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はじめに
地域で生活しながら,精神的な問題のために支援を必要としている若者たちが少なくない.なかなか実態が見えてこないそうした青年たちのためのサポートについて,個々の事例に関してはかかわりを持つ人たちが何とか手を尽くすとしても,社会全体でどのようなサポートシステムを用意すればよいのかは,なかなか見えてきにくいのが現状であろう.
本特集の中で筆者に与えられた役割は,サポートを必要とするような若者の事例を提示しながら,医療・教育・福祉などの連携のあり方を探ることである.
ここでは青年たちに対する支援の差し当たりのゴールをその人の心理・社会的な自立と考えておきたい.その際の「自立」を自己流に定義すれば,外側から見れば「自発的に社会的な判断ができるようになること」であり,内側から見れば「自分という人間を引き受ける覚悟を固めること」である.学歴や経済力はとりあえず二次的なものと考えておくことにしたい.そうすると,ある程度の知能や学歴はあるのに,社会的な判断ができなかったり自分を引き受けきれなかったりするために自立が難しくなっている青年たちの姿が浮かんでくるのである.
その際に,自立を難しくしている要因は多様であろうが,発達障害のある青年たちを中心に考えることにする.あえてそうする理由の1つは,本特集で発達障害問題はあちこちに顔を出しそうではあるものの,特別に論ずる機会が少なそうにみえるためである.
事例から見ていくことにしよう.事例はいずれも5年以上外来通院を継続しており,精神療法のみでの展開には限界があり,地域のリソースとの連携を行いながら支援を続けているので,その点を中心に紹介していくことにする.なお,個人情報に配慮して,個人が同定できる情報を割愛するか大幅に改変してある.
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