medicina 58巻2号 (2021年2月)

特集 外来で出会うアレルギー疾患—Total Allergist入門

関谷 潔史
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 気管支喘息,アトピー性皮膚炎,アレルギー性鼻炎,アレルギー性結膜炎,花粉症,食物アレルギー,薬剤アレルギーを代表とするアレルギー疾患は,一般内科診療において出会うことの多い疾患であるが,診断や治療に難渋することも多く,アレルギー疾患の既往があるだけで嫌厭されがちである.2017年にアレルギー疾患対策基本法が施行されるなど,アレルギー疾患診療の重要性は理解されているものの,日本全国でアレルギー専門医は4,000人程度しかおらず,専門医不足が指摘されている.また,アレルギー専門医は,基盤とする専門領域が内科・小児科・耳鼻咽喉科・皮膚科・眼科と非常に多岐にわたるため,各専門領域にまたがってアレルギー疾患全般を診ることのできるTotal Allergistが育ちにくい環境にある.

 専門医が不足しているため,患者が居住地域にかかわらず,等しくアレルギー疾患医療を受けられるようにするには,あらゆる診療科の医師がアレルギー疾患全般の知識を有していることが望ましい.そのためには知識の普及が必要不可欠である.アレルギー疾患治療の原則は「原因の回避」であるため,知識を備えているだけで症状の悪化を防ぎ,患者のQOLを改善させることが可能である.また,たとえ専門的な診断や加療ができなくても,知識があれば患者からの身近なアレルギー疾患に関する相談に乗ることができ,QOL改善に大いに役立つ.

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●今月の特集執筆陣による出題です.アレルギー疾患診療に対する理解度をチェックしてみましょう!

押さえておくべきアレルギー疾患の基本

アナフィラキシー 関谷 潔史
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Point

◎アナフィラキシーは臨床所見で診断可能であり,迅速に診断を行う.

◎発症初期には,進行の速さや最終的な重症度の予測がきわめて困難である.

◎致死的な反応を呈することも少なくないため,誘発原因にかかわらず,ただちに治療を開始する.

◎発症早期の救命効果があるのは0.1%アドレナリン筋肉注射のみであり,治療の第一選択薬となる.

◎アナフィラキシーを疑う症状があるものの診断に迷う場合は,治療を行いながら経過をみる.

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Point

◎屋内(室内)で曝露する環境アレルゲンにはダニ,ハウスダスト,ペット・飼育動物,真菌,昆虫,浮遊する食物などがある.

◎ダニによるアレルギー疾患としては喘息,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎のほか,食物を汚染したダニによるoral mite allergy syndromeが臨床では重要である.

◎真菌のなかでもA. fumigatusは慢性呼吸器疾患の気道・肺に腐生しやすく,喘息の難治化に関与していることが示されている.

◎ペットとして飼育される有毛動物によるアレルギーは,従来のイヌやネコに加えて,げっ歯類やフェレットによるアレルギーが増加している.

◎技術に限界はあるが,屋内の環境整備により曝露するアレルゲン量を減らすことは,アレルギー疾患の発症予防や症状緩和の観点から重要な行動であると考えられる.

成人食物アレルギー 森田 栄伸
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Point

◎成人食物アレルギーは食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)の病型が多く,原因食物は小麦が最も多い.

◎診断は,病歴の聴取,プリックテスト,抗原特異的IgE検査,好塩基球活性化試験,食物アレルゲン誘発テストを組み合わせて行われる.

◎運動や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の服用は消化管における未消化アレルゲンの吸収を増加させ,症状の誘発をきたす.

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Point

◎花粉症の有病率はこの20年で10代は2.5倍,10歳以下では4倍に増加している.

◎治療には,まず抗原の除去・回避の努力が必要である.

◎頻用される後期の第2世代抗ヒスタミン薬では副作用が減少し,倍量投与が保険適用となる薬剤が出現してきた.

◎期待の舌下免疫療法は自宅で行うアレルゲン免疫療法であるため,医師のみでなく患者自身も十分な知識をもつ必要があり,始めるにあたってのガイダンス,治療継続の確認が重要である.

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Point

◎気管支喘息の病態には多様性があり,その診断にあたり重症度やフェノタイプを考慮する.

◎コントロールが不良である場合には診断を見直し,アドヒアランスと吸入手技,増悪因子や合併症を評価する.

◎重症喘息に対し,2型炎症を標的とした複数の抗体医薬が有効である.

薬剤アレルギー 山口 正雄
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Point

◎薬剤アレルギーは薬理作用からは予測不可能で,免疫アレルギー反応が関与する病態である.

◎欧米では,過去にペニシリンアレルギー歴を有する患者において,生涯ペニシリンを避けるのは過剰対応との考えにシフトしつつある.

◎通常,造影剤アレルギーはIgE抗体が関与しない反応である.

◎局所麻酔薬のアレルギーが疑われた患者のうち,真のアレルギーはごくわずかである.

慢性蕁麻疹の診断と治療 福永 淳
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Point

◎蕁麻疹は「特発性蕁麻疹」と「刺激誘発型の蕁麻疹」に分類され,治療アプローチが異なる.

◎急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹は「特発性蕁麻疹」に含まれ,症状が6週間以上続くのが慢性蕁麻疹である.

◎慢性蕁麻疹の診断は,特定の刺激で誘発されないという点で他の病型の蕁麻疹を除外することで行う.

◎慢性蕁麻疹の治療は抗ヒスタミン薬をベースとし,難治例にはオマリズマブが有効である.

血管性浮腫の診断と治療 猪又 直子
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Point

◎血管性浮腫の機序には,主にマスト細胞メディエーター起因性とブラジキニン起因性の2種類がある.

◎わが国の蕁麻疹診療ガイドラインでは,血管性浮腫を①特発性,②刺激誘発型,③ブラジキニン起因性,④遺伝性の4つの病型に分類している.

◎遺伝性血管性浮腫の病態はブラジキニン起因性と考えられており,原則として蕁麻疹を合併することはない.

◎ブラジキニン起因性の血管性浮腫では,消化管粘膜浮腫が単独で現れたり,喉頭浮腫による上気道閉塞のリスクがあり,抗ヒスタミン薬は無効である.

アレルギー疾患診療において必要な知識

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Point

◎好酸球増多の原因は薬剤アレルギー,寄生虫感染症,アレルギー疾患など多彩なため,鑑別診断が重要である.

◎緊急を要するものから経過観察のみでよいものまで予後には幅があり,緊急性の判断が重要である.

◎末梢血好酸球数増多の程度は,必ずしも臓器障害の重症度と相関しない.

◎薬剤アレルギー,寄生虫感染など,対応可能な疾患による好酸球増多を早期に鑑別する.

◎無症候性または偶発的に発見された好酸球増多に対しても鑑別診断を怠らない.

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Point

◎アレルゲンコンポーネントとは,アレルゲンエキス(粗抽出抗原)中の,抗原性を有する個々の蛋白質のことを指す.

◎アレルゲンコンポーネント解析では,個々のアレルゲンコンポーネントへのIgE抗体価を測定し,より正確なアレルギー診断が可能になる.

◎コンポーネントの抗原性の種特異性,粗抽出抗原中の含有量などが,そのコンポーネントへのIgE抗体価の診断能力に大きく関わる.

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Point

◎2つのアレルゲンを認識するIgE抗体が存在すると,両アレルゲンは交差抗原性を有する.

◎生物学的に近いと蛋白質のアミノ酸配列相同性が高く,交差抗原性が起きやすい.

◎交差抗原性を有しても,アレルギー反応(臨床的交差反応)を起こすとは限らない.

◎交差抗原性の有無は,両アレルゲン間におけるIgE結合抑制試験によって調べられる.

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Point

◎乳児アトピー性皮膚炎患者において,特異的IgE抗体陽性の食物は疾患の原因ではなく,経皮感作の結果を示している.

◎乳児期早期に発症した湿疹は経皮感作のリスクを高め,食物アレルギー発症のリスクとなる.

◎乳児期の湿疹の重症度に比例して,経皮感作を受けるリスクが高くなる.

◎湿疹の発症からプロアクティブ治療による皮疹のコントロール開始までの期間が長いほど,食物アレルギーの発症率は高くなる.

◎スキンケア製品に含まれる食物成分は経皮感作のリスクがある.

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Point

◎妊婦の治療においては母体環境の改善と胎児への薬剤移行による副作用を秤にかける必要がある.

◎妊婦に投与される薬剤の影響は催奇形性(妊娠初期)と胎児毒性(妊娠中期以降)に分けて考える.

◎早急の対応が必要な病態では妊婦の救命を優先し,治療に躊躇してはならない.

◎母乳栄養にはメリットがあり,多くの薬剤において治療と母乳栄養の両立は可能である.

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Point

◎アレルギー疾患は急性期・遷延期・慢性期で,その背景となる病態生理学的機序が異なるため,まず病期を認識すべきである.

◎漢方薬を使用する際,構成生薬から薬効を考慮すると応用範囲が広がる.

◎アレルギー性炎症による上気道の急性期病態抑制に,小青竜湯(しょうせいりゅうとう)の効果が期待できる.

◎遷延期・慢性期病態に対しては,柴朴湯(さいぼくとう)による抗炎症効果が考慮される.

◎アトピー性皮膚炎には,乾燥タイプは温清飲(うんせいいん),湿潤タイプは消風散(しょうふうさん)の適用を,西洋医学的治療と並行して考慮する.

知っておくべきアレルギー疾患とその周辺疾患

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Point

◎近年,花粉と植物性食物(果物や野菜など)との間の交差反応性に基づく食物アレルギーが明らかとなってきた.

◎多種類の果物や野菜により,花粉症患者において主に口腔内過敏反応が誘発される.

◎原因抗原は多くの植物の細胞に共通して含まれる酵素や結合性蛋白質であるため,幅広い食物により症状が誘発される.

◎アレルゲンコンポーネントを用いた検査を行うことで,交差反応性抗原を明らかにできるようになった.

◎多くの野菜や果物は,加熱すると抗原性が失活する.

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Point

◎ラテックスアレルギー(LA)は天然ゴムラテックス(NRL)製品に含まれる蛋白質に対する即時型アレルギーである.

◎ラテックス-フルーツ症候群はNRL蛋白抗原交差反応を生じるクリ,アボカド,バナナなどを摂食して生じる即時型アレルギーである.

◎ハイリスクグループに属する医療従事者の主要抗原はHev b 5とHev b 6で,Hev b 6.02(ヘベイン)に対する特異的IgE抗体が保険収載されており,診断に有用である.

◎医療現場では,患者・医療者ともにLAの可能性を常に疑い,医療安全の対策を行うことが必要である.

アニサキスアレルギー 原田 晋
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Point

◎アニサキスにより生じる臨床症状としては,消化管アニサキス症と摂食後の蕁麻疹/アナフィラキシーが最多である.

◎消化管アニサキス症の発症機序については,アレルギー反応なのか,毒性反応なのか,いまだに不明である.

◎アニサキスアレルギーによる蕁麻疹/アナフィラキシーは魚類の摂食直後に発症するが,時に遅発性にも生じうる.

◎マグロ,淡水魚,養殖海産魚,甲殻類,貝類などではアニサキスの寄生は少ない.

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Point

◎マダニ咬傷を繰り返している,主にA型とO型の人が,交差反応のために食肉アレルギーを発症する.

◎ネコに感作された人が,交差反応のために豚肉アレルギーを発症する.

◎鳥類に感作された人が,交差反応のために卵黄・鶏肉アレルギーを発症する.

金属アレルギー 足立 厚子
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Point

◎金属アレルギーには,金属接触アレルギーと全身型金属アレルギーがある.

◎アレルギーの頻度が高い金属はニッケル,金,コバルトで,前2者は女性に多い.

◎金属に直接接触しなくても,難治性の皮疹がみられた場合,全身型金属アレルギーが関与していることがあり,特に汗疱状湿疹の頻度が高い.

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Point

◎喘息のコントロール悪化と末梢血好酸球増多をきたした場合には胸部画像を撮影し,慢性好酸球性肺炎,アレルギー性気管支肺真菌症などの鑑別を行う.

◎急性好酸球性肺炎は喫煙などの吸入刺激により発症し,喘息との関連はなく,末梢血好酸球増多を伴わないことが多い.

◎急性好酸球性肺炎では2週間,慢性好酸球性肺炎,アレルギー性気管支肺真菌症では3カ月間の経口ステロイド薬治療を行う.

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Point

◎好酸球性食道炎・胃腸炎ともに原因は食物アレルゲンであることが多く,最近は好酸球性食道炎の増加が著明である.

◎診断は消化管に起因する症状の存在と,消化管への異常好酸球浸潤の証明を中心に行われる.

◎好酸球性胃腸炎は好酸球性食道炎に比べて症状も全身への影響も大きいことが多く,末梢血好酸球数の増加に伴う合併症にも十分な注意が必要である.

◎好酸球性食道炎では胃酸分泌抑制薬や局所作用ステロイドが主に用いられ,好酸球性胃腸炎ではプレドニゾロンの全身投薬が行われることが多い.

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Point

◎嗅覚障害,膿性鼻汁,鼻閉といった症状で副鼻腔炎に気がつく.

◎好酸球浸潤が主体で,治癒しにくい難治性副鼻腔炎が好酸球性副鼻腔炎(ECRS)である.

◎JESRECスコアおよび重症度分類アルゴリズムにより,診断しやすくなった.

◎ECRSの治療は内科では難しく,耳鼻咽喉科へ紹介したほうがよい.

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Point

◎好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)は中・小血管周囲への好酸球浸潤を伴う壊死性肉芽腫性血管炎を有する全身性血管炎である.

◎EGPAの典型的臨床経過は,気管支喘息の経過中に著明な好酸球増加が起こり,その後に血管炎症状が出現する.

◎EGPAの臨床像は,MPO-ANCA陽性の場合と陰性の場合で異なる.

◎遺伝的背景では,MPO-ANCA陽性のEGPAはHLA-DQが関与し,陰性のEGPAではGPA33やIL-5の遺伝子多型がみられる.

◎EGPAの治療は今なおステロイドであるが,メポリズマブの併用によりステロイドの減量が可能となってきた.

専門医が答えるアレルギー疾患におけるQuestion

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Answer

アレルゲンが含まれる食品について正しい情報を伝え,加工食品などは症状なく食べられる場合には,“食べられる範囲”を具体的に示すとよい.

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Answer

「薬物治療が行われている気管支喘息」は造影剤による急性副作用の危険因子だが,ただちに投与禁忌となるわけではない.

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Answer

アセトアミノフェン(300mg/回以下)もしくは選択的COX-2阻害薬のセレコキシブを使用する.

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Answer

アレルゲン免疫療法はダニアレルギーによる喘息の症状を改善させ,薬物減量効果を有するだけでなく,新規アレルゲンの感作を抑制するなどの自然経過修飾作用をもつ.

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Answer

保湿剤に加えて,まずは皮疹の重症度や部位に応じて適切なランクのステロイド外用薬を使用する.患者には基本的なスキンケアと外用量の目安としてFTU(フィンガーチップユニット)を指導する.

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Answer

アレルギー性結膜炎の治療の第一選択は抗アレルギー点眼薬で,症状が治まらない場合のみ,ステロイド点眼薬を併用する.

連載 見て,読んで,実践! 神経ビジュアル診察・34

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 これまでに数多くの神経症候についてお話してきました.今回は,ベッドサイドでよく遭遇する高次脳機能障害の1つについてお話しします.脳卒中の患者さんで,話しかけても,あさっての方向を向いてしまう方はいませんか? 症状がひどくなると,片方の空間を認識できずにぶつかってしまいます.そんな無視症候群について解説します.

 知っていると,診た瞬間に一発診断できるしれません.日常生活にも関わる症状です.神経専門医以外の方もぜひ診断できるようになってください!

 

*本論文中、関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年1月31日まで公開)。

連載 フレーズにピンときたら,このパターン! 鑑別診断に使えるカード・14

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総論

 紫斑(purpura)は「出血によって紫調に変色した皮膚または粘膜病変で圧迫して消退しない皮疹」です.紫斑の鑑別には表1のようなものがあり,軽く盛り上がって触知できるもの(palpable)と触知できないもの(nonpalpable)に分かれます.nonpalpableなものは血小板減少や凝固障害,そして本連載第11回(本誌57巻12号)のNo.33「血小板数,凝固能正常の出血傾向」で紹介した疾患でも起こります.

 皮膚は表皮→真皮→皮下組織と分かれ,palpable purpuraは真皮上中層の小血管で壊死性血管炎(白血球破砕性血管炎)が起きている,もしくは感染が直接血管壁に起こり生じます.皮疹を診るときは病変が起きている場所を考えるのが重要です.なぜなら生検する際の深さが変わるからです.膨疹は真皮直下,丘疹は真皮,リベド(網状皮斑)や潰瘍では真皮中層〜皮下組織になります2).診断には皮膚生検が重要ですが,生検する際は出現から24〜48時間の病変を生検しましょう.24時間以内だとフィブリノイド壊死が出現しませんし,48時間以降では浸潤細胞は好中球からリンパ球・マクロファージに変わり,免疫グロブリンの沈着が消失してしまいます.

連載 目でみるトレーニング

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 英文の医学雑誌で必ず読む2つの症例検討の記事があります.それは『The New England Journal of Medicine(NEJM)』のClinical Problem-Solving(CPS)と『Journal of Hospital Medicine』のClinical Care Conundrums(CCC)で,ともに臨床経過が段階的に提示され,臨床推論が挟まれながら,そのプロセスが吟味されています.普段のカンファレンスの息遣いが見えてくるようなこのシリーズによく登場する2人の大リーガー医によって書かれた,Tierney先生のお弟子さん達のUCSFの香り漂うディスカッションを垣間見える一冊が,徳田安春先生監修のもと,非常にわかりやすい栗原健先生達の訳で昨秋上梓されました.『セイントとチョプラの内科診療ガイド』第3版(MEDSi刊)です.

 みなさんは昔,“megafepsda”を覚えた記憶はないでしょうか? 英語で目的語として準動詞を伴う時動名詞のみを用いる,mind,enjoy,give up,avoid,finish,escape,put off,stop,deny,admitの最初の文字を集めて,思い出しやすくする頭文字です.このような頭文字法による暗記術は文字通り覚えたいものの頭文字を続けて覚えるもので,覚えることや思い出さなくてはいけないことが多い臨床推論におきましても,この記憶法,英語で言うところのmnemonics(ネモニクス)は非常に役に立ちます.この本では,そのような多くのネモニクスが紹介されています.この本と同様,徳田安春先生著の『鑑別診断ネモニクス』(MEDSi刊)といった素晴らしい鑑別診断の覚え方のネモニクス本も出ております.

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 「イレウス」は麻痺性イレウスを指し,機械的閉塞を伴うものは「腸閉塞」と呼ぶというように用語が統一されたのは,『急性腹症診療ガイドライン2015』がこの世に出てからとなる.私のような古だぬき先生となると,何でもかんでも「イレウス」とテキトーに呼んでいたから楽(?)だったが,確かに論文上ではほとんど“ileus”という用語は使われず,“bowel obstruction”と記載されていた.英語と日本語の齟齬が初めて正されたといえる.この急性腹症診療ガイドライン策定に陣頭指揮を執った真弓俊彦先生をはじめ,実に濃いメンバーで整合性がとれた内容の急性腹症の本が世に出たのは非常に喜ばしい.内容がアップデートされているのみならず,非常にわかりやすく,初学者にとっては重宝するテキストになるだろう.急性腹症はとにかく鑑別が多く,頭の中で整理するのは大変だもの.

 一般に腹痛のテキストを見ても,腹部の解剖学的な分割表に疾患名が羅列されただけのものが多く,病態生理を同時に考える本は少なかった.本書では内臓痛や体性痛が丁寧に説明されている.同時に解剖学的臓器を考えることで急性腹症の診断学力が飛躍的に伸びるだろう.腹膜刺激症状だけでは急性腹症は語れないのだ.「お腹が硬くないからこそ,怖い疾患」を想起できるかどうかは臨床医の腕の見せどころ.あくまでも診断は病歴と身体所見で8割想起可能であり,だからこそ疾患を予想して追加するCTの威力は抜群だ.一方,何も鑑別診断を挙げないで,「何でもかんでもCTさえすれば放射線科医が診断してくれるからいいや」なんという不届きな!(失礼)……安易な検査優先の診断学をしているのでは,簡単に「CTでは異常はありませんから病」なんて頼りない診断名でけむに巻くようになってしまうんだよね.

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 最近はマニュアル本が大流行である.医学部に通う息子のアパートの本棚を見ても,教科書ではなくマニュアル本的な参考書がずらっと並んでおり,それで勉強をしているようだ.

 でも私はマニュアル本が好きではない.フローチャートやリストを見て解決できることなんて,そんなにたくさんあるわけではないし,医療,特に緩和ケアの領域では,マニュアル的ではない判断を求められることも多いと思っているからだ.そんななか,医学書院から『緩和ケアレジデントの鉄則』という本が送られてきた.帯にはご丁寧に「“これだけはおさえておきたいこと”を一冊にまとめました」とある.

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2021年2月〜5月開催内科関連学会情報

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medicina
58巻2号 (2021年2月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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