小児科 59巻10号 (2018年9月)

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脳死下での臓器提供を境に,小児腎移植を取り巻く環境は少しずつ変化してきている.透析医療の進歩した現在でも小児の腎代替療法として,腎移植が理想的であることには変わりはない.現状ではまだまだ生体腎移植の割合が多いが,献腎移植では小児ドナーから小児レシピエントへの優先提供が始まり,先行的献腎移植も行われ始めている.小児腎移植を取り巻く現状について報告する.

2.腎疾患に対する遺伝子診断 張田 豊
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次世代シーケンス技術が身近なものとなりつつあり,以前より簡便に膨大な遺伝子情報を入手することが可能となった.技術的進歩に伴う遺伝子検査の適応範囲拡大の流れは今後さらに加速し,ベッドサイドで遺伝子情報を活用する機会が増えるであろう.小児腎疾患診療において遺伝的原因が明らかになることは患者にとってさまざまな利点がある.しかし,それぞれの遺伝子検査法には利点と限界があり,実際に検査を実施する際には個々の患者の病態をふまえて適切な方法を選ぶ必要がある.また結果の解釈や患者への説明に際しては,それぞれの遺伝子検査手法の特徴や限界,倫理的側面についても理解することが重要である.

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非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)とC3腎症はともに補体代替経路の異常により発症する腎疾患という点で共通する.一方,その臨床経過はまったく異なり,aHUSは他のHUSと,C3腎症は他の糸球体腎炎との鑑別をそれぞれ要する.aHUSはエクリズマブの登場と補体検査の発展により,その診断,治療に関するコンセンサスが整いつつある.C3腎症はaHUSにくらべて不均一な疾患であることと,治療法が確立されていないことから,統一された治療指針の確立まではまだ時間がかかりそうである.両疾患とも今後さらなる発展が見込まれるなか,病態,診断,治療,予後など現時点で明らかとなっていることを理解し,診療と今後の研究につなげることが重要である.

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小児の急性腎障害(acute kidney injury:AKI)の診断は,成人と同様国際的腎臓病ガイドライン機構(Kidney Disease Improving Global Outcomes:KDIGO)診断基準を用いる.その際基準となる血清クレアチニン値は年齢別基準値が参考になるが,生後3か月未満の基準値はない.早産児や低出生体重児はAKIのリスクが高く,またAKI合併児のほうが生命予後不良である.小児のAKIでは体液過剰の評価がとくに大切で,%FO(fluid overload)が20%以上だと生命予後が不良である.腎補助療法は体格に合わせたカテーテル,カラム,条件設定など,小児特有の治療方法が経験的に存在する.重篤な障害や生命予後不良が予想される児がAKIを合併した場合は,医療スタッフ内での十分な情報共有と検討の後,家族への十分な説明を行ってから,腎代替療法の開始や継続の適応を決定する必要がある.

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近年,次世代シークエンサー登場などの遺伝子解析技術の向上により,小児腎臓病と遺伝子異常との密接な関連性が明らかとなった.とくに腎尿細管においては多くの膜輸送体が存在しており,これらの機能に影響を与え尿細管機能異常症を起こす遺伝子は非常に多いことがわかってきた.いまだ発見されていない原因遺伝子や病態生理の不明な疾患も多数あるが,現時点で判明している疾患ごとの原因遺伝子とその臨床的特徴,診断におけるポイントを概説する.

6.リツキシマブ治療 浅野 貴子
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リツキシマブは,B細胞表面に発現する分化抗原CD20に対するモノクローナル抗体で,CD20陽性のB細胞を特異的に傷害する分子標的薬である.リツキシマブは,小児の特発性ネフローゼ症候群の2~3割を占める難治性の頻回再発型・ステロイド依存性ネフローゼ症候群の再発予防に有効であるが,その効果はB細胞依存性である.長期に寛解を維持するためには,リツキシマブ投与後に免疫抑制薬の維持療法を行う方法やリツキシマブを反復投与する方法が有効とされるが,至適投与方法はまだ確立されていない.重篤な副作用も報告されていることから,慎重に適応を判断し,安全に使用することが大切である.

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小児泌尿器疾患は,先天性腎尿路奇形,尿路感染症,尿路結石,神経因性膀胱,腫瘍性疾患,外傷など多岐にわたる.超音波検査を中心に,画像診断検査の適応となる疾患が多い.ほとんどは,超音波検査のみで診断が可能であるが,その超音波所見から,必要に応じて,排尿時膀胱尿道造影,CT,MRI,核医学検査などが選択される.各画像診断検査には,利点と欠点があり,非侵襲的なものから効率的に目的に沿った画像診断検査を行うことが大切である.本稿では,小児泌尿器疾患に対する超音波検査,排尿時膀胱尿道造影,CT,MRI,核医学検査の利点と欠点,適応を中心に解説する.

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IgA腎症と紫斑病性腎炎は小児における代表的な糸球体疾患であり,両疾患の病因・病態には共通した部分が多い.したがって,臨床症状,病理所見において重症例ではステロイド薬,免疫抑制薬を含む多剤併用療法がともに用いられている.しかし,多様な病理所見,臨床経過を呈する紫斑病性腎炎ではエビデンスのある治療方針はなく今後の検討課題である.

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臨床経過:出生時より右内眼角に青色調の腫脹(図1)を認めていた.日齢4から増大傾向にあるために精査加療目的に当院に紹介となった.右内眼角周囲に約1cm大の腫脹を認め,弾性軟,青色調であり,超音波検査で右皮下嚢胞性腫瘤が指摘された.MRI T2強調像(図2)では,右眼角部皮下~涙嚢~鼻涙管~下鼻道に高信号域を認め,先天性涙道ヘルニアと診断した.感染兆候はなく,経過をみて外科的治療を考慮している.

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急性脳症は,刻一刻と変化していく臨床像の経時的な変化を鋭敏に捉え,症例を治療するのか,いつ治療を開始するのか,どのような治療をするのかを決定しなければならない.当直帯では,ほぼ小児科医1人で対応する二次救急病院と,複数名で対応が可能な三次救急病院とでは,対応が異なる.急性脳症は,三次救急病院での対応が望まれるが,急性脳症疑いすべてを受け入れることは困難である.対応できる症例を見極め,三次救急病院で対応する必要がある症例を早く判別するのが二次救急病院の使命である.ガイドラインの記載に沿って新しい知見も加えて概説し,意識障害,治療開始基準,脳波,非けいれん性てんかん重積状態に関して重点的にガイドライン活用の展望を解説する.

急性弛緩性脊髄炎 奥村 彰久
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わが国では2015年秋にエンテロウイルスD68感染症の流行に伴って,急性弛緩性脊髄炎が多発した.症例は小児がほとんどで,呼吸器症状の先行が高率であった.麻痺は2日程度でピークに達し,その分布は単麻痺から四肢麻痺まで多彩で,麻痺の左右差が高率であった.神経生理学的検査ではM波の導出不能や神経伝導速度の低下を伴わないM波の振幅低下が特徴的であった.脊髄MRIでは長大病変が特徴的で,脊髄病変の範囲と麻痺の分布とに乖離を認めることが多かった.運動麻痺の予後は不良で,完全回復を認める症例は少なかった.2018年5月から,「急性弛緩性麻痺(ポリオを除く)」が五類感染症に追加され全数把握の対象になった.

診療

小児難聴診療の現状と課題 新田 清一
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先天性に高度の難聴が両耳にあると,音声言語獲得に支障をきたし社会への適応困難につながるが,より早期に難聴を発見して適切な補聴と療育を行うことでその影響を最小限に抑えることができる.近年では新生児聴覚スクリーニングの普及により難聴の早期発見が進み,補聴器・人工内耳による早期介入も行われるようになり,これまでは十分に聴覚補償ができなかった重度難聴児に対しても効果が期待できるようになった.一方で,難聴児の発見やその後の療育においては関係各機関(医療機関,教育機関および行政機関)の連携が重要であるが,そのレベルには地域差がある.当科のある栃木県の連携はいまだ不十分であり,その現状と課題について紹介した.

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本邦における小児の急性脳症の原因として,細菌感染は1.6%と報告されている1).さらにそのほとんどは腸管出血性大腸菌やサルモネラ菌によるものであり1),発症機序には数種類のサイトカインの関与が示唆されている2)3).一方,大腸菌などによる急性腎盂腎炎に合併する急性脳症も報告されているが,多くは可逆性脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎・脳症で,一部のサイトカインの上昇が報告されているが,詳細な病態は不明である4)~7)

われわれは急性脳症を合併した急性腎盂腎炎を2例経験し,1例で各種サイトカインを測定したので報告する.

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A群β溶血性レンサ球菌(A群β溶連菌)感染症は,菌自体あるいは菌から放出される外毒素による直接的組織障害や,免疫学的異常を介する病態を惹起することから,その臨床症状はきわめて多彩である.今回われわれは,打撲を契機に発症したA群β溶連菌による腸腰筋筋膜炎の1例を経験したので報告する.

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複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome:CRPS)は,四肢への外的侵襲を契機に発症し,焼けるような強い痛みや痛覚過敏,浮腫,皮膚温の異常,発汗異常などの症状を呈する難治性の慢性疼痛症候群である.多くの場合,手術や骨折,鈍的損傷など強い組織損傷を伴う誘因を契機に発症するが,針刺しなどの些細なもののほか,明らかな誘因なく発症することもあり,そのような場合は診断に苦慮することも多い.

今回われわれは明らかな誘因なく両足の凍瘡様皮疹を呈し発症したCRPSの1例を経験したので報告する.

最近の外国業績より

アレルギー 日本医科大学小児科学教室
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背景:アレルゲン吸入や,ウイルス性気道感染は,気管支喘息の急性増悪の引き金となる.生後早期の重症ウイルス性気道感染は,とくにその後の吸入アレルゲン感作が喘息発症の重要なリスクとなる.インターロイキン(IL)-33は,気道上皮細胞が障害を受けた際に放出され,ILC2やTH2細胞を活性化させることで2型炎症を引き起こし,マスト細胞や好酸球に作用することで喘息の主要症状が生じる.また,IL-33はⅠ,Ⅲ型インターフェロン(IFNs)産生を減弱させることで抗ウイルス免疫を抑制する.

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小児科
59巻10号 (2018年9月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0037-4121 金原出版

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