小児科 58巻13号 (2017年12月)

特集 感染症迅速診断キットを見直す―その有用性と限界

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抗原迅速診断はすでに小児科外来診療上なくてはならない検査となっている.たった数分で病原体が特定でき,臨床経過もある程度推定したうえで,治療方針も決定できるようになった.しかし抗原迅速診断を行えるのは病原体のほんの一部であり,子どもたちへの侵襲性もある.そのため,ほかの病原体のことも十分理解して使用する必要がある.今回一般外来でよく遭遇する呼吸器感染病原体の特徴と症例の臨床経過を通じて学んだことも記載した.単に診断するばかりではなく検査をしたら必ず陽性例の臨床経過と所見をまとめておくべきで,その学びから不必要な検査をせず,子どもと保護者の不安を少しでも減らせるような外来でありたいと願っている.

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インフルエンザウイルス迅速診断キットは,抗インフルエンザ薬の適正使用や感染管理に有用な検査である.試薬の特異度は高いが,感度は検体中のウイルス抗原量に影響するさまざまな条件によって左右される.検体採取を確実に行い,流行時にはとくに偽陰性の可能性を考慮して判断する必要がある.デジタル機器にて判定する新しい試薬も開発されており,従来のイムノクロマトグラフィー法より高感度であることが期待される.簡便なキットと機器判定システムを状況に応じて使い分けることが可能となりつつあるが,それらの精度管理が重要である.

3.RS ウイルス 長澤 耕男
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RS ウイルスは,小児呼吸器感染症の代表的原因ウイルスであり,2 歳までにほぼ100%の児が感染する.なかには重症化する例もあり,早期診断が重要である.RS ウイルス迅速診断キットは臨床現場でもっとも広く行われている検査法であり,ベッドサイドでも15 分程度で施行可能な非常に汎用性の高い検査である.感度・特異度も70〜90%以上と非常に高い.一方で,発症から数日経過した場合など,ウイルス量が少なくなっている場合には偽陰性となる可能性がある.また,混合感染の有無を同定することもできない.迅速キットを使用する際には,その限界も把握したうえで,適切に使用していく必要がある.

4.マイコプラズマ 大石 智洋
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肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ)は,市中肺炎の重要な起炎菌であるが,β—ラクタム系薬の効果がないため,その診断は治療薬の選択に重要な意味をもつ.

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小児期急性呼吸器感染症の原因ウイルスの一つであるヒトメタニューモウイルス(hMPV)は上気道炎,気管支炎,細気管支炎および肺炎を引き起こし,小児呼吸器感染症の5〜10%を占める.臨床症状からはRSV 感染症などほかのウイルス感染か否かの鑑別は困難であるが,医療機関での一般検査としてイムノクロマト法が2014 年から保険収載され,臨床現場で活用されている.現在使用可能なhMPV 迅速抗原検査キットは5 社から販売されている.各社キットの感度は73.7〜100%,特異度93.0〜100%と検査上問題ないレベルと思われる.迅速検査キットの長所・短所をふまえたうえで,日常診療に役立てるべきであろう.

6.A 群レンサ球菌 西 順一郎
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A 群レンサ球菌迅速診断キットは,感度90%以上,特異度95%以上と優れており,本菌による咽頭・扁桃炎の診断に有用である.咽頭痛と発熱で発症し,咽頭・扁桃に発赤や浸出物がみられる場合は検査のよい適応となり,陽性の場合はアモキシシリンを投与する.ただし,無症候性保菌者が存在するため,迅速検査陽性だけでは本菌が原因菌であるとは限らず,検査結果の解釈には臨床症状や咽頭所見の注意深い観察が重要である.とくに,鼻汁,咳嗽,嗄声,結膜炎がみられる場合や3 歳未満児の咽頭・扁桃炎では本菌が原因である可能性は低く,原則として迅速検査は行わないことが推奨されている.

7.ロタウイルス 高梨 さやか
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ロタウイルス胃腸炎は生後6〜24 カ月での発症が多く,5 歳までにほとんどの児が感染する.臨床症状で原因ウイルスを鑑別することは困難であり,病初期にロタウイルス感染症を診断し,治療方針の決定,病状経過の予測,院内感染対策の策定に資する迅速診断キットは有用性が高い.特別な機器を要さず手技も簡便なイムノクロマトグラフィー(IC)法が広く臨床の現場で使用され,感度・特異度は90%以上と良好な結果が報告されている.ロタウイルスワクチンの導入移行期にあって,わが国はロタウイルス胃腸炎の疫学の大きな変化を迎えており,新規検出株に対してのIC の有効性の評価等行っていく必要性がある.

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現時点での有用なノロウイルスの迅速診断はイムノクロマト法による抗原検査である.市販キットによる検出率には,糞便中のノロウイルスのウイルス量や遺伝子型により会社間で多少差がある.リアルタイムRT—PCR 法,LAMP 法,nested RT—PCR 法などの遺伝子診断と比較するとイムノクロマト法は感度が低いので,診断においては臨床所見をみながら補助手段として用いる.直腸便,浣腸便,坐薬使用時の糞便では偽陽性・偽陰性の可能性がある.今後,感度・精度がより高いイムノクロマトキットが出てくることとともに,より安価で,迅速で,簡便な遺伝子診断法の出現が望まれる.

9.デング熱 Moi Meng Ling
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デングウイルス感染による急性熱性疾患であるデング熱・デング出血熱は,熱帯・亜熱帯地域において公衆衛生上の深刻な問題であり,流行が世界的に拡大している.ヒトの住環境で生息するデングウイルス媒介蚊は,とくに夏から秋の活発に活動している時期においては国内への侵入対策は重要である.日本への輸入症例も年間200〜300 症例が報告されている.臨床症状はほかの熱性疾患も類似するため,鑑別診断は重要である.実験室診断法には,病原体診断と血清診断があり,本稿では,新たな知見を含めて上記の診断法および近年に開発された迅速診断法(POC)の有用性と今後の課題について概説する.

10.クラミジア 山崎 勉
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小児科領域におけるトラコーマ・クラミジア(C. trachomatis),肺炎クラミジア(C. pneumoniae)およびオウム病クラミジア(C. psittaci)に関する診断法について概説した.C.trachomatis 検出試薬は,性感染症領域について核酸増幅法の開発が先行し,小児気道感染症における迅速診断法の検討は停滞している.C. trachomatis 抗体試薬は,新規開発は乏しい.C. pneumoniae 特異検出試薬は,開発途上にある.C. pneumoniae 抗体測定は市販試薬が使用可能であり,結果が短時間で判明する試薬もある.C. psittaci に関しては,今後の特異的な診断試薬の開発が期待される.

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超早産児の慢性期の呼吸管理のうえで臨床的にもっとも問題となるのは慢性肺疾患(CLD)の管理である.従来確立した予防法,治療法はなかったが,最近さまざまな予防法,治療法の試験が行われている.また,CLD の定義も今後国際的に改訂,統一され,より国際的な予防法,治療法の確立が期待される.

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近年,多くの施設で母児相互関係の確立のために早期母子接触や母子同室を行っているが,ローリスクと評価されている児のなかでもその施行中に急変する事例があることから,早期母子接触や母子同室を行う際の児の安全性の確保が望まれる.重要なポイントとしては,新生児蘇生法(NCPR)研修を受けたスタッフの配置,各施設で「適応基準」「中止基準」「実施方法」の作成,妊娠中から妊婦・夫・家族に新生児期に起こり得る危険状態を理解してもらう,パルスオキシメータなどのモニター類の活用,および母子同室ではスタッフの定期的な訪問などを挙げることができる.

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若年世代の避妊法としては,確実な避妊効果をもつ経口避妊薬が推奨される.避妊効果ばかりでなく,月経痛の緩和と月経血量の減少が期待できるという副効用をもつ.重篤な有害事象として静脈血栓塞栓症が挙げられるが,このリスクは妊娠中や分娩後に比較するとかなり低い.日本でもっとも多く普及しているコンドームは性感染症の予防には有効であるが,避妊効果は高くない.また,性交後₇₂ 時間以内であれば緊急避妊薬を服用することにより₈₅%程度妊娠阻止ができる.思春期世代に性教育としてこれらのことを確実に伝えていく必要がある.

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八王子市において,駒木野病院児童精神科,島田療育センターはちおうじの医療機関の現状を調査し,課題について検討した.₂₀₁₄ 年度の初診患者数は,駒木野病院児童精神科外来の初診患者数は₃₀₉ 名であり,八王子市在住が₅₆.₁%であった.島はちは₇₅₉ 名であり,八王子市在住が₇₀.₉%であった.それぞれ約半数が発達障害であった.

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朝起きられないことと不登校を主訴とし,起立性調節障害(orthostatic disregulation:OD)と4 年間考えられていた自閉症スペクトラム障害および注意欠如多動性障害併存の14 歳女児例を経験した.児は発達歴において年齢にくらべてできないことが多く,二次的なこころの問題を認めた.OD の症状は神経発達症の症状の一部として認められることが考えられ,鑑別が非常に大切であると考えた.

最近の外国業績より

新生児・未熟児
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背景:気管支肺異形成(bronchopulmonarydysplasia:BPD)は未熟児において重大な合併症であり神経発達予後にも影響する.BPD の主体は未熟肺における炎症反応であり,抗炎症作用をもつステロイドの全身投与は,予防・治療に広く用いられてきた.しかし,全身投与はBPD に対しては有効であったが,成長発達や神経学的予後を悪化させ,脳性麻痺を増加させてしまった.そこで,ステロイド全身投与に代わって吸入療法が注目され,多くのランダム化比較試験(randomizedcontrolled trial:RCT)が行われてきた.著者らは,これらの吸入ステロイド療法に関するRCTを用いてメタアナリシスを行った.

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小児科
58巻13号 (2017年12月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0037-4121 金原出版

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