小児科 59巻1号 (2018年1月)

特集 どう診るか?どこまで診るか? 小児の軽症外科

  • 文献概要を表示

鋭的外力による損傷が「切創」で,鈍的外力による損傷が「挫創・挫傷」である.

創傷治癒は,炎症期,増殖期までに7~10日かかり,抜糸等ができる時期となる.

創処置を行うにあたり,受傷機転を詳細に問診し,創の深さ,形状,出血の有無等,創縁の状態を確認し,止血と洗浄を適切に行う.創縁の接合は,縫合,ステープラー,テープ,創傷被覆材,皮膚表面接着剤によって行う.創縁を適切に接合する創処置は,整容性の高い傷となる.

小児科医が創処置を行う際は,合併症を十分理解し,経過観察し,合併症を認めた場合は,外科専門医へ紹介し診療を受けさせる.

テープ,創傷被覆材,皮膚表面接着剤による創処置が比較的簡便である.

2.熱傷 熊川 靖章 , 田中 裕
  • 文献概要を表示

小児の熱傷は小児外来において経験する外傷の一つである.その熱傷に対しての初期対応や評価,転送基準について述べる.熱傷面積の評価はⅠからⅢ度に分類され,深達度が重要であり,傷跡が残るか否かを決定する重要な因子である.小児の熱傷患者においては10%以上の熱傷で容易にショックをきたす可能性があり,入院し輸液管理などの対応ができる病院への転院搬送が必要とされる.外来での小範囲の熱傷治療は適切な外用薬と創傷被覆材を選択する必要がある.熱傷面積が小範囲であっても管理を誤ると感染を引き起こす可能性がある.熱傷による小児の虐待が隠れている可能性を常に念頭におくべきである.

3.捻挫 滝川 一晴
  • 文献概要を表示

捻挫は日常診療で遭遇しやすい外傷であるが,その正確な診断は容易ではない.足関節捻挫の頻度が高いが,足関節外果裂離骨折との鑑別はしばしば困難である.前距腓靭帯および踵腓靭帯の解剖学的な位置およびその機能を理解したうえで視触診を行うことは重要である.1度捻挫ではRICEを徹底すること,2,3度捻挫では,数週間の足関節固定の後,早期運動療法が行われている.患部の腫脹が目立つ場合や疼痛等で患肢荷重が困難で歩行できない場合などは,骨折の可能性もあるためできる限り早期に整形外科受診ができるように手続きを進める.翌日以降の整形外科受診となる場合は,自宅でRICEを行うよう保護者に十分指導する.

  • 文献概要を表示

小児の骨折の診療は整形外科医でも決して容易ではなく小児科医にとっても難しいと思われ,診断から治療まで小児科医ができる必要はない.転落や転倒など受傷機転が明確で著名な腫脹や変形など局所の状態で骨折が明らかな場合はもちろん,それらが明確でなくとも子どもの動作などから骨折の可能性を疑うことが重要であり,小児科医による画像診断は必ずしも必要ではない.初期治療として患部のシーネ固定などを行うことが望ましいが,費用や手技的な問題もあり,三角巾など最小限の処置でも十分である.骨折かどうか診断に迷う軽度の例から,転位があり手術が必要かどうかという例まで,合併症の有無も含めて骨折の可能性がある場合,できれば小児の骨折に習熟した整形外科医に紹介することが望ましい.

  • 文献概要を表示

小児頭部外傷は外傷でもっとも多い.90%以上が頭蓋内損傷のない軽症例である一方で,わずかな状況の違いで重症となり,生命を脅かす状態,重篤な後遺症を残すリスクがある.頭部CT検査が多く実施される理由には,このような背景と小児の診療の難しさが影響している.頭部外傷の診療のポイント,CT撮影,緊急対応,脳しんとうの診断と管理,コンサルトの適応とタイミングについて基準の利用とともに,小児の特徴と診療技術を熟知した小児科医のスキルが加われば質の高い診療につながる.

6.歯の外傷 近藤 圭祐
  • 文献概要を表示

乳歯と永久歯では構造が異なるため受傷後の治癒過程に違いがみられる.乳歯列は2歳6か月頃で完成した後,6歳頃より永久歯との交換が始まり,15歳頃に永久歯列となる.顎顔面骨の成長は10歳頃に80%に達し,20歳頃で完成する.この様に小児は発育段階にあるため段階を考慮した治療が必要となる.口腔内には約700種類の細菌が存在し,創傷からの感染のリスクを伴い,唾液の存在が止血を困難とする場合がある.口腔内の外傷治療を行う際は,口腔内特有の環境に配慮する必要がある.また最近では,口腔外傷や多発う蝕と虐待の相関性も指摘されており来院に至った背景や子供を取り囲む環境にも注意を払う必要があると考えられる.

  • 文献概要を表示

肘周囲の脱臼には肘関節脱臼,橈骨頭脱臼,肘内障が挙げられる.肘内障は軽微な受傷機転で,急に痛みを訴え,手を動かさなくなることから,「肩がはずれた」「腕が動かなくなった」と保護者が訴え小児科や救急を受診することがある.詳細な病歴の聴取と診察で診断がつき,比較的容易な手技にて整復できる予後が良好な疾患である.しかし骨折との鑑別が難しいこともあるため,整復操作を行っても症状が改善しない場合にはむやみに繰り返さず,整形外科へ紹介することが望ましい.

  • 文献概要を表示

小児にみられる膿瘍の発生部位には発生学的な観点から胎生期の遺残物に感染が起こる場合,また,小児の発達しているリンパ系組織からの感染が膿瘍を形成する場合,軽微な外傷,とくに口腔周囲で思いがけない異物の混入などさまざまな原因で思いもよらない部分に膿瘍が生じる.そのほか,虫垂炎などの穿孔による腹腔内膿瘍なども存在する.これらの臨床症状,診断法について述べ,小児に特徴的な膿瘍の発生部位や治療の限界,切開・排膿方法などについて紹介する.

  • 文献概要を表示

肛門周囲膿瘍は,外来で遭遇する機会の多い疾患である.生後2~3カ月頃に好発し,男児が圧倒的に多く,1歳以降に発症することはまれである.本症の治療は,切開排膿が第一選択とされていたが,近年,十全大補湯や排膿散及湯などの漢方薬を用いた治療の有効性を示す報告を多く認める.難治例では免疫不全や炎症性腸疾患に起因する症例も含まれ,再発例や年長児においても,精査や手術が必要となるため,専門医への転医が検討されるべきだろう.しかし,乳児男児における合併症を伴わない典型例については,小児科外来での漢方薬治療継続も選択肢の一つとなり得ると考える.

  • 文献概要を表示

特発性血小板減少性紫斑病は,その発症に免疫機序が関与する.小児では免疫性血小板減少性紫斑病とよぶ.紫斑を示さない場合もあることから,免疫性血小板減少症とも呼称されている.小児ITPの約8割が発症後6カ月以内に治癒する急性型で,残る約2割が6カ月以上遷延する慢性型に移行する.多くは5歳以内に発症する.性別はやや男児に多い.また,ワクチン接種後や感染症を契機に発症することが多い.治療は出血を伴うもの,あるいは出血リスクがある場合は,第一選択薬として副腎皮質ステロイド薬あるいは免疫グロブリンを選択する.慢性難治性ではリツキシマブやトロンボポエチン受容体作動薬等が考慮され,ときに脾摘術を必要とする.

  • 文献概要を表示

金属アレルギーには皮膚に直接接触して起こす金属接触アレルギーと,食品や歯科金属に含まれた微量金属が体内に吸収されて発症する全身型金属アレルギーとがある.小児では金属製の玩具,ハサミ,装飾品など生活用品による感作に注意すべきである.全身型金属アレルギーのもっとも多い病型である汗疱状湿疹は乳幼児でもみられ,ニッケル,コバルト,クロムのパッチテストが陽性を示すことが多く,チョコレートや豆などの金属を制限することにより軽快することが多い.ただしニッケル,コバルト,クロムは人体にとって必須金属でもあるため,とくに成長期では厳格すぎる除去食は避けるべきであるとともに,2カ月間続けても無効であれば中止すべきである.

小児保健

  • 文献概要を表示

日本小児連絡協議会栄養委員会は,イオン飲料などの多飲によるビタミンB1欠乏症について調査を行った.全国実態調査では33例の情報を収集し,養育環境の問題を高率に認めた.ビタミンB1欠乏症の症状は非特異的であり,約半数の症例に後障害を認めた.保護者意識調査では,少数ではあるが,子どもにイオン飲料を多く飲ませている保護者を認めた.このような保護者は,イオン飲料に対する肯定的評価が高率であった.医師意識調査では,医師のイオン飲料に対する意識はおおむね適切であった.イオン飲料などの多飲によるビタミンB1欠乏症の頻度はまれであるが,その危険性を周知することが新たな症例の発生を防ぐために重要である.

  • 文献概要を表示

学校での性教育により,子どもたちは性に関する悩みの解決,人間としての生き方や家庭・地域社会における男女の在り方について学ぶことができる.男性大学生を対象とした筆者らの調査では,学校で受けた性教育の内容を覚えていると回答した群において,性教育が役に立つと感じ,異性のパートナーに配慮しているものが有意に多かった.適切な性教育は,すべての子どもたちに必要でありかつ有効であると考えられる.

小児科医は,子どもたちへの予防医学的活動として継続的な性教育を提供できる非常によい立場にある.今後は,小児科医が中心となり,小中高校のみならず大学生等青年期の男女も対象とした継続的な性教育が望まれる.

  • 文献概要を表示

マイコプラズマは下気道の繊毛上皮に感染し増殖するため,抗原検出キットを用いるうえでの注意点として,下気道から菌が大量に運ばれてくるような強い咳をしていること,検体はできるだけ下気道に近い側から採取すること,などが挙げられる.直近のマクロライド耐性率には大きな地域差がみられるが,2015~2016年にかけての報告ではいずれも平均耐性率は20~40%程度であり,明らかに低下傾向にある.決していつまでも耐性菌優位の状況が続いているわけではない.この点漠然と「耐性率」とよぶのではなく,正確には「A2063Gの変異率」と考えるべきであり,今後もA2063Gを新たに作らないような治療戦略が望まれる.

  • 文献概要を表示

B群レンサ球菌(GBS)は,本来ヒトの腸管や腟内の常在細菌であるが,ときに新生児や高齢者に化膿性髄膜炎や敗血症等の重篤な感染症を惹起する.新生児の侵襲性GBS感染症は予後不良となりやすい感染症の一つであるが,近年,生後1週間以降に発症する遅発型感染が増加傾向にあるとされる.一方,成人においても基礎疾患を有する高齢者の増加に伴い,GBS感染症が増加してきている.本菌における病原因子としてもっとも重要なのは,菌体表面の莢膜であるが,新生児由来株と成人由来株ではその莢膜型,薬剤感受性成績,MLST解析結果は,著しく異なっている.本稿では,GBS感染症の特徴を両者の成績を比較しながら述べたい.

最近の外国業績より

循環器 日本医科大学小児科学教室
  • 文献概要を表示

背景:心房中隔欠損(atrial septal defect:ASD)はよく遭遇する先天性心疾患であり,すべての心血管奇形のうち10~15%を占める.1960年代後半以降,外科手術が良好な長期予後をもって,ASDの標準治療と考えられていた.1976年にASDに対して初めてカテーテル治療が報告され,徐々に一般的な治療となり,今日では安全かつ効果的な治療と考えられている.

--------------------

目次

著者プロフィール

お知らせ

投稿規定

バックナンバー

次号予告

編集後記

基本情報

00374121.59.01.cover.jpg
小児科
59巻1号 (2018年1月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0037-4121 金原出版

文献閲覧数ランキング(
10月4日~10月10日
)