特集 若者の精神保健②
若者の薬物依存の治療
小林 桜児
1
1神奈川県立精神医療センターせりがや病院
pp.443-446
発行日 2013年6月15日
Published Date 2013/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102756
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はじめに
思春期発症の薬物依存患者と成人発症患者との最も大きな違いは,社会化の程度にある.若者の薬物依存患者の多くは複雑な生育環境を背負っており,不利な養育条件が多いほど,それだけ薬物乱用の発症リスクも増加する1).彼らはまさに社会化のプロセスの真っ最中に困難を抱えてしまっているのであり,しばしば最低限の対人コミュニケーションの技術や社会適応能力さえ不十分な状態で事例化する.地域医療,福祉,行政のさまざまな場面に登場する彼らと向き合う援助者にとって,その衝動的な言動や,複雑な背景を抱えた保護者とのやりとりは時に重い負担となり,燃え尽きや忌避感情の発生要因となることも少なくない.
わが国では,思春期の薬物依存に特化した治療研究はほとんど皆無といってよい状況であるが,本稿では現状で可能な支援のあり方,考え方について概説したい.
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