臨床皮膚科 73巻7号 (2019年6月)

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要約 65歳,男性.既往に糖尿病による網膜症および腎症があり,週3回人工透析を施行していた.4年前より左上腕に色素斑が出現し,徐々に拡大したが放置していた.2013年3月,下肢に水疱を認め近医皮膚科を受診した.その際,四肢を中心に周囲に紅斑を伴う色素斑が多発し,市販の感冒薬,PL顆粒®などを頓用していたことから固定薬疹が疑われ,当科を紹介され受診した.入院のうえ,PL顆粒®の内服試験を施行した.薬剤内服45分後に紅斑が誘発され,その新生は内服24時間後まで続いた.その後,複数回の人工透析を行ったにもかかわらず,紅斑は遷延した.経時的な血清サイトカインの測定において,TNF-αは透析後にいったん低下するものの,その後上昇し,健常例と比較して高い数値で推移した.透析によりサイトカインは一時的に除去されるが,透析性の低い原因薬剤ではその除去が遅れるためサイトカインの産生が続き,症状の遷延化につながると思われた.

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要約 38歳,女性.20年以上前より神経性食思不振症で精神科に通院中であった.1か月前より全身性の皮疹とびらんが出現した.Body mass indexは13.15で高度のるい痩があり,全身に地図状の角化性紅斑性局面が分布し,軀幹に大小のびらんが散在していた.低アミノ酸血症を示し,ビタミンAが高度低値,ニコチン酸と亜鉛は軽度低値であった.少量の食餌摂取を行いつつ,アミノ酸製剤と混合ビタミン剤を投与し,ステロイド剤を外用した.鱗屑が毎日多量に剝離し,びらんは急速に上皮化して1週間後に皮疹は消失した.自験例は低アミノ酸血症による壊死性遊走性紅斑と診断されたが,ビタミンA欠乏による皮膚の粗糙化の要素も一部有した皮膚障害症例と考えられた.

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要約 74歳,女性.両足の網状皮斑・右第2趾壊疽・右下腿外側皮膚潰瘍にて当科受診.血液検査で抗核抗体160倍・抗カルジオリピン抗体IgG陽性(aCL)24U/mlであり,抗リン脂質抗体症候群(anti-phospholipid antibody syndrome:APS)に伴う症状と考え,抗血小板薬・抗凝固薬・ステロイド内服で治療開始した.すでに壊疽が進行していた右第2趾は切断となり,検体の病理検査で血管の壁肥厚や器質化・再疎通像がみられたことより,血栓・閉塞性の変化が示唆された.日本皮膚科学会のAPSのガイドラインに従いワルファリンによる抗凝固薬内服,アスピリンによる抗血小板薬内服で治療した.本症例では約20年前発症のHTLV-1(human T-cell leukemia virus type 1)関連骨髄症(HTLV-1 associated myelopathy:HAM)の既往があり,APSの発症に影響を与えていた可能性が考えられた.

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要約 48歳,男性.コントロール不良の2型糖尿病を合併していた.当院初診10日前から右腰部に小児頭大の板状硬の発赤が出現した.蜂窩織炎と診断し抗菌薬治療を開始したが,皮膚壊死が進行し,体幹筋が露出する手掌大の深い潰瘍になった.経過中,両下腿に浸潤を触れる数mmから1cm程度の紫斑や血疱が多発し,尿潜血も出現した.皮膚病理組織学的検査で真皮に白血球破砕性血管炎を認め,蛍光抗体直接法では真皮上層の血管壁にIgAの沈着を確認し,IgA血管炎と診断した.症状は,蜂窩織炎の改善とともに軽快し,ジアフェニルスルホン(レクチゾール®)の内服を追加することでさらに改善した.溶連菌性蜂窩織炎に続発するIgA血管炎の報告例は散見されるが,自験例では潰瘍部から黄色ブドウ球菌が検出された.溶連菌だけでなく,黄色ブドウ球菌感染症も,IgA血管炎の原因となる可能性があり,注意が必要と考えた.

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要約 27歳,男性.既往にアレルギー性鼻炎あり.喫煙再開と同時期に右前額部に皮下結節を生じ徐々に増大した.初診時15×10mm大,微弱な拍動を伴う弾性軟,被覆皮膚との可動性良好な常色皮下結節を認めた.視力障害や疼痛はなかった.血液検査で好酸球増多,血沈正常.表在エコーで拡張した血管壁肥厚と拍動性の血流信号を認めた.頭部MRIで両側大脳白質の慢性虚血性変化が散見された.病理組織学的に動脈壁肥厚,内腔狭窄,好酸球浸潤あり,巨細胞浸潤なし.以上より若年性側頭動脈炎と診断.禁煙後無治療で皮膚症状の再発なし.本症は巨細胞性動脈炎類似の側頭部病変を主症状とするが,全身病変を欠き病理組織像も異なる.しかし自験例で認めた無症候性の脳虚血性変化は全身性血管炎の症状である可能性は否定できない.好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の診断に先行した巨細胞のない側頭動脈炎が報告されており,全身性血管炎への移行を念頭に経過観察が必要である.

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要約 31歳,男性.既往歴に特記事項なし.数か月前より出現した痒みを伴う線状の皮疹を主訴に当科を受診した.初診時,右大腿および下腿の内側から土踏まずにかけて,帯状の暗紫色角化性局面がみられ,右腹部では暗紅色丘疹のS字型配列をみた.両上肢でも暗紅色丘疹が線状に配列していた.下肢と腹部の皮疹から皮膚生検を施行し,病理組織所見は,角質の過角化,表皮顆粒層の肥厚,基底膜の液状変性,真皮浅層の帯状のリンパ球浸潤がみられ,ともに扁平苔癬の典型像であった.Blaschko線に沿った配列と合わせて,線状扁平苔癬と診断した.副腎皮質ステロイド外用にて加療を行い,3か月後には皮疹は色素沈着を残して略治した.線状扁平苔癬の本邦報告例を検討したところ,女性に多く,部位は下肢が最多であった.これらと発生機序との関連は不明な点が多い.

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要約 87歳,独居の女性.60歳頃から左踵に難治性の靴ずれ様の皮疹があったが,痛みがなく放置していた.介護認定の身体検査で同部の腫瘤を指摘されたため近医を受診した.皮膚生検の結果,病理組織学的にeccrine syringofibroadenoma(ESFA),あるいは悪性型のeccrine syringofibrocarcinoma(ESFC)の可能性を疑われ当科を紹介された.全身麻酔下に5mm以上の側方マージンをもって,また皮下脂肪を含め,腱膜,骨膜上で腫瘤を切除し病組織学的に検討した.腫瘤はESFAに特徴的な表皮から真皮に延伸する細い表皮索が網状構造をなしていたが,一部では網状構造が半ば崩れ,高度な核の異型性,真皮への浸潤を伴う悪性所見を呈し,管腔構造を認めたためESFCと診断した.ESFCは,それ自体が稀なうえ,有棘細胞癌およびエクリン汗孔癌等との鑑別が困難であるが,ESFAの特徴を背景に持ち,他の腫瘍との鑑別ができる場合,ESFCと診断してよいと考える.

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要約 12歳,女児.初診の7か月前に会陰部右側に結節性病変が生じ,次第に増大するため当科を受診した.初診時,30×35mm大の表面にびらんを伴う紅色調の有茎性懸垂状腫瘤がみられた.MRIでは腫瘤はT1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号を呈し,造影T1強調画像では腫瘤内部は造影効果を示した.腫瘤の骨盤腔への進展はなかった.生検病理組織像で核異型の少ない紡錘形・星芒状・球状の細胞がmyxoidな間質を背景にみられた.腫瘍細胞は免疫染色でビメンチン,α-SMA,CD34陽性であった.Angiomyxomaと診断し,腫瘍茎部辺縁で全切除した.さらに切除時に存在していた腫瘍近傍の小丘疹が術後増大したため,切除したところ,同様な病理組織像であった.Angiomyxomaはaggressive angiomyxomaとsuperficial angiomyxomaに分類されてきたが,自験例は病理組織学的に両者の特徴を有しており,明確な分類が困難であった.両者ともに境界不明瞭なことがあり,取り残しによる再発の可能性がある.十分な切除マージン設定と慎重な経過観察が望まれる.

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要約 77歳,男性.包茎あり.初診の5か月前から外尿道口および周囲に紅色局面が出現した.初診時,外尿道口の4時〜8時の部位に境界明瞭な鮮紅色局面を認めた.生検病理組織像では,表皮全層に異型角化細胞の増殖がみられ,clumping cellや個細胞角化も散見され,Queyrat紅色肥厚症と診断した.治療としては,膀胱尿道鏡にて尿道側の病変を確認後,尿道内の浮腫性変化があった部位から5mm離して摘除し,尿道形成術を施行した.切除標本の病理組織所見では,膀胱尿道鏡検査で病変を確認できなかった部位にも腫瘍細胞を認めたことから,尿道内への病変の波及に留意し,十分な病理組織学的な検討が重要と考えた.また,PCR法により病変部組織からHPV(human papillomavirus,ヒト乳頭腫ウイルス)16型DNAを検出し,HPV感染の関与を考えた.

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要約 6か月,女児.生後4か月にBCG(Bacille Calmette-Guerin)を接種した.接種1か月半後に顔面,両下肢に一部小水疱や膿疱を伴う丘疹が多発し,当院を受診した.全身状態は良好で,表在リンパ節の腫大はなく,血液生化学検査および胸部単純X線で異常所見はなかった.QFTも陰性であった.紅色丘疹の病理組織では,真皮浅層から中層に肉芽腫性変化とCD68陽性の組織球の集簇を認めた.Ziehl-Neelsen染色で抗酸菌は認めなかった.丘疹状結核疹と診断し,経過観察にて皮疹は自然消退した.本邦では近年,乳児期でのBCG接種が感染症法で定められ,予防接種後副反応の報告が増加しつつある.経過観察のみで皮疹が自然消退した症例も報告されているが,病型によっては病変の外科的切除や抗結核薬内服などの治療が必要となる症例もある.BCG接種後の小児を診察する際には副反応の存在を念頭に置き,治療法を選択することが必要である.

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要約 64歳,女性.初診の3年前に左2指爪基部の色調変化を自覚した.近医で爪白癬と診断され,抗真菌薬内服および外用による治療を受けたが改善しなかった.初診時,左2指爪甲は肥厚し,黒色—灰白色に混濁し,後爪部の腫脹・発赤を伴っていた.KOH直接検鏡法で菌糸が陽性,爪甲の真菌培養では2回の培養で同様の形態の菌が分離された.分離菌のコロニーは表面羊毛状で淡ピンク,裏面は黄白色調を示し,検鏡でFusarium属に特徴的な鎌状の大分生子を認めた.分離菌はリボソームRNA遺伝子のITS領域およびEF1-alpha遺伝子の塩基配列よりFusarium verticillioidesと同定した.現在ルリコナゾール爪外用液で治療し,爪囲炎は消失し,爪甲は平坦化,色調変化も改善傾向にある.自験例のような爪囲炎を伴う手爪1か所の病変は,爪白癬として非典型的である.このような症例ではFusarium属をはじめとする非白癬性爪真菌症を疑う必要がある.

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要約 5歳,男児.1歳頃より四肢を中心に小結節が出現し,徐々に増大した.初診時,四肢関節の伸側を中心に半球状に隆起する黄色の結節を認め,一部は癒合していた.病理検査にて真皮浅層から中層に泡沫細胞の結節状浸潤があり,結節性黄色腫と診断した.血液検査ではTGは基準値内,TC,LDL-Cが高値を示し,LDL受容体遺伝子に変異を認め,高コレステロール血症の家族歴があることから,家族性高コレステロール血症Ⅱa型と診断した.ロスバスタチン,エゼチミブ投与を開始し,血清脂質低下に伴い,約21か月で結節は平坦化した.小児期から黄色腫を発症する家族性高コレステロール血症は重症例が多く冠動脈疾患の若年発症リスクも高いため,早期からの治療介入を必要とする.

マイオピニオン

地域医療での皮膚科 神谷 浩二
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1. はじめに

 自治医科大学は,僻地医療と地域医療の充実を目的に設立されました.私も,卒業後に岡山県と愛知県の僻地医療,地域医療に従事しました.また,地域の医療連携の拠点となる中核病院での皮膚科診療も経験しました.現在は,大学病院で皮膚科診療をしています.皮膚科診療では,クリニック,中核病院,大学病院,それぞれに求められる役割があります.地域医療では,医療機関での皮膚科診療だけでなく,総合診療が求められます.さらに,地域全体に働きかけるような医療活動が求められます.これまでの診療経験をもとに,改めて地域医療での皮膚科について考えました.

連載 Clinical Exercise・142

Q考えられる疾患は何か? 松江 弘之
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症例

患 者:58歳,女性

主 訴:両下肢の浮腫,紅斑

既往歴:数十年来の摂食障害,高度のるい痩(BMI 12.6)

現病歴:初診の8か月前から両下肢に浮腫と鱗屑を付す紅斑が出現した.近医で抗真菌薬,抗菌薬の処方を受けたが皮疹は拡大し,当科を紹介され受診した.ステロイド外用で改善傾向を示したが,皮疹は再度悪化した.

現 症:初診時,両下肢の浮腫と鱗屑を付し中心に退色傾向を示す,境界明瞭な環状から,一部癒合して不整形を呈する紅斑を認めた(図1a).皮疹の増悪時には,口囲炎(図1b),舌乳頭の萎縮(図1c),爪甲剝離を伴っていた.

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目次

欧文目次

文献紹介

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次号予告

あとがき 大山 学
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 この号が発行されるころには「令和」という新しい年号に少しは慣れているだろうか.日本という国が戦後復興を果たし,大きく発展した「昭和」,平和ではあったが大きな自然災害にも見舞われた「平成」に次いで「令和」はどのような時代になるのだろうか.

 少子高齢化が進むといわれて久しいが,個人的にはその傾向が顕著に目立つようになってきたように感じられる.私の勤務先は東京の西,多摩地区に位置している.高度成長期の東京への人口一局集中を象徴する「多摩ニュータウン」をはじめとする,いわゆる「団地」が数多く存在するこの地域では,入居第一世代の高齢化が急速に進んでいる.都心のようには鉄道網が発達していないこの地域ではバスが主たる公共交通機関である.勤務先の大学病院が多摩地区唯一の特定機能病院であることも一因なのか,近くの鉄道駅から勤務先までのバスは高齢者の方々でいっぱいである.特に問題になるのが乗降であり,乗客に対する高齢者の割合が特に多い場合には長い時間がかかることが多い.自分もやがてその一員になるのだろうが,今後,さらに高齢化が進むと,こうした現象がそれこそ街中のそこかしこで起きるようになるのだろう.

基本情報

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臨床皮膚科
73巻7号 (2019年6月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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