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講座
運動学習・4 感覚・知覚と運動学習
Motor Learning. 4: Sensory-Perceptual Motor Learning
杉原 素子
1
Motoko SUGIHARA
1
1東京都立心身障害者福祉センター
1The Tokyo Metropolitan Rehabilitation Center for the Physically and Mentally Handicapped.
pp.241-246
発行日 1988年4月15日
Published Date 1988/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518104005
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Ⅰ.初めに
学生時代,脳性麻痺の子どもたちが,食事動作の訓練をしたり,衣服着脱の訓練をしたり,寝返り,這(は)い這い,歩行などの訓練をしている姿を見学した際,思うように自分の身体を操作することができないとは,どのような気持だろうと,強烈な印象をもった自分を今でも忘れない.身体操作の随意性に障害を受けると,私たちが通常,無意識下のうちに行う何気無い動作を,絶えず意識して行わねばならず,そのために活動の能率は低下し,さぞかしはがゆい思いをしているだろうということも気になった.
健常な子どもの発達の中で,自分を取り巻く空間を自分が思うように操作することができるという体験は,身体的発達ばかりでなく,精神的な発達にも大きく影響を与えていく.感覚運動的空間の中で体験する数多くの学習は,認知や思考の発達の過程にたいせつな基盤を提供する.
重力や,不随意運動が日常生活で邪魔となる脳性麻痺のような運動障害を有する人たちに,空間での身体操作の体験を繰り返し提供してもそのような運動障害を有しない人たちの体験の数には,とても追いつけないことはわかっている.しかしながら,現状では,運動障害を有する子どもたちへの発達援助は,健常な子どもたちの発達の姿を参考に,身体操作の概念を一般化していく援助しか,今のところ思い当たらない.
ここでは,随意的に空間を操作できる能力の発達上でのたいせつさと,その能力の基盤となる感覚・知覚運動技能の初期発達について述べ,運動障害を有する子どもたちへの援助について考えていきたい.
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