連載 中国高齢者の健康と福祉・3
中国高齢者の年金制度
桂 世勳
1
,
趙 林
2
Gui Shixun
1
,
Cho Rin
2
1中国華東師範大学中国現代城市研究センター・人口研究所
2日中健康福祉協力研究所
pp.472-477
発行日 2013年6月15日
Published Date 2013/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102763
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はじめに
2012年末,中国政府はすべての都市部,農村部の住民をカバーする養老保険制度(以下,年金制度)の整備を完了したと発表した.つまり中国の全国民は自らの就業状況に応じて,「都市就業者基本年金」(政府機関や公共事業部門の公務員,および国営企業や都市民間企業の就業者を対象)や,「新型農村社会年金」,「都市非就業者社会年金」の3大公的年金(日本の国民年金と厚生年金に当たる)のいずれかに加入することが可能となった.しかし中国の年金制度の実施に当たっては,大枠ができたものの課題が山積している.より健全な制度の運営を図るためには,各種の制度間における公平性を強化するとともに,被保険者の転職や転居などの就業状況の変化で生ずる「移動(ポータビリティ)問題」をなくして,保険制度の継続性を保証するなど,構造上の抜本改革を進めることが求められている.
本稿は,中国が1980年代以降において,都市部と農村部で実施した年金制度改革の概要について紹介するとともに,そこから見えてきた主な問題点を検討する.また中国の将来を見据えて,年金制度改革およびその健全化を図るための若干の建議を行いたい.
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