特別論稿 〈医と食と農〉連続講演会より
土からの医療—医と食と農の結合を目指して
竹熊 宜孝
1
1菊地養生園
pp.1015-1027
発行日 1982年9月1日
Published Date 1982/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919657
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‘医と食と農’というユニークなテーマの連続講演会が,新潟県・大和医療福祉センター(黒岩卓夫・センター長)で昨年11月から開かれています,これは住民の健康教育活動の一環として企画されたもので,人間のいのちと健康は,医療だけでなく食べ物(食糧)と,その食糧の源である農業に支えられているという理念のもとに,工業化,近代化の波に飲み込まれ,忘れられかけている‘医と食と農’の結合を,人間のいのちという原点にかえって考えようとする試みです.
人が健康であるためには,まず食べ物が安全でなければならない,だからこそ何よりもその源である農業が健全でなければならない……という主張には,百姓の生き方,農業のあるべき姿を問うことを通して,医療のあり方を問い直そうとする地域医療運動の視点がうかがわれますが,それはこれまで,糖尿病や高血圧の食事療法といった病気や症状との関係のなかでしか考えられてこなかった‘医と食のかかわりをもっと広げて,‘農’へと結びつけて考えようという社会的・文化的な視野からの問題提起だろうと思います.
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