臨床眼科 73巻6号 (2019年6月)

特集 第72回日本臨床眼科学会講演集[4]

特別講演

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 網膜硝子体手術の進歩に伴い,裂孔原性網膜剝離の手術方法や成績も向上した。さらに,眼底の生体イメージングの進歩により,網膜剝離を併発するような網膜分離の診断方法も改善し,治療法が確立していない病態の解明も進んできた。本稿では,30年以上にわたって硝子体手術の変化に携わってきた術者として,硝子体手術の対象疾患の代表である網膜剝離手術の変遷を振り返り,さらに網膜剝離を続発する網膜分離を呈する疾患の治療法の現状と課題を提示する。

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要約 目的:ラタノプロスト点眼薬からラタノプロスト/カルテオロール塩酸塩配合点眼薬への変更による短期的な眼圧下降効果と安全性を前向きに検討する。

対象と方法:ラタノプロスト点眼薬を単剤使用し,眼圧下降が不十分な原発開放隅角緑内障,続発緑内障26例26眼を対象とした。ラタノプロスト点眼薬を中止し,wash-out期間なしでラタノプロスト/カルテオロール塩酸塩配合点眼薬に変更した。変更前と変更1,3か月後の眼圧,結膜充血,角膜上皮障害,涙液層破壊時間(BUT),血圧,脈拍数を比較した。変更1か月後に使用感に関するアンケートを実施した。副作用と中止例を来院時ごとに調査した。

結果:眼圧は変更前16.0±2.8mmHg,変更1か月後13.6±2.3mmHg,3か月後13.8±1.9mmHgで,変更後に有意に下降した。変更前の結膜充血は軽度が2例で,うち1例は変更後も継続した。角膜上皮障害と脈拍数は変更前後で同等だった。BUTは変更後に有意に延長した。収縮期および拡張期血圧は変更後に有意に下降した。副作用が変更1か月後に2例(7.7%)(圧迫感,霧視・流涙)で出現し,点眼中止となった。

結論:ラタノプロスト点眼薬からラタノプロスト/カルテオロール塩酸塩配合点眼薬への変更は,1ボトル1回点眼のままでアドヒアランスを維持でき,短期的には眼圧が有意に下降し,安全性も良好であった。

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要約 目的:九州大学病院における過去10年間の強膜内陥術の成績,および網膜非復位に関する危険因子について検討する。

対象と方法:2008年4月〜2018年3月に,裂孔原性網膜剝離に対して初回手術として強膜内陥術を九州大学病院眼科(当科)で施行された264例288眼を対象とし,初回復位率,最終復位率,視力予後,術後合併症について調査した。また,非復位の危険因子についてロジスティック回帰分析を用い,裂孔位置や形態,網膜剝離範囲を含む17項目で検討した。

結果:初回手術で復位が得られたものは265眼,初回復位率は92%であり,最終復位率は98%であった。裂孔位置の上下で復位率に差があったが,有意な危険因子ではなかった。

結論:当科における強膜内陥術の初回復位率は92%と既報と同様であり,裂孔位置や形態などは非復位の危険因子ではなかった。

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要約 目的:前眼部光干渉断層計(OCT)CASIA2による白内障術前後の水晶体および眼内レンズ(IOL)の傾斜と偏心について後ろ向きに検討した。

対象と方法:水晶体再建術に使用したIOLを以下4群に分けた。A群(3焦点),B群(多焦点),C群(シングルピース単焦点)およびD群(スリーピース単焦点)のそれぞれ20例40眼を検討した。眼軸長は光学式眼軸長測定装置OA-2000で計測し,術前および術後1か月の屈折値,視力,眼圧を検査した。CASIA2による前眼部の撮影を行い,水晶体およびIOLの傾斜と偏心,また,それぞれの方位角を計測した。術前および術後において4群間を比較検討した。

結果:年齢,性別について4群間に有意差はなかった(ANOVA p=0.217;p=0.547,フィッシャーの正確確率検定)。術前各群間の水晶体傾斜および偏心についても有意差はなかった(ANOVA p=0.209,p=0.175)。術後,IOLの傾斜と偏心は,術前の水晶体のそれぞれと有意に正の相関を示した(p=0.006,p=0.001)。IOLの傾斜は各群間に有意差はなかったが(ANOVA p=0.406),IOLの偏心は,A群=0.12±0.02mmで,B群とD群より有意に少なかった(p=0.009,0.001,スチューデントのt検定)。術前後各群間において視力の有意差はなかった(ANOVA p=0.562)。

結論:IOLの傾斜と偏心は,レンズの形状と材質に影響される可能性が示された。

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要約 目的:中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)との鑑別を要した,梅毒性ぶどう膜炎の1例を報告する。

症例:患者は56歳,男性。左眼のCSCに対して光凝固術の既往がある。2年後に右眼に中心暗点を自覚し来院した。右眼黄斑部に黄白色病変とOCTでその部位に一致した滲出性網膜剝離(ERD)を認め,CSCが疑われた。2週間後には黄斑部のERDは消失したが,矯正視力が0.2から0.15と低下していた。右眼硝子体セル1+,右優位の視神経乳頭発赤がみられ,蛍光眼底造影検査で両眼視神経乳頭過蛍光と網膜血管炎を認めた。血液検査で梅毒血清反応(RPR)は32倍,トレポネーマ抗体は陽性が判明し,梅毒性ぶどう膜炎と診断した。髄液細胞数の増加もあり,神経梅毒の合併が考えられた。左眼にも黄斑部に黄白色病変が出現し,急性梅毒性後部脈絡網膜炎(ASPPC)と診断した。駆梅療法としてベンジルペニシリン2,400万単位/日を2週間持続点滴の後,アモキシシリン750mg/日を2週間内服した。視神経乳頭発赤は軽快し,左眼のASPPCも消失した。治療開始6か月後にはRPRは2倍まで低下した。

結論:梅毒性ぶどう膜炎の初期では前房内炎症を認めないこともあり,CSCとの鑑別が困難なことがある。視神経乳頭発赤やOCTでの網膜外層の異常,および蛍光眼底造影での網膜血管炎所見は梅毒性ぶどう膜炎を疑う所見であると考えられた。

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要約 目的:スタージ・ウェーバー症候群に合併したびまん性脈絡膜血管腫に対して放射線治療が効果的であった2症例の報告。

症例:症例1は12歳,女児。症例2は32歳,男性。いずれも顔面に血管腫を認め,スタージ・ウェーバー症候群と診断されている。症例1は左眼のびまん性脈絡膜血管腫による滲出性網膜剝離を認め,光線力学療法を2度施行されるも改善しなかった。総線量20Gyの放射線治療を行い,3か月で網膜下液は完全に消失し,治療後6年間で再発しなかったが,網膜動脈の白線化と後囊下白内障を認めた。症例2は15年前に左眼のびまん性脈絡膜血管腫に対し放射線治療を施行され,滲出性網膜剝離は消失した。網膜剝離の再発を認め,総線量20Gyの放射線再照射を行い,再照射後12か月を経過し網膜剝離の再発や合併症はない。

結論:スタージ・ウェーバー症候群に合併したびまん性脈絡膜血管腫に対する放射線治療は,光線力学療法後の初回例,放射線治療後再発例ともに治療効果が期待できる。

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要約 目的:常染色体劣性のライソゾーム病であるシスチノーシスに伴う角膜混濁において,前眼部光干渉断層計(AS-OCT)が有用であった2症例の報告。

対象と方法:症例1は17歳,男性。12歳でファンコーニ症候群と,角膜混濁から中間型(腎障害が軽症な病型)のシスチノーシスと診断された。症例2は32歳,男性。2歳でファンコーニ症候群と腎不全の精査により,腎障害型(腎障害が重症な病型)シスチノーシスと診断された。2症例に対しAS-OCTを用いて,角膜の輝度反射の分布を角膜中央部から1mm,2mmの4か所で測定した。

結果:2症例ともに細隙灯顕微鏡検査で特徴的な角膜混濁を認めた。AS-OCTでは顆粒状の輝度反射の分布が観察され,症例1では,すべての測定点で角膜深度と輝度反射に負の相関(r=−0.31〜−0.68)があった(p<0.05)。一方,症例2では,内皮側に反射が強い1か所で正の相関(r=0.36,p<0.05)があり,他の測定点では有意な相関はなかった。

結論:シスチノーシスによる角膜混濁がある2症例で,AS-OCTで顆粒状の輝度反射が観察された。これまで定量的な眼科的診断が報告されていない本疾患に対して,前眼部OCTによる評価が有用であることが示された。

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要約 目的:塩化ベンザルコニウム(BAC)は角膜上皮障害を起こすこと,涙液を減少させること,涙液層の不安定化を起こすことが報告されている。したがって,BACを含有するラタノプロスト/チモロールマレイン酸塩配合点眼液(LTFC)からBACを含まないカルテオロール塩酸塩/ラタノプロスト配合点眼液(CLFC)への切替えにより,角膜上皮障害の改善が期待される。そこで,LTFCをCLFCへ切替えた際の,眼圧下降効果と眼表面への影響を検討する。

対象と方法:研究デザインはチャートレビューによる後ろ向き観察研究。聖路加国際病院通院中の原発開放隅角緑内障の患者で,LTFCを3か月以上単剤使用した時点で点状表層角膜症が存在し,かつ涙液層破壊時間(BUT)が10秒以下の患者で,LTFCをCLFCに切替え後6か月以上経過した患者を対象とした。切替え前,切替え1か月後,3か月後,6か月後の眼圧,AD(area-density)スコア,BUTを抽出した。主要評価項目は,切替え6か月後の眼圧値,Aスコア,Dスコア,BUTの変化とした。

結果:対象症例は両眼16例31眼であった。眼圧は切替え1か月後に有意に下降し,切替え6か月後に平均1.6mmHgの有意な眼圧下降を認めた(p<0.001)。AスコアならびにDスコアは切替え1か月後に有意に改善し,切替え6か月後に平均1.4のAスコア,平均1.0のDスコアの有意な改善を認めた(p<0.001)。BUTは切替え1か月後に有意に延長し,切替え6か月後に平均13.7秒の有意な改善を認めた(p<0.001)。

結論:LTFC使用中に角膜上皮障害が出現した際に,CLFCへ切替えることで眼圧下降効果が維持し,眼表面への影響を軽減できることが示された。

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要約 目的:スポットTMビジョンスクリーナー(ウェルチ・アレン)(以下,スポット)を用いた先天鼻涙管閉塞(CNLDO)の屈折スクリーニングについて報告する。

方法:2017年4月〜2018年3月に神奈川県立こども医療センター眼科を初診した涙器疾患の小児138例のうち,片側性CNLDOと臨床診断した生後6〜30か月の94例(男児48例,女児46例,平均月齢13.7±6.2か月)を対象に前向きに研究した。初診時にスポットを可能であれば撮影した。球面,円柱,左右差のいずれかが1.0Dを超えた症例に対し,可能な場合はシクロペントラート塩酸塩点眼液による調節麻痺下に再度撮影を行った。弱視リスクは,米国小児眼科斜視学会による基準(12〜30か月:遠視>4.5D,近視>−3.5D,乱視>2.0D,不同視>2.5D)を用いた。

結果:初診時に63例(67%)が撮影可能であった。未散瞳での平均等価球面値は僚眼+0.09±0.64D,患眼+0.15±0.69Dで統計学上の有意差はなかった。調節麻痺下の再検査は6例(10%)に行い,平均等価球面値は僚眼+2.81±1.05D,患眼+3.85±1.81Dであり,統計学上の有意差があった(p=0.04,対応のあるt検定)。弱視リスク基準に8例(13%)(遠視3例,乱視5例)が該当した。

結論:片側性CNLDOの13%に弱視リスクに該当する屈折異常があった。スポットによるCNLDOの乳幼児に対する屈折スクリーニングは有用と考えられた。

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要約 目的:和歌山県立医科大学における50歳未満の近視性脈絡膜新生血管患者に対する抗血管内皮細胞増殖因子(VEGF)療法の治療成績について検討する。

対象と方法:対象は2012年4月1日〜2018年3月31日に,当院眼科を通院した50歳未満の近視性脈絡膜新生血管(CNV)患者6例6眼である。治療はラニビズマブ硝子体注射(IVR)またはアフリベルセプト硝子体注射(IVA)の必要時導入を行った。治療前後の視力,中心窩網膜厚,抗VEGF薬投与回数を後ろ向きに検討した。

結果:平均年齢は34.5±9.7歳,性別は男性1眼,女性5眼,抗VEGF薬の平均投与回数は2.8±2.8回であった。治療前視力(logMAR)は0.16±0.24,治療後視力は0.03±0.25であった。治療前中心窩網膜厚は309.7±76.9,治療後中心窩網膜厚は246.5±49.8であった。2段階以上の視力改善は3例,悪化1例,不変2例であった。

結論:中心窩下にCNVを発生した1例を除き,50歳未満の近視性CNV患者の視力予後は良好であった。

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要約 目的:脈絡膜骨腫は,脈絡膜に発生する良性腫瘍で,漿液性網膜剝離(SRD)や脈絡膜新生血管(CNV)を生じ,症例によっては視力予後が不良である。脈絡膜骨腫に続発したSRDに対してベバシズマブ硝子体内注射(IVB)と光線力学的療法(PDT)の併用療法が奏効した症例を報告する。

症例:47歳の男性が,右眼の歪視と視力低下を自覚し受診した。

所見:右眼矯正視力は1.0で,黄斑部を含まない右眼視神経乳頭近傍に色素沈着のある黄白色隆起病変を認めた。眼底造影検査でCNVは認められなかった。Bモードエコーで音響陰影を伴う高反射病変を認め,CTで高吸収領域を眼球後壁に認めたため脈絡膜骨腫と診断した。黄斑部にSRDを認めたため,IVBを4回施行し,SRDはわずかに減少した。しかし,腫瘍は拡大傾向を認めたため,ベルテポルフィン(3mg/m2体表面積)投与下でのreduced fluence PDTを施行した。しかしSRDが残存したため,IVBとベルテポルフィン(6mg/m2体表面積)投与下でのstandard PDTの併用療法を施行し,SRDは消失し,視力も改善した。最終治療1年後,視力は安定しSRDの再発はない。

結論:CNVを伴わず,SRDを合併した脈絡膜骨腫において,IVBの効果が認められない場合には,IVBとPDTの併用療法が有効である可能性がある。

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要約 目的:大動脈血管内視鏡検査を施行できた網膜中心動脈閉塞症(CRAO)の1例を経験したので報告する。

症例:患者は76歳,男性。左眼の視力低下を自覚し,翌日近医より当科に紹介された。初診時の左矯正視力0.01で,CRAOを認め,経過観察中に再灌流とともに網膜中心静脈閉塞症が続発した。頸動脈エコー検査で両側に2.5mmのプラークがあった。大動脈血管内視鏡検査で,大動脈弓から下行大動脈にかけて破綻プラークが11か所認められた。

結論:本症の網膜動脈閉塞症の塞栓子の由来に大動脈弓の内壁プラークは関係なかったが,大動脈内視鏡検査で新たな病変が見つかる可能性がある。

連載 症例から学ぶ 白内障手術の実践レクチャー・術中編17

小児白内障 黒坂 大次郎 , 福田 一央
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Q 小児の白内障手術では,前囊切開(continuous curvilinear capsulorhexis:CCC)や後囊切開(posterior CCC:PCCC)(図1)が難しいと聞きました。初めて行うのですが,ポイントは何でしょうか?

連載 眼炎症外来の事件簿・Case10

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患者:75歳,男性

主訴:左眼の視力低下

既往歴:42歳時,眼サルコイドーシスで当院にて加療

現病歴:左眼上方が見えづらいのに気づき,近医眼科を受診した。矯正視力は右1.0,左0.1。左眼ぶどう膜炎の診断で点眼加療を受けた。その後,症状は改善したが精査目的で当科を紹介され受診した。

文庫の窓から

『難経本義』 安部 郁子 , 松岡 尚則
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『素問』『霊枢』の解説書『難経』

 『難経本義』は元代・滑寿が著した『難経』の注釈書である。滑寿,字は伯仁,号は攖寧生(えいねいせい)。許昌の名家の出身。儀真(現在の江蘇省)に住み,また晩年は余姚(現在の浙江省)に過ごした。生没年は不詳。幼いときから儒学を習い,詩文もよくしたが,科挙は受からず,医の道を選んだという。名医王居中が儀真に滞在しているとき,居中に『素問』『難経』を学ぶ。その後,東平の高洞陽に鍼を学び,経脉・経穴を研究した。著書には『難経本義』の他に,中国の鍼灸家に広まり,江戸時代何度も刊行された『十四経発揮』や,脉診に関する内容をもつ『診家枢要』,初学者のために『素問』を12部に分けて解説した『読素問鈔』がある。

:櫻とする書物もみられる)

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要約 目的:Vogt-小柳-原田病(漿液性網膜剝離型・乳頭炎型)に対する治療成績について後ろ向きに検討した。

対象と方法:2013年1月〜2016年8月にVogt-小柳-原田病と診断された全33症例66眼を対象とした。年齢,男女比,初診時視力,発症からステロイドパルス治療開始までの期間,パルス施行回数,網膜下液消退時期,トリアムシノロンアセトニドテノン囊下注射(STTA)・シクロスポリン内服併用の有無について,漿液性網膜剝離型と乳頭炎型で検討した。

結果:平均年齢は46.9±17.1歳,男性11人,女性22人であった。また,漿液性網膜剝離型は49眼,乳頭炎型は17眼であった。乳頭炎型のほうが発症年齢が高齢で初診時視力が良く,発症から治療までの期間が長い傾向にあった。ステロイド点滴・内服療法に反応が不十分な症例にSTTA・シクロスポリン内服を併用し,すべての症例で一時寛解に至ったが,乳頭炎型のほうが再発率が高かった。

結論:ステロイド療法に抵抗する症例に,STTA・シクロスポリン内服の併用が有用と考えられた。しかし乳頭炎型では,漿液性網膜剝離型に比較して再発が多い。

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 患者は69歳,男性。左眼の視力低下を自覚し当院を受診した。左眼視力(0.5),前眼部・中間透光体に異常なく,眼底には1/3乳頭径の黄斑円孔を認め,光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)でStage 4であった。水晶体再建術と25G 3ポート硝子体手術を同時に行った。ブリリアントブルーG染色下で内境界膜(internal limiting membrane:ILM)剝離を行い,液空気置換後にガス置換した。術後経過は良好で,OCTで円孔閉鎖を確認した。

 手術から3年後,傍中心窩毛細血管拡張症の精査目的で造影検査およびOCTを施行したが,その際に左眼の黄斑部下方にロールしたILMを認めた。

海外留学 不安とFUN・第42回

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イギリス留学の不安といえば…

 イギリスに向けて出国する準備も徐々に本格化していた2016年6月,世界を揺るがす事件が起きた。国民投票によってBrexit,欧州連合からのイギリス離脱が事実上決定したのだ。しかし,渦中の国で何が起きるかわからない,という私の不安をよそに,知人たちが見送る際に私にかける言葉は決まって「ご飯美味しくないんでしょ?」だった。

 イギリス人は自国の食文化を自虐も込めて「とにかく食べられる料理」と自負している。私自身,食べることには無頓着だったことから不安はなかったが,心配の種は1歳半の息子にあった。妻は日本人としての繊細な味覚が身に付くよう,日ごろ野菜などからとった出汁を与えるとともに,栄養バランスにも気を配っていた。イギリスの食材で作った料理を果たして口にしてくれるだろうか…。

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 ウィリアム・オスラーは1849年に英国領カナダに生まれ,米国に活躍の舞台を移し,1919年に英国で没した医学界の巨人である。青年時代より病理学,生理学,内科学の分野で活躍し,血小板の機能,マラリアの病型分類,オスラー結節やオスラー病をはじめとする膨大な数の業績を残している。もう一つの彼の偉大な業績は,現代に通じる医学教育の基礎を作ったことである。彼は,講義棟から学生を連れ出し,実臨床の場で「生身の患者」を通じて学生を教え続けた。

 オスラーは研究にひたすら没頭する冷徹な学者ではなく,多くの英雄が持つ徳性を豊かに持っていた。すなわち,快活さ・実行力・ユーモア・リーダーシップ・溢れる愛情といった徳である。当時も,そして現在においてもその人格は多くの人を魅了してやまず,今もって全世界に「オスラリアン」と呼ばれる信奉者を生み出し続けている。

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 美しい。まず心を惹かれるのは,圧倒的な美しさである。もしかしたら,美しすぎるかもしれない。少なくとも,実際のヒトの身体に本書のように鮮やかな彩りはない。昔の教科書のごとくモノクロの濃淡で示すほうが,ヒトの姿に近いのかもしれない。それでも,今,この美しさは必要だと思う。

 アトラスを手に取る読者のほとんどは,医療者の卵である。ヒトの身体を知るための長い道のりを歩み,その向こうにある診断や治療の学びをめざす。かつて自分が解剖学を学んだ頃は,文字情報と少しの図を頼りに,友人たちと相談しながら実習に取り組んでいた。今も,それを理想の学び方だとする意見もある。しかし,進む方向がわからず,解剖学の入り口で力が尽きてしまう学生も多く見てきた。本書は,ページをめくるたびに,さまざまな方向・深度から見た美しい構造物が現れる。もし,何もわからずに出発しても,ページの進みに合わせ,知らず知らずのうちに身体を巡る歩みへ誘われる。

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目次

欧文目次

第37回眼科写真展 作品募集

ことば・ことば・ことば 赤と紫
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 元素の周期律表は1869年に発表されました。ちょうど150年前のことです。

 これを高校で教わったときには,その意義はほとんど説明されませんでした。大学入試の面接で質問しても,表を横に覚えている人がほとんどで,縦に言える人はまずいないのです。

べらどんな 近視は病気
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 眼科の雑誌に載る論文のスタイルが,最近はなんだか難しくなった。数字が並んだ表ばかりが増え,その一方,写真などの図がめっきり減ってきたのである。

 診察の現場でも「形よりも数字を重視」する傾向がみえる。内科でもこれがはっきりしていて,昔われわれが習ったような視診,触診,聴診は,あまり実行されていないという感じを受ける。

学会・研究会 ご案内

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次号予告

あとがき 鈴木 康之
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 『臨床眼科』6月号 第72回日本臨床眼科学会講演集をお送りします。多くの力の入った原著論文が掲載されていますが,そのなかでも特に圧巻なのが,先日,第123回日本眼科学会総会の学会長を務められた杏林大学の平形明人教授による日本臨床眼科学会特別講演原著「網膜剝離・網膜分離の治療と課題」だと思います。

 先生のこれまでの多くの手術成績や新知見,そして文献的考察を交え,網膜剝離手術として硝子体手術が一般的になるに至った背景と,手術成績の継時的変化を考察され,さらに網膜分離に焦点を当て,先天乳頭ピットによる網膜分離・網膜剝離の発生機序と治療に対する検討,きわめて治療抵抗性の朝顔症候群に対するアプローチの検討,緑内障眼に合併する網膜分離,硝子体黄斑牽引症候群(VMT)および近視性牽引性黄斑症(MTM)について最新の知見と実際の手術成績を元に,それぞれの機序や治療法の理論的基礎,そして今後の展望まで述べられ,硝子体内microRNAの基礎的検討の可能性についても言及されています。ちなみにVMTとMTMの両略語に関しては,読んでいる途中でわからなくなってしまった私のような読者を想定して,こちらにも記載してみました。

基本情報

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臨床眼科
73巻6号 (2019年6月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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