公衆衛生 77巻6号 (2013年6月)

特集 若者の精神保健②

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 青年期は身体的な健康問題を抱えることは少ない時期です.

 しかし,精神的にはさまざまな問題を抱える時期であり,また統合失調症に代表される精神疾患を発病しやすい時期でもあります.

自傷行為 松本 俊彦
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はじめに

 リストカットに代表される自傷行為は,今や学校保健における主要な課題の1つとなっている.今日,刃物で故意に自らの体を傷つけるタイプの自傷行為に限っても,中学生・高校生の約1割(男子7.5%,女子12.1%)に自傷経験がある1).そして,中学校に勤務する養護教諭の96.3%,高校に勤務する養護教諭の99.0%が,自傷する生徒に対応した経験があり,そうした経験を持つ養護教諭の大半が,「どう対応してよいか分からない」と感じている1)

 本稿では,若者における自傷行為が持つ意味や自殺との関係,そして,予防のあり方について私見を述べさせていただきたい.

家庭内暴力 伴 茂樹
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はじめに

 昨今,世の中は猛烈なスピードで進歩している.それと同時に子どもを取り巻く環境もまた日々変化している.科学技術の進歩が生活の利便性を改善させるように子どもたちの問題も改善されればいいが,そうはなっていないようだ.不登校,ひきこもり,家庭内暴力といった問題はますます増え,内容も複雑になっているのだ.

 筆者は青少年育成クラブ(鹿児島でゴルフを通して不登校,ひきこもり,家庭内暴力などの問題を抱えた子どもたちを育成する施設)において40年以上にわたって前述のような問題に現場で携わってきた.その中で,訪問中に家庭内暴力の現場もたくさん見てきた.このたび家庭内暴力について執筆を依頼されたが,現場での子ども,親からの声,一緒に生活する中での経験から家庭内暴力について考えを述べていこうと思う.

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はじめに

 平成23(2011)年秋以降,違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)による健康被害や摂取者による自動車事故などが増加し,大きな社会問題となっている.実店舗,およびネット販売を合わせた国内の違法ドラッグ販売店舗数は,平成23(2011)年度末に389店舗と報告されており1),大都市の繁華街のみならず郊外の住宅地へも店舗が進出している.

 従来,薬物乱用防止教育の対象となっていた薬物は,覚醒剤,大麻,麻薬,シンナーなど有機溶剤であった.しかし,この違法ドラッグ問題の拡大により,内閣府薬物乱用対策会議は,平成24(2012)年8月に「合法ハーブ等と称して販売される薬物に関する当面の乱用防止対策」として,第三次薬物乱用防止五か年戦略に「多様化する乱用薬物への対応」として示された基本方針に加えて,違法ドラッグに対する監視指導・取締りおよび予防啓発の強化を図ることとした2)

 本稿では,若者の違法薬物使用実態と行政の薬物乱用防止対策について,違法ドラッグを中心に概説する.

若者の薬物依存の治療 小林 桜児
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はじめに

 思春期発症の薬物依存患者と成人発症患者との最も大きな違いは,社会化の程度にある.若者の薬物依存患者の多くは複雑な生育環境を背負っており,不利な養育条件が多いほど,それだけ薬物乱用の発症リスクも増加する1).彼らはまさに社会化のプロセスの真っ最中に困難を抱えてしまっているのであり,しばしば最低限の対人コミュニケーションの技術や社会適応能力さえ不十分な状態で事例化する.地域医療,福祉,行政のさまざまな場面に登場する彼らと向き合う援助者にとって,その衝動的な言動や,複雑な背景を抱えた保護者とのやりとりは時に重い負担となり,燃え尽きや忌避感情の発生要因となることも少なくない.

 わが国では,思春期の薬物依存に特化した治療研究はほとんど皆無といってよい状況であるが,本稿では現状で可能な支援のあり方,考え方について概説したい.

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はじめに

 地域で生活しながら,精神的な問題のために支援を必要としている若者たちが少なくない.なかなか実態が見えてこないそうした青年たちのためのサポートについて,個々の事例に関してはかかわりを持つ人たちが何とか手を尽くすとしても,社会全体でどのようなサポートシステムを用意すればよいのかは,なかなか見えてきにくいのが現状であろう.

 本特集の中で筆者に与えられた役割は,サポートを必要とするような若者の事例を提示しながら,医療・教育・福祉などの連携のあり方を探ることである.

 ここでは青年たちに対する支援の差し当たりのゴールをその人の心理・社会的な自立と考えておきたい.その際の「自立」を自己流に定義すれば,外側から見れば「自発的に社会的な判断ができるようになること」であり,内側から見れば「自分という人間を引き受ける覚悟を固めること」である.学歴や経済力はとりあえず二次的なものと考えておくことにしたい.そうすると,ある程度の知能や学歴はあるのに,社会的な判断ができなかったり自分を引き受けきれなかったりするために自立が難しくなっている青年たちの姿が浮かんでくるのである.

 その際に,自立を難しくしている要因は多様であろうが,発達障害のある青年たちを中心に考えることにする.あえてそうする理由の1つは,本特集で発達障害問題はあちこちに顔を出しそうではあるものの,特別に論ずる機会が少なそうにみえるためである.

 事例から見ていくことにしよう.事例はいずれも5年以上外来通院を継続しており,精神療法のみでの展開には限界があり,地域のリソースとの連携を行いながら支援を続けているので,その点を中心に紹介していくことにする.なお,個人情報に配慮して,個人が同定できる情報を割愛するか大幅に改変してある.

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はじめに

 不登校・引きこもりといった退却する若者に精神科医療は非力であった,と評したら過言であろうか.仮に精神疾患に由来する退却であっても,症状が治癒しても退却の態勢が保続するのは,彼らに疾病以前に何かしら社会へ出る力が不足しているか,精神科医療に退却を治す力が欠けているからと見るべきであろう.

 不登校の理由を生徒の心に現行の学校教育が適合しなくなったという学校病理に,若年無業者・引きこもりを社会経済不況に,と社会の病理へと外在化できるのだが,しかし退却する彼らに社会に参加していく上でのスキルが弱いのも確かであり,また精神科医療にもその力を育む治療に限界があったといえよう.

 2点の限界である.まずは診察室という1対1の治療構造上の制約である.カウンセリングなどの心理療法は患者を癒せても育成的な体験を拡張する機能としては弱いし,また薬物療法は症状治癒には有益でも患者のスキル開発では無力といった限界である.つまり,精神科外来に体験的に自己を向上させていく教育モデルの活動が要請されるゆえんである.内閣府・厚労省は引きこもる若者の自立支援をうたい,さまざまな施策を採ってきたが成果を上げていないのは,退却する若者には就労自立の前に,「社会化の育成」が必要とされているからだと思う.

 「長信田の森(当院)」では精神科外来という医学モデルに成長促進的な教育モデルを折衷した,いわば「育む精神科医療」を展開してきた.その臨床実践から退却内閉する若者を社会化へと育む精神科デイケアの意義について論じたい.

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はじめに

 ひきこもりの若者への地域での支援活動は,行政・民間問わずさまざまな機関や団体で行われており,横浜市においても行政機関,NPO法人,企業などが支援に取り組んでいる.本稿では,横浜型の若者支援体制と,横浜市青少年相談センターにおける支援の実際を通して,地域でのひきこもりの若者への支援活動の現状と課題について述べる.

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はじめに

 大阪ダルクは1993年に大阪市内で開設した薬物依存回復施設である.20年間の活動の中で若い薬物依存者の相談は時々あるものの,実際に大阪ダルクにつながって回復の道を歩み始めた者の数は決して多いわけではない.

 時代の移り変わりとともに,大阪ダルクとその外郭団体であるFreedom(大阪ダルクは薬物依存当事者の相談,デイケアおよび入所プログラムの提供を行い,一方,Freedomでは,電話相談,家族の来所相談,家族プログラムの提供,啓発活動などを実施している)での薬物相談は,大きく次の3つのタイプに分けることができる.

 A群:薬物乱用,急性中毒.いまだ依存症には至っていない.使用初期の乱用者.脱法ハーブなどの急性中毒や処方薬のODなど.

 B群:薬物依存.薬物依存以外の精神疾患も特になく,薬物をやめてしばらくしたら,仕事に就いたり,家族との関係をやり直したりすことができる.

 C群:重複障害.薬物依存に加え,薬物依存以外の精神疾患を持っている.後遺症,統合失調症,うつ,気分障害,知的障害など.

 2006年の障害者自立支援法と2007年施行の「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」の施行によってダルクのあり様は様変わりする.C群の重複障害を持った薬物依存者の割合が年々増加していったのである.刑事施設からつながるケースが増えることにより大阪ダルクの利用者の8割近くが覚せい剤依存症者となってきており,20歳代後半~40歳代の年齢層が中核を占めている.しかも,その多くが重複障害者であり,制度に連動する施設としての質の変容は明らかであった.だが,若い薬物依存者,乱用者の多くは,A群,B群に属しており,もっと若者の回復にスポットを当てるならば支援の枠組みを問い直す必要があるだろう.

視点

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はじめに

 わが国は,超少子高齢・人口減少社会に入り,今後四半世紀は年齢構造,死因構造および地理的人口分布も大きく変化し,それに影響を受けていく中で,健康問題も複雑・多様化していくことが予想される.さらに,インターネットが普及し世界のグローバル化・フラット化が進行するなど社会構造も大きく変わってきた.それに伴い住民の保健ニーズも変化し,これらに対応する保健医療分野の人材育成とその資質の向上が喫緊の課題といえる.

 例えば,「地球規模の課題として新型インフルエンザ,HIV/AIDS,糖尿病をはじめとする生活習慣病,高齢化社会への対応といった保健関連問題の解決リーダーシップをとれる人材を育成する」を1例とすれば,①今後を見据えた社会ではどのような人材が求められているのか,②どのようなコンピテンシー(特定の職務や状況下において,期待される成果に結びつけることのできる個人の行動様式や思考特性)を身に付ける必要があるのか,および③具体的なカリキュラムはどうあるべきかなど,直近の課題解決だけでなく,10年後,20年後に求められる保健医療分野の人材像をできるだけ具体的に考えていかなければならない.

 このような状況に対応するため保健システムの一環である良質な保健医療サービスの提供を担う保健医療人材の量的拡大,人員配置や構成などの量的問題と資質(コンピテンシー)の向上が緊急課題となっている.米国の公衆衛生分野を見ると,公衆衛生大学院,行政機関および研修センターにおいて公衆衛生プロフェッショナルの育成は,共通コンピテンシー,あるいは専門分野別コンピテンシーに基づく教育・研修が主流となっている.今回は,国際保健医療協力の場における職務課題の1つである個々人が協力的にかかわり合いながら課題に取り組むことによって期待される最終成果を得るプロジェクトを想定し,以下8つの技術領域にわたる共通コンピテンシー,①分析・評価能力,②公衆衛生学の基本能力,③文化的コンピテンシー,④コミュニケーション能力,⑤コミュニティにおける公衆衛生実践能力,⑥財政計画とマネジメント能力,⑦リーダーシップとシステム思考,および⑧政策策定とプログラム策定の向上を目指した海外合同臨地訓練(海外合臨),を例として考えてみたい.

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2年という「節目」と3年目へ

1.疲れがたまっている被災地

 「2011.3.11」から2年が経過し,被災地は三回忌を迎えた.この2年間,多くの人がそれぞれの立場でできることを進め,そのおかげで被災地は一歩ずつではあるが,でも着実に復旧・復興し続け,前に進んできている.震災から1年の節目の時点で,「支援の終わり,協働の始まり」1)ということを感じ,事業を復旧させることを目的化しない,直接的な被災の有無や程度の差に関係なく地域全体にかかわることの大切さ,被災地の実情に合わせて一緒に進もうとする姿勢,待つ勇気を持つことの重要性を発信した.

 一周忌は悲しみを振り返り,思いを共有する節目であった.しかし,陸前高田市(以下,現地もしくは被災地)に通い続けていると,明らかに1年目と2年目の節目の違いを感じる.地域全体が復興に向かって進んでいるのとは裏腹に地域全体が「ずいぶん疲れがたまっている」という印象を受けている.法要で一周忌,三回忌,七回忌といった節目に集うこと,そして特に三回忌が設定されていることの意味に学ぶ必要があると感じている.「災害を支える公衆衛生ネットワーク―東日本大震災からの復旧,復興に学ぶ」の連載は平成25(2013)年3月号でひと区切りとなったが,今後,四半期に1回程度のペースで3年目を迎えている陸前高田市の今を報告する.

連載 中国高齢者の健康と福祉・3

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はじめに

 2012年末,中国政府はすべての都市部,農村部の住民をカバーする養老保険制度(以下,年金制度)の整備を完了したと発表した.つまり中国の全国民は自らの就業状況に応じて,「都市就業者基本年金」(政府機関や公共事業部門の公務員,および国営企業や都市民間企業の就業者を対象)や,「新型農村社会年金」,「都市非就業者社会年金」の3大公的年金(日本の国民年金と厚生年金に当たる)のいずれかに加入することが可能となった.しかし中国の年金制度の実施に当たっては,大枠ができたものの課題が山積している.より健全な制度の運営を図るためには,各種の制度間における公平性を強化するとともに,被保険者の転職や転居などの就業状況の変化で生ずる「移動(ポータビリティ)問題」をなくして,保険制度の継続性を保証するなど,構造上の抜本改革を進めることが求められている.

 本稿は,中国が1980年代以降において,都市部と農村部で実施した年金制度改革の概要について紹介するとともに,そこから見えてきた主な問題点を検討する.また中国の将来を見据えて,年金制度改革およびその健全化を図るための若干の建議を行いたい.

連載 この人に聞きたい!・3

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抗加齢学とは何か

 今日の抗加齢医学の発展の源をたどれば,米国のアンチエイジング学会A4M(American Academy of Anti-Aging Medicine)の学会の流れから派生してきている.この米国のアンチエイジング医学学会は1990年代に盛んに行われた,成長ホルモン療法を軸にしたホルモン補充療法とサプリメントによる栄養療法を基軸に発展してきている.A4Mが,他の代替医療学会と違う点は,老化それ自体を病気と考えた点にある.したがって,病気を治療するのと同様の基準で老化そのものを治療対象とした点であった.

 一方,日本で行われている抗加齢医学は,老化を病気と考えていない.むしろ生理学的老化は病気ではなく,治療対象でないと考えた.高齢期に発症する病気は病理学的老化,あるいは病的老化ととらえて,治療対象と考えている点が米国の学会の流れと大きく異なる点である.

連載 講座/健康で持続的な働き甲斐のある労働へ―新しい仕組みをつくろう・15

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 多様化する就労条件の下で過重労働や労働関連の死傷病が大きな社会問題となっている.この現状から,法体系を含む職域安全衛生の組織体制を見直す時期にある.とりわけ,小規模事業場・非正規雇用を含め働く全ての人の安全と健康に効果的に取り組む体制が重要である.その解決には,国際標準となっている労働安全衛生マネジメントシステムを推進しながら,安全と健康を切り離さずに労働者が参画して予防に力点を置く責任体制が欠かせない.そして過重労働・メンタルヘルスと職場環境にわたる就労条件を自主改善していく計画・実行手順をすべての職場で支援する職場保健サービスが求められる.関連ILO条約を批准して,自主的改善に労働者の参加を担保する枠組みに移行する必要がある.

連載 「笑門来健」笑う門には健康来る!~笑いを生かした健康づくり・15

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 前回,誰でも笑える方法である「笑いヨガ」を紹介し,「笑いヨガ」が落語と比べても遜色なくストレスホルモンであるコルチゾールを減少させる効果があることを示しました.「笑いヨガ」は笑いの体操と,ヨガの呼吸法をあわせた健康法で,冗談やユーモアがなくても笑えることからわが国でも愛好者が増えつつあります1).しかしながら,わが国において,「笑いヨガ」の中長期的な効果を検討した報告はありませんでした.そこで,「笑いヨガ」を用いた健康教室「笑って健康教室」(ベタなネーミングですが)を開催することにしました.

連載 公衆衛生Up-To-Date・6

[国立がん研究センター発信:その2]

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はじめに

 「がん対策基本法1)」は,日本人の死因で最も多い「がん」の対策のために,国や地域公共団体などの責務を明確にし,基本的な施策について述べた法律です.平成18(2006)年6月に成立しましたので,それほど古い法律ではありません.基本的な施策には,「がんの予防及び早期発見の推進」,「がん医療の均てん化の促進等」,「がん研究の推進」が示されています.特に,「がん医療の均てん化の促進等」のために,3つのミッションが掲げられています.具体的には,①専門的な知識および技能を有する医療従事者の育成,②医療機関の整備,③がん患者の療養生活の質の維持向上です.

 「がん対策基本法」が成立して6年が経過した今,がん医療に関係する専門家の育成について,特にがん薬物療法の側面から,達成された部分といまだ不十分な部分について考えてみたいと思います.

連載 リレー連載・列島ランナー・51

地域診断と公衆衛生活動 田代 敦志
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はじめに

 私は公衆衛生の世界で仕事をするようになって12年目に入りましたが,この間,公衆衛生活動を取り巻く環境も大きく変わってきたように思います.入職当時はインターネットにつながるパソコンは課に数台,検診データは紙ベースで管理されていました.その後職場においてもIT化が進み,膨大なデータ処理が手軽に行えるようになったことで,情報リテラシーを現場に生かして実践的な活動をされている方々へ支援ができるのではないかという期待を持っています.

 今回はそのような取り組みの具体例と今後の健康づくりへの応用の可能性をご紹介したいと思います.

連載 衛生行政キーワード・88

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はじめに

 わが国の難病対策は,昭和47(1972)年に「難病対策要綱」が策定され,本格的に推進されるようになって40年が経過した.その間,医療の進歩や患者およびその家族のニーズの多様化,社会・経済状況も変化してきた.それに伴い原因の解明すら未確立の疾患でも研究事業や医療費助成の対象に選定されていないものがあることなど難病の疾患間で不公平感があることや,医療費助成について都道府県の超過負担が続いており,この解消が求められていること,難病患者の長期にわたる療養と社会生活を支える総合的な対策が不十分であることなどさまざまな課題が指摘されている.

 そのため,厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会は,今後の難病対策の在り方について一昨年9月より審議を行い,今年1月25日には「難病対策の改革について(提言)」を取りまとめた.本稿ではその内容について概説したい.

資料

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はじめに

 WHOの天然痘根絶成功は,残念ながら,永遠に続くかどうか楽観視できないという見方も出てきた.最近の世界各地で起こっている政治紛争,天然痘ウイルスは合成できるという予測,テロリストが未報告の天然痘ウイルスを兵器として使用するかもしれないという憂慮など,このように,天然痘はまた大きな社会医学の問題となりつつある.いずれにしろ,これに対する的確な処理は,今後の人類の生存という点から見ても大切な課題である.テロが起こる確率は低いであろうが,もし起こればその被害は人類生存の危機となるかもしれない.ではどのようにすればよいか.本稿では世界的対策を述べる.

お知らせ

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テーマ:「在宅ケアの推進とその方略―臨床・退院支援・地域における看護の連携」

主催:大分県立看護科学大学

共催:大分県看護協会

日時:2013年10/26(土)12:30~17:00

会場:別府ビーコンプラザ 国際会議場

ジュネーブからのメッセージ

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 この原稿が読者の方々の目に触れるのは,5年おきに日本とアフリカ諸国首脳が対話する「第五回アフリカ開発会議」の直後.なぜアフリカといった地球の裏側まで苦しい財政状況の日本が援助するのかと素朴な疑問を持たれる方も多かろうと思う.われわれからすれば,健康という基本的な人権確保の人道的価値に加えて,アジア・ラテンアメリカ諸国が次々と低所得国の状況を離脱していった後,とり残された国々と手に手を携えて発展の道を歩みたいから,ということになるのだが,日本という国の立場からはどうとらえたらよいのだろうか.

 まず,未知の強い感染症は,途上国から蔓延することが近年の経験である.これらの国の衛生状態が改善して感染症が一挙に世界に広がることが防げるとしたら,日本国民のまさに「専守防衛」になろう.そして,途上国の国民の健康が向上し,生産力があがれば所得も増え,政情も安定して,資源が安定的に得られるのみならず,日本製品の新たな市場になる可能性が増えるなど,貿易によって世界で生きていかざるを得ない日本にとって,途上国の発展が重要なことが理屈としてはお分かりになるだろう.

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 1882年にコッホが結核菌を発見し,1944年にワクスマンらがストレプトマイシンを抽出,その後次々と有効な薬物が登場し,結核による死亡者は20世紀後半には激減した.それでも潜在性結核感染者は世界人口の3分の1,わが国でも70歳以上の高齢者では半数を超える.毎年世界で約880万人が結核に罹患し,約140万人が死亡する,マラリアと並ぶ世界最大の感染症である.その9割を超えるアフリカ,アジアの高まん延地域の罹患率は,10万人当たり100人以上である.先進国における大都市では,人口の集中,貧困,過労などのリスクにより罹患率は高い.ではわが国はどうなのか.第二次世界大戦後はそれまで200人を超えていた罹患率が急激に低下したが,それでも欧米には及ばず10万人当たり18と中まん延地域である.高齢化,HIV感染者の増加,外国人の増加などが結核の罹患率低下の障害となっている.したがって,誰でもどこでも遭遇するチャンスがある.しかも最近は多剤耐性菌という厄介な問題がある.

 本書は,最近の結核医療のめまぐるしい変遷に対応すべく改訂された第4版である.疫学および細菌学的に敵(結核菌)の策略を知ることができる.そして,patients' delayとdoctors' delayを防ぐコツや新規診断技術の解説によって早期診断の目を養える.また治療に至ってはその基本および新規薬剤の解説と,耐性菌に対する治療や院内感染対策に至るまで,微に入り細に入り目の前で教えてもらっているかのようである.各項目には最初にtake home messageとしてのポイントと,最後に将来への展望が語られている.巻末の症例提示を見ると,結核菌がいかに身を隠すことに秀でた細菌であるか実感させられる.

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 冒頭は,国によって,また時代によっても基準は違うでしょうが,現代の日本であれば,当然ネグレクトとして児童虐待と判断されるのではないか,と思えるようなシーンで度肝を抜かれます.幼い3人の姉妹が,自分たちだけで食事の支度をしています.長姉の英英(インイン)は10歳.次姉の珍珍(チェンチェン)と末妹の粉粉(フェンフェン).次姉は6歳,末娘は4歳,2人の妹の面倒を姉の英英がみているようですが,2人は,英英のいうことをよく聞きません.3人の姉妹の掛け合いは少し笑いも誘いますが,舞台は雲南,中国のなかでも最貧と言われる地域で,この姉妹の家も貧しそうです.母親や父親の影も見えません.

 これがドキュメンタリーかと思うほど,鮮やかな導入でワン・ビン監督は冒頭から観客の心をつかんでいきます.ドキュメンタリー映画ですが,特にナレーションは入りません.字幕による最小限の姉妹の紹介があるだけで,ワン・ビン監督は,たんたんと姉妹の日常をカメラで追っていきます.しかし,そのたんたんとした映像が圧倒的な迫力で観客に迫ってきます.ワンビン監督の力量を強く感じます.観客は姉妹の置かれている,そして雲南の置かれている厳しい状況を理解することになります.

予防と臨床のはざまで

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 何度か本稿でもご紹介した,多職種産業保健スタッフの研究会であるさんぽ会(http://sanpokai.umin.jp/)は,今年設立20周年を迎えました.もともと私が大学院時代にお世話になった武藤孝司先生(現獨協医科大学教授)が,93年に順天堂大学医学部公衆衛生学教室内の研究会として立ち上げ,2000年からは月例会の会場を保健同人社へ変更し,私が事務局をお引き受けして継続してきました.現在では30名弱の幹事が,年2回の幹事会で月例会や夏季セミナーのテーマを決定し,月例会のコーディネーターとして,その時々の産業保健課題にフォーカスして議論を行っています.月例会には,毎月70~100名程度の医師,保健師,栄養士,運動指導士,人事労務や健保組合のスタッフ,アウトソーシング先の医療機関や保健指導機関の方,また多くの大学から職域の健康に関心のある学生も参加するようになりました.

 そんな中,名古屋・東海地区でも,産業保健について多職種で本音で議論し合える場がほしいという機運が高まってきました.まず平成24(2012)年9月に,関東での研究会の運営方法や状況,課題について,お話をさせていただきました(http://www.medical-tt.co.jp/seminar/h240927.html).その後,世話人の方々が中心となり,東海地区での研究会立ち上げについて準備を進めてこられました.そしてついに,4月11日,東海(名古屋)地区での多職種産業保健スタッフの情報交換,議論,研究を目的として,「さんぽ会・東海」が立ち上がりました!AKB...SKEではありませんが,身近な地区に多職種の議論の場が広がることは,とても嬉しく素晴らしいことと思います.

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投稿規定

次号予告・あとがき 西田 茂樹
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 今回は,前回に引き続き「若者の精神保健」の特集です.5月号と6月号の2回合わせて16人の先生方にとても多彩な内容をご執筆いただくことができたと思っています.特に今回は,社会的支援,地域での支援,デイケアなどについて,5人の先生方に,ご執筆いただきました.ぜひ,現場で役立てて頂きたいと思います.

 いわゆる「精神」の問題は,保健所や市町村の現場で,簡単に対応できることは少なく,むしろほとんどが対応に苦慮しているのではないかと思います.加えて,その問題の内容もきわめて多様であり,事例ごとにさまざまな特徴を持っています.しかも長期化し,完全に問題が解決することはないことのほうが普通ではないかと思います.しかし,私たちは対応が困難な事例に地道に根気よく立ち向かっていかなければなりません.今回の特集が,「精神」を担当している公衆衛生従事者の業務の参考になれば幸いです.

基本情報

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公衆衛生
77巻6号 (2013年6月)
電子版ISSN:1882-1170 印刷版ISSN:0368-5187 医学書院

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