助産婦雑誌 54巻6号 (2000年6月)

特集 国際認定ラクテーション・コンサルタント(IBCLC)による母乳支援

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世界に広がる母乳支援のエキスパート

 本誌:このたび国際ラクテーション・コンサルタント資格試験評議会(IBLCE)の本部から,ジョアンヌ・スコットさんとロス・エスコットさんのお2人が来日されましたので,国際認定ラクテーション・コンサルタント(IBCLC)と,母乳育児支援について,お話をお聞かせいただきたいと思います。

 お2人は来日は初めてでいらっしゃいますか。

母乳支援カウンセリング 本郷 寛子
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母乳育児のエモーショナル・サポートとは

 エモーショナル・サポート(精神的支援)という言葉が日本で聞かれるようになって久しいのですが,その中身について具体的に説明できる人は少ないかもしれません。母乳育児中の女性を励ますことだとか,的確なアドバイスをすることだというイメージがあるかもしれません。

 クライアントが「母乳育児を応援してもらっている」「自分が大切にされている」と思えるような基礎は何でしょうか。まずは,自分の感情をよく「聴いてもらえる」こと。次に,普遍的で裏付けのしっかりした情報を提供してもらえることです。そして画一的な指導ではなく,十分な情報の中で母親自身が選択できるということ,その選択(一人ひとりの違い)を受容してもらえるということ。そして,情報さえわかりやすく提供されれば,クライアントには自分で自分の赤ちゃんと家族のために最良の選択ができる力があるのだと信頼してもらえることです。

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はじめに

 「母乳育児を成功させるための10カ条」(以下「10カ条」,表1)は,WHO・ユニセフが1989年に発表した共同声明「母乳育児の保護と推進・支援:産科施設の特別な役割」の要約で,母乳育児の指針のグローバルスタンダードとなっている。わが国の「10カ条」の理解は着実に広がってはいるが,昔から行なわれてきた母乳育児に関するケアや考え方も根強く浸透しており,それが「10カ条」の正確な実行を阻んでいるとも思われる。

 本稿では,母乳育児の指針として「10カ条」が打ち出された科学的な証拠(エビデンス)について,WHOの『Evidence for the Ten Steps to Successful Breastfeeding』1)に基づいて述べてみたい。

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はじめに

 ほとんどの母親はわが子を母乳で育てたいと思っていますが,混合栄養からやがて人工栄養になってしまう場合も多いようです。なぜ人工乳を足すようになったかをお母さんに尋ねてみると,「おっぱいが足りなくなったから」と答える人がたくさんいます。

 1995年の乳幼児栄養調査(厚生省母子保健課)によれば,1か月健診時の母乳率は46.2%ですが,日本に14か所ある「赤ちゃんにやさしい病院(BFH)」では同じく1か月時で90%を越えています1)。たいていのお母さんと赤ちゃんは,適切な援助を受ければ母乳育児を成功させることができます。

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はじめに

 母乳育児中に遭遇するトラブルのひとつに,乳腺炎を含む「乳房の腫れ」があります。「おっぱいが腫れたら直接授乳は中止」vs「授乳励行」また,「おっぱいが腫れたら冷やす」vs「温める」などの相反するフレーズをよく耳にします。

 通常,授乳中に乳房が腫れた母親に接する医療者は助産婦,看護婦,保健婦,産科医,外科医,小児科医などですが,その対応は必ずしも一致しているとは言えず,また使用される用語もさまざまで,時として医療ケアの受け手であるお母さんたちを混乱に巻き込みます。

乳首のトラブル 金森 あかね
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はじめに

 本稿では,授乳期の乳首のトラブルについて概説する。一口に乳首のトラブルといってもかなり広範囲である。妊娠中のケアを含めて,乳首のトラブルとその対処法について,大まかに述べてみる。

 最初に述べておきたいことは,「壊れていないものはなおすな」という原則である。乳首の形が小さくても陥没していても,母親にも児にも何の問題もないとき,われわれは干渉すべきではなく,むしろ「お母さんも赤ちゃんもとても上手ですね」とさりげなく肯定の言葉をかけるべきである。しかしこのとき,専門家としては,起こりやすいトラブルとその予防法,対処法などの知識を持ち,必要なときには情報を提供することは大切である。

乳離れの援助 金森 あかね
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はじめに

 乳離れとは,次第に母乳以外のものから必要な栄養が摂れるようになっていく過程であるといえる。離乳食の開始が乳離れの始め,完全に母乳以外のものから栄養が摂れるようになって,母乳を与えるのをやめるのを乳離れの終了と考えることができる。離乳食の開始時期と方法,母乳育児の終了時期と方法について述べてみたい。

 本稿では,乳離れの時期とその方法について,様々な情報を踏まえた母親への援助の仕方について要約してみる。どのような場合も,十分な情報提供の上で,母親の考えが最も尊重されなければならないと考える。

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母乳育児のための出産前教育とは

 Breastfeedingという言葉は,直訳すれば「乳房で乳汁を食べさせる,乳房で乳汁を食べる」という,授乳行為のみを示しているが,実際には,単に母親が自分の乳を子に与えるという行為にとどまらず,子どもを育てるという育児行動そのものを内包する言葉でもある(日本語に直す場合,「直接授乳」「母乳哺育」「母乳育児」など,適宜,意を汲んだ訳が必要になってくる)。

 母親が母乳でわが子を育てようとして困難に直面すると「母乳で育てているから子育てが大変なのだ」と思いがちであるが,実際には「大変なのは子育てそのものなのだ」ということである。つまり,母乳育児のための出産前教育においては,育児をする親となるための教育の一環であるということを大前提としなくてはならない(表1)1)

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はじめに

 「母乳を出すためには,何を食べたらよいのでしょうか」

 これは母乳相談でよく出る質問であるが,その土地で常食されている物を食べ,健康に生活している母親の母乳は,子どもを健康に成長発達させるために十分な量と栄養素を備えている。人間は住む場所によって食べる物に大きな違いがあっても,ほとんど等質の母乳を分泌することができる1)。したがって母親が長期の栄養失調になっていたり,医学的な理由がない限り,母乳育児をするために特別な食事をする必要はない。

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 一般的な授乳法だけでは全ての吸啜上の問題を解決できるとは限らないのですが,ここに述べるトレーニング法を使えば効果的に解決できることがわかっています。

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 1997年にWHOが出版した『新生児の低血糖』という冊子は,たくさんの文献をもとにした専門家向けの詳しい解説書です。今回はその最初の部分である,「低血糖の予防とその取り扱いに関する勧告」を「低血糖予防のためのガイドライン」として紹介します。

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 日本ラクテーション・コンサルタント協会(JALC)は,断乳の是非を判断するための個人の母乳のダイオキシン汚染濃度の測定や,母乳の安全基準の設定,早期断乳指導などの介入に反対します。

 日本ラクテーション・コンサルタント協会(JALC)は,母乳育児が乳児を育てるための最良の選択であり,乳児にとっても母親にとっても基本的な権利であることを支持します。医学的に母乳育児が禁忌だという非常に稀なケースや,汚染物質の大量混入事故などの明らかな危険の可能性のある場合を除いては,何者もその権利を脅かすことのないようにと,この声明を出します。

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 本誌 さっそくですが,自己紹介と「国境なき医師団」に参加なさった経緯からお聞かせいただけますか。

 渡辺 わたしは,聖路加看護大学を卒業した後に聖母病院(東京)に就職しましたが,最初の3年間は保健婦として,そして,その後に助産婦として3年間働きました。もともと開発途上国など,海外で働きたいと思っていたので,病院で働きながら,どうしたら行けるんだろうといろいろ調べていました。

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はじめに

 新生児・乳児にとって母乳は,栄養学的,免疫学的に優れている栄養法である。母親にとっては経済的負担もなく,母子相互作用を高めることから,母乳育児志向は高くなっている。

 当愛媛県立中央病院小児科病棟では,直接授乳が困難な場合は搾乳した母乳を冷凍用母乳パックに冷凍し保存しているが,解凍後の母乳の残りについては使用基準がないため廃棄している。母乳の冷凍保存について山内1)は-20℃で1か月間としており,冷蔵保存については5℃で24時間保存した後の細菌数に変化はなかったと報告している。しかし冷凍母乳を一度解凍した後の冷蔵保存乳の経時的な変化については明らかではない。

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 1999年秋,「国境なき医師団」はノーベル平和賞を受賞,世界の賞賛を浴びた。世界各地での医療NGO活動が認められたことによる受賞である。

 「国境なき医師団」の設立は1971年。これまでにのべ10,000人以上(医師,助産婦,看護婦,物資調達要員等)が参加してきた。

連載 助産婦のための疫学入門・6

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量的方法と質的方法

 今までの連載で,疫学とは何か,主な研究デザイン,代表的なターミノロジーを中心とした疫学論文の読み方を見てきました。今回は少し趣向を変えて,数字を超える意味を持つ調査について考えてみたいと思います。

 調査研究には量的方法(quantitative methods)を用いたものと質的な方法を用いたもの(qualitative methods)があります。もちろん疫学は量的方法を代表する調査方法で,EBM(evidencebased medicine—証拠に基づく医学)の理論的根拠であるということは,今まで説明してきたとおりです。数字を使って,できるかぎりありのままの状況をうつしだそうとするのが,いままでの疫学の目標でした。

連載 いのちの響き・17

母の掌 宮崎 雅子
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 小さく丸まった握りこぶしを母の手がそっと包みこむ。今はまだか細いその腕も,いつの日かたくましく,がっしりとした腕に変わるだろうか。

 授乳に抱っこ。おむつを変え,お風呂に入れる。掃除をし,洗濯ものをたたんでは,御飯を作る。

連載 とらうべ

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 ジェンダー(Gender)の違いに基づく生活や仕事の分担,分業は古代から様々な形で人類の知慧として機能してきた.しかし,近代という時代はむしろ「女性」という性,ジェンダーに対して否定的な意味で分業化を強いてきた.とくに保健医療の世界では,医師中心,男性優位であり,看護婦(士)や助産婦には補助的な役割しか与えられてこなかった.近年,状況は変わりつつあるとはいえ,多くの場合「協同者」として見られていないのが現実である.私はこれを「男性中心の医学化された保健医療(Male dominant medicalized health care)」と呼んでいる.

 現在私の専門とする国際保健学の目的は,保健医療を「非医学化(Demldicalization)」することであり,なぜ国と国との間で,また国のなかで,そしてジェンダーによって,人びとの健康状態に差があるのかを探究し,解決するための方策を研究することにある.

連載 りれー随筆・188

子育で・親育ち 佐藤 和子
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私はマラソンランナー

 朝5時に聞こえる,生後10か月の次男の泣き声。これが私の長い1日の開始サイレンです。おっぱいをあげてオムツ交換の後,次男を背負ったまま主人の弁当を作り,6時過ぎに送り出します。朝食の準備をしている問に,2歳半の長男が起きて,台所のドアの前で「かあしゃん,だっこ,だっこ」と両手を広げて泣き出します。それ以後,子ども2人が寝つく夜の10時までの我家の状況は,まさに戦場です。

 朝起きてから寝るまで,私はまるでマラソンをしているかのようです。気づいてみると,髪はボサボサ,手はガサガサ,肌はボロボロ,今年初めてかかった花粉症で鼻はズルズル。

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選択肢の拡大

 2月14日付の週刊誌「AERA」に「産む自由,産まない自由」として,英国の事例がいくつか紹介されている。

 卵の提供を受けて55歳で出産した女性のエピソード,腎臓がん治療のために予め卵巣組織を摘出し凍結保存した3歳女児の話,妊娠可能な卵子がどのくらい残っているか判定できる妊娠テストが開発中であること,脳死状態の夫の身体から精子を取りだして夫の死後海外での妊娠に成功した女性の声(国内での人工授精を認められず凍結精子の国外持ち出しのみ「温情判決」で認められた),そして,最近トレンドになっているキャリア女性の不妊手術とカウンセリングシステムなど。

Medical Scope

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 破水の診断については,羊水の流出を確認するのが一番確かなことです。しかし,なかには肉眼で流出を認めることができない場合があります。

 こんなときには,破水しているということの確定診断に多くの方法が開発されてきました。もっとも手軽で費用がかからないのは,子宮頸管粘液(内容)を不妊症の排卵検査のときのように吸引して,スライドグラスにのせて少し乾燥させて鏡検すると,しだ状結晶が見える方法です。とても簡単ですが信頼度はかなり高く,臨床の現場では大変有効です。

基本情報

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助産婦雑誌
54巻6号 (2000年6月)
電子版ISSN:2188-6180 印刷版ISSN:0047-1836 医学書院

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