわち,生活習慣改善による減量とインスリン抵抗性改善薬を主とする薬物療法である.生活習慣改善による減量はNAFLDを組織学的に改善し,線維化の進行を抑制する可能性が示されている3)ものの,減量効果を長期間維持することは多くの患者にとって容易ではなく,再肝生検(repeat liver biopsy)によるNAFLDのnatural historyに関する検討では,約1/3の症例で線維化の進行が認められ,肥満とBMI(高値)が関連因子であった4)

 一方,内科治療抵抗性の高度肥満症患者に対して,1950年代より欧米を中心に外科治療(減量手術,bariatric surgery)が行われており,高い減量効果(長期効果),肥満関連疾患改善効果が示されている5).本邦においても,外科治療の施行件数は徐々に増加しており,一部の術式は保険収載されるに至っている.本稿では,外科治療の術式,適応,効果,NAFLD/NASHに与える効果ならびにメカニズム,日本人患者を対象とした成績について概説する.

坂の上のラパ肝・胆・膵・3

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Point

◆臍静脈板左縁,Arantius管(小網付着部),左肝静脈根部,umbilical fissure veinがおもなランドマークとなる.

◆左三角間膜を切離せずに残しておくことで外側区域が固定され,術野展開に有利な場合がある.

◆鎌状間膜付着部の肝表と臍静脈板の間の肝実質を離断して臍静脈板を露出した後に,G2,G3根部をそれぞれ個別に確保して切離する.

◆左肝静脈は肝離断の最後に根部で切離する.

病院めぐり

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 広島赤十字・原爆病院は広島市の中心部に位置し,名前にもあるとおり爆心地(原爆ドームのあたり)から1.2 kmの距離にあります.当初日本赤十字社・広島支部病院として1939(昭和14)年5月1日に開院しました.当時,広島は陸軍第5師団の本拠地であり,その社会事情からでしょうか,開院まもなくの5月8日には広島陸軍病院赤十字病院と改称され,入院は陸軍の軍人患者だけを収容していたようです.その後,1943年には広島赤十字病院と改称しています.1945年8月6日広島原爆の投下により,爆心地から2 km以内の木造家屋は倒壊・全焼しましたが,鉄筋コンクリート建てであった当院本館は全壊を免れたようです.病院職員も554名中51名が被爆死,250名が重軽傷を負ったとの記録がありますが,それでも壊滅的被害を受けた建物で,わずかな医療資源を用いて懸命に治療に当たったとの記録があります.1956年には敷地内に広島原爆病院が併設され被爆者の治療と健康管理に力を入れてきました.その後,原子力放射性障害対策研究所も増設され,原爆医療の最前線としての研究も続けられました.そして,原爆病院開院から30年後の1985年には取り壊され,1988年に現在の広島赤十字・原爆病院として再出発しました.

 当院の外科は一貫して九州大学第二外科から医師が派遣されてきました.現在は第一外科(消化管一般外科4名),第二外科(乳腺,呼吸器,血管外科4名),第三外科(肝胆膵外科3名)の計11名の外科医で年間約1,000例程度の手術ならびに入院・外来診療および化学療法をこなしています.また当院は臨床研修病院ですので毎月1〜2名の初期研修医が外科をローテートしています.2015年に新築した東棟にある手術室は10室あり,すべての部屋で腹腔鏡手術用の天つりモニターと配管,記録用のカメラシステムが設置されており,手術環境はかなり整備されました.外科の手術日は月水金で,午前8時から術前カンファレンスを行っています.また各疾患グループはそれぞれ内科と合同カンファレンスをしています.病棟は新館(東棟)の5階で,週1回部長による総回診をしています.

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要旨

【目的】比較的頻度が少ない小腸GISTの臨床病理学的特徴を明らかにすることを目的とした.【対象】当院で切除した小腸GIST 14例を対象に臨床病理学的特徴について検討した.【方法】小腸GISTを十二指腸GISTと空腸・回腸GISTに分けて比較検討した.【結果】腫瘍の部位は十二指腸6例,空腸5例,回腸3例であった.術式は,十二指腸GISTに対して全例十二指腸楔状切除術が行われ,空腸・回腸GISTに対して小腸部分切除が行われた.病期はⅠ期が6例,Ⅱ期が2例,ⅢB期が4例,Ⅳ期1例であった.術後観察期間中央値は67か月(11〜175か月)で,無再発9例,肝転移・腹膜再発2例,多発肝転移1例,腹膜再発1例,不明1例であった.【考察】再発4例に対して,化学療法および手術を適切な時期に施行することで長期生存が得られると思われた.また,再発に関して空腸・回腸GISTが十二指腸GISTよりも高かった.

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要旨

症例は54歳,男性.噴門部進行胃癌に対して胃全摘,脾臓・大網切除,D2リンパ節郭清を施行した.術後補助化学療法を行ったが,術後8か月のCTで甲状腺腫瘍を認めた.精査中,腫瘍増大による右反回神経麻痺症状をきたしたため,甲状腺腫瘍の外科的切除を施行した.腫瘍は気管や食道に浸潤し剝離困難であったが,迅速病理診断で腺癌の診断を得て胃癌の転移と考えられたため,可及的な切除にとどめた.永久病理標本でも腫瘍は胃癌の甲状腺転移と診断された.速やかに化学療法を開始したが徐々に進行し,初回手術から約1年9か月,転移性甲状腺癌手術から約9か月で死亡した.胃癌の甲状腺転移は稀な病態であり,文献的考察を加えて報告する.

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要旨

症例は55歳,女性.20年前に健診で膵尾部背側に囊胞性病変を指摘されて以降,経過観察されていたが,突然の背部痛と発熱を主訴に来院し,精査にて囊胞感染と診断された.内科的治療では改善せず,手術目的に外科へ紹介された.感染性後腹膜囊胞の診断で囊胞摘出術を予定したが,囊胞と膵体部との癒着は強固で安全に剝離できず膵体尾部切除術を行った.術後経過は良好で背部痛,発熱も軽快し,術後24病日目に退院した.病理組織学的所見で後腹膜気管支原性囊胞と診断した.気管支原性囊胞は腹部に発生することは稀とされている.後腹膜気管支原性囊胞は感染すると周辺臓器との癒着が起きるが,悪性の可能性も考慮し周辺臓器の合併切除が必要と考える.

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要旨

症例は76歳,女性.2009年10月に右乳癌に対して乳房部分切除術を施行し,術後に放射線療法と内分泌療法を施行した.術後7年間は再発を認めなかった.2016年夏に右乳房に皮膚腫瘤を自覚.同年11月の他院の皮膚生検では診断がつかず,翌年1月当院皮膚科を受診.再生検で皮膚血管肉腫と診断.MRIで右AとD領域に限局性の皮膚肥厚と漸増性の造影効果を認めた.右乳房切除術+植皮術を施行した.病理診断は皮膚血管肉腫で,7.1×5.5 cmの範囲に多発していたが,断端は陰性であった.完全切除でき,PSも低下していたため,術後補助療法は施行していない.術後1年10か月に局所,頸部皮膚再発,頸部リンパ節転移をきたした.

ひとやすみ・187

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 外科医は患者に応じた治療法を提示するが,患者は大いに戸惑いさまざまな対応を示す.私自身も4年ほど前に進行期の前立腺癌と診断され,悩み抜いた末に郭清を伴う前立腺摘出術を受けた.

 職場健診でPSA 5.1 ng/mLと軽度ながら高値であり,念のために行ったMRI検査で被膜への浸潤が疑われショックを受けた.さらに針生検では12か所中11か所に癌を認め,病期T3aと診断された.自分がなぜ癌に罹患したのか,しかも進行期であることに大いに落胆した.そして書物,インターネット,さらには人を介して情報を漁りまくった.常日頃はエビデンスを重視しているが,自分自身の命に係わることとなると冷静さを失いパニックとなった.

昨日の患者

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 2万人以上の死者が生じた東日本大震災が起きて,早9年が過ぎようとしている.長い年月が過ぎ去っても,亡き人の思い出は褪せることなく誼を結んだ人の心に残る.

 Hさんは10年ほど前に胃癌で受け持った60歳代後半の患者である.術後もしばしば外来を受診していたが,大震災後は来院せず,気になっていた.たまたま献血に訪れた息子さんが,Hさんのその後を教えてくれた.

1200字通信・141

逆パワハラ 板野 聡
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 産業医の更新講習会で,「パワーハラスメント(パワハラ)」の演題があり,立場上も聞いておきたいと思い受講してきました.

 パワーハラスメントとは,セクシャルハラスメントなどに続いて出てきたものと認識していましたが,「職場の権力(パワー)を利用した嫌がらせ」という意味で,2001年に(株)クオレ・シー・キューブ(岡田康子代表取締役会長)が提唱した和製英語だそうです.

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 近年のInterventional EUSの進歩は胆膵診療に大きな変革をもたらしました.現在では診断的穿刺(EUS-guided fine-needle aspiration:EUS-FNA)のみならず,Walled-off necrosisや膵仮性囊胞,胆道に対するドレナージなど,さまざまな治療にも広く応用されています.私は膵腫瘍などの診断に際しては,本邦におけるEUS-FNAの黎明期のころから同手技を行ってきました.EUS-FNAは膵腫瘍の鑑別診断においては極めて有用な手技であり,現在では胆膵領域診療において欠かせない手技の一つとなっています.

 しかしながら,EUS-FNAといえど万能ではありません.例えば,当初は悪性を疑いながらもEUS-FNA結果が非悪性であった場合には偽陰性の可能性も考慮しなくてはならず,経過観察するか,もしくは再度のEUS-FNAを施行するかといった判断には,画像診断が極めて重要な役割を果たします.私はEUS-FNAを行えば行うほど,画像診断がいかに重要であるかを幾度となく認識させられてきました.また,治療方針決定に際しては,その病態の良悪性を診断するだけでなく,悪性であればその進展範囲を正確につかむ必要がありますし,良性の場合はその原因についても深く考察しなくてはなりません.また,胆道病変や膵囊胞性病変に対するEUS-FNAの適応はかなり限られています.さらには,ドレナージなどのEUS下治療に関しても,画像からその適応をしっかりと考慮する必要があります.

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目次

原稿募集 「臨床外科」交見室

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次号予告

あとがき 田邉 稔
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俺の箱根駅伝(前編)

 2020年元旦を迎え,一通り親戚回りと初詣は完了,めったにないまとまった休暇であるから,一日一日を大切に過ごさなければならない.「はて,明日1月2日は何をしようか…そうだ,箱根駅伝を応援に行こう」.熱い戦いを目前にすれば,今年一年分のエネルギーをいただけるのではないかとの思いから,そのような計画をたてて2020年の初日を終えた.ところが1月2日の朝,不覚にもやや寝坊気味で目覚め,お餅をほおばりながら買ったばかりの我が愛機,ロードバイク・ビアンキに飛び乗った.自宅から駅伝が通過する国道一号線多摩川六郷大橋までは約10km,全速力でペダルをこぎまくったが時既に遅し,道路には選手どころか観客も消え去り,何事も無かったように車が行き交うのみ.

 「しまった(゜ロ゜;),でもこのまま引き下がってたまるか!」.私は即座にビアンキを全力疾走させ,駅伝を追いかける決心をした.フルカーボンフレームにホイールはカンパニョーロ・シャマルウルトラ,コンポはシマノ105,地味な国立大学教員としては思い切った投資をしたイタリア製ロードバイク,「俺の愛機にかかれば駅伝野郎などあっという間にキャッチアップ!」…これが最大の誤算であった.川崎⇒鶴見⇒横浜⇒戸塚中継所,2時間近く全力疾走したが観客の影すら見当たらない.しかし道路沿いには「箱根駅伝交通規制」の立て看板が並んでおり,確かに彼らが走った形跡がある.

基本情報

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臨床外科
75巻3号 (2020年3月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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