特集 老人の問題行動
老人の問題行動と心理的背景
長谷川 和夫
1
1聖マリアンナ医科大学神経精神科
pp.1001-1007
発行日 1977年10月1日
Published Date 1977/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918234
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はじめに
まず老人の問題行動あるいは問題老人とは,いったいどういう意味かを考えてみる必要がある.似た言葉で‘問題児’という用語がある.この2つとも精神医学あるいは心理学の用語ではなく,むしろ一般慣用語であろう.成長しつつある子供は,不安定でまた反抗的なことがあり,周りに負担をかけるものであり,この意味からして問題を起こさない子供はいないといってよかろう.
老人の場合でも,若い時に比較して心身ともに衰退し経済的にも社会的にも力を失い,周囲に依存してゆくわけであるから,当然周りの人々との間に問題が起こってくる可能性がある.周りにとって問題であるからといって,直ちに精神医学的にあるいは心理学的な意味で問題があるというのは,あまりに一方的な見方であるといわねばならない.要するに問題老人といわれるケースが生まれる状況では,老人自体に原因がある場合と,老人を取り巻く環境自体に原因がある場合と,2つあることを念頭におく必要があろう.
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