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Ⅰ.初めに
今世紀に入ってからの科学技術の進歩は,人々の生活ばかりでなく価値観をも変えてしまうほどの大きな力と影響を我々に与えた.
保健医療の分野もまた,医療技術の進歩により高度化,複雑化し,今や医師と看護婦(士)だけではそのすべてに対応できない状況にある.そのため,多くの細分化された専門職が誕生してそれぞれの機能を分担する傾向がみられるようになった.
これら医療に携わる専門職種の人々は患者を中心におのおのの専門性に基づく立場で互いに協力し,その関係を調整しながらケアや方針を決定していくことを要求される.
専門職の多くが,その専門性ゆえに細分化され高度化されたなかにあって,看護は,患者のもっとも身近に位置し,その生活全般にわたって援助する役割をもつため,その人に対して提供されるさまざまな医療サービスや行為を含め,心理的,身体的状態や生活を総合的に把握しやすい立場にある.したがって対象に対しても,より効果的な援助を提供することが可能である.
しかし,看護が有効に発揮されるためにはただ単に,いつも対象の身近にいるというだけでなく,看護婦(士)が人間を理解したり,人間関係を調整したりする知識や指導力に優れ,医療分野の他の職種とも対等に意見交換ができる能力をもたなければなるまい.
我が国において看護の教育が始まってすでに100年が経過した.時代の変化とともに看護に対する国民の期待はいっそう高まり,また看護そのものの考えかたも変わってきているが,はたして時代に則した看護婦(士)を世に送り出しているのだろうか.
本稿では,第二次世界大戦後の我が国の看護教育について,その制度と教育内容を振り返り,いくつかの問題を指摘しながら,これからの看護教育の在りかたを模索してみたい.
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