臨床皮膚科 73巻8号 (2019年7月)

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要約 2009年10月〜2016年4月の6年6か月に当科を初診で受診し,水疱性類天疱瘡と診断された139人について,後ろ向きに症例を検討し解析した.全症例を,外来治療群,入院治療群に分け,入院治療群はさらに治療奏効群,治療抵抗群に分けた.この4群の背景因子,検査値,治療内容,有効性を示した治療法,予後の関連性について検討した.その結果,末梢血好酸球数の治療開始約1週間後の比較において,治療奏効群では全例でほぼ0に近い値への正常化を認めたが,治療抵抗群では1週間後の値は軽快せず,病勢コントロールに至るまでの間,治療前と変化なしあるいは増加していた.抗BP180抗体価は,末梢血好酸球数のような病初期の特徴は認めなかったが,入院加療群ではより高値の症例が多かった.このことより,治療抵抗性の有無を早期に判断するには1週間後の末梢血好酸球数の推移が指標となるが,中長期的予後予測には抗BP180抗体価の値も有用と考えた.

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要約 46歳,男性.特発性血小板減少症で当院内科にて経過観察中であった.当科初診約2年前より尿蛋白,尿潜血,関節痛,頭部のびまん性脱毛が出現し,精査の結果,全身性エリテマトーデスと診断された.プレドニゾロン(PSL),タクロリムス内服で腎障害,低補体血症は改善したが,頭部のびまん性脱毛はステロイド外用するも改善しないため当科に紹介された.当科初診時は頭部全体にやや陥凹した脱毛斑が多発していた.右側頭部の脱毛部より生検し,毛囊の萎縮,小葉性脂肪織炎を認め,深在性エリテマトーデスに伴う脱毛と診断した.ジアミノジフェニルスルホン(DDS)内服するも難治であり,ヒドロキシクロロキン(HCQ)内服を開始した.内服5か月で側頭部にも発毛がみられ,内服14か月で脱毛は著明に改善した.HCQはDDS,PSL,免疫抑制剤と比べても副作用が少ない薬剤である.欧米のガイドラインで第一選択になっており本邦でも積極的に使用すべきと考える.

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要約 62歳,女性.関節リウマチにてメトトレキサート8mg/週,エタネルセプト2mg/週で加療中に両下肢に紫斑,疼痛が出現した.採血にて血清IgAが474mg/dlと上昇し,病理組織学的所見では白血球破砕性血管炎の像があり,蛍光抗体法にてIgA沈着を認めた.メトトレキサート,エタネルセプト投与を中止し,プレドニゾロン10mg/日を開始したところ,紫斑は改善した.抗CCP抗体が686.9U/mlと高値であり,リウマチ性血管炎との鑑別を要したが,ステロイド内服漸減後も再燃なく経過していることから,エタネルセプト投与により誘発されたTNF-α阻害薬関連血管炎と推測した.また自験例では皮膚症状出現3か月前に化膿性乳腺炎の既往があり,その感染が何らかの免疫学的機序を通して,血管炎の発症に関与した可能性も考えられた.TNF-α阻害薬使用中に血管炎を疑う皮膚症状が出現した場合は,薬剤による可能性を考慮する必要がある.

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要約 65歳,女性.濾胞性リンパ腫の化学療法中に口腔内のアフタ,体幹・四肢の水疱・紅斑が出現し,当科を受診した.皮膚生検の病理組織学的検査で棘融解と液状変性を認め,蛍光抗体間接法では正常ヒト皮膚およびラット膀胱移行上皮間にIgGの沈着を認めた.免疫ブロット法では210,190kDaに反応がみられた.以上の結果より腫瘍随伴性天疱瘡(paraneoplastic pemphigus:PNP)と診断した.ステロイド全身投与やIVIG療法,血漿交換療法で皮膚症状は改善し,難渋した口腔内病変もステロイドパルス療法とシクロスポリン内用液による含嗽で消退した.治療開始約半年後,粘膜皮膚症状ともに再燃なく経過していたが咳嗽が出現し,胸部CT検査で閉塞性細気管支炎(bronchiolitis obliterans:BO)と診断した.BOはPNPの約20%に生じ,進行する呼吸不全のため致死的となる.PNPに伴うBOの発症にはエピプラキンに対する自己抗体が関与していると推測されているが,予測因子となるものや有効な治療法は確立されておらず,今後のさらなる研究が待たれる.

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要約 80歳,女性.初診8か月前に近医にて骨粗鬆症治療薬であるデノスマブ60mgを初めて皮下注射したところ,胸部に皮疹がみられ,1か月前に再投与したところ全身に水疱を伴う皮疹が出現したため,当科を受診した.初診時,軀幹・上肢・下腿に紅斑を伴う大小様々な不整形のびらん,痂皮,血痂が多発.手掌には小豆大までの緊満性水疱が散在していた.血液検査では抗BP180抗体が104U/mlと上昇.病理組織は表皮真皮境界部に軽度の液状変性,表皮直下に水疱,水疱内に好酸球の浸潤がみられた.蛍光抗体直接法では表皮真皮境界部にIgGとC3が線状沈着しており,水疱性類天疱瘡と診断した.なお,薬剤リンパ球刺激試験は施行できず,再投与試験も行えなかった.プレドニゾロン投与にて軽快し,漸減中である.デノスマブ60mgは2013年の本邦承認後,BPを伴ったとする報告はなく,今後整形外科領域での使用が増えると考えられるため報告する.

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要約 72歳,男性.初診4年前より視力低下と四肢の皮疹を自覚した.初診2年前に当院眼科を受診し両側眼瞼結膜癒着を指摘され眼類天疱瘡の診断にてステロイド・抗菌薬点眼が開始された.同時期より嗄声も生じたため当院耳鼻科を受診し食道粘膜や披裂部周囲の粘膜にびらんを指摘され,精査および加療目的に当科に紹介され受診した.初診時,口腔内に広範なびらんがみられ,主として四肢に小豆大の結節を認めた.披裂部および上腕結節部からの生検検体の病理組織像では,粘膜上皮および表皮下に裂隙を認めた.蛍光抗体直接法では表皮基底膜部にIgG,IgAの線状沈着があり,粘膜類天疱瘡と診断した.高齢のため,アザチオプリン単剤で治療開始したところ粘膜症状と結節の改善がみられた.組織所見の類似性や治療への反応性から結節性病変は結節性類天疱瘡ではなく粘膜類天疱瘡と一元的なものであると考えた.

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要約 症例1:55歳,女性.7か月前より瘙痒を伴って上背部,右前腕に萎縮を示す白色の斑が多発していた.病理所見から硬化性萎縮性苔癬(lichen sclerosus et atrophicus:LSA)と診断.その3年後に肛門周囲に瘙痒を自覚し,会陰部に白色局面が出現した.病理所見より外陰部病変もLSAと診断した.症例2:68歳,女性.20歳台より陰部に瘙痒があり,その後白色萎縮局面がみられたため受診.病理所見よりLSAと診断.初診から5年後に陰核右側に角化性腫瘤が出現し,病理所見でLSAの部位に発症した有棘細胞癌(squamous cell carcinoma:SCC)と診断した.2005〜2017年に当科でLSAと診断した15例を検討したところ病変は外陰部が13例,外陰部外が3例であった.外陰部と外陰部外の両方に病変がみられた例は今回報告した1例のみであった.また15例中にSCCの発生を認めた症例も1例のみであった.LSA症例では病変部以外の部位での発症および悪性化に注意し長期間注意深く経過観察する必要があると考えられた.

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要約 22歳,男性.初診2か月前に右上腕内側に皮下結節を自覚し,増大・隆起したため当科を紹介受診した.初診時右上腕に径13mm大で中央部の表面が潰瘍化した弾性硬の淡紅色結節を認め,毛細血管拡張性肉芽腫を疑い全摘出した.病理組織学的に表皮直下から真皮浅層に好塩基性細胞と陰影細胞からなる腫瘍胞巣を認め,腫瘍直上の表皮は欠損し経表皮排泄像を呈していた.以上よりperforating pilomatricoma(PP)と診断した.PPは表皮に穿孔するpilomatricomaの亜型で,病理組織学的には陰影細胞や石灰化基質の経表皮排泄像を呈する.多彩な外観を呈するpilomatricomaの症例は多く知られているが,PPの本邦報告例は少なく,毛細血管拡張性肉芽腫様の外観を呈した例は稀である.しかしながら多彩な外観のpilomatricomaの中には,病理組織学的に検討することでわれわれが経験したPPと同様の症例が含まれている可能性があり今後の検討が望まれる.

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要約 43歳,男性.半年前から肛門部12時方向に約3cm大,広基有茎性の常色から紅色の腫瘤があり,当科を紹介受診した.当院外科にて結紮切除した.病理組織像で囊胞性腫瘤を認め,囊腫壁は重層扁平上皮,多列円柱上皮,杯細胞を伴う多列線毛円柱上皮で裏打ちされていた.免疫染色で囊腫壁内腔は一部がCK7,CEA,EMAで陽性,CK20,GCDFP15,エストロゲンレセプター(ER),プロゲステロンレセプター(PgR)は陰性であった.以上より,線毛上皮を伴った肛門部median raphe cystと診断した.線毛上皮が混在するmedian raphe cystは,国内外で自験例を含めて7例のみで,特に肛門部の報告例は4例のみで非常に稀であった.部位,組織像ともに非常に稀であり,ここに報告する.

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要約 74歳,女性.2年前に出現した右上腕の皮下結節を主訴に当科受診.初診時,右上腕内側に自覚症状のない拇指頭大,有茎性の軟らかい紅色結節を認め,その周囲に小豆大までの硬い皮下結節を多数触知した.皮膚生検の結果より,皮膚原発腺様囊胞癌(primary cutaneous adenoid cystic carcinoma:PCACC)と診断した.外科的切除を試みたが,衛星病巣が広範囲に拡大していたため根治的切除には至らず,手術は切除断端全方位陽性の姑息的病巣切除となった.腺様囊胞癌(adenoid cystic carcinoma:ACC)は唾液腺での原発が最も知られており,予後は原発の部位によって異なる.PCACCは比較的稀なACCで,唾液腺原発のものに比べて予後が良いとされている.PCACCは頭皮や胸部に好発し,上腕での発生はきわめて稀である.自験例は切除断端陽性であったが,追加切除せず経過観察とし,その後の経過も良好である.ACとPCACCは予後の差が大きく,別疾患として扱うべきではないかと考える.特に治療においては,後者の予後が良好なことから,必ずしも大がかりな手術を行う必要はなく,経過をみるのも1つの選択肢ではないかと考えた.

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要約 71歳,男性.肛門部の結節の増大を自覚し,両鼠径部にも多数の結節が出現してきたため,当科を紹介受診した.皮膚生検,PET-CTにて精査し,悪性黒色腫(pT4bN2bM1c stage Ⅳ)と診断した.化学療法,放射線療法にて治療を開始したところ,経過中に低ナトリウム血症をきたし,精査の結果,バソプレシン分泌過剰症(syndrome of inappropriate antidiuretic hormone secretion:SIADH)の合併が考えられた.SIADHの原因は異所性バソプレシン産生腫瘍,頭蓋内疾患,炎症性疾患,胸腔内疾患や薬剤等が挙げられる.自験例は,骨,肺,右腎,鼠径部,腹腔内,縦隔内に多発転移を伴う悪性黒色腫であり,化学療法,放射線療法にて治療中であった.悪性黒色腫にSIADHを合併した症例は比較的稀であり,文献的考察を含めて原因を推察した.

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要約 46歳,女性.36歳の時に多発性筋炎と診断され,以後ステロイド,複数の免疫抑制薬を内服中.初診の約1か月前から左下腿に肉芽様腫瘤が出現し,徐々に増大した.当初の生検では非特異的炎症所見であり診断に難渋したが,腫瘤は徐々に増大し,切除生検にて表皮の偽癌性増殖と真皮内に淡褐色でPAS陽性の菌糸と,sclerotic cellを認めた.サブローデキストロース寒天培地(25℃,28日間)で黒灰色綿毛状のコロニー発育を認め,遺伝子解析でExophiala oligospermaによる黒色菌糸症と診断した.局所麻酔下に切除・植皮を行い術後にイトラコナゾール内服,温熱療法を併用したが術後4か月に切除部近傍に再発.再切除し術後はボリコナゾール内服に変更したところ,以後再発はない.黒色菌糸症は多くは日和見感染症として発症するため治療に難渋することも多く,症例ごとに治療を組み合わせて柔軟に対応する必要がある.

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 1. 厚生労働省の医系技官とは

 私は,2016年9月から2年間,厚生労働省(厚労省)に出向して医系技官として働く貴重な機会を得ました.厚労省の医系技官とは,医師免許・歯科医師免許を有し,専門知識をもって保健医療行政に携わる技術系行政官のことです.平成28年(2016年)の医師調査において医師数は32万人弱,主たる診療科を皮膚科として届け出た医師は9,102人(3.0%),日本皮膚科学会認定皮膚科専門医が6,812名(2.1%,2019年2月24日現在)であることに比べて,厚労省の医系技官は約300名です.医師全体の約1/1,000,皮膚科医の約1/30ですから,医系技官の仕事を知っていただく機会が少ないのもやむを得ません.

 正規の採用試験を経て採用された,いわゆるプロパーが200名超いて,そのおよそ半数が本省で,他は検疫所や厚生局,国立病院機構などの厚労省関係機関や他省庁,自治体,国際機関などで勤務しています.このほか,厚労省では,専門的な知見・経験を有する医師を人事交流として受け入れています.これは,医療の専門化・高度化が進むなか,これまで以上に現場の実情を踏まえた施策の立案を行うことや,関係学会や派遣元大学等と厚労省との相互理解を深めることなどを目的としています.プロパーの医系技官に加え,大学等から人事交流として2年間程度の有期で採用されている医系技官が100名弱おり,そのほとんどは本省で勤務しています.

連載 Clinical Exercise・143

Q考えられる疾患は何か? 大内 健嗣
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症例

患 者:57歳,男性

主 訴:全身の皮疹,発熱,咳嗽,足底痛

現病歴:初診の1年前より遷延する咳嗽を認めていた.また2か月前より,咳嗽の増悪,両足底の圧痛,全身の紅斑を認めた.他院にてプレドニゾロン(PSL)0.5〜1mg/kg/日を処方され改善するが,1か月以内での漸減中止後,再燃するという経過を繰り返していた.今回,PSL内服中止後8日目に,発熱,咳嗽,紅斑,両足底痛を認めたため当院に入院した.

現 症:入院時,全身に辺縁隆起し,中央が退色した,標的状を呈する大小さまざまな多形紅斑様皮疹と蕁麻疹様紅斑が混在していた(図1a).皮疹は数日間,持続していた.39℃台までの発熱,胸部に喘鳴音を聴取した.抗アレルギー薬内服,ステロイド薬外用により,皮疹は遠心性に拡大しつつ,色素沈着を残して1週間で消退した.多形紅斑様皮疹消退とほぼ同時期に四肢に紫斑が出現した.四肢に浸潤を触れる米粒大の紫斑を多数認め,一部癒合し,血疱となる箇所もあった(図1b).さらに,同時期より四肢末端優位の多発単神経炎,四肢の大関節痛が出現した.

臨床検査所見(紫斑出現時):〈末梢血〉WBC 11,100/μl(基準値:3,500〜8,500)〔Neu 47%,Eos 34.5%(1〜6)〕,Hb 12.6g/dl,Plt 32.1×104/μl.〈生化学〉LDH 387IU/l(120〜220),AST 22IU/l,ALT 12IU/l,BUN 9.6mg/dl,Cr 1.0mg/dl,CRP 12.57mg/dl(0.35以下).

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目次

欧文目次

文献紹介

次号予告

あとがき 玉木 毅
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 ミラノで開催されたWCD(World Congress of Dermatology)に出席してきた.会場のMiCo(Milano Congressi)は波打ったような屋根の個性的な建物で,さすが「ファッションとデザインの国」イタリアという感じであったが,隣接した区域に見本市会場跡地の再開発で建設された複合総合施設「シティライフ」があり,これまた個性的な高層ビルが3棟並んでいた.その一つの“Generali Tower”は,新国立競技場の旧デザイン案が採択されるも法外な建設費用で物議を醸しお蔵入りとなり,その後急逝された建築家ザハ・ハディド氏の設計だそうである.もう1棟の“Allianz Tower”は,日本人の磯崎新氏によるもので,イタリアで一番高いビルとのことである.再開発でミラノにもこうした高層ビルが増え,ミラノ一の観光スポットであるドゥオモの屋根からの眺望にもこうした高層ビル群が加わり,以前とちょっと違ったイメージであった.賛否両論あろうが,パリやロンドンも同じような状況で,これも世の流れなのであり,同じ高層ビルでもさすが「イタリア流」,一つ一つデザインが凝っているといったところであろうか.

 ミラノ中心部の街並みは,歴史と伝統を感じさせる景観が見事に維持されており,例えばエマヌエーレ2世のガッレリアの中には,マクドナルドやバーガーキングなどの店舗もあるのだが,ロゴは黒バックに金の落ち着いたものに変えられ,周囲に完全に溶け込みぱっと見にはわからない(営業的にはマイナス?).

基本情報

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臨床皮膚科
73巻8号 (2019年7月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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