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はじめに
この分野,柿﨑のライフワークです。この分野を勉強するためだけにイギリスやオーストラリアに留学したといっても過言ではありません。日本で常識となっていた考え方や方法と全く異なった再建を初めて目の当たりにしたとき,驚きを通り越して感動すら覚えたものです。
眼瞼の悪性腫瘍の切除後や外傷ではかなりの量の眼瞼組織が欠損しますが,この状態では「眼」の恒常性が失われてしまいます。先天眼瞼欠損でも眼瞼組織が欠損しています。「眼」の機能を維持するためにはその欠損を補塡して,眼瞼を構造的・機能的に良好な状態に修復しなくてはなりません。眼の形成外科の理念は,「形成外科的な手技を用いて眼科治療を行うこと」1),すなわち,視機能の質(quality of vision:QOV)とのかかわりのなかに眼の形成外科の存在価値があるわけです。
以前の本誌の特集で「眼にやさしい眼瞼腫瘍の切除後再建」(66巻13号掲載)について解説し,眼瞼欠損の治療に対する基本コンセプト,すなわち,「眼瞼欠損は眼瞼の組織で再建」すべきことを強調しました。「眼球」は非常にデリケートな臓器であり,知覚神経が密に分布していますが,幾度となく繰り返される瞬目において,われわれは眼瞼の存在を自覚することはありません。その存在が「自覚」されてはならない「眼瞼」を再建するためには,それらしく「形を整える」だけでは十分ではなく,「機能」までをも含めた再建が要求されます。教科書的には「良い」とされてきた再建手法も,それが適切でない場面にしばしば遭遇します(図1,2)。このような場合,眼表面は傷害され,患者は頑固な眼不快感を訴えます。
本稿では,眼瞼欠損に対する具体的な修復方法を「目にやさしい」という観点から解説していきます。もちろん,美容的配慮も行っての話ですよ!
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