映画の時間
―世界から見えない場所三人だけで生きた―三姉妹~雲南の子
桜山 豊夫
pp.509
発行日 2013年6月15日
Published Date 2013/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102774
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冒頭は,国によって,また時代によっても基準は違うでしょうが,現代の日本であれば,当然ネグレクトとして児童虐待と判断されるのではないか,と思えるようなシーンで度肝を抜かれます.幼い3人の姉妹が,自分たちだけで食事の支度をしています.長姉の英英(インイン)は10歳.次姉の珍珍(チェンチェン)と末妹の粉粉(フェンフェン).次姉は6歳,末娘は4歳,2人の妹の面倒を姉の英英がみているようですが,2人は,英英のいうことをよく聞きません.3人の姉妹の掛け合いは少し笑いも誘いますが,舞台は雲南,中国のなかでも最貧と言われる地域で,この姉妹の家も貧しそうです.母親や父親の影も見えません.
これがドキュメンタリーかと思うほど,鮮やかな導入でワン・ビン監督は冒頭から観客の心をつかんでいきます.ドキュメンタリー映画ですが,特にナレーションは入りません.字幕による最小限の姉妹の紹介があるだけで,ワン・ビン監督は,たんたんと姉妹の日常をカメラで追っていきます.しかし,そのたんたんとした映像が圧倒的な迫力で観客に迫ってきます.ワンビン監督の力量を強く感じます.観客は姉妹の置かれている,そして雲南の置かれている厳しい状況を理解することになります.
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