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はじめに
近年の世界規模での肥満人口の増加に伴い,メタボリックシンドロームの肝臓における表現型と考えられる非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)は増加している.NAFLDとは,予後良好の非アルコール性脂肪肝(non-alcoholic fatty liver:NAFL)から,肝機能障害を呈し,炎症細胞の浸潤や線維化を呈する慢性進行性疾患である非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH),肝硬変までの広範なスペクトラムを有する疾患概念である.米国では約600万人がNASH,約60万人がNASH関連肝硬変とされ1),肝移植の原因疾患として,C型肝炎に次いで2番目(17.4%)に多い2).
NAFLD治療の原則は内科治療,すなわち,生活習慣改善による減量とインスリン抵抗性改善薬を主とする薬物療法である.生活習慣改善による減量はNAFLDを組織学的に改善し,線維化の進行を抑制する可能性が示されている3)ものの,減量効果を長期間維持することは多くの患者にとって容易ではなく,再肝生検(repeat liver biopsy)によるNAFLDのnatural historyに関する検討では,約1/3の症例で線維化の進行が認められ,肥満とBMI(高値)が関連因子であった4).
一方,内科治療抵抗性の高度肥満症患者に対して,1950年代より欧米を中心に外科治療(減量手術,bariatric surgery)が行われており,高い減量効果(長期効果),肥満関連疾患改善効果が示されている5).本邦においても,外科治療の施行件数は徐々に増加しており,一部の術式は保険収載されるに至っている.本稿では,外科治療の術式,適応,効果,NAFLD/NASHに与える効果ならびにメカニズム,日本人患者を対象とした成績について概説する.
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