看護学雑誌 38巻12号 (1974年12月)

特集 保安処分—反医療の思想と構造

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 今まで,精神病院内でなにが行われてきたか?—患者処遇の恐るべき実態と,すでに進行しつつある保安処分の反医療性を明らかにし,患者・市民の立場から,自らの労働の質を問い直す.

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はじめに

 病人に対する社会の動きは,排除—隔離・抹殺と愛護・治療の2つの極の間を動揺しつつも,有効な,とりわけ社会経済的に安価な治療法が開発され,やがて病人自身が存在しなくなるまでは隔離・収容が優位を占め続けて来ました.結核患者,ハンセン病者,身体障害者等の歴史を考えてみれば明らかになると思います.さらに水俣病・イタイイタイ病・森永ヒ素ミルク中毒患者をめぐる近年の動向をみても,苦しい長い闘争の末に,ある程度の療養・治療の保障は整いましたが,激しい社会変動の予想される将来のどこかで,隔離・抹殺の思想が優位を占める時がないとは考えられず,絶えざる権利主張が必要でありましょう.

 ひるがえって,精神医療の歴史をみますと,19世紀に西欧的近代国家が成立して以来,法律においても,社会・家庭においても絶えず迫害が強まってきたことがわかります.もっともそれ以前に精神病者が幸せだったのではありませんが,近代国家はその成立以来国家制度そのものをもって組織的・包括的に精神病者を迫害し続けたのです.日本は明治以来この歩みを追ってきました.昭和40年代には追いついたとみてよいでしょう.

地域精神衛生活動と保安処分 冨川 孝子
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Ⅰ.保安処分体制と地域精神衛生活動

 刑法‘改正’にともない,刑法の中に新設されようとしている保安処分は,精神医療のもつ治安性を国家的規模で利用し合法化する点で,現状の精神医療と同じレベルで考えることはできないが,実態としての保安処分は,措置入院制度を中心とする現状の精神医療が既に果たしているといえる.

 そこで,昭和40年の精神衛生法‘改正’により,地域の第一線機関となった保健所の精神衛生活動を中心に,現状の精神医療を担っている地域精神衛生活動とは何かについて考えてみたい.

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 ──精神医療については,朝日新聞に連載された大熊一夫さんの“ルポ・精神病棟”や,小林美代子さんの“髪の花”を読んで,そのすさまじい実態におどろいたけれども,それでは,私たちがいる病院の実態はどうなのか,という問い直しがなかなか出てこないのですね.‘保安処分’をどう考えるかという問題にしても,精神神経学会での医師の反対声明や,患者さんの告発の声はかなり聞かれるけれども,精神医療を最前線で,しかも患者の生活をその全ての面にわたって担っている看護者,数から言っても圧倒的に多い看護者からの声がほとんど聞かれない現状です.

 やはり,問題をできるだけ現実の看護場面にまで引き寄せて,私たち看護者が毎日病院内で行っている看護とは何か,を再検討して果たして患者の人権は守られているのかを,自分自身に問い直していくことから始めなければ……と思います.

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第16章保安処分

第101条(保安処分の種類・言渡) ①保安処分は,次の2種とし,裁判所がその言渡をする.

 1 治療処分

 2 禁絶処分

マイ・オピニオン

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 看護婦になって5年が過ぎました.毎日業務に追われ,もう少し時間があったら,人手があったら,と不満が先に来て惰性に流されてしまう毎日です.

 現在,総合看護とか患者中心の看護とかが叫ばれており,看護婦は専門職業人を目指しています.それゆえでしょうか,診療の補助ばかりに追われていることを嘆き,もっと看護がしたいという色々な人の意見を聞きます.私自身も手術室勤務をしていた時,夜間緊急手術の時に1人で準備をし,走り回っていたわけですが,そこへ医師が入って来て自分だけさっと手洗いをし‘器械ぐらい並べておけ!’と言われた経験があります.常に上下関係にならざるを得ない現実に遭遇すると,こんな嘆きに賛成してしまいます.

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Ⅰ.はじめに

 乳癌患者の不安には,①乳房という女性性および母性性を象徴する臓器を喪失することによって引き起こされる不安と,②‘癌’がもつ死のイメージによって引き起こされる不安とがある1)

 RennekerとCutlerは乳癌患者の不安について考える場合,アメリカ文化においては,癌が致命的疾患であるというイメージによって引き起こされる不安よりも,乳房の喪失にかかわって引き起こされる不安を,まず第1に考慮にいれるべきであると述べている1)

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 肺結核に罹患し,再度の成形手術の甲斐もなく,12年におよぶ療養生活の間に抗結核剤はほとんど耐性ができ,いわゆる難治結核となり,性格的にもゆがめられ,非行患者として転院を繰り返していた患者がようやく治癒するに至ったが,帰る家庭もなく,退院を拒否している患者の看護について報告します.

 結核は治ったが難聴が残り日常生活に支障をきたすとか,健康に対する自信を喪失して患者が社会復帰を拒むようでは,本当に病気を治したとはいえない.ホスピタル(病院)の語義は‘他人や客を厚くもてなす場所’という意味であり,医療において看護が占める重要性がうかがわれる.またシュバイツァーは‘投薬’という言葉の意味について‘ランバレネでは今も薬を土人の口の中に入れている.手に渡しただけでは飲まないからだ.医者は2日分とか1週間分とか処方する.しかし,看護婦は1包ずつ口に入れる.その方が重要である’と述べ,看護とは実践(nursing is doing)であり,臨床こそ看護の中核であることを強調している.

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 私達は,日ごろベッドサイドナーシングを唱えながらも,現実には人手不足と処置に追われ,家族が付き添っている患者には,身のまわりの世話や,その他の雑務をほとんど任せきりなのが現状といわねばならない.

 しかし,その家族が何かの事情で,患者に付き添えなくなった時に,はじめてその患者があまりにも多くの問題を抱えていることに気付くのである.ここにあげる事例は,右半身麻痺を残し,失語症のある脳内出血患者の看護の1例である.

カンファレンス 福島県立医科大学付属病院神経精神科看護室

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 私たちはチームナーシングの一方式として,カーデックスによる看護を行っています.カーデックスとカンファレンスは不可分のものであり,深夜から日勤への引き継ぎ後モーニングカンファレンスとして約10分間と,毎週火曜日の午後1時30分-2時まで,カンファレンス(カーデックス検討)を行っています.その中で問題の多い患者を重点的に取り上げて各チームごとに検討しています.

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 術前患者の状態についての適切な情報は,患者の術後の看護計画に有益である.

 病院が大きくなり,新しい技術が発展し,専門化された患者のユニットが増加してくると,明確なコミュニケーションを得ることが,大変困難になってくる.このような多種のユニットに勤務する看護スタッフは,外科病棟に入院が必要と思われる患者,手術室に運ばれる予定の患者,回復室に移されるかも知れない患者,あるいは外科のICUに移す必要を感じる患者などに対して,良い看護がなされるためには,お互いが効果的なコミュニケーションを持続させなければならない.

カラーグラフ 職場のユニホーム

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 ユニークで 年齢層に適した 活動的なユニホームを望む声があり職場の意見を検討した 結果4年前から採用されています.布地はプリントで ソフトな膚ざわりです.デザインは開衿ウエストは体型に合わせた貼用のベルト 胸からスカートにそってダーツとラインを入れ 全体を軽快に引締めています.後は ヨークでタックをとり 屈曲が容易で 活動的です.長袖で 袖口はカフスボタンで アクセントをつけてみました.白衣で清潔感を主眼としています.

カラーグラフ アイディア

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 乳房の冷罨法には昔から氷嚢が用いられていますが 氷嚢は安定感が悪く 水漏れなどの心配もあり最近ではアイスノンの使用も増えてきました.ドーナツ型アイスノンは安定性や乳房全体を冷やす上で効果的です.

 しかし現在のアイスノンのカバーは 使用しているうちに縫い目から内容が流出したり 耐久力に乏しいこともあるので そのような廃品を利用して氷嚢の中にアイスノンを入れ 乳房の型に整えて冷凍しておき必要に応じて使っています.

グラフ 看護界ニュース

日本公衆衛生学会総会(第33回),他
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 第33回日本公衆衛生学会総会(会長 辻義人・福島県立医科大学教授)は 3日間の日程で16日9時半より福島の県文化センター 市民福祉会館に全国から約2300人が参加して開かれた.同学会は6つの会場に分かれ 特別講演 シンポジウム 一般講演が行われたが 衛生行政の問題をはじめとして熱のこもった討議が繰り広げられた.

 初日の第6会場で行われた公衆衛生看護に関する発表では ねたきり老人を中心とした在宅患者への訪問看護の事例が紹介された.東京白十字病院の報告では 訪問看護の中でねたきり老人の‘死’を体験してみて 老人ホーム 専門病院などの施設に入れることは最良策とはいえず施設の増設と合せて 訪問看護制度を定着させる必要のあることが述べられた.大阪の同和地区における保健所活動の発表でも 医療と福祉の谷間にあるねたきり老人のケアについて 同じ看護職である保健婦と病院の看護婦とが相互の立場から 一貫した継続看護を実現できるよう努力することが‘地域総合看護’の今後の大きな課題であるとの指摘があった.さらにねたきり老人のリハビリテーション効果についての発表では 老人の社会復帰が本当に可能かそしてそれは具体的に何を指すのかまた実際に何割が復帰したのかという鋭い質問が出された.

助力論—現代カウンセリングから学ぶ・11

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‘援助的関係’についての確信

 かくて,私が‘援助的(helpful)だ’と確かめた人間関係は,援助者の側において,一種の‘透明性(transparency)’つまりそこにおける私自身の心の動きがハッキリしている,といったような特色をもっている.それから,相手の人を,その人自身の権利において価値をもった独立自存の人格として‘受容する’といった特色もある.さらに,援助者のほうが,相手の人の私的な世界を,その人の眼を通して眺めることができるといった,ある深い‘感情移入的理解(a deep empathic understanding)’といった特色も存在する.

 こうした条件がつくりだされたとき,私は援助者としてわがクライエントの友となり,クライエントの自己探究のたいへんな企てに,同行の伴侶となりうるのである.

CCU看護の実際—どう判断しどう行動するか・5

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症例

 入院時の状況 72歳の糖尿病をもっている患者が,入院の2時間前から激しい胸痛に襲われ,救急入院して来た.入院時の心電図から第Ⅰ度房室ブロックを伴った急性下壁心筋硬塞である事が分かったが,入院の2時間後に第Ⅱ度房室ブロックが現れてきた.

 そこで,深夜ではあったけれども,緊急に右大伏在静脈からカテーテル電極が右心室に挿入され,ペースメーカーにつながれた.このカテーテル電極を心臓に挿入している最中に,心室細動発作が5回ほどあったが,いずれも直流除細動で洞調律に復している,房室ブロックは第Ⅱ度まで進行したけれど,翌朝までに第I度房室ブロックまでに改善しており,結果からみると,人工ペースイングの必要がなかったケースではあるが,そのまま用心のため,カテーテルは右心室内に入れられていた.

2色ページ 統計

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 昭和48年の概数によって,その10大死因について,人口10万対の死亡率を,昭和10年および30年と比較したのが下の図である.

 昭和10年当時の死因順位は,結核,肺炎・気管支炎,胃腸炎の順であり,細菌感染による死因が上位を占めていた.

2色ページ 人類遺伝学へのさそい・11

薬の効き方の遺伝 中島 煕
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はじめに

 原始時代の人々が,自然の中で暮らしていたころには,野山の果実や魚や動物の肉が有毒であるかどうかを経験的に語り伝え,毒草や毒キノコなどから身を守る術を覚えたに違いない.自然界の毒物も化学物質つまり薬の一種と考えられるが,このような我々にとって致死的な効果をもたらす薬に対しては,老若男女を問わずその効き方の個人差など問題にもならなかった.

 色盲という遺伝病患者が文明国に多いことが知られている.エスキモーや東南アジア諸島民などのように,つい最近まで自然の中で生活していた人々には色盲が非常に少なくて,男性の2%以下である.これに反して,早くから農耕を始めた,文化の古い民族では一般に色盲が多い.例えばヨーロッパの国々では男性の8%が色盲である.また同じ国のうちでも,早く開けた地方ほど色盲が多くなっている.

2色ページ 環境とからだ・8

環境汚染とその対策(2) 長谷川 敬彦
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環境汚染と生体への影響

 現在の環境汚染の総体が,生体に対して長い時間軸を考慮した場合も含めて,どのような影響を与え,また与えつつあるかということについては,未知の部分が多い.

 構造的にいつも,人々が木をけづり,石をくだき,鉄を鋳ていたころのように,原料が天然のものであったころとは異なって,特に石油化学の発展に代表されるような工業化学の発達は,原料そのものを合成し,それを素材に様々な製品や,製品に至るまでの中間産物や工程に使用される触媒などが環境中に放出されてきたわけである.

2色ページ ホメオステーシス入門・11

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 生きんがためには行動する.例えば手足を動かす.しかしその運動は全く自由とはいえない.例えば部屋の中では壁とか家具とかを避けねばならない.うっかりして足元の障害物に気付かず,つまずいて転倒するかも知れない.その結果,皮膚の一部が傷つくかも知れない.しかし,少しぐらいのけがであわてる人はいないであろう.傷口を消毒し,何かで保護しておけば‘自然に癒る’と思うであろう.

 ‘自然に癒る’という言葉の内容を考えてみよう.まず傷口がふさがるという現象がある.縫合などの外科的処置が行われていようといまいと,生体の創傷治癒力なくしては傷口が完全にはふさがらない.どうして傷つけられた組織が再生し,つながってしまうとそれ以上の細胞増殖がなく平衡状態となるのか.この平凡な疑問に対してもまだ決定的な解答を与えることはできない.漠然と組織のホメオステーシスであるという.そして一種の負フィードバック機構を考えたりする.例えばBulloughらは組織中にチャロン(chalone)なる特殊化学物質を仮定し,これとアドレナリンおよび副腎皮質ホルモン(糖質コーチコイド)との結合物質(複合体)が一定濃度以上になると組織細胞の増殖が抑制されるとする.組織が傷つくとチャロンが流出し,その結果,この複合体が減少してその抑制作用が低下し細胞増殖を引き起こす.傷口がふさがるとチャロンの流出がなくなり,複合体の濃度が増し細胞増殖が押えられ正常平衡状態になるという.

2色ページ 性格の異常・8

‘異常性’のさまざま(3) 浜田 晋
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4.発揚者

 明朗,親切,活動的,積極的,外交的,どんな逆境にもめげず,楽天的,体の調子はいつも上々,疲れを知らず,いつも生命力に満ち満ちて,自信満々,世の中は面白くてたまらず,人生は楽しい人たちである.

 ところが,このような人間は周りの者にとっては必ずしもよい人間ではない.おしゃべりで,うるさく,おせっかいで,軽率で無遠慮だし,駄じゃれが多くて,深みやまじめさがなく,うわすべりで,徹底性に欠け,すべてをうのみにして無批判,おっちょこちょい,無分別,他人の言うことを聞かず,過信家で,頼りにならない.人生の本当の意味など考えてみたことがない.そんな話をしようものなら‘そんな不景気なことを考えず一杯やれ’などとどなる.酔うとますます声が大きくなって,人の頭をポンポンたたいたりする.

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基本情報

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看護学雑誌
38巻12号 (1974年12月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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