保健婦雑誌 59巻12号 (2003年12月)

特集 保健師基礎教育の現在

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揺らぐ保健師教育

 筆者が保健師の基礎教育に常勤として関わったのは,東京大学医学部健康科学・看護学科に赴任した平成4年からのことである。しかし,看護教育の基礎教育(短大看護学科)に身を置くようになった昭和47年に,1年コースの保健師養成学校の非常勤講師をする機会を得,それをきっかけとして看護師教育と保健師教育の特徴やあり方について考えるようになった。

 当時,私なりに思ったことを端的に言う。看護師教育の主眼は,病める患者を対象に看護上の問題を明らかにし,看護計画を立て患者とのよきコミュニケーションを持ちつつ,実践,評価をしていく一連の過程を展開し,患者の健康回復,日常生活への適応を図っていくための方法や技法の習得にある。

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 平成8年の保健師養成所指定規則に定めるカリキュラム改正に伴い,これに沿う国家試験出題基準が作成され,平成9年度から実施された。

 それからすでに5年以上が経過している。その間に保健医療・看護を取り巻く社会情勢は,大きく変わった。

 21世紀初頭のこの数年間に「介護保険法」「児童虐待防止法」「健康増進法」が成立し,保健婦は保健師に名称改正が実現した。また,医療・看護事故の多発に伴う安全性・危機管理,医療・看護職の倫理意識が社会問題化し,その資格・教育などの内容についても厳しく問われるようになってきている。

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 平成8年度の厚生科学研究「これからの行政組織における保健婦活動のあり方に関する研究」では,将来の保健師活動ついて,「これまでの対象者の相談に応じる直接的なサービス提供の活動から,関係者との連絡・調整,保健計画の策定,施策化への主体的な参画という活動が求められるようになる」と報告されました。

 また,同年に出された厚生省(当時)の「看護婦等養成所の運営に関する指導要領」の改正においても,保健師教育に求められる内容として「問題を組織的に解決する能力」や,「社会資源の開発や保健医療福祉サービスを評価し調整する能力」など,調整・施策化の能力の習得という目標が明確になりました。

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はじめに

 平成15年度現在,保健師,助産師,看護師の国家試験受験資格を取得することのできる看護学教育を行っている日本看護系大学協議会会員校は104校ある。しかし,看護系大学における教育は,保健師専門課程の教育に比べて公衆衛生学・公衆衛生看護学などの時間数も少なく,学生の保健師への志望動機が不足しているという指摘もあり,大学における保健師教育の課題が調査,分析されてきている1,2)。本稿では,当大学における地域看護実習を取り上げ,大学における保健師教育について考察していきたい。

 当大学において,地域看護教育をすすめていくことを困難にしている要因として3つのことが考えられる。1つは,学生数の多さと学生の地域看護実習に対する学習意欲に関してである。看護学部の学生定員は80名であり,卒業時に全員が看護師と保健師国家試験受験資格をもつ。そのため,地域看護実習は全員履修する。しかし,実際に保健師として就職するのはごく一部にすぎない。

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はじめに

 私は東京アカデミーで保健師と看護師の国家試験対策講座の講師をしております。私自身は保健師で,産業看護を専門としていますが,予備校の看護師国試対策ではほとんどすべての分野を,保健師国試対策では,主に地域看護学を担当しています。

 看護師として臨床で十数年の経験ののち,平成9年に旧保健婦課程(現在では地域看護課程)に進学したので,私自身も予備校への通学経験があります。こうした経験から,自分が予備校生時代に感じた思いや考えを講義に生かし,学生自身がモチベーションを上げて学習の手ごたえを感じられる講義の展開ができるよう工夫しております。

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 毎月1回,7か月児育児相談日にブックスタートに適した絵本のリストを渡し,読み聞かせを実演している。また,年数回,絵本の読み聞かせやパネルシアター,手遊びを盛り込んだ,親子ともに楽しめるニコニコ育児教室を開催。毎月1回,親子ふれあい広場として保健センターを開放し,ボランティアのお話会を開催している。(担当:壁谷幸子)

連載 アジアに生きる アジアプレス発 現場ルポ・12

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連載 私のフィールドノート・最終回

ライフ 星野 晋
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 台湾生活(life)も半年を過ぎ,フィールドワークがノリノリになってきはじめたころ,突然就職の話が持ち上がった。私は就職よりも調査を全うしたいと思っていたのだが,指導教授から就職を優先するように強く告げられた。私たちの業界は就職状況が厳しいためしかたなかったとはいえ,中途半端のまま帰国するのは悔しかった。しかしそれも人生(life)である。ケ・セラ・セラ。

 地方の女子短大の生活科学科・生活文化専攻に所属することになり,学生から教官へと私のライフ・スタイルは大きく変わった。この学科名にある「生活科学」の英語はlife scienceである。あれっ,ライフサイエンスって「生命科学」じゃなかったっけ。そういえば,いま流行りのQOLも,生活科学科では「生活の質」と訳されるが,医療系だと「生命の質」と訳される場合が多いようだ。う~ん,混乱してきたぞ……。

連載 アノネ,フクロウ所長様!? 所長と保健師紀久香のおとぼけメールボックス・12

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フクロウサンタのトリビア「ホォ~!」

 明日は,もうクリスマスイブかあ…。1年経つのって早いなあ。今日は,美歩ちゃんから,とってもうれしいプレゼントをもらっちゃったし。しみじみ保健師をしていてよかったなあって感じ…。

 あっ,こんなときに,またフクロウ所長からのメールが…。また,なんかヘンなメールじゃないでしょうねェ…。

連載 めざすは正義の味方 月光仮面 福祉の現場から・9

喫茶店の午後 内山 智裕
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 よく行く喫茶店がある。そこではほかの客が話し掛けてくることもあるから,好きな本をゆっくり読むことはできない。それでも私がその店に行きたくなるのは,そこに何かがあるからだ。私が持ち合わせている言葉では上手く表現できない。安心感に似たようなものだ。

 その喫茶店は,精神障害者の通所授産施設で,休日にはいつも決まった顔ぶれが並ぶ。その客のひとりと私は膝を突き合わせて,いろんな話をする。その日の話題は,「いま最も楽しいこと,満足していること」だった。その女性は現在35歳だが,23歳の時に発病し,紆余曲折を経て現在に至る。彼女がいま最も楽しみにしていることは絵を描くことだ。私も彼女が描いた絵を見せてもらった。これがなかなか。吸いこまれてしまいそうな構図と洗練された色使いで,絵心のない私の心にも響くものがあった。彼女は現在,公募のある展覧会に出展しようと作品を制作中である。

連載 『保健婦雑誌』52年の軌跡から・5

事業所保健婦の活動 荒賀 直子
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 保健婦雑誌の52年にわたる膨大な資料のなかから事業所保健婦に関する活動を振り返り,今日の発展に至る過程などについてまとめることで,事業所保健婦活動の原点を探りたいと思う。

 私自身は1968年4月から1974年3月の6年間,事業所保健婦として働いていたので,資料を読みながら当時の産業保健活動を思い出し,時間を忘れて読みふけってしまうこともしばしばであった。

連載 保健師さん 児童虐待を見逃さないで!・最終回

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 この連載も最終回を迎えました。前回は,これまでのポイントを整理しましたが,今回は事例のなかで,子どもへの虐待・ネグレクトに対応するにあたっての注意点を確認していきましょう。

要注意の母子が転居してきた!さあ,どうする?

 まず簡単な事例を提示して,それからいろいろな質問をしていきます。みなさん,一緒に考えてみてください。

 転居してきた母親について,前に住んでいた市の保健センターから連絡が入り,その地区の担当保健師が2児を持つその母親に電話を入れた。

 前担当の保健師からの情報によると,第1子は男児で3歳,言葉の遅れがある,第2子は女児で1歳,発達は順調だという。母親から,第1子に対して「愛情がわかない」「なぜ生んだのか考える」「夫に似ていて嫌だ」という発言があったため,定期的に電話連絡と訪問によって見守り,支援してきたとのこと。

 転居は,夫の転勤と新居購入のため。母親は専業主婦。父親は,母親によると「夫は育児にはあまり興味なく,休みの日はテレビを見るか寝ている」という。

 このような事例があなたのところへ来たらどうしますか? まず,何からはじめましょうか。

連載 現場で使える調査法・8

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 今回は,知りたい人全員(母集団)から,実際の調査対象者(標本)を無作為に選んだときにどのようなことになっているかについて,具体的な例で説明します。またこの説明にもとづいて,調査対象者(標本)の結果から,知りたい人全員(母集団)の様子を推測する方法についてお話しします。…統計学を,分数程度でわかりやすく伝えようという,とんでもない試みです。もしわかりにくければ,繰り返し読んでみてください。

連載 ニュースウォーク・69

「健康食品」の曲がり角 白井 正夫
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 夫婦2人暮らしだから,日常口にするものはほぼ同じだろう,と思ったらこれが大違い。妻だけの専用食品の多いこと。黒酢,沖縄産レモン,カボチャの種,特製タマネギドレッシング……。続々と出てきた。

 体にできた赤い発疹がだんだん広がるようだけど,と妻が言いだしたのは今春のことだった。腹部に数か所,小さい赤紫色が出ていた。病院の皮膚科から内科に回されたが,原因不明のまま症状は広がった。

連載 立川らく朝のヘルシートークウラ噺・最終回

佃煮屋(二) 立川 らく朝
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 総合商社の食品部門の部長は、些細なことが気になる完璧主義、そのうえ負けず嫌いという典型的なA型気質。ある日、仕事上のトラブルがあり,ストレスから持病の狭心症の発作が起こり倒れてしまう。気が付くと三途の川にいた。渡し守に、「お前はまだ寿命がある」と言われたが、「もうストレスだらけの世界は嫌だから帰りたくない」と駄々をこねていると、そこに仙人が現れる。「それなら、のんびりした世界で寿命いっぱい生きてみろ」と、仙人は彼を江戸時代に移したのだった。心筋梗塞で死んだはずの江戸の佃煮屋の番頭、繁蔵の身体を借りて番頭を務めていたが、またもや商品のトラブルが発生、このままでは番頭の座が危ういと思った途端、再び狭心症の発作が出るのだった。

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 「ドメスティック・バイオレンス」という言葉を日本語に適切に置き換えることは難しいと思われます。ドメスティック・バイオレンスに対する運動は1970年代のアメリカで,夫や恋人から受けた暴力の経験を語りはじめた女性たちと,彼女たちを支援する女性たちによって始まりました。そしてこの言葉は,“男性による女性への暴力”や“男性の女性支配を支える社会のあり方”への批判を反映し,そのことを社会的問題とするものでした。つまり,本来は対等であるはずの男女間で,女性が男性にコントロールされたり,従属させられたりすることが社会的に容認されていることを問題としたのでした。

 彼女たちは全米各地にシェルターやホットラインを作りだして,法改正や警察の対応の改善を求めていきました。その運動のなかで,女性たち自らが置かれている状況を反映する言葉として「ドメスティック・バイオレンス(以下DVとする)」という言葉を使いました1)

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はじめに

 平成11年度から,愛知県額田郡額田町において,4年次学生の公衆衛生看護学実習受け入れとともに,町と愛知県立看護大学(以下大学とする)の協働の動きが始まった。

 具体的には,平成12年8月,大学の教員・学生らが,町の協力を得て,額田町全5か所の保育園に通う3歳から6歳の子どもをもつ母親に対して「育児不安」の調査を行った。その結果,育児不安には,夫の役割・家庭機能との強い関連がみられた1,2)。また,従来から指摘されているように育児不安と児童虐待との関連性が認められた3,4)

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■要旨

 「疫学研究におけるインフォームド・コンセントに関するガイドライン(ver 1.0)」を疫学の講義を受けている看護大学生(3年生)に夏休み(2001年7~8月)に読んでもらい感想を書いてもらった。70名中68名が感想文を提出し,65名が感想文を研究のために使用することに同意した。

 46名(71%)は,本ガイドラインに対する共感を示し,32名(49%)は,ガイドラインがうまく働くための提言を行っていた。しかし,その一方で,16名(25%)は,ガイドラインを批判し,33名(51%)は,ガイドラインがあってもなお残る不安を述べていた。ガイドラインの批判のなかには,違反した場合の罰則がないことや,いままで疫学者がきちんとした倫理のガイドラインを作っていなかったことに対する批判が含まれていた。

 看護大学生はおおむね本ガイドラインに好意的なものの,ガイドラインがあってもなお残る不安を持っている者も少なくなかった。

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はじめに

 現在日本での主要な死因は,がん,脳卒中,心臓病である1)。これらの疾患の発症・進展には,食生活や身体運動などの生活習慣が大きく関係していることは,米国での大規模な疫学調査(フラミンガムスタデイ)において明らかになっている2)。また,これらの疾患は,従来成人病と呼ばれていたが,健康的な生活習慣を確立することによって発生を予防することが可能な疾患であることから,生活習慣病という新たな概念として命名された。

 一方,近年子どもの健康に関する問題は,多様化,複雑化してきている。平成9(1997)年の保健体育審議会答申のなかで,子どもの健康に関する現代的課題として,薬物や性の問題などが挙げられているが,そのほかには肥満や生活習慣病の兆候が3),「健康日本21」4)においては肥満児を減少させる目標がおのおの挙げられているように,肥満や高脂血症が子どもたちの間で増えている。とくに小児肥満は高率に成人肥満へ移行し5),多くの生活習慣病の危険因子となっている。こうした肥満予防のためには生活習慣の改善が必要であるが,生活習慣は青年期までに形成されるため,小児期からの健康教育の重要性が強調されるようになってきた。過去に思春期保健における健康教育の重要性6~8)が述べられているが,小学生に対する健康教育についてまとめられているものは少ない。

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 たび重なる青少年に関する痛ましい事件を聞くたびに,「いまの子どもたちに何が起こっているのだろう」という疑問が沸いてきます。と同時に,このような問題へのアプローチとして,彼らの生育歴や家庭環境に注目するだけでは,もはや限界があるのではないかと思うことがあります。

 本書は,学校教育や精神医療の現場において,このような問題と向き合う際,原因を「個人」に還元するのではなく,問題が起こった現場の「制度」のあり方に注目し,精神科医,スクールカウンセラー,小学校教師,大学教授など6名がそれぞれの立場から解決の糸口を見いだすさまざまな実践を紹介しています。

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 誰もが高齢になったとき,自らの人権と人間性を尊重したケアを受けたいと願っている。本書は,この願いを実現させるために保健福祉の現場で働く人びとに一読してほしい本である。日々の忙しさのなかで忘れかけている自分のなかの優しさ,温かさに気づかせてくれる。明日職場で待つお年寄りと心から会話を楽しみたいと思わせてくれることだろう。

 とはいうものの,「自宅でない在宅―高齢者の生活空間」のタイトルから,最初は建造物としての高齢者施設のあり方論かと勝手な想像を巡らした。しかし,そうではなかった。現状の高齢者施設がもつ問題や課題を真正面から見据え,鋭い感性で高齢者の尊厳を支えるケア,住まいの有りようについて問いかけている。

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頑張るぞ!

 石川県 まだまだひよっこさん

 保健師になって,まだ半年。自分自身がなかなか成長しないことに落ち込むこともしばしば…。

 それぞれのケースとしっかりと関わり合い支援している先輩保健師さんの姿をみて,「自分も早くそんな風になっていきたい!」と意気込むものの,なかなかそうはいかず,日々先輩に確認したり,栄養士さんに教えてもらったりの連続…。「この積み重ねがいつかは花開く!」と信じて日々の仕事に取り組んでいます。

基本情報

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保健婦雑誌
59巻12号 (2003年12月)
電子版ISSN:2185-4041 印刷版ISSN:0047-1844 医学書院

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