理学療法と作業療法 22巻4号 (1988年4月)

特集 医療技術者教育

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 Ⅰ.短期大学発足の経緯と現状

 1.短期大学の発足

 1947年(昭和22年)3月,学校教育法が制定され,6・3・3・4制の新教育制度が実施されることとなった.この学制改革により,いわゆる新制大学は,多様な旧制の大学,高等学校,大学予科,専門学校,高等師範学校,師範学校,青年師範学校などを母体として新しい理念の下に昭和24年度から本格的に発足したのである.一方,新制大学への切り替えに際し,教員組織,施設・設備などが不充分のため四年制大学への転換が困難であった一部の旧制の専門学校などがあり,その救済という現実的な課題と父兄および学生の経済的な負担の軽減ならびに短期間における実務者養成の必要性などを背景として,文部省では,1949年(昭和24年)6月学校教育法の一部を改正し,暫定措置として修業年限2年または3年の大学を設け,これを短期大学と称することとしたのである.

 したがって,短期大学は,当初,暫定的なものとして考えられていたため,学校教育法上の規定も四年制大学の修業年限の特例として扱われ,目的・性格もあいまいなものであり,当時の「短期大学設置基準」によると「短期大学は,高等学校の教育の上に2年または3年の実際的な専門職業に重きを置く大学教育を施し,よき社会人を育成することを目的とする.」とされていた.

理学療法教育の現状と展望 奈良 勲
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 Ⅰ.初めに

 理学療法教育(以下PT教育と略)の現状と展望に関連したテーマはこれまで本誌の紙面でも何度か論じられている1~3).また,理学療法白書(1985)4)でもPT教育の現状が克明に分析されている.しかし,この種のテーマも状勢の変化に応じて継続的に,しかもそれぞれの立場から論じる必要がある.

 筆者は過去17年間,臨床実習指導者,非常勤講師,そして現在では専任教官としてPT教育にかかわりをもち続けてきた.また,社団法人日本理学療法士協会の理事としても教育関係の仕事を行ってきた.したがって,この間,筆者なりに分析した現状の諸問題を挙げ,多少欧米の動向を加えて議論を展開してみたい.

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 Ⅰ.初めに

 日本における作業療法士の教育は,その資格と業務を定めた「理学療法士及び作業療法士法」(1965年6月29日法律第137号),作業療法士の養成施設の指定を定めた「理学療法士作業療法士養成施設指定規則」(1966年3月31日文・厚令3号).さらに具体的な運用基準(教員に関する事項,生徒に関する事項,教室および実習室などに関する事項,教育上必要な機械器具などに関する事項,実習施設に関する事項,各教科科目の内容)を定めた「理学療法士及び作業療法士養成施設指導要領について」(1966年9月14日厚第1099号,各都道府県知事宛,厚生省医務局長通知)に基づいている.

 これまで幾度かの小改訂がなされてきたが,もはや時代の要請に対応できなくなり,(社)日本作業療法士協会は,医療関係者審議会理学療法士作業療法士部会に対して教育内容の見直しに関する「要望書」(1984年7月11日)1)を提出し,これを契機に現在,作業療法士教育カリキュラムの抜本的な改正が検討されている.

 ここでは作業療法士教育の現状と課題を分析し,今後の展望について私見を述べる.

医学教育の現状と展望 牛場 大蔵
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 Ⅰ.初めに

 医療技術者教育についての特集号に,“医学教育の現状と展望”を述べることはたいへんに難しい.それは医学教育が,医師以外の医療技術者それぞれの専門のことについて,あるいはその領域の人々との,いわゆるチーム医療について,遺憾ながら現在まできわめて乏しいかかわり合いしかもってこなかったからである.

 したがってここでは,医学教育そのものの変遷,現在の問題点および将来についての概観に重きをおくこととし,その中で医師以外の医療技術者教育の参考となることを,読者に読み取っていただくよりしかたが無いであろう.

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 Ⅰ.初めに

 今世紀に入ってからの科学技術の進歩は,人々の生活ばかりでなく価値観をも変えてしまうほどの大きな力と影響を我々に与えた.

 保健医療の分野もまた,医療技術の進歩により高度化,複雑化し,今や医師と看護婦(士)だけではそのすべてに対応できない状況にある.そのため,多くの細分化された専門職が誕生してそれぞれの機能を分担する傾向がみられるようになった.

 これら医療に携わる専門職種の人々は患者を中心におのおのの専門性に基づく立場で互いに協力し,その関係を調整しながらケアや方針を決定していくことを要求される.

 専門職の多くが,その専門性ゆえに細分化され高度化されたなかにあって,看護は,患者のもっとも身近に位置し,その生活全般にわたって援助する役割をもつため,その人に対して提供されるさまざまな医療サービスや行為を含め,心理的,身体的状態や生活を総合的に把握しやすい立場にある.したがって対象に対しても,より効果的な援助を提供することが可能である.

 しかし,看護が有効に発揮されるためにはただ単に,いつも対象の身近にいるというだけでなく,看護婦(士)が人間を理解したり,人間関係を調整したりする知識や指導力に優れ,医療分野の他の職種とも対等に意見交換ができる能力をもたなければなるまい.

 我が国において看護の教育が始まってすでに100年が経過した.時代の変化とともに看護に対する国民の期待はいっそう高まり,また看護そのものの考えかたも変わってきているが,はたして時代に則した看護婦(士)を世に送り出しているのだろうか.

 本稿では,第二次世界大戦後の我が国の看護教育について,その制度と教育内容を振り返り,いくつかの問題を指摘しながら,これからの看護教育の在りかたを模索してみたい.

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 再び教育の場に戻って二年.豊かな時代に育ったのどかな学生を前にして,彼らのやる気を育てるにはどうすればよいかと,改めて教育の方法を模索しているとき,一冊の良書に出会った.

 村井実著「教育の再興」(小学館)がそれである.氏は,教育の真の在りかたとして人間モデルの教育を提唱し,学生自身のより善くなろうとする本来の働きと教師の役割とをわかりやすく結び付けてくれる.

クリニカル・ヒント

ROM測定上の問題点 宮前 珠子
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 「ROMテスト?」「軽い,軽い!」あなたはそう思ってはいませんか? 学校では,昔アメリカのベテランのPTが出したデータを基に,ROMテストの誤差は5°程度と教えていました.しかしこれは,私やあなたが5°の誤差で計測できていることを保証するものではまったくありません.

 自分のROMテストの信頼性を調べてみたことがありますか? つまり,同じ被検者に対して,たて続けに数回計測する.目盛りを見ないようにして(できれば軸を合わせるときは目盛を隠して),しっかりと基本軸と移動軸を合わせ,それから目盛りを読み取ることを,ほんの5分間ほど置いて2度,3度繰り返してみたとき,どのくらいの差があるでしょうか?(テスト―再テスト信頼性).また,同じ被検者のROMを同僚数人で計測して比べてみたらどの程度の差があるでしょうか(検者間信頼性).善は急げ.

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 Ⅰ.初めに

 学生時代,脳性麻痺の子どもたちが,食事動作の訓練をしたり,衣服着脱の訓練をしたり,寝返り,這(は)い這い,歩行などの訓練をしている姿を見学した際,思うように自分の身体を操作することができないとは,どのような気持だろうと,強烈な印象をもった自分を今でも忘れない.身体操作の随意性に障害を受けると,私たちが通常,無意識下のうちに行う何気無い動作を,絶えず意識して行わねばならず,そのために活動の能率は低下し,さぞかしはがゆい思いをしているだろうということも気になった.

 健常な子どもの発達の中で,自分を取り巻く空間を自分が思うように操作することができるという体験は,身体的発達ばかりでなく,精神的な発達にも大きく影響を与えていく.感覚運動的空間の中で体験する数多くの学習は,認知や思考の発達の過程にたいせつな基盤を提供する.

 重力や,不随意運動が日常生活で邪魔となる脳性麻痺のような運動障害を有する人たちに,空間での身体操作の体験を繰り返し提供してもそのような運動障害を有しない人たちの体験の数には,とても追いつけないことはわかっている.しかしながら,現状では,運動障害を有する子どもたちへの発達援助は,健常な子どもたちの発達の姿を参考に,身体操作の概念を一般化していく援助しか,今のところ思い当たらない.

 ここでは,随意的に空間を操作できる能力の発達上でのたいせつさと,その能力の基盤となる感覚・知覚運動技能の初期発達について述べ,運動障害を有する子どもたちへの援助について考えていきたい.

障害者と職業・4 てんかん 松友 了
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 Ⅰ.はじめに

 多くの関係者,特にてんかんを有する本人諸氏の指摘や要望にもかかわらず,てんかんを有する人々の雇用問題に対する取り組みは,これまでたいへん立ち遅れていた.その理由の第一は,てんかんが基本的には「疾患」であるため,医学的治療の対象のみに限定して考えられてきた,ということである.「治す」ことのみに情熱が注がれ,治療を受けながら,薬を飲みながら(すなわち医療的管理を受けながら)生きる,というアプローチが弱かったのである.

 取り組みの弱さの第二の理由は,てんかんを有する人々の雇用上の実態が明らかでなかったという点にある.本人や家族の体験においては,その悩み・ニーズは痛いほどわかっているが,総合的・体系的には把握されていない.とくに,行政の統計においては,「てんかん」としての対策が無いため,すっぽりと抜け落ちているのである.

 また,雇用において「てんかん」の何が,どのように影響しているか,どのようにすれば,援助につながるかが,充分に明確ではない.その分析・研究が,ほとんどなされていない,というのが取り組みの弱さの第三の理由であり,また逆に結果でもあった.

 しかしながら,国際障害者年を契機とした「障害」の構造的理解の一般化は,「疾患」と「障害」の共存,あるいは連続性を常識化した.その結果,長期慢性疾患の雇用問題に関心が高まり,急速に取り組みが進んでいる.

 我が国においては,(社)日本てんかん協会を中心に,「てんかんリハビリテーション研究会議(1983年~)」「てんかんと雇用に関する専門研修セミナー(1986年)」の開催.「就労実状調査」の実施(1984年)とその報告書の発行(1985年)など,が行われた.

 また国際的には,国際てんかん協会が「雇用に関する委員会」を編成し,第17回国際てんかん学会議(1987年9月)においては,主要テーマの一つに選ばれ,活発な討論が行われた10)

 しかしながら,関係者の関心の高まりにもかかわらず,実質的な取り組みが進んでいるとは言い難い.制度的保障は,「職場適応訓練制度」への対象化くらいであり,身体障害者雇用促進法が大幅に改正された新法においても,具体的な対策は,まだ何も用意されていない.そのため,改めて問題点を整理し,制度化する必要を痛感する.

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 1.初めに

 膝関節前十字靱帯(以下ACL)と後十字靭帯(以下PCL)の損傷は,最近の診察手技の改善により診断率が向上した結果半月板損傷とともに膝損傷のもっともポピュラーなものの一つになっている.以下,ACL,PCL損傷のそれぞれの再建法の最近の動向について述べてみたい.

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 先生の現在の職場と仕事の内容をお教えください.

 夫のGentry JS博士とともに会社を経営しています.その会社で,教育や健康管理制度に関する相談にのるのです.相手は,主に学術機関,病院,健康管理を担当する組織,第三者支払い人(例えば健康保険代理店),そして健康の追求や推進を目的とする医療サービス会社の方々です.また,私は自分の時間の約20%を在宅ケア契約をしている患者さんのケアに充てています.

あんてな

RIの準備着々と進む 中島 和
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 アジアで初めての第16回リハビリテーション世界会議の本年9月開催に向けて,多数の方々の御協力を得て準備は着々と進められている.

 プログラムの内容が確定し,登録者の受け付けも開始している.また,ポスターセッションへの論文受け付けも行っている.下記の学術プログラムのほか,多目的セッション,映画祭,展示会,プレ・ポストコングレスなども計画されており,プレ・ポストコングレスについては詳細を後ほどこの欄でもお知らせする予定ですが,詳細は下記会議事務局までお問い合わせいただきたい.

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 Ⅰ.初めに

 経皮的末梢神経電気刺激(transcutaneous electrical nerve stimulation,以下TENSと略す.)は近年,電気的除痛法として有用視されている1).TENSの鎮痛機序に関してはこれまでIgnelzi2),Wall3)らの報告があるが,高頻度刺激が良いとする者4)や低頻度刺激が有効であるとする者2)などさまざまで明確な結論が出ているとは言い難い.そこで我々は今回、一次ニューロンのレベルにおけるTENSの影響を高頻度刺激と低頻度刺激で比較検討するため動物実験で検索したところ若干の知見を得たので報告する.

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 Ⅰ.初めに

 日常の臨床場面において平衡機能の評価を行う際には,患者の静的な状態(静止立位など)を重心動揺計を用いて検査するのがほとんどである.また検者が被検者に対して徒手的に外乱刺激を与えて平衡機能の検査を行う場合でも,その判定は検者の主観に頼ることが多い.

 そこで,われわれは,前回の研究1)で健常人に対しおもりの落下を利用し,直線加速度を加えて平衡反応を誘発し,加速度計による定量的な検査を試みた.その結果,開眼時の平衡反応の特性として,連続10回の試行中,下部体幹で検出された加速度にほぼ変化が無かったのに対し,閉眼時においては,同じく連続10回の試行中,試行1回目から試行5回目にかけて下部体幹での加速度が著明に減少し,5回目以降10回目までほぼ一定の値を示す知見を得た.今回の研究では,前回の研究と同様に健常人を対象に,生体に加える加速度刺激の間隔日数を変化させた場合の平衡反応の違いについて加速度計を用いて検索し,その結果,臨床場面における平衡機能の訓練効果のメカニズムと,その機能維持のための刺激頻度について参考となるデータを得たので報告する.

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 アメリカでは“理学療法士”という仕事を子供でも知っていた.私がホームステイしていた家庭の4歳の男の子は”Physical therapist”のことばを知っていた.

FORUM フォーラム ふぉーらむ

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 臨床実習期間中,養成校の教員は施設や病院へ臨床実習に出た学生が学内で学んだことを患者を受け持ってうまく応用面でやりこなしているか,事故を起こしていないか,と心配する.他方,施設のスーパーバイザーは学生の技術面の到達度や未熟さ,理学療法士としての適性などについてやきもきする.そんな両者の関係を円滑にするため第9回スーパーバイザー研修会が10月4日(近畿理学療法士養成校連絡協議会主催)大阪で開かれた.討論された一部を紹介しておこう.

豆知識

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 「引用」の範囲を超えて他人の著作物を,自身の著作物へ取り込む場合(“転載”)には相手方(著作権者・出版社)の許諾が要ります.(許諾の条件として著作権使用料を請求される場合もあります.)ただし,「引用」の条件を満たして利用する場合は自由に利用できます.

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文献抄録

編集後記 冨岡 詔子
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 教育関係者にとって,4月は心はずむ季節です.新入生の全身に漂う緊張感は教育者としての責任感を揺さぶり,進級,留年により顔ぶれが変化したクラスのもつ緊迫感は,マンネリ化しやすい授業を引き締めてくれます.新学期にふさわしい「医療技術者教育」が本号の特集です.

 各著者は専門職の教育問題に取り組んでおられる方々で,いずれも読みごたえのある論文ばかりです.佐藤氏の論文は,近年急増した医療技術短期大学部でのPT・OT教育誕生の経緯や目的を知るうえでたいへん興味深い.

基本情報

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理学療法と作業療法
22巻4号 (1988年4月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0386-9849 医学書院

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