余白のつぶやき・20
ももえももえ
べっしょ ちえこ
pp.349
発行日 1981年3月1日
Published Date 1981/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922749
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山口百恵のさいごのリサイタルが迫っていた頃のこと,新宿駅の円柱に貼られていたポスターの文句「百恵も燃え」を見て,あ,やったなと思った。誰がこのコピイを書いたのか知らないけれど,たぶんその人は,言葉の音響性や影像性を重視する現代詩のエコール,とくに那珂太郎あたりをかなり読んでいる人だろう。
那珂太郎には、題名からして彼の詩の方法をずばりとあらわしている,「詩集・音楽」があるが,その中に「繭」と題した言語実験の極点をさし示すような詩がある。ことさらな主題がある詩ではなく,作者自身の解説によると,「繭」という言葉そのものをモチーフとしたものらしい。サナギを包みこんでこもらせる繭の,あたたかい保護感覚や,音感としての「MAYU」などから,それは必然的に女性のイメージに繋がるので、詩人は,ほとんど無心に言葉を行かせながらそのイメージの結像を待っている感じだ。詩中に使われている「も」の字のくりかえしの、おどろくべき効果。
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