看護教育 57巻5号 (2016年5月)

特集 「気持ちのいい」ケアを教えよう!

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 看護の醍醐味の1つに,患者さんから「気持ちよかった」という言葉を聞くことがあるのは,経験上皆さんご存じでしょう。けれども,大抵の場合は,患者さんからのこの反応で「喜んでもらえてよかった」と満足感は得るものの,自分のケアを見直し,そこに至ったケアの意味を見出すことなしに,その場限りで終わってしまうことが多いのではないでしょうか。「気持ちよかった」という言葉は,単なる「手技」の成果としてではなく,患者さんの身体的,精神的,社会的な苦痛が軽減し,看護師とのつながりに「安心・安楽」を感じたときに発せられます。この言葉を引き出すには,どのようなケアが必要かを検討する必要があるのです。

 今回は,「気持ちのいい」ケアを求めて研究を続け,看護モデル作成を進めている方々に登場いただき,このキーワードを用いて,看護のなかの技術,そしてその教え方を見直していただこうという特集です。「気持ちよさ」というものは,受け取り手の個人差が大きいですし,環境によっても大きく左右されます。さらには,それを行う看護師側のとらえ方も千差万別でしょう。それでも,ケアを行う際に意識していれば,それは患者さんには伝わるはず。その意識づけを教員が学生にどのように行うかが,重要となります。患者さんに直接接する前に,学生が「気持ちいいケア」に対するイメージを広げられるように,先生方には働きかけていただきたいと思います。

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「気持ちのいいケア」とは何か

「気持ちよさ」をもたらすケアの発見

 私が「気持ちよさ」に焦点をあてて,本格的に研究を始めたのは,1997年に聖路加看護大学(当時)大学院博士前期課程に入学してからである。約20年の研究の積み重ねを経て,やっと「気持ちよさ」をもたらす看護ケア理論の創成の入り口までたどり着いた。

 そもそも「気持ちよさ」を研究テーマとしたのは,国家公務員共済組合連合会虎の門病院のCCU(coronary care unit:冠疾患集中治療室)でのAさんの看護体験があったからである。新人看護師としてCCUに配属になった私は,現場の緊張感に呑みこまれそうになりながら実践経験を積んでいった。患者さんの命に直結する医療処置が多いなかで,私の大好きなケアは,患者さんのからだを拭いたり,髪を洗ったりする清潔ケアだった。

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モーニングケアとはどのようなケアなのか

 私は混合外科病棟で看護師をしているとき,夜勤で患者さんと夜を共にして一緒に朝を迎え,これから一日を始める患者さんの朝のスタートを支えるモーニングケアが好きだった。痛みで夜あまり眠れなかった患者さんが,自分のやり方で洗面をしながら,「気持ちいい」「さっぱりした」「今日はがんばれそう」と気分を立て直す場面に立ち会うことや,ある患者さんのご家族から「うちのおじいちゃんは,朝に髭を剃らないと,一日が始まらないって言うんですよ」と教えていただいたこと,たまに患者さんから「あなたもお疲れ様」と労われ,心のなかで「どうかこの患者さんが今日一日を無事に過ごせますように」と祈ったこと。こうしたその人らしさが垣間見られるモーニングケアがとりわけ印象に残り,この10年ほどモーニングケアの研究を続けている。

 近年のモーニングケアは,「洗面介助」や「口腔ケア」と同義的に扱われ,テキストではケア内容が環境整備や清潔の章に吸収され,“モーニングケア”という用語そのものが消えていく状況がある。モーニングケアの実態に関する全国調査1)において,9割以上の看護師がその目的を「清潔」と答え,8割以上の看護師が認識しているケア内容は,顔や手を拭く,歯磨きのみであった。しかし,モーニングケアはルーティンに行われている当たり前のもので,実態は「清潔目的の洗面介助/口腔ケア」かもしれないが,ただそれだけの一言で表せるケアではないと,私は考えている。

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全身清拭の「気持ちよさ」はどこに焦点をおくか

 人がからだをきれいにするときはどんなときだろうか。今日一日の仕事を終えて床に就く前?すごく疲れているときにからだを休めるのと同時に?あるいは人に会う前に身支度を整えるため?いずれにしろこの行為は,皮膚表面の清潔を維持するという目的だけでなく,ゆっくりからだを休めたい,あるいは活動の準備をしたいという意思の表われでもあるといえる。

 病気を抱えている人に対して行う全身清拭は,自分のからだの清潔を保つことが何らかの理由でできない場合に,部分あるいは全体的に支援をする技術である。多くのテキストのなかでその目的は「皮膚の清潔」「末梢の血液循環の促進」といった身体的側面に加えて「患者に爽快感をもたらす」「整容をして他者との交流を促す」という心理社会的な側面を含めた目的が提示されている。では実際には「気持ちのいい」全身清拭はどのように行われているか。事例を用いて考えてみたい。

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手浴とはどのようなケアなのか

 健康な私たちの手洗いは,日常的に行っていることである。その意味では,手浴は人々の日常生活を保障するケアであるとも言える。また,手浴は,手を清潔にするだけでなく,湯の中で,患者と看護師の手が触れ合い,双方に気持ちよい感覚をもたらすケアでもある。看護師が患者の手に触れ,コミュニケーションをとるなかで,単に手を洗うという行為以上の効果が患者にも看護師にもあると感じている。

 私が脳神経外科の臨床において,手浴を意図的に実施するようになったのは,麻痺のある脳卒中患者の「ご飯を食べても,食べづらくて,手がうまく動かなくて,途中から疲れて,もうご飯いらないってなるんだ。おいしくないんだよ」と話してくれた一言からだった。楽しんで,おいしく食べてもらう時間であるはずの食事を何とか取り戻せないのだろうかと思った。

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排便ケアの際の気持ちよさはどこに重点を置くか

 学生にケアを教授する際に重要なことは,そのケアを安全に安楽に行うということであることはいうまでもない。だが,それぞれの看護における安全や安楽とは具体的にどのようなことだろうか。本稿では,安楽のなかでも,「気持ちよさ」に焦点をあて,排便ケアを教えるためのポイントについて考えたい。

 では,排便ケアにおいて,「気持ちよさ」とはどのような状態であるだろうか。排便に関して患者にとって最も望ましい状態は,「患者自身のペースで排便がスムーズに行われる」ことである。排便ケアにおいて「気持ちよさ」ということに焦点を当てた場合,「気持ちのいい」排便が日々あることを目指したケア,そして,排便を促すための排便ケアが「気持ちいい」という2つの視点でとらえることができる。気持ちのいい排便が日々あるために,看護職が実施しなければならないことは,便秘状態になることなく患者の排便習慣を整えるケアを実施することである。

連載 笑いの伝道師Wマコトのコミュニケーション革命・5

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共通・共感・共働で一体感を生み出す

2人 はいどうも〜!Wマコトです。

中原 さて,今回で5回目となりました『Wマコトの歌って踊ろう!』。本日は気持ちの良いオペラの歌い方です。

連載 考える力を育てるシンキングツールの活用・2

ベン図で比較する 黒上 晴夫
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 連載2回目は,最もシンプルなシンキングツールの1つ,ベン図について見てみましょう。

連載 看図アプローチへの招待・5

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世話の焼き方と餅の焼き方

気持ちが汲み取れないと,上手に世話ができない

 「人の心を考えられない」「患者(役)の気持ちを汲み取れない」学生が増えてきている,という話を看護の先生方からよく聞きます。どんな様子なのか聞いてみると,次のような答えが返ってきます。「清拭の実技をさせると,拭き残しがいっぱいあるのに平気でいる」「ぬるいお湯で身体を拭くと寒気を感じて患者は不快だ。患者役の学生も寒そうな様子をしている。それでも平気でぬるいお湯を使って清拭をしてしまう」

 このような学生に何をどう教えたらいいのか,という問題を抱えている先生方は多いのではないでしょうか。今回は,この問題を看図アプローチによって解決していきます。これは「気持ちを汲み取れない」という現象に目を奪われていては解決できない問題なのです。具体的な例をあげてみましょう。

連載 臨床教育学 わからないこととの出会い・5

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 自分を理解すること。これは,SNSの利用ひとつをとっても容易ならざることであり,かつ由々しい問題になりうることが,前回のテーマでした。私は何なのかと考えることによって,当の私自身が変わってしまうため,自分を理解することはとてつもなく困難な課題なのです。

 では,自己理解は不要なのか。そんなことはありません。私たちはやはり,自分を理解しようと努める必要があります。ではいったい,どうすればいいのでしょうか。

連載 アジア,アフリカ,ラテンアメリカの看護教育はいま・14【最終回】

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持続可能な開発目標と看護教育

 2015年は8つのミレニアム開発目標(Millennium Development Goals, MDGs)の評価年であり,9月に「持続可能な開発サミット」で,国連加盟国は「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択されました1)。持続可能な開発,民主的なガバナンスと平和構築,気候変動と災害に対する強靭性などを含む17の持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals;SDGs)へ,次の評価年である2030年までの新しいフェーズを迎えました。

 健康に対する目標は,目標3「あらゆる年齢のすべての人の健康的な生活を確保し,福祉を推進する」にまとめられました。目標3には,さらに具体的な13のターゲットがあります。母子保健,感染症が主体だったMDGsから,SDGsになり,すべての年代の人に対象が広がりました。母子保健は目標の達成はかなわず,MDGsで目指していた妊産婦死亡率の75%減少に対し,達成率は50%でした。これでも減ってきていることに一定の評価を与え,SDGsでは,すべての国で妊産婦死亡率を出産10万対70にするなど,さらに高度な達成目標に引き上げられています。

連載 “医療安全力”を育むリスクアセスメントトレーニング・Training 25

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医療安全推進における現状と課題

 医療安全推進に向けてさまざまな制度が施行され,各医療機関においても医療安全管理者の配置をはじめとして,医療安全管理者を中心に医療安全管理体制整備,インシデント・アクシデント事例の報告体制整備,インシデント・アクシデント事例分析,分析結果に基づく再発防止対策実施,職員への医療安全教育の実施などに,取り組まれていると思われる。しかしそれでも,インシデント・アクシデント事例の発生は少なくない。

 日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業における平成26年年報1)によると,報告義務対象医療機関からの医療事故の報告の内容(発生月に基づいた集計)において,当事者の職種経験年数6年まででは,発生の合計件数は,0年198件,1〜6年では200件以上で看護師の割合がほぼ半数以上で,割合を見ると,49.1〜71.4%と看護師が占めている割合が高い(表1)。これは,看護師の担う業務の特徴とも言える「さまざまな医療の提供における最終執行者である」ことが影響していると考えられる。

連載 宮子あずさのエキサイティングWriting・17

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臨床でのわかり方

 この連載も今回で17回。著述をめぐっていろいろな話を書いてきました。

 私の野望は,書きたい人が書きたいことを書けるようになるためのお手伝い。看護という仕事には,言語化されない魅力的な領域が,まだまだ残っていると思うからです。

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新刊紹介

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基本情報

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看護教育
57巻5号 (2016年5月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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