- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
2016年3月号をお届けします。今月号から第69回日本臨床眼科学会で発表された報告の原著論文が掲載されます。興味深い症例の報告や臨床研究がみられます。最新の治療法を施行された眼に対する新たな知見がみられ,さらに色々と考察を深める必要性を感じさせます。例えば,佐藤栄寿氏らの老視治療用角膜インレー挿入眼の硝子体手術の報告では,角膜インレーが挿入された眼での眼底観察やレーザー治療の際に問題となりうる点などが考察されています。また,渡邊浩一郎氏らの蝶形骨洞部悪性腫瘍に対する重粒子線治療後に発症した放射線網膜症の報告にも注目する必要があります。眼窩悪性腫瘍に対する重粒子線治療は今後増加することが予想されますが,照射したらそれでよしということには必ずしもならず,腫瘍組織のみならず眼球にも注意深い経過観察が必要で,うっかりすると網膜虚血から血管新生緑内障を発症しかねません。田岡梨奈氏らの報告では,眼内鉄片異物へのMRI検査を行おうとしたら患者さんが痛がったため撮影を中止できたからよかったものの,そのまま施行していたらどうなっていたのでしょうね。
「今月の話題」は井上俊洋氏による,これから日本にも登場することが期待される新しい眼圧下降薬と薬物送達法および超音波による線維柱帯形成術などが大変わかりやすく紹介されています。「緑内障道場」では内藤知子氏から呈示された症例に対して,大鳥安正氏と木内良明氏による非常に詳細なHumphrey視野とOCT所見の診かたと考え方が紹介されています。緑内障は慢性疾患で患者数も多く,忙しい外来ではとかく見逃されやすい視野検査やOCT所見もこのような視点で考えながら診なければならないのかと今更ながら大変勉強になりました。柿﨑裕彦氏の「目指せ!眼の形成外科エキスパート」はお見事という他ありません。眼形成外科の考え方によってより優れた手術方法が広く普及することを祈らずにはいられません。
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.