- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
日本の予防接種制度の遅れは,“vaccine gap(ワクチンギャップ)”という言葉に例えられ,以前から多くの問題点が指摘されてきた1).インフルエンザ菌b型〔Haemophilus influenzae type b;Hib(ヒブ)〕ワクチンの導入が米国に比べて約20年遅れたことがその代表例である.効果と安全性が海外で確認されているワクチンが,国内にさまざまな理由から導入されず,その結果,子どもたちがそれらのワクチンで予防できる病気(Vaccine Preventable Diseases;VPDs)から守られず,その疾患と後遺症に苦しむ状況が続いていた.また,すでに導入されているワクチンの中には,費用負担のある任意接種ワクチンのため接種率が向上せず,疾患が社会にまん延し,子どもたちがその合併症に苦しめられてきたものもある.いまだに解決していないムンプス(おたふくかぜ)による合併症の1つである難聴などはこの例である2).
しかしながら,この数年,海外で製造されたワクチンを中心に,新しいワクチンが次々に国内に導入された(表1)3).2013年にはヒブワクチンや肺炎球菌結合型ワクチンなどが定期接種化され,それらのVPDsを減少させることに成功した3).さらには,任意接種ワクチンであった水痘ワクチン,B型肝炎ワクチンも2014年,2016年にそれぞれ相次いで定期接種化された.このように接種できるワクチンとその費用面での負担に関しては,ワクチンギャップはこの数年で解消の方向にあるが,一方で,いまだに幾つかの重要な問題が存在する.
本稿では,最近の国内の予防接種制度の変遷とこれからの課題(表2)について述べることとする.
Copyright © 2017, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.