臨床眼科 70巻3号 (2016年3月)

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要約 目的:原発開放隅角緑内障(POAG)眼で,3種の眼圧計で眼圧を測定し,中心角膜厚と角膜生体力学特性による補正値を算出し,これと中心角膜厚と年齢の相関を検索した報告。

対象と方法:POAGで通院中の218例218眼を対象とした。年齢は22〜91歳,平均72歳で,圧平眼圧計による眼圧値は8〜23mmHg,平均14.8mmHgで,屈折の等価球面度数は平均−0.51±2.4Dであった。非接触眼圧計(CT-1P)による眼圧を中心角膜厚で補正した値,非接触眼圧計(7CR)による眼圧を角膜生体力学的特性を加味して補正した値,Goldmann圧平眼圧計による眼圧を中心角膜厚で補正した値につき,年齢と中心角膜厚との相関を算出した。

結果:上記3方法による眼圧値とそれを補正した計6種の測定値は,いずれも年齢と負の相関があり(p=0.001〜0.0045),中心角膜厚と正の相関があった(p=0.000〜0.007)。

結論:中心角膜厚または角膜生体力学的特性により補正した眼圧値には,年齢と中心角膜厚が影響し,補正が不十分である可能性がある。

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要約 目的:老視に対する角膜インレー挿入眼に裂孔原性網膜剝離を発症し,硝子体手術を施行した2症例を報告する。

症例:症例は61歳女性および66歳女性,両者とも2012年に両眼に角膜屈折矯正手術,片眼に老視用角膜インレー(KAMRA,AcuFocus社)挿入術を施行されている。それぞれ2および3年後,インレー挿入眼に裂孔原性網膜剝離を発症した。2症例とも角膜インレーを温存した25ゲージ硝子体手術を施行し,網膜の復位を得た。

結論:角膜インレー挿入眼ではインレーを避けて観察する必要があり,広角観察システムが有用であった。インレー挿入眼の内眼手術では,待機的な治療であればインレーの除去も検討すべきである。

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要約 目的:強膜炎の病像を充血と眼痛に基づいて独自のスコアで数値化し,その病態と経過を検討した報告。

対象と方法:過去55か月間に当科で前部強膜炎と診断した19例26眼を対象とした。男性6例,女性13例で,年齢は25〜80歳,平均56歳である。両眼性が7例,片眼性が12例であった。強膜炎の臨床スコアは,充血の範囲により1〜4,眼痛は鎮痛薬の要否により1〜3と評価した。1〜42か月,平均15か月の間,経過を観察した。

結果:臨床スコアは,充血と眼痛とも臨床症状とよく相関していた。前部強膜以外に炎症が波及しているときには臨床スコアに反映しない弱点があるが,眼合併症を併記することで改善できた。

結論:今回の新しい強膜炎の臨床スコアは簡便で,病状の経過と治療の評価に有用であった。

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要約 目的:ヒト水晶体の前後径,赤道部径,横断面の外周を生体眼において計測後,水晶体の3次元画像を作製して体積を計測する。

対象と方法:対象は23歳女性の右眼で,眼軸長は24.21mmである。超音波生体顕微鏡を使用して水晶体を4方向から撮影後,各方向で前後径,赤道部径,横断面の外周を計測した。それらの値から3次元画像を作成後,水晶体の体積をHira STL viewerで算出した。

結果:体積は0.1057cm3と算出された。

結論:実際の水晶体形状は後方へ凸を示す不完全な楕円体である。このため3次元画像で水晶体を構築した後,ほぼ正確に体積を計測できる本手法は,生体眼における水晶体の体積計測に有用であると考えた。

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要約 目的:白内障手術中にサイドポートが裂け,かつ縫合が困難であった青色強膜の症例の報告。

症例:75歳の女性が白内障手術を目的に受診した。既往歴に幼少時の足指の骨折,家族歴に長女の青色強膜と幼少時の骨折があった。

所見:矯正視力は右0.6,左0.06で,両眼に白内障と青色強膜がみられた。左眼の白内障手術中,サイドポートが裂け,縫合を試みるも角膜が裂け,前房形成が困難となった。手術中はサイドポートを指で,術直後は結膜で被覆し,前房は形成された。術後1か月でサイドポートは自然閉鎖し,術後6か月時矯正視力は0.1,眼圧は5mmHgと改善した。

結論:青色強膜の症例では強角膜の脆弱性を考慮した手術をすることが大切である。

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要約 目的:動物病院勤務者に発症した視神経網膜炎の1例報告。

症例:38歳女性が1週前からの左眼視野異常を主訴に受診した。

所見と経過:矯正視力は右1.5,左0.1で左眼に虹彩毛様体炎,視神経乳頭浮腫と黄斑部を含む漿液性黄斑剝離があり,原田病を疑い,全身のステロイド治療を開始した。10日後に左眼に星芒状白斑がみられ,視神経網膜炎と診断した。再度の問診で,動物病院勤務で左前腕部に丘疹とひっかき傷が判明した。血中抗バルトネラ抗体検査を行いシプロフロキサシンを投与した。抗体価はIgM抗体40倍,IgG抗体512倍で猫ひっかき病と確定診断した。

結論:ぶどう膜炎では詳細な問診や全身の診察が重要である。動物病院勤務者の感染防御対策が必要である。

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要約 目的:冷凍凝固術を施行したvasoproliferative tumor(VPT)3症例の治療経過の報告。

症例:症例1は27歳女性。経瞳孔温熱療法施行後も滲出性所見の改善がみられず,冷凍凝固術を施行した。治療後滲出性所見は改善した。症例2は58歳女性。VPTに合併した黄斑上膜の増悪により左眼視力が低下し,冷凍凝固術を施行し,所見の改善を得た。症例3は51歳女性。冷凍凝固術後2週間で増殖硝子体網膜症を認めた。網膜復位までに複数回の手術を要した。

結論:VPTに対する冷凍凝固術は有効であるが,急激な増殖性変化を生じる症例もあり,注意を要する。

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要約 目的:学校生活上の視機能評価に,Functional Vision Score(以下,FVS)での評価が有用であった先天無虹彩の1症例の報告。

症例:13歳,男性。先天無虹彩の患者が学校生活の問題を訴え受診した。

所見:矯正視力は右0.3,左0.4,眼圧は両眼18mmHg,先天性眼振,黄斑低形成であった。Goldmann視野検査は両眼とも正常。視覚の身体障害者手帳に該当しなかった。この症例に対し,FVSを用いて障害の程度を判定するとFVS=79.5で軽度視覚喪失であった。学校にFVSの結果を報告し,障害について理解を得ることができた。

結論:FVSで患者の不自由さを評価できる可能性が示された。

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要約 目的:特発性網膜動脈分枝閉塞症(Susac症候群)の5年以上の経過についての報告。

症例:37歳女性。左眼の視野障害を自覚し受診した。既往歴として10歳時より頭痛がある。17歳時に特発性網膜動脈分枝閉塞症と診断され,その後何回も再発している。

結果:両眼とも矯正視力は1.0。右眼には網膜動脈分枝間で側副血行路を認めた。経過観察中に特発性網膜動脈分枝閉塞症を数回認めたが,いずれも網膜白濁は軽度であった。網膜厚カラーマップ,ganglion cell complexともに検眼鏡で確認した閉塞部以外にも菲薄化が認められた。

結論:発症より25年の間に網膜動脈分枝閉塞症の再発と,多発を繰り返した。特発性網膜動脈分枝閉塞症の陳旧期の眼底所見は一見正常に見えるが,光干渉断層計で網膜厚,ganglion cell complexを測定すると,検眼鏡的に閉塞を確認した部位以外に閉塞が起きた部位が確認できた。

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要約 目的:眼内に異物が18か月間滞留し,MRI検査で発見された1症例の報告。

症例:44歳男性が9か月前から徐々に進行した右眼の視力低下と夜盲で受診した。

所見:矯正視力は右0.6,左1.5で,右眼に求心性視野狭窄があり,網膜電図は陰性型であった。眼窩内を精査するために頭部MRIを実施しようとした際に右眼痛を訴えた。問診で,受診する17か月前にハンマーを使った作業中に,右の下眼瞼に約1 mmの鉄片が刺さり,除去されたとの経緯が判明した。頭部CTで右の眼内に異物があった。手術で長径5 mmの鉄片を摘出した。

結論:長期間滞留した眼内異物が,片眼性の夜盲,視野狭窄,網膜電図の減弱の原因になりうることを本症例は示している。

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要約 目的:病院職員の教育に,動画の使用が有効であるかどうかについて評価した報告。

対象と方法:某医療施設に勤務する従業員のうち,本研究に参加する意思がある29名を対象とした。男性19名,女性10名で,平均年齢は27歳である。これを介入群14名と非介入群15名の2群に分け,介入群にはマナーや倫理に関する教育動画を自由に視聴させた。独立した第三者が,勤務態度の変化を評価した。

結果:勤務態度の改善は,介入群で50%,非介入群で13.3%であり,有意差があった(p<0.05)。

結論:動画を用いる教育は,病院職員に対して有効であった。

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要約 目的:蝶形骨洞部腺様囊胞癌に対する重粒子線治療後に放射線網膜症を発症した症例の報告。

症例:26歳女性。右蝶形骨洞から海綿静脈洞に及ぶ腺様囊胞癌に対して総量57.6GyE(16回)の重粒子線照射を受けた。19か月後,右眼視力低下を訴え当科を受診。矯正視力は右0.8,左1.2,右眼底に点状出血と軟性白斑があった。蛍光眼底造影で右眼に無灌流域,後極に血管外漏出があり,放射線網膜症と診断した。32か月後より右眼白内障が進行し,白内障手術を行った。42か月後,蛍光眼底造影で右眼網膜新生血管が出現し,網膜光凝固を行った。以後5年間の経過は良好で腫瘍の再発はない。

結論:蝶形骨洞部腺様囊胞癌への重粒子線治療により放射線網膜症が発症することがある。

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要約 目的:和歌山医大で開始第1症例から約2年の内視鏡下涙管チューブ挿入術全症例について検討を行った。

対象と方法:当院で施行した57例68側について検討した。全症例を1名の術者が執刀した。

結果:全症例でのチューブ挿入完了率は79.4%であった。涙小管閉塞症例の完了率は0%,涙点閉鎖では50.0%であった。背景因子との関係では,抗癌剤内服既往は50.0%,外傷後長期経過は0%,急性涙囊炎後で75.0%であった。

結論:涙小管閉塞,外傷後長期経過,急性涙囊炎後で自壊創ありを内視鏡下涙管チューブ挿入術で治療困難と考えた。これらの因子がない場合,初心者では開始半年後以降は92.5%で挿入完了が可能であった。

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要約 目的:斜視手術の既往がある成人に行った斜視手術の報告。

対象と方法:過去10年間に当科で斜視手術を行った22例を対象とした。全例に他施設での斜視手術の既往があった。男性10例,女性12例で,年齢は20〜81歳,平均41歳である。

結果:当科受診時には,内斜視術後の外斜視が13例,外斜視術後の残余外斜視が6例,内斜視術後の残余内斜視が2例,外斜視術後の上下斜視が1例にあった。前回の斜視手術は,4〜60年前に行われていた。手術は原則として非手術眼または非手術筋に行い,10例では手術既往筋に行った。この10例中5例では,術前に既往筋ではないと推測し,術中に既往筋であったことが判明した。手術により8眼で正位が得られ,14眼で眼位異常が軽減した。22例すべてで整容的満足が得られた。

結論:斜視手術の既往がある22例に行った斜視手術で眼位異常が正常化または軽減した。斜視手術の既往筋は5例では術前に同定できなかった。

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要約 目的:水平および垂直両方のone-and-a-half症候群をきたした症例の報告。

症例:58歳女性。1週間前からの複視を主訴に受診した。

所見:第一眼位は左外下斜視であった。水平眼球運動は,右眼は内転・外転とも不能,左眼は内転不能,外転のみ可能で,外転時に解離性眼振を認めた。垂直眼球運動は,両眼の下方注視麻痺,左眼の上転障害を呈した。頭部CT,MRIにて傍正中橋網様体,内側縦束および内側縦束吻側間質核,カハール間質核に一致する部位に海綿状血管腫,およびそれに伴う出血を認めた。

結論:水平・垂直の眼球運動にかかわる部位がそれぞれ障害されたため,水平と垂直両方のone-and-a-half症候群が合併した1例であると考えられた。

Special Interest Group Meeting(SIG)報告

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はじめに

 多くの疾患は,個人のもつ遺伝素因に環境因子が加わり,疾患が発症する多因子疾患です。多因子疾患の発症にかかわる体質をつかさどる遺伝要因として,遺伝子多型(single nucleotide polymorphism:SNP)が挙げられます。また,最近では次世代シークエンサの開発により稀な頻度で存在する変異(variants)の研究にシフトしてきています。2015年10月22日木曜日,第69回日本臨床眼科学会のSIGとして,第16回眼科DNAチップ研究会を名古屋国際会議場で開催いたしました。本研究会では,京都大学医学研究科附属ゲノム医学センターの後藤謙元先生に,“患者・臨床医・研究者をつなぐ網膜変性の遺伝子診断拠点の整備”について,京都府立医科大学眼科学教室の池田陽子先生には,“国際コンソーシアム共同研究で得られた広義原発開放隅角緑内障に関連するバリアント”について,尾﨑眼科の尾﨑峯生先生には,“落屑症候群の遺伝子異常—新たな展開—”について,横浜市立大学眼科学教室の目黒明先生には,“発達緑内障家系を対象としたエクソーム解析”についてご講演いただきました。さらに,東京医科歯科大学院医歯学総合研究科疾患多様性遺伝学分野の岡田随象先生に,教育講演として“遺伝統計解析で迫る疾患病態の解明とゲノム創薬”についてご講演いただき,それぞれについて熱心な討論が行われました。ここでは,4つの講演,ならびに,教育講演の要旨をご報告させていただきます。

今月の表紙

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 症例は52歳,女性。左眼の視力低下を自覚し,近医を受診した。左眼黄斑部に出血を認め,精査加療目的で当科へ紹介され受診となった。

 初診時の視力は(0.08),黄斑部の硝子体膜下および内境界膜下にニボーを形成する網膜前出血を広範囲に認めた。本人の希望により,YAGレーザーなどによる治療は行わず経過観察のみで自然吸収を待った。その後,出血は徐々に吸収され,発症後3か月で視力(1.0)に回復した。発症後6か月には出血が完全に吸収されたため,造影検査を行い,網膜細動脈瘤が認められたため,光凝固を行った。

連載 今月の話題

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 新しい眼圧下降治療の試みを紹介する。薬物治療としてはROCK(Rho-associated coiled-coil forming kinase)阻害薬のリパスジルがわが国で発売となり,複数の同種薬剤が臨床試験中である。新しいプロスタグランジン製剤やアデノシン受容体刺激薬に加え,ドラッグデリバリーの研究も進行中である。また,超音波を用いた眼圧下降の試みも臨床応用が進んでいる。

連載 熱血討論!緑内障道場—診断・治療の一手ご指南・第2回

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今月の症例

【患者】83歳,男性

【主訴】右眼の視力低下

【現病歴】60歳代で両眼の原発開放隅角緑内障と診断,現在は緑内障治療点眼薬を3剤使用している。最近,霧視と視力低下の進行を自覚し,かかりつけ医を受診したところ白内障と診断され,手術目的にて紹介され受診した。

連載 蛍光眼底造影クリニカルカンファレンス・第3回

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疾患の概要

 中心性漿液性脈絡網膜症(central serous chorioretinopathy:CSC)は,かつて中心性網膜炎とも呼ばれ,典型的には30〜40歳代の中年男性に多く,黄斑部を中心として同心円状の境界明瞭な漿液性網膜剝離が生じる疾患であり,変視や歪視を主症状とするものの視力はある程度維持される。発症の原因としてさまざまなストレスやA型パーソナリティ,ステロイド薬の既往などが挙げられているが完全には解明されていない。最近,脈絡膜にミネラルコルチコイドレセプターの存在が報告され,本疾患との関連や治療への応用が注目されている1)

 本疾患はフルオレセイン蛍光眼底造影(fluorescein angiography:FA)で初期から中期にかけて1か所または複数か所の網膜色素上皮(retinal pigment epithelium:RPE)レベルの蛍光漏出がみられる。そのことから,RPEの機能異常,いわゆる外側血液網膜関門の破綻が疾患の本態と考えられてきた。しかし,1990年代以降に普及したインドシアニングリーン蛍光眼底造影(indocyanine green angiography:IA)によって,CSC眼は脈絡膜の静脈拡張,充盈遅延,造影中〜後期の脈絡膜血管透過性亢進を示す過蛍光などの各種異常所見を呈することが明らかとなった。そのことから,現在では脈絡膜の血管異常が疾患の一次的原因であると考えられている2,3)。特に静脈拡張部位もしくはそれに接して蛍光漏出が好発しており,脈絡膜血管異常が先行していると考えられる3)。本疾患は最終的に脈絡膜血管透過性亢進部位において二次的なRPE異常による外側血液網膜関門の破綻が生じ,脈絡膜内の滲出液が網膜下に流入することで発症する。

連載 目指せ!眼の形成外科エキスパート・第19回

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はじめに

 この分野,柿﨑のライフワークです。この分野を勉強するためだけにイギリスやオーストラリアに留学したといっても過言ではありません。日本で常識となっていた考え方や方法と全く異なった再建を初めて目の当たりにしたとき,驚きを通り越して感動すら覚えたものです。

 眼瞼の悪性腫瘍の切除後や外傷ではかなりの量の眼瞼組織が欠損しますが,この状態では「眼」の恒常性が失われてしまいます。先天眼瞼欠損でも眼瞼組織が欠損しています。「眼」の機能を維持するためにはその欠損を補塡して,眼瞼を構造的・機能的に良好な状態に修復しなくてはなりません。眼の形成外科の理念は,「形成外科的な手技を用いて眼科治療を行うこと」1),すなわち,視機能の質(quality of vision:QOV)とのかかわりのなかに眼の形成外科の存在価値があるわけです。

 以前の本誌の特集で「眼にやさしい眼瞼腫瘍の切除後再建」(66巻13号掲載)について解説し,眼瞼欠損の治療に対する基本コンセプト,すなわち,「眼瞼欠損は眼瞼の組織で再建」すべきことを強調しました。「眼球」は非常にデリケートな臓器であり,知覚神経が密に分布していますが,幾度となく繰り返される瞬目において,われわれは眼瞼の存在を自覚することはありません。その存在が「自覚」されてはならない「眼瞼」を再建するためには,それらしく「形を整える」だけでは十分ではなく,「機能」までをも含めた再建が要求されます。教科書的には「良い」とされてきた再建手法も,それが適切でない場面にしばしば遭遇します(図1,2)。このような場合,眼表面は傷害され,患者は頑固な眼不快感を訴えます。

 本稿では,眼瞼欠損に対する具体的な修復方法を「目にやさしい」という観点から解説していきます。もちろん,美容的配慮も行っての話ですよ!

海外留学不安とFUN・第3回

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研究の不安

 日本では主に病院で過ごす時間が多く,研究に費やす時間はそれほど多くありませんでした。当時は周りも同じような環境でしたが,研究留学すると研究一筋でやってきた人たちのなかに飛び込まなくてはいけません。特に渡米してから半年くらいは苦しい時期がありました。

 アメリカには,多くの国から博士研究員が渡航してきています。医師も何人かいますが,日本人医師は異質で「最初から日本に帰る気でいる」と認識されており,シビアに競争相手として見られないので,ある程度仲良くできる反面,いまいち入り込めないところがあります。よく考えてみると,日本で留学の“FUN”といわれているような要素を他の人が求めていることが稀ですから仕方がない部分もあります。日本人慣れしていない研究室だったらまた違った印象だったかもしれません。

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要約 目的:Acremonium属真菌による硝子体手術後に発症した眼内炎の報告。

症例:75歳女性が眼内炎として紹介受診した。3週前に右眼の網膜前膜に対し,硝子体手術と水晶体再建術を他医で受けていた。

所見と経過:矯正視力は右0.7,左1.2であり,右眼の前房に細胞浸潤と強角膜切開創からフィブリン析出があった。術後遅発性眼内炎と診断した。前房を洗浄し,抗菌薬を眼内と全身に投与して,前房所見は軽快した。1か月後に眼内炎が再発し,前房洗浄または硝子体手術を11回行った。前房水または硝子体の細菌,ウイルス,真菌についての培養は,一貫して陰性であった。初診から27週後に瞳孔縁に白色塊が生じ,培養でAcremonium属の真菌が検出された。ボリコナゾールの内服と点眼で眼内炎は治癒した。毛様体扁平部の白色塊の増殖で網膜剝離が生じ,指数弁となった。

結論:Acremonium属の真菌による眼内炎は,経過が緩徐で難治性であったが,ボリコナゾールの点眼と全身投与が奏効した。

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要約 目的:3D Visual Function Trainer-ORTe®(ORTe)を用いた弱視訓練の成績の報告。

対象と方法:不同視による弱視者11例を対象とした。男児5例,女児6例で,年齢は4〜9歳,平均6.2歳であった。訓練開始時の弱視眼の視力は全例が0.4以下で,屈折は+2.5〜+8.0D,平均+6.07Dであった。全例に完全屈折矯正眼鏡を装用させ,月1回のORTeによる訓練を1.7±1.3年間行った。

結果:訓練により,全例で1.0の視力が得られた。うち3例では屈折矯正とORTeによる訓練が行われ,8例ではこれに加えて訓練時に3時間の健眼遮蔽が行われた。

結論:不等視弱視の小児に対する完全屈折とORTeによる弱視訓練により,1.0の視力が得られた。

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要約 目的:抗凝固薬や抗血小板薬を内服中,あるいは直前まで服用していた患者の斜視手術における抗凝固剤などの影響について報告する。

方法:名古屋大学病院で局所麻酔下での斜視手術(直筋の前転,後転術)を施行した10人(抗凝固薬使用2人,抗血小板薬使用8人)について,手術時間,休薬状況,手術1週間前のプロトロンビン国際標準化比,出血性合併症の有無について調べた。

結果:抗凝固薬は1人が継続,1人がヘパリンナトリウム置換(休薬4日),抗血小板薬は5人が中止(14.7±13.3日),2人が継続,1人がダルテパリンナトリウム置換(8日)であった。イコサペント酸エチルの使用例で重度の結膜下出血が1人あった他,出血性合併症はなかった。

結論:内服の継続および中止例のいずれも重篤な合併症を起こさなかった。

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要約 目的:広島大学病院でのバルベルト緑内障インプラント(BGI)の術後成績の報告。

対象と方法:過去28か月間にBGI挿入手術を行った53例56眼を対象とした。すべて日本人で,男性33眼,女性23眼であり,年齢は1〜87歳,平均53歳である。内訳は,血管新生緑内障17眼,続発緑内障16眼,原発開放隅角緑内障6眼である。緑内障手術の既往は2.1±2.0回であり,眼圧,点眼スコア,角膜内皮細胞,合併症について,平均12.1か月の経過を観察した。眼圧が5mmHg以下,22mmHg以上,眼圧が術前の20%以下に低下,または手術を必要とする合併症が生じた場合を死亡とし,それ以外を生存とした。

結果:眼圧の平均値は,術前30.2±9.3mmHg,術後12か月11.8±3.9mmHgで,有意に下降した。点眼スコアは術前3.1±0.9,術後1.2±1.3で,1年生存率は76.8%であった。BGI 250を用いた40眼と,BGI 350を用いた16眼とで成績の差はなかった。21眼で測定した角膜内皮細胞数は,術後6か月で平均6.3%減少した。

結論:難治性緑内障に対するBGI挿入術は,1年後に56眼中43眼(77%)で有効であった。この成績は,海外での報告とほぼ同等である。

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 「感染症診療は日本の医療で遅れている分野である」というニュアンスのコメントを見たり聞いたりする人も多いのではないだろうか? 筆者自身も感染症診療や臨床推論に関連する講演でも頻用するが,同時にこの数年で感染症診療のボトムアップが進んでいるのを実感する。その最大の貢献者はIDATEN(Infectious Diseases Association of Teaching and Education of Nippon)と言っても過言ではない。もしIDATENという言葉にピンとこない方がおられれば,HPの閲覧や周囲の若手医師に「IDATENって何?」ときかれることをお薦めする1)

 さて,IDATENは過去にも複数の書籍を刊行している2)。それぞれ秀逸であるが,今回はセミナー実況中継「風」の体裁で,施設内・地域内での感染症診療の質向上に心強い1冊として出版された。セミナーは夏と冬に行われているが,日程やあまりの人気で「狭き門」となっている。サマーセミナーはBasic編と位置付けられているが,「風邪」を含めてよくある感染症から,比較的稀で対応困難になりかねない疾患・状態への備え(海外渡航帰りの発熱やHIV診療,集中治療),感染症診療の原則や小児診療,予防(ワクチン)についても網羅されおり,大変ぜいたくなセミナーである。これらがUpdateされ,カラー図表が豊富な書籍として一般公開されたことは,本当にありがたいことである。個人的には筆者自身が施設責任者としてかかわった2013年の「IDATEN Summerセミナーin福知山」がBaseになっているのも感慨深い3)

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欧文目次

ことば・ことば・ことば 新
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 アルゴンレーザーが実用化されたのは1965年なので,今年で51年目になります。

 そもそもレーザーというものが発明されたのは1960年で,固体のルビーレーザーでした。いちど先鞭がつくとあとは速く,翌年にはヘリウム・ネオン(HeNe)が開発され,クリオプトンやヤグレーザーが続きます。

べらどんな 猫の目
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 「ネコの本」の人気が高い。この現象には,日高敏隆(1930-2009)の寄与が大きい。本来は昆虫学者で,「チョウはなぜヒラヒラ飛ぶか」の研究で学界に登場した。「ネコはなぜわがままか」も楽しい読みものである。

 漱石の「吾輩は…」は長過ぎるので載っていないが,「にゃんそろじー」という本も最近でた。英語のanthologyをもじったもので,これには「文選」や「詩華集」の意味がある。

学会・研究会 ご案内

次号予告

希望掲載欄

あとがき 中澤 満
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 2016年3月号をお届けします。今月号から第69回日本臨床眼科学会で発表された報告の原著論文が掲載されます。興味深い症例の報告や臨床研究がみられます。最新の治療法を施行された眼に対する新たな知見がみられ,さらに色々と考察を深める必要性を感じさせます。例えば,佐藤栄寿氏らの老視治療用角膜インレー挿入眼の硝子体手術の報告では,角膜インレーが挿入された眼での眼底観察やレーザー治療の際に問題となりうる点などが考察されています。また,渡邊浩一郎氏らの蝶形骨洞部悪性腫瘍に対する重粒子線治療後に発症した放射線網膜症の報告にも注目する必要があります。眼窩悪性腫瘍に対する重粒子線治療は今後増加することが予想されますが,照射したらそれでよしということには必ずしもならず,腫瘍組織のみならず眼球にも注意深い経過観察が必要で,うっかりすると網膜虚血から血管新生緑内障を発症しかねません。田岡梨奈氏らの報告では,眼内鉄片異物へのMRI検査を行おうとしたら患者さんが痛がったため撮影を中止できたからよかったものの,そのまま施行していたらどうなっていたのでしょうね。

 「今月の話題」は井上俊洋氏による,これから日本にも登場することが期待される新しい眼圧下降薬と薬物送達法および超音波による線維柱帯形成術などが大変わかりやすく紹介されています。「緑内障道場」では内藤知子氏から呈示された症例に対して,大鳥安正氏と木内良明氏による非常に詳細なHumphrey視野とOCT所見の診かたと考え方が紹介されています。緑内障は慢性疾患で患者数も多く,忙しい外来ではとかく見逃されやすい視野検査やOCT所見もこのような視点で考えながら診なければならないのかと今更ながら大変勉強になりました。柿﨑裕彦氏の「目指せ!眼の形成外科エキスパート」はお見事という他ありません。眼形成外科の考え方によってより優れた手術方法が広く普及することを祈らずにはいられません。

基本情報

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臨床眼科
70巻3号 (2016年3月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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