2色ページ ホメオステーシス入門・11
免疫におけるホメオステーシス
畠山 一平
1
1北里大学医学部生物物理学
pp.1210-1213
発行日 1974年12月1日
Published Date 1974/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917144
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生きんがためには行動する.例えば手足を動かす.しかしその運動は全く自由とはいえない.例えば部屋の中では壁とか家具とかを避けねばならない.うっかりして足元の障害物に気付かず,つまずいて転倒するかも知れない.その結果,皮膚の一部が傷つくかも知れない.しかし,少しぐらいのけがであわてる人はいないであろう.傷口を消毒し,何かで保護しておけば‘自然に癒る’と思うであろう.
‘自然に癒る’という言葉の内容を考えてみよう.まず傷口がふさがるという現象がある.縫合などの外科的処置が行われていようといまいと,生体の創傷治癒力なくしては傷口が完全にはふさがらない.どうして傷つけられた組織が再生し,つながってしまうとそれ以上の細胞増殖がなく平衡状態となるのか.この平凡な疑問に対してもまだ決定的な解答を与えることはできない.漠然と組織のホメオステーシスであるという.そして一種の負フィードバック機構を考えたりする.例えばBulloughらは組織中にチャロン(chalone)なる特殊化学物質を仮定し,これとアドレナリンおよび副腎皮質ホルモン(糖質コーチコイド)との結合物質(複合体)が一定濃度以上になると組織細胞の増殖が抑制されるとする.組織が傷つくとチャロンが流出し,その結果,この複合体が減少してその抑制作用が低下し細胞増殖を引き起こす.傷口がふさがるとチャロンの流出がなくなり,複合体の濃度が増し細胞増殖が押えられ正常平衡状態になるという.
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