特集 高齢者の事故
高齢者の窒息・誤嚥
向井 美惠
1
1昭和大学歯学部口腔衛生学教室
pp.600-606
発行日 2011年8月15日
Published Date 2011/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102180
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はじめに
高齢者の不慮の事故による死亡者数において,窒息事故の占める割合は多く,平成18年に交通事故死を上回り,その後も両原因の差が広がりつつあるのが現状である(図1).また,死亡総数に対する高齢者の占める割合は多い(表1).
窒息事故の中でも摂食中に窒息事故で死亡する人は,年間4千人を超えており,高齢者が占める割合が高い1).誤嚥・窒息事故の多くは,日常の食事やおやつを食べながら引き起こされており,多くは食物が粉砕されないままに誤嚥されて窒息事故が起こっている.高齢者に限らず,窒息のリスクを軽減するためには「食物の物性を考慮してどのように食べたら安全か」,個々の機能レベルに合わせた安全性が担保された食べ方,噛み方,のみ込み方の指導支援が必要である.また,摂食・嚥下機能障害がある場合には,摂食・嚥下リハビリテーションの治療・訓練や,機能程度に合わせた食べ方の指導が不可欠となる.
窒息に関わる要因は,ヒト側の要因と食品側の要因があるが,これらが複合的に関与して窒息が引き起こされることから,特に高齢者の窒息事故の効果的な予防法やリスクを減らす食べ方などについては,食品の要因以外にも,加齢に伴う窒息の場である咽頭・喉頭の解剖学・生理学的な変化に加えて,高齢者の生活環境などの社会的側面の考慮が必要である.
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