特集 若者の精神保健②
引きこもり・不登校への精神科デイケア―育む精神科医療
児玉 隆治
1
1長信田の森心療クリニック
pp.451-455
発行日 2013年6月15日
Published Date 2013/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102758
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はじめに
不登校・引きこもりといった退却する若者に精神科医療は非力であった,と評したら過言であろうか.仮に精神疾患に由来する退却であっても,症状が治癒しても退却の態勢が保続するのは,彼らに疾病以前に何かしら社会へ出る力が不足しているか,精神科医療に退却を治す力が欠けているからと見るべきであろう.
不登校の理由を生徒の心に現行の学校教育が適合しなくなったという学校病理に,若年無業者・引きこもりを社会経済不況に,と社会の病理へと外在化できるのだが,しかし退却する彼らに社会に参加していく上でのスキルが弱いのも確かであり,また精神科医療にもその力を育む治療に限界があったといえよう.
2点の限界である.まずは診察室という1対1の治療構造上の制約である.カウンセリングなどの心理療法は患者を癒せても育成的な体験を拡張する機能としては弱いし,また薬物療法は症状治癒には有益でも患者のスキル開発では無力といった限界である.つまり,精神科外来に体験的に自己を向上させていく教育モデルの活動が要請されるゆえんである.内閣府・厚労省は引きこもる若者の自立支援をうたい,さまざまな施策を採ってきたが成果を上げていないのは,退却する若者には就労自立の前に,「社会化の育成」が必要とされているからだと思う.
「長信田の森(当院)」では精神科外来という医学モデルに成長促進的な教育モデルを折衷した,いわば「育む精神科医療」を展開してきた.その臨床実践から退却内閉する若者を社会化へと育む精神科デイケアの意義について論じたい.
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