公衆衛生 77巻4号 (2013年4月)

特集 転換期の結核対策―医療と予防

  • 文献概要を表示

 近年の結核対策は1999年の結核緊急事態宣言の発令が大きな転機だったと思われます.結核対策に関わる法制度の改正,新しい検査技術の導入,標準治療の徹底,患者の服薬支援の強化など,保健所の体制,病院の診療体制,結核病床改築など,ソフト面,ハード面ともに大幅な見直しを伴うものでした.

 結核治療については,治療の当初から,保健所と医療機関が協働して患者支援を行うことが当たり前となったことは,特に大きな変化です.

  • 文献概要を表示

はじめに

 わが国の2011年の結核罹患率は人口10万対17.7となり,低まん延時代を迎えつつある.高まん延であった時代の結核患者は若年者が多く,医療は療養所を中心に隔離を目的としており,治療期間も2~3年の長期間を必要としていたが,その後,化学療法の発達によって患者は減少し,治療期間も徐々に短くなった.近年,結核患者の半数以上は70歳以上の高齢者であり,入院期間も70日程度になっている.これらに伴って,結核医療体制の再編が必要になっている.

 以下,結核病学会や厚生科学審議会感染症分科会結核部会における議論を振り返りながら,平成23(2011)年5月に改訂された厚生労働省告示「結核に関する特定感染症予防指針」(以下,予防指針)1)に示された医療体制について概説する.

地域の結核医療

  • 文献概要を表示

はじめに

 結核の管理が結核予防法から感染症法に移行するに伴い,入退院基準が改変され,在院日数は短縮された.結核発生の減少も相俟って,必要とされる病床数は減少の一途にある.同時に病床稼働率は低迷して不採算性が顕在化し,全国で相次いで結核病床が削減される傾向にある.

 北海道は罹患率が低く,発生も順調に減少しており,この傾向はさらに顕著である.広域の北海道においては,遠方の結核医療機関への移動を余儀なくされるとの問題がしばしば起こる.

 本稿では,北海道における結核医療体制の現状と課題について報告する.

 近年のわが国の結核発生状況について論ずる場合,「高齢者」,「合併症」,「外国人」,「多剤耐性結核」などがキーワードとなる.特に前二者は複合することが多く,今後さらに大きな課題となるものと考えられる.

 基礎疾患,合併症への対応を中心として,筆者の勤務する施設における結核診療概況について,併せて報告する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 近年,わが国の結核患者数は大きく減少し,低まん延化も視野に入ってきた1,2).一方,わが国の結核患者は高齢者,ホームレスなどの社会経済弱者,結核高まん延国出身の外国人および都市部に偏在しており,従来は長期間の入院を必要とした結核医療も,短期化学療法の導入による入院期間の短縮と,地域DOTS(Directly Observed Treatment, Short-course)による患者支援を通じた外来治療へと,変化してきている2,3).また,合併症を有する結核や服薬継続困難例では,排菌停止後の医療の確保が課題となっており,多剤耐性結核(multidrug-resistant tuberculosis:以下,MDR-TB)では,専門医療の確保も重要な課題である4,5)

 本稿では,都市部の対策として東京都の結核の状況や医療体制について述べると共に,今後の結核医療の課題と展望について触れる.

  • 文献概要を表示

はじめに

 結核患者の減少が見られる中,以前と比べて,結核診療を行える施設および医療スタッフは少なくなってきている.しかし,いまだ年間2万2千人を超える新規患者が発生していること,高齢者が多く占めること,外国人結核の問題,発症数は少ないものの小児結核対策の重要性,またクオンティフェロンなどの新しい検査法の確立による潜在性結核治療対象患者の増加など,結核に対する新たな対策が必要となってきている.結核診療の現場では,結核患者の多くが高齢者であるということや,社会的弱者の存在など,服薬支援が重要となる対象者が増加し,治療終了までの患者との関わりの重要性が増している.

 一方で,感染性の考え方の変化,倫理的観点などから,入院基準・退院基準が明確にされ,結核患者の入院期間が短縮化されている中,結核診療を行える専門施設が減少し,専門施設への通院アクセスの悪化,さらに種々の併発症を抱えて他の医療機関へ通院する必要性の増加,また日常活動でのケアを必要とする高齢者が多いことから,結核専門施設のみでの管理は困難なことが多いのが現状である.

 そこで,地域の中での連携が重要となる.見直し版「結核に関する特定感染症予防指針」においても,個別患者の病態に応じて,結核専門施設を中心とした,地域での医療環境の整備の重要性が述べられている1)

  • 文献概要を表示

 長崎県は九州の西北部に位置し,海を含めた県域は東西213km,南北307kmにも及ぶ.その中の陸地(総面積4,104km2,2008年10月1日現在)は平坦地に乏しく,至るところに山岳,丘陵が起伏し,海岸線は多くの半島,岬により複雑な地形をなしている.長崎市(中核市),佐世保市(政令市)を含む13市8町は8つの2次医療圏(図1)に区分され,その中に県立保健所が各1か所(うち離島が4か所),1中核市保健所,1政令市保健所の,合計10保健所がある.

 人口は約143万人(2010年国勢調査)で,1960年をピーク(約176万人)として,1985年以降,毎年減少している.特に離島の人口は1955年以降一貫して減少しており,1980年を100とした指数は,2010年で県全体が89.7(全国109.4)に対し,離島は53.9と大幅に減少,現在の人口は約13万人である.県全体の65歳以上の高齢者人口は年々増加しており,2010年は26%に達している.また,圏域別の高齢化率では,対馬圏域を除く離島圏域および県南圏域(島原半島)ですでに30%を超えている.将来の人口推計では,2035年には約112万人に減少する一方,高齢化率は2020年に30%を超え,高齢者数は,2025年まで増加することが予測されている.

  • 文献概要を表示

はじめに

 神戸市は兵庫県の南東部に位置して北に六甲山を有し,南は瀬戸内海・大阪湾に面している.8世紀「大輪田の泊」として知られていた頃より,港があり貿易を行ってきたことから,外国人居留地,北野異人館,南京町などあり,古くから外国人も多数居住している.2011年2月1日現在,神戸市の人口1,544,284人に対し,外国人登録者数は44,214人,2.86%で,政令指定都市間では,大阪市(2009年3月31日現在4.58%),浜松市(2008年12月31日現在4.12%),名古屋市(2009年12月31日現在3.00%)に次いで高い割合である(※なお,外国人登録制度は2012年7月廃止され,新しい在留管理制度に移行した).

 神戸市で外国人登録者の多い国は,韓国・朝鮮(約20,000人),中国(約15,000人),ベトナム(約1,500人),アメリカ,インド,フィリピン(各々1,000人以上)である.また,正規の大学および専修学校への留学生として登録されているのは,2010年11月1日現在3,172人であり,国別では中国2,335人,韓国209人,台湾103人,インドネシア,ベトナムが各65人,マレーシア,タイ,ネパール,モンゴルが各々約30人程度,その他90か国に及んでいる.いわゆる日本語学校等に所属する者はこれらには含まれておらず情報はないが,日本語学校生を含めても,中国人留学生が最も多いと推定される.このように外国人が比較的多い都市である神戸市の,外国人結核の動向と課題について述べる.

  • 文献概要を表示

はじめに

 現在,日本を含む多くの先進国において,結核感染の診断法は,これまでのツベルクリン反応(ツ反)よりも診断能の高いInterferon-Gamma Release Assays(以下,IGRA)が推奨されている.IGRAは,BCG(結核予防ワクチン)やほとんどの非結核性抗酸菌は存在しない結核菌特異抗原で,エフェクターT細胞を刺激し,産生されるInterferon-Gamma(以下,IFN-γ)を測定することにより結核感染を診断するため,BCG接種やほとんどの非結核性抗酸菌感染の影響を受けずに,高特異度で結核感染を診断できる検査法である.

 IGRAには,QuantiFERON-TB Gold In-Tube(日本ではクォンティフェロン®TBゴールド,通称QFT-3G)と,T-SPOT. TB(日本ではT-スポット®TB,以下T-スポット)の2種類があり,IFN-γを検出する方法が異なっている.

 本稿では,両検査法の原理と,それぞれの実施上の課題について述べる.

  • 文献概要を表示

結核対策手段としての潜在性結核感染症治療

 1.低まん延状態下

 1) 歴史的経緯

 個々の患者や接触者等への臨床医学的個別対応としての予防内服ないしは潜在性結核感染症(LTBI:latent tuberculosis intection)治療(以下,「潜在性結核感染症治療」の表記で統一する)の試みは,米国の小児科医Edith M. Lincolnに始まるものと思われる.個別対応としての潜在性結核感染症治療は,感染結核を治癒せしめることに比べれば効率は低いとはいえ,感染性結核の発生防止に寄与し,感染サイクルを断ち切る効果も期待できないわけではない.しかし,最初から潜在性結核感染症治療を公衆衛生的な結核対策手段の一つとして見ていたわけではないだろう.1960年当時「もっとも有効な公衆衛生的手段としての化学療法1)」という概念すらあまりにも革新的で,容易には受け入れられなかった過去の経緯を考えれば当然であろう.

 潜在性結核感染症治療を結核対策手段とする明示的な考えを案出したのも,やはり米国を嚆(こう)矢(し)とする.結核の発生そのものを防止する手段としては,以前も今もBCG(結核予防ワクチン)と潜在性結核感染症治療しか存在していないが,それでは公衆衛生的な視点からはどちらの有効性が高いだろうか? 米国Public Health ServiceのFerebeeは,彼女のよく知られた文書で単純なモデル計算をもとに,広範囲に行えば潜在性結核感染症治療のほうが結核患者数を減少させるという意味から言えば,効果は高いとしている2).このモデル計算では,感染危険率の低下した状態の米国で発生する結核患者の80%が既感染者集団,すなわち既感染プールから発病するという仮定のもと,年月をかけて(Ferebeeは全米の公衆衛生機関が毎年200万人の既感染者に潜在性結核感染症治療を行うという仮定をしている)全米国民にほぼ無差別的に(Ferebeeは接触者や糖尿病患者など高リスク者を優先的にと述べているが,時間的な優先という意味であろう)ツベルクリン反応を実施し,陽性者は潜在性結核感染症治療の対象にするといったことを想定していたようである.

  • 文献概要を表示

はじめに

 大阪市は,平成24(2012)年6月「西成特区有識者座談会」を設け,平成25(2013)年度から5年程度かけて進める西成特区構想を,同年10月に報告書として取りまとめた.有識者座談会は,大阪市特別顧問(西成特区構想担当)の鈴木亘氏(学習院大学教授)を座長とし,西成区やあいりん地域に精通する各分野の7名の専門家で構成され,分担して西成特区構想の大方針,具体的施策案,および工程表案を示すことを目的として設置されたものである.その報告書の内容を具体的に施策化,予算化をするのが,西成区に設けられた西成特区構想プロジェクトチームである.この西成特区構想の中で,短期集中的に取り組む課題として結核問題が取り上げられた(図1).これは,西成区の結核罹患率は全国一高く,中でもあいりん地域はボツワナ,ザンビアなど,アフリカの最貧国並みの水準にあることからである1)

 本稿では,西成特区構想で取り上げられた結核対策の構想とはどのようなものかについて説明する.詳細は,「西成特区構想有識者座談会報告書のポイント」を参照していただきたい2)

  • 文献概要を表示

日本全国タバコの煙は野放し

 1978年2月18日に旗揚げした「嫌煙権運動」が35年目を迎えた.当時,新幹線「こだま号」にたった1両の禁煙車しかなく,バス,タクシーはもちろん,病院の待合室に至るまで灰皿が置かれ,公共の場所,職場,野球場,劇場など,日本全国津々浦々,タバコの煙は“野放し”の状況だった.そのような社会情勢のなか,狭い事務室のタバコの煙に悩まされていたコピーライターの中田みどり氏が「タバコの煙は公害」という考え方で,「嫌煙権」を提唱したのである.

 当時の社会背景として「日照権」や「静穏権」,「環境権」などがメディアに取り上げられており,言葉に敏感な中田氏が「タバコの煙を嫌う権利も…」ということから,「嫌煙権」を提唱したのである.1976年の暮れだった.その頃,中田氏と上司の藤巻和氏らの『公害の絵本』作りに協力していた私は,1日に60本以上も吸っていたヘビースモーカーだった.

連載 中国高齢者の健康と福祉・1【新連載】

  • 文献概要を表示

日中友好の歩みを踏み出そう(多田羅 浩三)

 中国は近年,著しい経済成長を成し遂げて,世界第2位の経済大国になった.昨年の11月,杭州で開催された「Ninth World Congress On Long Term Care In Chinese Communities」に招待されて中国を訪問したとき,この国の盛大な経済の発展ぶりを如実に目の当たりにすることができた.学会では,そういう中国において,高齢者の長期ケア体制の構築に向けて懸命に取り組んでいる実態が,上海や杭州,香港,マカオ,台湾などから多数報告された.中国には,そのような大きな現実があり,また今日,日本最大の輸出相手国は中国である.にもかかわらず,人々の生活や健康について,日本も中国も互いにあまりに知識を欠いているように思える.

 そのような中で,学会で交流を深めることができた桂世勲先生や郭清先生,日中健康福祉協力研究所の趙林先生の協力を得て,今回,本誌で「中国高齢者の健康と福祉」のテーマのもとに,全6回の連載が行われることは,画期的なことである.中国国内の大学や行政機関の第一線で活躍されている学者や政策制定の担当者自身が,中国の人たちの健康や医療,介護のことを語ってくれる.日本と中国のこの面での連携,協力,協働の推進に向けて,多くの読者を巻き込んで,意欲的な友好の歩みが踏み出されることを心から期待したい.

  • 文献概要を表示

はじめに

 中国は人口の高齢化が急速に進み,すでに高齢化国家の仲間入りをしている.今日,中国は,健康,医療のシステムに,新しい世界の構築を厳しく求められている.

 中国の第12次5カ年国家財政計画(中国では“十二五計画”と称す)では,計画期間の2011~2015年の5年間において,60歳以上の高齢人口が年平均800万人以上増加して,総数は2億人を突破すると推計している1).そのような急速な中国の人口高齢化は,生活習慣病の有病者数や罹患者数の増加を伴い,社会や個人の医療コストを上昇させ,高齢者の生活の質を低下させると推測される.

 中国においてもまた,高齢者の健康水準を向上させ,医薬衛生体制の改革を確実に推進させ,高齢者の健康支援体制や健康管理サービス体制を構築し,健康を基盤とした高齢化社会を実現させることが,最重要課題となっている.

 そのような観点から,本稿では,中国の人口高齢化の現状とその特徴,高齢者の健康状態,高齢者の健康管理の推進と政策,高齢者の健康管理推進の施策について紹介したい.

連載 この人に聞きたい!・1【新連載】

  • 文献概要を表示

 今月号から,新連載「この人に聞きたい!」がスタートします.毎月テーマを決めて,第一人者にそのテーマについて伺っていきます.どうぞお楽しみに. 「公衆衛生」編集室

 ロコモティブシンドローム(以下,「ロコモ」)は2007年,日本整形外科学会が提唱した日本オリジナルの新しい概念である.“locomotive”も“syndrome”も既存の英語であるが,“locomotive syndrome”は日本発の新語である.筆者はその誕生から現在まで,日本整形外科学会前理事長・中村耕三前東大教授とともに仕事をさせていただいている.

 本稿ではその経緯を踏まえ,ロコモの全体について概説したい.

連載 講座/健康で持続的な働き甲斐のある労働へ―新しい仕組みをつくろう・13

  • 文献概要を表示

 労働関連疾患とは,素因や生活習慣とも関連があるが,労働条件や作業が疾病の発症を早めたり増悪させたりする可能性のある疾患であり,循環器疾患や筋骨格系疾患,精神疾患などがこれに当てはまる.労働要因として,長時間勤務,交代性勤務,職業性ストレス,職業階層,単身赴任などが指摘されている.

 今後の日本における労働関連疾患に関する課題としては,以下の項目が挙げられる.

 ①健康障害リスクとなる労働環境に関する研究の推進.

 ②国の健康政策全体の中で,働く人のより健康な労働生活の優先順位を現在より上位に位置づける.

 ③産業保健活動の科学的評価を組織的に実施し,産業保健の事業や政策の質を高めていく.

 ④健康障害リスクの大きい環境に置かれている非正規雇用者や零細中小企業の社員などへも,適切な産業保健サービスを提供できる体制を早急に整える.

連載 「笑門来健」笑う門には健康来る!~笑いを生かした健康づくり・13

  • 文献概要を表示

 本連載において,笑いの頻度は年齢とともに減少し,笑いの頻度が少ない人ほど認知機能低下が見られる人が多く,さらに認知機能が低下するよりも先に笑いが少なくなることを報告しました1).では,実際に笑っている時は,脳のどの部分が働いているのでしょうか? さらに,作り笑いと本当の笑いとでは,脳の働きに違いがあるのでしょうか?

 近年,脳科学の進歩により,様々な機器によって脳機能が評価できるようになってきました.それにより,笑っている時の脳機能についても次第に明らかにされてきました.

連載 公衆衛生Up-To-Date・4

[国立精神・神経医療研究センター発信:その2]

  • 文献概要を表示

わが国の自殺の現状

 わが国の自殺死亡率は人口10万人あたり年間約25人と,他の諸外国と比較して高い値で推移しています.平成24(2012)年の自殺者数はわずかに減少傾向が見られたものの,約3万人もの人が自殺により死亡しており,その問題は非常に大きいものと認識されています.

 自殺のリスクとして,社会経済的問題が指摘されることが多いですが,社会経済的問題と自殺との間には,メンタルヘルス上の問題に対する支援の欠如があると言われています.社会経済的問題だけでなく,文化的な背景,安定した住居確保,収入の問題,教育の問題,犯罪の問題,さらには,孤立や虐待,家庭内の不和,幼少時期の養育の問題,性格等,様々な問題が,一部は直接に自殺のリスクとして影響しますが,多くは,メンタルヘルス上の問題として現れ,これら様々な問題に対する支援が得られない結果,自殺が生じると言われています.

連載 リレー連載・列島ランナー・49

  • 文献概要を表示

 島根県の福澤先生よりリレーを引き継ぎます.

 現在私は岡山市保健所保健課に属しています.当課では統計,医務,感染症対策等の業務を分掌しています.本稿では平成23(2011)年度から当保健所が取り組んできている,在宅医療推進のための事業を報告します.

連載 衛生行政キーワード・87

  • 文献概要を表示

改正の経緯

 2007(平成19)年に感染症法(第11条第1項)および予防接種法(第20条第1項)の規定に基づき,麻しんに関する特定感染症予防指針(以下,「指針」という)を策定した.

 指針は,少なくとも5年ごとに再検討を加え,必要があると認めるときは,これを変更していくこととなっており,2012(平成24)年5月より厚生科学審議会感染症分科会感染症部会麻しんに関する小委員会(委員長/岡部信彦)において再検討が行われた.2012(平成24)年10月15日に感染症部会に改正案が報告され,同時に厚生労働省も改正案を提出し,審議がなされた後に承認された.新たな指針は12月14日に公示され,2013(平成25)年4月1日から適用される.

ジュネーブからのメッセージ

  • 文献概要を表示

 あるパートナーシップの理事会を終え,長時間の会議による疲弊感と同時に,皆で幾つかの合意を成し遂げたという高揚感を持ちつつこのコラムを書いている.パートナーシップ時代の国際保健とは言うものの,パートナーシップの実相とその活用法の理解はなかなか難しい.

 そもそも分かったようで分からない,“パートナーシップ”とは何であろうか.

映画の時間

  • 文献概要を表示

 イタリア南部,地中海に浮かぶ小さな島が舞台です.主人公のフィリッポ(フィリッポ・プチッロ)は20歳を迎えたばかり.父親は2年前に亡くなっていますが,漁師の祖父エルネスト(ミンモ・クティッキオ)が父親代わりとなって,美しい母ジュリエッタ(ドナテッラ・フィノッキアーロ)との3人暮らしです.家族は漁業で生計を立てています.しかし漁業を取り巻く環境が厳しくなってきているのは日本と同じようで,島では漁業に見切りをつけて観光業に転進する人たちも多く,主人公の叔父ニーノもその一人です.叔父は主人公フィリッポを可愛がりますが,祖父に対しては補助金が出るうちに所有する漁船を廃船にし,漁を止めて隠居するように勧めています.

 フィリッポの母も,息子と一緒に都会へ出ようと考えていますが,フィリッポ自身は祖父と一緒に漁に出る生活を続けたいようです.とは言え,生活は豊かではありません.夏の観光シーズンが来ると,家族はガレージに引っ越して,家を観光客に間貸しします.3人の若者が客となり,フィリッポとの交流が始まります.青春映画かと思うと,事態は思わぬ方向に.

  • 文献概要を表示

 本書は,1868(明治元)年3月に明治政府が欧米医学を公式に採用して以来,2011(平成23)年末までに物故された医療関係者で,特にわが国の医学・医療の発展に貢献された3,762名を選んで,物語風に記録されたユニークな人名事典であります.何分にも膨大な内容であり,私自身,生化学という限られた基礎医学が専攻分野なので,医学・医療全体の問題を議論したり,評価することには必ずしも適任ではありません.それでもまず本書を通読して,最も重要な“人選”が極めて公正で妥当であるという印象を受けました.

 次に個々の記載について,個人的に親しかった方々について詳しく調べました.いずれもおおむね正確な情報に基づいており,しかも専門的な記述以外に本人の性格,趣味,交際,家族など私的な紹介も多く,読物としても興味深いものでした.以下,幾人かを収載人物の例として挙げます(敬称略).

  • 文献概要を表示

 中村好一先生著の『基礎から学ぶ楽しい疫学』が,「黄色い本」の愛称で好評を得ていることを,この5年間ほど聞き及んでいた.今般,本書の第3版発行に当たり書評の依頼を受けたことを機に,全ページにくまなく目を通した.元来,医学部学生を対象にまとめられたようであるが,医学・公衆衛生の広範な領域で既に活躍されている多くの方々にも読んで欲しい,そして必ずや疫学を楽しく学んでいただけることを確信できるテキストである.

 国内外を問わず多くの疫学のテキストでは,本書の3つの章(疾病頻度の測定,疫学研究手法,偏りと交絡)の内容を中心に,「理解できぬ奴が悪い」と言わんばかりのしかつめらしい文章が続く.それはあたかも,「疫学者以外の者に疫学を容易に理解されてたまるものか」といった疫学者の偏屈な誇りが,行間にびっしりと詰まっているかのような雰囲気を醸し出している.その結果,多くの読者がもはや学ぶ気力を失って,「疫学は楽しくない」「疫学なんてわからなくとも構わない」と刷り込まれてしまっている.「疫学者とは数をかぞえることが得意な医師のことである」というジョークの所以でもある.

予防と臨床のはざまで

親友との別れ 福田 洋
  • 文献概要を表示

 2月11日,研修医時代からの無二の親友が亡くなりました.私と同じ44歳,まだ若すぎる死でした.

 1年数か月前の2011年の秋,トライアスロンで上位入賞も果たすような運動好きの彼は,ジョギングの最中に胸痛で倒れ,それが心タンポナーデの発症でした.原発性血管肉腫という極めてめずらしい悪性疾患に罹患した彼は,その後,脳,骨,肝臓,肺など全身に転移し,心臓や脳の手術,骨への放射線治療,化学療法などを行い,生死をさまよいました.文献検索をしても極めて情報は少なく,全剖検例の0.001~0.28%(岡本ら,日本心臓血管外科学会誌,2003)と極めて稀で,悪性の場合は予後は非常に悪く,6か月が診断後の平均余命とのことでした.

--------------------

投稿規定

  • 文献概要を表示

 久しぶりに特集で「結核」を取り上げさせていただきました.DOTS(Directly Observed Therapy, Short-course)やコホート検討会はすっかり定着し,発見患者に対する治療の徹底は確実に進んでいます.加藤氏が指摘されているように,結核医療が脆弱化してきています.国レベルの支援策の強化も求められています.

 一方,地域により状況に大きな違いが出てきています.北海道,和歌山県,長崎県のご報告をいただきました.長崎は,離島と複雑な地形のところがあり,患者も不便を強いられているだけではなく,結核病床稼働率が低く,医療機関も苦しい状況にあるとのことです.大都市部については,東京都,神戸市にご報告をいただきました.外国人やホームレスなどの生活困窮者の難しい課題への対応が求められてきているとのことです.

基本情報

03685187.77.4.jpg
公衆衛生
77巻4号 (2013年4月)
電子版ISSN:1882-1170 印刷版ISSN:0368-5187 医学書院

文献閲覧数ランキング(
11月23日~11月29日
)