2色ページ 人類遺伝学へのさそい・11
薬の効き方の遺伝
中島 煕
1
1東京医科歯科大学難治疾患研究所遺伝生化学研究部
pp.1202-1205
発行日 1974年12月1日
Published Date 1974/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917142
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はじめに
原始時代の人々が,自然の中で暮らしていたころには,野山の果実や魚や動物の肉が有毒であるかどうかを経験的に語り伝え,毒草や毒キノコなどから身を守る術を覚えたに違いない.自然界の毒物も化学物質つまり薬の一種と考えられるが,このような我々にとって致死的な効果をもたらす薬に対しては,老若男女を問わずその効き方の個人差など問題にもならなかった.
色盲という遺伝病患者が文明国に多いことが知られている.エスキモーや東南アジア諸島民などのように,つい最近まで自然の中で生活していた人々には色盲が非常に少なくて,男性の2%以下である.これに反して,早くから農耕を始めた,文化の古い民族では一般に色盲が多い.例えばヨーロッパの国々では男性の8%が色盲である.また同じ国のうちでも,早く開けた地方ほど色盲が多くなっている.
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