喫煙の生理・衛生学・14
受動的喫煙の生体影響[1]—主観的急性影響について
浅野 牧茂
1
1国立公衆衛生院生理衛生学部
pp.1053-1056
発行日 1982年9月1日
Published Date 1982/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919662
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- サイト内被引用
受動的喫煙とは何か
この言葉は前回で初めて登場したが,‘passive smoking’の直訳で,普通は非喫煙者が自らの意思に反して,あるいはそれと無関係にたばこ煙に曝露され,吸煙を強いられている状態を意味している.1)
受動的喫煙が,通常の喫煙習慣と関連した健康障害と対置されて生体影響と結びつけられたのは,今から30年近くをさかのぼった1954年にF. Lickintが‘Passiverauchen’という言葉を用い,非喫煙者が受動的喫煙によって肺癌発生の危険を被る恐れのあることを指摘したドイツ語の論文2)であると思われる.この先見は,我が国の平山3)およびギリシアのTrichopoulosら4)が1981年に相次いで発表した論文の中で,非喫煙者である妻が常習喫煙者である夫の喫煙による受動的喫煙の影響を受け,肺癌発生の危険が著しく高められていることを明らかにするに及んで,にわかに現実性を帯びてきている.
Copyright © 1982, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.