臨床眼科 71巻3号 (2017年3月)

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要約 目的:リパスジル点眼薬の落屑緑内障(PEG)に対する眼圧下降効果と安全性を後ろ向きに検討する。

対象と方法:リパスジル点眼薬が追加投与された眼圧21mmHg以上のPEG17例17眼を対象とし,同じように追加投与された原発開放隅角緑内障(POAG)48例48眼を対照とした。投与前,投与1〜2か月,3〜4か月後の眼圧を調査し,投与前後で比較した。患者背景,眼圧下降幅,眼圧下降率を2群間で比較した。投与後の中止例を調査した。

結果:眼圧はPEG群とPOAG群では,それぞれ投与前22.8±3.1mmHgと24.7±4.5mmHgに比べて,投与1〜2か月後19.7±2.7mmHgと21.0±4.4mmHg,3〜4か月後19.7±3.9mmHgと20.1±4.1mmHgに有意に下降した(p<0.05,p<0.0001)。投与3〜4か月後の眼圧下降幅と眼圧下降率は2群で同等であった。中止例はPEG群3例(17.6%),POAG群4例(8.3%)で同等であった(p=0.3659)。そのうち副作用による中止例はPEG群2例,POAG群0例であった。

結論:リパスジル点眼薬のPEGに対する眼圧下降効果と安全性は良好である。

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要約 目的:虹彩毛様体囊腫に伴う狭隅角眼に対して白内障手術を施行し,術後隅角開大がみられた症例の報告。

症例:78歳男性。両眼の視力障害を主訴に受診した。初診時,左眼に虹彩囊腫,両眼に核白内障がみられた。

所見と経過:矯正視力は右0.4,左0.5,両眼にEmery-Little分類Grade 3の核白内障を認めた。術前眼圧は右20mmHg,左21mmHg,UBMにて左眼下耳側に虹彩毛様体囊腫に伴う閉塞隅角を認めた。白内障の手術後に隅角は開大し,経過観察期間中に明らかな眼圧上昇はなかった。

結論:虹彩毛様体囊腫に伴う狭隅角眼に対して,白内障手術後に隅角が開大した。以後,隅角閉塞はなかった。

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要約 目的:過去10年間に千葉労災病院で経験した転移性眼内炎4例の報告。

症例:4症例は,73歳女性,49歳男性,73歳男性,60歳男性で,基礎疾患として,肝膿瘍,細菌性髄膜炎,膵癌と急性骨髄性白血病,肝膿瘍がそれぞれにあった。最終視力は光覚なし2例,0.15,1.2であった。早期の診断確定と硝子体注射の複数回施行が転帰を大きく決定する要因であった。

結論:転移性眼内炎の進行は急速で,早期の眼科受診と早期の硝子体注射が望まれる。

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要約 目的:先天無虹彩に伴う緑内障に対し,バルベルト®緑内障インプラント(BGI)が有効であった症例の報告。

症例:生後20日の女児が無虹彩として紹介受診した。妊娠中に異常はなく,出生時の体重は2,106gであった。父親に先天無虹彩と緑内障があり,母方祖父に網膜色素変性があった。

所見と経過:全身麻酔下での眼圧は右10mmHg,左9mmHgで,両眼に虹彩の全欠損,水晶体の前囊と後囊下の混濁,乳頭の陥凹拡大があった。角膜径は両眼とも11mmで,眼軸長は右20.38mm,左20.33mmであった。2歳11か月に眼圧が左右とも30mmHgになり,複数の点眼治療を開始した。4歳から6歳までに両眼に線維柱帯切除術が3回行われた。6歳2か月のときに右眼圧が30mmHgに上昇し,BGI手術が行われた。手術3日目に低眼圧と脈絡膜剝離が生じたが,8日目にチューブを結紮し,以後18か月後の現在まで経過は良好である。

結論:先天無虹彩に伴う緑内障は難治であることが多い。線維柱帯切除術が奏効しない症例に対して,BGI手術は有効な選択肢の1つである。

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要約 目的:緑内障患者において,緑内障薬の点眼時間の変動とアドヒアランスの関係を検討した。

対象と方法:対象は,少なくとも6か月にわたり,ラタノプロスト点眼液0.04%あるいはラタノプロスト・マレイン酸チモロール配合点眼液を単独に点眼している緑内障患者324名(70.6±11.6歳,男性138名,女性186名)である。面接調査によって,点眼時間とその変動および点眼のアドヒアランスを調査した。

結果:全例の平均点眼時間の変動幅は60.0±74.3分であった。アドヒアランス良好な患者の点眼時間の変動幅は52.3±62.1分で,不良な患者では78.3±94.3分であった(p<0.0001)。アドヒアランス良好な患者は,点眼時間の変動が240分以上で6名(46.1%),120〜239分で20名(57.1%),60〜119分で83名(72.2%),30〜59分で75名(74.2%),15〜29分で10名(83.3%),15分未満で39名(81.5%)であり,変動が小さくなるにしたがい,アドヒアランス良好な患者の割合が有意に上昇した(p<0.0001)。点眼時間は決めていないと回答した患者の点眼時間の変動幅は227.5±161.0分であり,他の患者に比較して有意に長く,アドヒアランスも有意に不良であった(p<0.0001;p<0.0001)。

結論:緑内障薬の点眼時間の変動が大きくなるほど,点眼のアドヒアランスが有意に不良になった。

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要約 目的:トラベクトーム®を用いた線維柱帯切除術の成績に影響する因子の報告。

対象と方法:過去18か月間に線維柱帯切除術を行い,6か月以上の経過が観察できた56例68眼を対象とした。男性41眼,女性27眼で,平均年齢は71歳である。緑内障の内訳は原発開放隅角緑内障17眼,落屑緑内障48眼,続発緑内障3眼である。手術成績に影響する因子として,年齢,性別,中心角膜厚,術前眼圧,緑内障の病型,術式,緑内障手術の既往を検討した。

結果:平均眼圧は術前23.4±6.8mmHgから6か月後13.7±3.8mmHgに有意に下降した(p<0.001)。6か月生存率は75.0%であった。眼圧下降率は,白内障同時手術を行った症例で有意に高くなり(p=0.041),中心角膜厚と負の相関を示した(p=0.012)。

結論:トラベクトーム®を用いた線維柱帯切除術の6か月後の成績は,白内障同時手術を行ったときと,中心角膜厚が薄い症例で有意に良好であった。

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要約 目的:未就学児の他覚的屈折値と遠方裸眼視力を後ろ向きに調査した。

対象と方法:3〜6歳の1,597人3,194眼を対象として,自然瞳孔下の他覚的屈折値と遠方裸眼視力について検討した。他覚的屈折値と遠方裸眼視力から屈折異常の矯正が必要な児の割合とその眼鏡未装用率を算出した。

結果:他覚的屈折値は非正規分布を示し,中央値は−1.06Dであった。両眼ともに視力1.0以上であった割合は84.5%,0.7未満の割合は1.3%,左右差を認めた割合は2.1%であった。屈折異常の矯正が必要な児は2.4%であり,うち54%が眼鏡未装用であった。

結論:未就学児の自然瞳孔下の他覚的屈折値は正視からやや近視側に収束した。屈折異常の矯正が必要であると判定した児の約半数が未矯正であった。

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要約 目的:抗VEGF薬で加療した滲出型加齢黄斑変性(AMD)での視力と黄斑断面積との関係の報告。

対象と方法:過去37か月間に抗VEGF薬で加療し,滲出性病変が消失した滲出型AMD 124例124眼を対象とした。男性96例,女性28例で,年齢は50〜92歳,平均74.6歳である。黄斑断面積の算出には光干渉断層計を用い,中心窩を通る縦断面と横断面の面積の平均値を用いた。視力はlogMARとして評価した。

結果:抗VEGF薬で加療し,滲出が消失した滲出型AMDでは,視力と黄斑断面積との間に負の相関があった(p<0.0001)。治療前に網膜下液がある症例では治療後の視力が有意に良好で(p<0.05),黄斑浮腫がある症例では治療後の視力が不良であった(p<0.01)。

結論:抗VEGF薬で加療し,滲出性病変が消失した滲出型AMDでは,黄斑断面積が小さいと視力は有意に不良であった。黄斑浮腫の存在は,滲出型AMDでの視力予後を推定する因子になりうる。

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要約 目的:副鼻腔炎による鼻性視神経炎を発症し,手術により治癒した症例の報告。

症例:6歳女児が,4日前からの左眼痛,圧痛,眼球運動に伴う疼痛,左眼視力障害で紹介受診した。2年前から慢性副鼻腔炎として加療中であった。

所見と経過:矯正視力は右1.5,左0.03で,左眼に乳頭の発赤腫脹があった。左眼に中心暗点と鼻側の視野欠損があった。MRIで左側の蝶形骨洞と後篩骨洞に粘膜の肥厚があった。副鼻腔炎による鼻性視神経炎と診断し,内視鏡による副鼻腔手術を行い,蝶形骨洞と後篩骨洞を開通させ,プレドニゾロンを全身投与した。視力は1.5に改善し,眼底所見は正常化し,視野欠損は消失した。

結論:慢性副鼻腔炎によると推定される視神経炎に,副鼻腔炎手術が奏効した。

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要約 目的:脈絡膜剝離を伴った眼窩蜂窩織炎の症例を報告する。

症例:74歳女性。左眼瞼腫脹・疼痛が出現し,2日後に高槻病院眼科を受診。眼窩蜂窩織炎と診断され,入院にて抗菌薬点滴加療が施行された。第8病日には眼瞼腫脹は軽快したが,眼底検査で左眼に網膜中心静脈閉塞症様所見と鼻下側に脈絡膜剝離を認め,光干渉断層計では脈絡膜皺襞を認めた。第19病日には脈絡膜剝離は消失していたが,脈絡膜皺襞は発症後約4か月の時点でも残存している。

結論:眼窩蜂窩織炎は眼窩内圧上昇や渦静脈の強膜貫通部位への炎症の波及により脈絡膜循環障害をきたし,本症例のように脈絡膜剝離を生じる可能性がある。

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要約 目的:真菌感染が疑われた眼窩先端症候群に対し,抗真菌薬の投与と副鼻腔手術が奏効した1例の報告。

症例:75歳女性が2か月前からの左眼窩部痛と5日前からの頭痛,羞明,眼瞼下垂,複視で受診した。

所見と経過:視力は右1.2,左0.8で,左眼に動眼神経麻痺の所見があった。MRIで眼窩先端部に異常所見はなく,CTで左上顎洞に真菌感染を示唆する所見があった。真菌性眼窩先端症候群を疑い,ボリコナゾールの点滴と副鼻腔手術を行った。副鼻腔貯留液からアスペルギルス糸状菌が検出された。2週後に複視と眼球運動障害が消失し,視力は0.9に改善した。以後5か月間再発はない。

結論:眼窩先端症候群では,初期の検査結果が陰性でも真菌感染の可能性がある。

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要約 目的:網膜中心静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫に対するアフリベルセプト硝子体注射の長期成績の報告。

対象と方法:網膜中心静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫に対してアフリベルセプト硝子体注射を行った17例17眼の経過を診療録から検索した。全例が日本人で,男性11例,女性6例であり,年齢は64〜76歳,平均70歳である。10眼が初回治療,7眼がベバシズマブまたはラニビズマブからの切り替えである。視力はlogMARとして評価した。

結果:治療開始前の矯正視力は,平均0.53±0.39であり,以後の18か月間に有意な変化はなかった。治療開始前の網膜厚は,平均673.7±258.0μmであり,6,12,18か月後にはそれぞれ有意に減少した(p<0.01)。経過中に全例で黄斑浮腫が再発し,その64%が3か月以内であった。12か月間に平均4.9回,18か月間に平均6.9回の硝子体注射が行われた。

結論:アフリベルセプト硝子体注射は,網膜中心静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫を軽減させた。黄斑浮腫の再発が多く,複数回の追加注射が必要であった。

Special Interest Group Meeting(SIG)報告

強度近視眼底研究会 大野 京子
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はじめに

 強度近視眼底研究会のSIGは今年で4回目の開催であり,最後となりました。本会を基盤にして,日本近視学会が新たに設立されました。今後,近視研究のさらなる発展が期待されます。最後の開催となった今回のSIGでは,一般講演3題,パネルディスカッション,特別講演が行われ,時間を超過しての激論が交わされ,この分野に関する関心の高さをうかがわせました。

今月の表紙

円錐角膜 矢作 彼方 , 中澤 満
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 症例は18歳,男性。1か月前から視力低下に気づくも放置,2日前から急に見えづらさを自覚し近医を受診した。円錐角膜が疑われ,当院へ紹介受診となった。初診時の視力は右50cm指数弁,左(1.0),眼圧は右測定不能,左14.5mmHgであった。両眼ともに円錐角膜を認め,右眼には急性水腫を伴うデスメ膜破裂があった。そのため,右眼に角膜保護用fitコンフォートモイストコンタクトレンズを装着し,眼圧を下げるためダイアモックス®錠250mgとアスパラカリウム®錠300mgを処方した。3週間後にデスメ膜は創傷治癒。2か月後,急性水腫はほとんど瘢痕化していたため,円錐角膜治療を目的としたハードコンタクトレンズへ変更し,現在経過観察中。6か月後の視力は右(0.4),左(1.0)。

 写真は受診後1週間の右眼。撮影には前眼部OCT SS-1000 CASIA(TOMEY社)を使用した。撮影モードはAnterior Segmentを選択し,病変部位をより鮮明に捉えるためAuto AlignmentをZ-offにして撮影した。また,コンタクトレンズ装用中のため,適宜瞬目を入れ乾燥を防ぎ,病変部位が撮影できる最小限の挙上にてアーチファクトを避けるよう心がけた。

連載 今月の話題

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 最近めざましく進歩している眼底イメージングについて,特に網膜血管に焦点を絞り,血管構築(造影検査)と循環動態(血流測定)の2つの観点から,最近のテクノロジーの進歩と臨床応用への可能性についてまとめたい。

連載 熱血討論!緑内障道場—診断・治療の一手ご指南・第14回

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今月の症例

【患者】55歳,女性

【現病歴】2010年より両眼の正常眼圧緑内障で近医を通院。無治療時眼圧は15mmHg前後。キサラタン®,ミケランLA®,エイゾプト®,アイファガン®を順次処方され,4剤併用時の眼圧は右眼9〜14mmHg,左眼8〜13mmHgであった(図1)。また,2013年9月からニバジール®,2014年2月からはメマリー®を内服。

【既往歴】特筆すべき事項なし

【持参視野経過】図2,3に示す。

連載 蛍光眼底造影クリニカルカンファレンス・第15回

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疾患の概要

 多発消失性白点症候群(multiple evanescent white dot syndrome:MEWDS)は,1984年Jampolら1)によって報告された眼底に一過性の白点が多発する原因不明の網膜外層疾患である。20〜40歳の近視眼の女性に好発し(男女比1:4),ほとんどが片眼性であるが,両眼に発症することもある。自覚症状は,片眼の急激な霧視,光視症,マリオット盲点拡大,視野欠損などである。前駆症状として感冒症状を認めることがあるため,ウイルスによる感染が示唆されている。

 眼底所見は,後極部から中間周辺部にかけて約100〜200μmの小白点が,網膜色素上皮から網膜深層に散在する。白点は症状の改善とともに1〜2か月で自然消失する。黄斑部には顆粒状の病巣を伴うことがあり,中心視力低下の原因となるが,この変化は可逆的であり,予後は比較的良好である。光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)では,ellipsoid zoneが欠損するなどで不明瞭となる。眼底自発蛍光では,過蛍光斑がみられる。OCTや自発蛍光の所見は,白点の部位によくみられるが,白点がない部分にも観察される。

連載 目指せ!眼の形成外科エキスパート・第31回【最終回】

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はじめに

 今回で全31回,2年半に及んだ連載「目指せ!眼の形成外科エキスパート」も終了です。読者の皆様,長い間お付き合いいただきありがとうございます。

 眼形成外科は眼科の主要分野の1つであるにもかかわらず,また,患者数が非常に多いにもかかわらず,眼球を直接的に治療しないという理由から,また,眼球の手術とは異なったテクニックを用いるという理由から,医局に専門とする医師がいない大学もかなりあります。「教育」という点に関しては非常に問題の多い分野といえます。そこで,この点の改善を目的の1つとして,われわれは2013年に日本眼形成再建外科学会を設立しました。

 ちょうどその頃,『臨床眼科』誌から本連載のお話をいただきました。渡りに船とばかりにこの提案をお受けし,わが国における眼形成専門家の粋を集めて本連載を企画しました。医学書院もこのような長期連載をよくぞ受け入れてくれました。ここに御礼申し上げます。

 本連載が眼形成教育の一端を担えたことは嬉しい限りです。ここまでお付き合いいただいた読者諸氏の眼形成外科のレベルはかなり向上したものと思います。しかし,眼形成外科の勉強をさらに行いたい方もおられるでしょう。そのような方には日本眼形成再建外科学会がサポートします。遠慮なく声をかけてください。手術見学,フェローなど,大歓迎です。詳細は日本眼形成再建外科学会のホームページをご覧ください。

 それでは,本連載最後の解説に入ります。眼の形成外科がなぜ,眼科の主要分野の1つであるのか,その理由がわかる内容です。

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緒言

 草刈り機使用時における眼外傷の多くは,使用中の草刈り機の刃が欠けて,それが眼部に高速で突き刺さることによる受傷である。草刈り機の刃は,鉄製であるため,鉄片異物であることが多い。

 しかし,最近は,切れ味の向上のため,あるいは刃の管理の容易化のため,非鉄製の刃を使用した草刈り機も発売されている。

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要約 目的:交通事故による頭頸部打撲後に視力と視野障害が生じ,脳脊髄液減少症と診断された症例の報告。

症例:28歳男性が自家用車を運転中に樹木に衝突し,右頭頸部を打撲した。翌日に視力低下を自覚した。矯正視力は右0.4,左1.2で,エアバッグによる角膜混濁と診断された。1か月後に視力が悪化して当科を受診した。

所見と経過:視力は右手動弁,左0.07で,両眼に求心性の視野狭窄と左眼に中心暗点があった。眼底に異常はなく,MRIでは脳と眼窩に異常はなかった。以後7か月間に視力と視野に変化はなかったが,補液により起立性頭痛と視機能が著明に改善した。脳脊髄圧は正常で,脳槽シンチグラフィで髄液漏出像はなく,RIクリアランスが亢進していた。外傷後の脳脊髄液減少症と診断した。硬膜外自家血注入で,視力は右0.8,左1.0に改善し,視野障害も回復した。

結論:頭頸部への鈍性外傷後に生じた視力障害と視野狭窄は,脳脊髄液減少症によると推定され,硬膜外自家血注入が有効であった。

海外留学 不安とFUN・第15回

UCLAでの留学生活・1 鹿嶋 友敬
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はじめに

 どんなことであれ,人は初めての経験に対して不安を覚えるはずである。私は幸運にもロサンゼルスへの留学を通してさまざまな経験をさせていただいた。実体験をありのままに書いた本稿が今後留学の不安を抱える先生方の一助になれば幸いである。

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 治療法を適切に選択するためには,的確な診断が必要である。角結膜疾患の診断に関しては,《眼科臨床エキスパートシリーズ》で,『オキュラーサーフェス疾患—目で見る鑑別疾患』(2013)が既に出版されており,研修医の先生方から角膜を専門とする先生方まで,幅広く頻繁に利用されていることと思う。本書は《眼科臨床エキスパートシリーズ》のまさに角結膜疾患治療版である。本書は角膜移植のメッカである東京歯科大学眼科教授の島﨑潤先生が編集されており,実にプラクティカルに構成されている。

 まず,総説を熟読いただくことにより,現時点での角結膜疾患治療の基本的考え方と治療方針を理解できると同時に,本書のコンセプトと流れを把握できる。角結膜に共通の機能は外界に対するバリアとしての働き,角膜に特徴的な機能は透明性の維持と光の屈折であるということを大前提として,治療方針を考えてもらいたいという姿勢が十分に伝わる。読者にフレンドリーなイントロダクションである。

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 本書は,スペシャリストからジェネラリストに向けた鮮烈かつ明快なメッセージである。

 初めて手に取ったとき,思わず「こんな本が欲しかった」の一言が出た。と言うのも,そもそもスペシャリストとジェネラリストが共有できる書物やそれを意図する本が,残念ながら極めて少ないからである。あったとしても,『JRC蘇生ガイドライン』のように,ジェネラリストからスペシャリストに向けられるものがほとんどであり,その逆向きのベクトルによるメッセージを込めた(銘打った)本は正直見たことがない。

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要約 背景:RETeval CompleteTM(レチバル)は,皮膚電極を用いた簡易型の網膜電位計であるが,遺伝性網膜疾患における有用性は明らかではない。

目的:家族歴から先天性停止性夜盲,X染色体劣性網膜分離症,網膜色素変性がそれぞれ疑われる3小児例において,レチバルによる検査を行い,それぞれの疾患における有用性を検証する。

対象と方法:第1例は8歳男児で,4歳時から夜盲があった。17歳の兄が網膜電図検査(ERG)で完全型先天性停止性夜盲と診断されていた。第2例は視力不良で黄斑変性と診断されたことがある8歳男児で,16歳の兄がX染色体劣性網膜分離症と診断されていた。第3例は夜盲がある9歳女児で,43歳の父が網膜色素変性と診断されていた。3症例とも角膜電極を用いる通常のERG検査が行えなかったためレチバルを用いた計測を行った。レチバルは散瞳後に,明順応および暗順応下にて計測した。また,対照として,眼病変のない健常者10名10眼に対して同様の計測を行った。

結果:対照とした10例全例で通常のERGと同様な所見が得られた。対象とした3症例では,各疾患に特徴的なERG所見が得られた。

結論:先天性停止性夜盲,X染色体劣性網膜分離症,網膜色素変性それぞれにおいてレチバルにより疾患特有のERG所見が得られ,小児の遺伝性網膜疾患における有用性が示された。

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要約 目的:春季カタルに対する0.1%タクロリムス点眼薬の長期使用効果の報告。

対象と方法:1年以上タクロリムス点眼薬で加療した春季カタル16例30眼を対象とした。全例でシクロスポリン点眼薬がそれ以前に使用され,効果不十分であった。年齢は6〜19歳,平均15歳で,26眼が眼瞼型,4眼が眼瞼輪部混合型であった。14例にアトピー性皮膚炎,5例に喘息,3例にアレルギー性鼻炎の合併があった。9眼でステロイド点眼薬,8眼でステロイド内服薬を併用していた。

結果:春季カタルの他覚的所見は全例で改善した。タクロリムス点眼薬の回数は,多くの症例で当初の1日2回から1日1回になり,ステロイド点眼薬の併用は開始時30%から1年後10%,ステロイド内服薬の併用は開始時25%から1年後6%に減少した。タクロリムス点眼薬を1年以上使用した30眼中16眼で一過性の増悪があり,その多くは5月と7〜9月に生じた。1眼でタクロリムス点眼薬の使用開始から38か月後に上皮性単純ヘルペス角膜炎が発症し,加療により治癒した。

結論:シクロスポリン点眼薬が奏効しない春季カタルに対し,1年以上のタクロリムス点眼薬の使用で,他覚的所見と症状の改善がみられた。

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要約 目的:直腸癌の海綿静脈洞への遠隔転移により外転神経麻痺を生じ,短期間で急速に進展した症例報告。

症例:複視で受診した41歳女性。右外転神経麻痺を認め,約3か月後には両側の外転神経麻痺をきたし10か月後には死への転帰をたどった。大腸癌の既往歴があり,当初より脳への遠隔転移を疑ったが,単純MRIで明らかな異常が検出されず,他の眼球運動神経麻痺もきたさなかったため,海綿状静脈洞に転移した腫瘍が拡大進展するまで遠隔転移が診断できなかった。

結論:癌の遠隔転移が疑われる場合の診断にMRIを造影で行うことが大切である。

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要約 目的:1ml中にラタノプロスト50μgとチモロール5mgを含有する配合点眼液〔ザラカム®配合点眼液(以下,本剤)〕の長期使用実態下における安全性と有効性の報告。

対象と方法:本剤が投与された緑内障および高眼圧症患者を対象に,観察期間52週以上として特定使用成績調査を実施した。安全性は主に副作用,有効性は臨床効果の有効率と眼圧の推移により評価した。

結果:3年7か月の調査期間中に105施設から収集した618例を安全性および有効性解析対象集団とした。内訳は男性289例,女性329例,平均年齢は67.2±12.8歳であった。診断名は緑内障が593例(96.0%)であり,うち狭義の原発開放隅角緑内障(278例)と正常眼圧緑内障(244例)が大部分を占めた。514例(83.2%)が緑内障・高眼圧症に関する薬物前治療を受けていた。投与開始前の平均眼圧は17.04±4.97mmHgであった。本剤投与期間は,52週以下が156例,52〜104週が141例,104週超が321例であった。副作用は73例(11.8%)に発現し,内訳は眼刺激22例,点状角膜炎10例,睫毛の成長9例,角膜障害7例などであった。担当医師の判定による全体の有効率は82.8%で,平均眼圧は有意に下降した(本剤投与4週後にp<0.01)。

結論:特定使用成績調査の結果,本剤の長期使用実態下における安全性・有効性が示された。

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欧文目次

ことば・ことば・ことば 数
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 大人になってから外国語を覚えるときには,なんとなく数詞が面倒に感じるものです。子供なら1,2,3と丸暗記をするのに,大人の場合には実際の使用例から入るために,能率が悪くなります。

 数字の5については,アメリカ国防省のPentagonで知りました。あの建物が五角形をしているからです。ギリシャ語の5がpenteなので,これに「角」を意味するgonがついたものです。隅角検査のgonioscopyにもこれが入っています。

べらどんな クリオネ
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 冬のオホーツク海には,流氷の下に小さなクラゲのような,可愛い生きものがいる。クリオネがその名前である。

 秋の二科展に,これを撮った写真が入選した。群馬大学出身のM・K医師がその撮影者である。

学会・研究会 ご案内

希望掲載欄

アンケート用紙

次号予告

あとがき 中澤 満
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 臨床眼科3月号をお届けします。今月号から第70回日本臨床眼科学会で発表された一般演題の原著論文が順次掲載されます。症例報告では日常臨床の現場でいつ遭遇するとも限らない,稀ではあるけれども見逃すことのできない貴重な臨床例が記載されています。とくに75歳という高齢者の眼窩先端症候群が副鼻腔のアスペルギルス感染が原因だったという村尾史子氏らの報告には,眼窩先端症候群にはステロイド療法という治療選択の前には十分な鑑別診断が必要である,という警鐘が含まれています。このような症例は,時代を越えて繰り返し報告される必要があると思われます。そのほか,新しい治療薬や手術術式の治療成績も今後の治療選択を広げるうえで参考になることでしょう。

 「今月の話題」は長岡泰司氏による「眼底血管イメージングの最近の進歩」です。OCTの血管撮像への応用をはじめ,眼血流測定法に関してもよくまとめられています。「熱血討論!緑内障道場」では普段対応に苦慮する「低眼圧なのに進行する緑内障例」に対する診断と治療に関する考え方が溝上志朗,馬場哲也,中澤 徹の3氏によって詳細に述べられており,「なるほど」と思わせられました。また,2年半にわたって連載されました「目指せ!眼の形成外科エキスパート」は今回をもって終了となります。柿﨑裕彦氏をはじめ執筆に当たられた先生方,ご苦労さまでした。2013年に日本眼形成再建外科学会が設立されましたが,学会の興隆と日本の眼科医の中に眼形成外科の考え方がさらに普及することもあわせて祈念します。

基本情報

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臨床眼科
71巻3号 (2017年3月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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