看護学雑誌 41巻10号 (1977年10月)

特集 老人の問題行動

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 本誌 老人が日常生活の中で表す言動には,さまざまな感情的な屈折とか,いままでの体験に基づくそれぞれ独特の表現があるように思います.そういう老人の言動を,どのように理解すればよいのか,いくつかの具体例をあげて話し合っていただきたいと思います.

 阿部さんは,老人たちを,特養ホームで生活を共にしながら看護されてきて,一昨年,その体験を“華胥の夢”(栄光出版社)という本にまとめられたのですが,最近,印象深かった事例はございませんか?

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はじめに

 まず老人の問題行動あるいは問題老人とは,いったいどういう意味かを考えてみる必要がある.似た言葉で‘問題児’という用語がある.この2つとも精神医学あるいは心理学の用語ではなく,むしろ一般慣用語であろう.成長しつつある子供は,不安定でまた反抗的なことがあり,周りに負担をかけるものであり,この意味からして問題を起こさない子供はいないといってよかろう.

 老人の場合でも,若い時に比較して心身ともに衰退し経済的にも社会的にも力を失い,周囲に依存してゆくわけであるから,当然周りの人々との間に問題が起こってくる可能性がある.周りにとって問題であるからといって,直ちに精神医学的にあるいは心理学的な意味で問題があるというのは,あまりに一方的な見方であるといわねばならない.要するに問題老人といわれるケースが生まれる状況では,老人自体に原因がある場合と,老人を取り巻く環境自体に原因がある場合と,2つあることを念頭におく必要があろう.

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はじめに

 医療ソーシヤルワーク(Medical Social Work)の分野でも患者の問題行動を対象とする.その様相は日常経験するように,指示に従わない,攻撃的であるなどと多種多様である.老人患者の場合はさらに,ボケとか失禁など病的か否か識別しがたいことも多い.病的であるか否かは,ソーシャルワークサービスでは,それだけでは重要な差異とはならないが,アプローチの混乱を避けるため,ここでは精神障害などの明らかに病的とされる異常行動については省略する.

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はじめに

 私たちの行動は,それを見る世代によって理解の仕方が違う場合も少なくない.相手の行動が,私たちの経験にない,理解できない行動に見えるとき,その不可解な行動に目を奪われて,相手の人格まで私たちとは異質なものと考えてしまいやすい.

 老人の‘問題行動’は,多くの場合,老人の側からみれば全く当たり前のことでありながら,老人を取り巻く私たちにとっては理解できない異常行動であったり,異常動作にみえる.その程度の差によって痴呆扱いを受けたり,家庭内の厄介者として家族から見放されたり,入院治療中でありながらも退院をせまられる場面も出てくる.どうしようもない老人,言っても聞いても話の通じない老人とされ,相互理解のないままに,負担と不満を感じながら過ごしている老人でも,その異常に見える言動の根源を突きとめてみると,思いもよらない誤解が原因だったり,家族や看護者に対する遠慮や不満を十分に表現できないために,本人にも理解できないような異常行動となってしまっている場合も少なくない.

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はじめに

 さまざまな人生を送ってきた老人が入院してくると,看護婦は自分なりに老人だから,痴呆だから何を言ってもしかたがない,とあきらめたり,徘徊や不潔行為があると,問題(異常)老人のレッテルをはって看護をしてしまいがちである.

 病棟では,ボケ,老年痴呆の老人は多い.問題だといわれる老人に対して,その人の行動がどんな状況で現れたのか,理由は何かなどひとりひとり観察しきれない面が多い.しかし,問題行動があると言われる老人をよく観察し,そのケースに対する看護のアプローチを積み重ねることで,その老人を少しでも理解でき,なんらかの看護のアプローチがあるのではないかと思われる.

入浴を嫌う老人へのケア 大工原 秀子
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‘姉さんに,お風呂をつかってもらうのに,やっとのことで,それも10日目で入ってもらったけれど,家に居るときでもこんなにお風呂に入りたがらないの?’

 埼玉県に住んでいる叔母から,姪のI子さんへ電話がはいった.

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はじめに

 身体障害のある老人への援助が大きな社会問題となっている昨今,当院も老人リハビリテーション病院として十余年経過した.

 特に脳卒中後遺症をもつ老人を対象とした看護を行っているが,慣れと業務の流れの中で,老人の特性を強く示した事例を通して,老齢者をどう理解しながら援助し,リハビリテーションプログラムにのせ,残存機能のよりよい保持増進を図り,社会復帰させることができるかをあらためて考えさせられたので,ここに紹介する.

マイ・オピニオン

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 私どもは過去数年間にわたって,離島における住民の生活実態を調査する機会を得て,社会教育,経済,衣食,健康生活などの各分野から実態を把握し,総合的な評価を試みた.

 離島の住民みんなが熱望しているように,医療基盤の整備の必要はいうまでもないが,それとともに,住民1人1人が生活を健康志向型に改善するように指導し,実践の支援をすることは更に重要だといえる.‘仕事ができる間は病気と考えない.体に違和を感じても,できるだけ我慢して過ごしてしまう’というような生活態度のなかでは,健康の保持・増進ということは,とかく二義的になりやすい.

死への看護・10

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はじめに

 これまではずっと大人の死を取り上げてきましたが,今回は子供の死について考えてみたいと思います.子供が年齢的に大きい場合は,子供が自分自身の死をどのようにとらえるかという問題と,親が子の死をどのようにとらえるかの2つの問題があり,事情がより複雑になるのですが,今回取り上げるのは生後間もない乳児なので,前者の問題は考慮しなくていいわけです.しかし,この事例では,子の死に加えて,奇形という問題がありましたので両親の担う荷は重かったといえます.

 チームでの検討を通して,奇形の存在や予後について両親にどのように伝えるか,両親の希望を治療にどのように反映させるか,奇形児を持つ親の気持ち,奇形児に対する親の反応,などについて述べてみたいと思います.

車椅子訪問記・6

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 リハビリテーション施設の訪問を終え,帰途につこうとしたが,地理的に近いのでいま1か所別の施設へ寄ろうと朝,出がけにA氏は計画してくれている.猛烈な長距離運転でくたびれ果てた感じの彼だったが,行きますか,の問いに,気の毒ではあるがもう2度と私のやっかいな体でこの種の訪問の機会はないかとも思うし,相当に辛い厚顔さだったが,行くことを頼む.

 またまた大変な道のりを,うねりながら山を降り,平地をこれも気の遠くなるように感じる程走る.疲れからか彼は不機嫌丸出しの面,自分は意識していないだろうが,一触即発の感じで,いたわりの言葉をかけようにも私も疲れている.一言しくじったら大変なことになりそうで,ウィットも浮かばない.

ユニホーム

駿河台日本大学病院 星澤 政枝
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ベルトとポケットをアクセントに

 体にフィットするようにうしろのベルトにボタンをつけ調節するようにしました.ポケットはアウトポケットでサイドをわきにぬい込んであるため たくさんの看護用具を入れてもポケットがダレません.また角型で少し大きめにしてあるためいろいろな物が入れられます.

 えりは大きくなく 小さくなくと心がけました.

アイディア

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 PMD(進行性筋ジストロフィー症)の重症児は,肉体的苦痛等により,夜間の体位変換が頻回に行われるため睡眠が妨げられる.

 最近,外国製のウオーターベッドを使用する機会を得た.その結果,体位変換も減少し,肉体的圧迫の苦痛も緩和された.しかし使用したベッドは,一般家庭用ベッドのため病院用ベッドとして使用する場合,大きすぎ,作業がしにくく,移動ができない等,種々の問題点があり,これらの問題点を考慮し,病院用に小型化したウオーターベッドを改良作成した.

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 日本看護協会(大森文子会長)の昭和52年度通常総会は,7月20-22日の3日間,東京・杉並の普門館など3会場で会員延べ5000人が参加して開かれた.

 総会に先立ち,同協会の創立30周年記念式典が開かれ,功労者の表彰が行われた.記念式であいさつに立った大森会長は,昭和21年の協会設立以来,17万余人にのぼる会員を擁し,ICN大会を開催するまでに成長してきた協会の歴史を振り返り,その発展に貢献した関係者と関連団体への感謝と今後への決意を述べた.

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 第23回医学書院看護学セミナーが,7月21日,東京・中野の中野公会堂で,約1000名の看護婦・学生を集めて開かれた.

 同セミナーは,例年日看協総会に際して開かれ好評を博しているが,今回は臨床の実際に役立つ具体的なテーマとして,‘ICUにおける患者ケア’(尾本良三・三井記念病院外科・手術救急部長)の溝演と,映画‘ICU’‘第16回ICN東京大会記録’の上映が行われた.

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 看護婦の質を向上させるには 養成所教員の充実強化が不可欠であるとの主旨のもとに設立された厚生省の看護研修研究センター(所長 吉田時子)がこの7月活動を開始した.

 同センターの研修は幹部教員養成課程(50人)と教員養成課程(50人)のそれぞれ1年間のコースがあるが現在は幹部教員コースの研修生11名が受講している.このコースでは研修生自らが研究テーマを選び 論理学・教育心理学などに加えて研究方法なども学びながら論文を完成し 課程を終了することになっており 卒業生が卒後に それぞれの地域での主導的な立場に立って活動することを目的としている.

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 鳥取大学助教授の職を投げ打って,ネパールの結核撲滅等のために働いている岩村昇夫妻の活躍はよく知られているが,同じキリスト教海外医療協力会(JOCS)の会員として,岩村氏とともに,8年間ネパールで助産婦,看護教師として働き,ICN東京大会を機に一時帰国.

 ──ネパールへ行かれた動機と現地での仕事はJOCSから派遣されて行きました.ネパールで助産婦を求めていましたし,自分の信仰上の動機から行きましたが,キリスト教宣教は禁止されていますから,医療活動を通しての無言の伝道ということに期待しています.私どもが属しているのは‘ネパール合同ミッション’といって,12か国30団体のプロテスタント諸教派で構成されている宣教団体です.

ホームヘルパー跳びある記・10

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 山に向かうひっそりした山陰の小径は,小さな谷の流れに突き当たり,径は右手にカーブする.その左手に,草に覆われたあるかなしかの径を少し登ってゆくと,杉木立の下にひっそりとした小さな墓地がある.だれの目にもそれと分かる新しい奥津城(おくつき).色とりどりの花が飾られ,供え物の果実や団子,土の上に椀盛りの飯粒が昨夜の雨にぬれてふやけ,白くこぼれている.私はその前にうずくまって合掌した.

 ‘Kさん……’心の中で呼びかけると,昨年の11月と今年3月の2回,老人クラブの旅行で房総半島をめぐった時,終始楽しそうにほほ笑んでいたKさん(男性 74歳)の顔が浮かびあがってくる.旅を楽しむ村の老人たち一行80余名は,道中のバスの中ではしゃぎ,マイクを回しては自慢の歌をうたい合い,笑い転げた.

内視鏡検査と介助の実際・10

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はじめに

 我が国において内視鏡検査時に問題となる主な伝染病には,結核,梅毒そしてB型肝炎があげられる.内視鏡検査はファイバースコープや生検鉗子などを生体内に挿入して行うため,患者から次の患者,患者から内視鏡職員,そしてその逆の経路の病原体の伝染が考えられる.特に粘膜を損傷する生検時に問題が考えられる.

 したがって,これらの内視鏡器械は,検査の度ごとに十分な消毒をしなければならない.一方,内視鏡器械はファイバー,被覆ビニールやその他の精密機械,光学部品および電気部品などから構成されているため,一般の金属やガラス器具のように高熱滅菌や強力な消毒薬剤による消毒は不可能である.

ICU看護の実際—北里大学病院の場合・10

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I.患者の入室まで

 初めに,患者の入室までの一般的な業務について述べておく.

 病棟の受け持ち医より,患者の病名,病歴,手術予定日などを記した連絡表(図)がICUへ提出される.それをもとに,クラークは入室予定表に組み込み,掲示する.

救急医療と看護・7

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 バイタルサイン(生活徴候)は一般に血圧,脈拍,呼吸を指す.しかしその名の示すとおり,生命に直結したサインはすべてバイタルサインであるから,意識,体温,尿量,瞳孔なども含まれる.バイタルサインは,単にその数だけでなく時間的推移をみていくことが大切で,頻回の測定が必要となる.

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ヒトの直立姿勢について

 ヒトは哺乳(ほにゅう)動物のなかでも,後ろ足で直立姿勢ができるようになり,本来の機能である‘たくましく’‘うまく’‘創造行為’ができることによって,行動的に2足歩行が可能となった.図1は類人猿に似た祖先の時代からホモ・サピエンスに至るまでの,ヒトの立位姿勢の進化過程を示したものである。ヒトは生後10-13か月で立位が可能となる。

 今回は本症のstageⅠ-Ⅲの立ち上がり動作と介助について述べるが,理解を容易にするために健常者の動作について少しく触れておく.

切り取りカード 看護ミニ事典

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 重症脳損傷を受けた患者は,昏睡状態をある期間経過すると開眼するようになるが,命令に対しては反応を示さないという状態かあることは以前から注目されていて,akinetic mutism(無言性無動症),apallische syndrome(失外套症候群),coma vigil(覚醒性昏睡),遷延性昏睡などと命名されていた.

 1972年JenettとPlumはこのような症状を示すものを総称してpersistent vegetative state(持続性植物状態)と命名した.日本でも‘植物人間’という言葉はかなり以前から用いられていたが,正式の医学用語ではなかった.

切り取りカード 新しい薬の知識

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〔商品名〕アルフォナード Arfonad(ロッシュ)

〔剤型〕注射剤

基本情報

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看護学雑誌
41巻10号 (1977年10月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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