臨床皮膚科 50巻13号 (1996年12月)

カラーアトラス

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症例 22歳,男性

初診 1994年6月7日

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 77歳の男性,元ボイラー技師.2ヵ月前に右第II趾爪下の疼痛を伴った小結節に気づいた.放置していたが,疼痛が増強してきたため当科を受診した.骨X線像で右第II趾末節骨先端に茸状の骨陰影像を認めた.局麻下に末節骨基底部の一部を含めて小結節を摘除した.臨床的および病理組織学的所見より,混合型の爪下外骨腫と診断した.次いで自験例の位置づけを知るため,1984年ら1995年までの最近10年間に皮膚科および整形外科領域より報告のあった本邦報告例158例と今回の症例1例を合わせて統計的観察を行った.その結果,自験例のように第II趾に生じたものは足趾に生じたものの8,8%にすぎなかった.年齢別にみると,大半は10歳代とその前後に生じ,70歳代に生じたものはこれまでになく,自験例が最も高齢であった.

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 症例は62歳,男性.扁桃より発症した非Hodgkin T細胞リンパ腫で,末梢血好酸球増多を認めた.経過中,両側手掌および手背に紅色皮疹が出現したため当科を紹介され,1994年11月21日,精査加療目的にて入院した.本症例における末梢血好酸球増多の機序の一端を解明するため,血漿RANTESおよびIL−3,IL−5,GM-CSFをELISA法にて測定した.治療による末梢血好酸球数の減少と平行して,血漿RANTES値の減少を認めた.

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 パラホルムアルデヒドを含む歯科用根管治療剤でアナフィラキシーショックを起こした39歳,女性の症例を報告した.全身に蕁麻疹が出現していたため皮膚科を受診したが,血圧が低下しており,蕁麻疹はアナフィラキシーショックの皮膚症状と考えられた.根管治療剤のas isおよびパラホルムアルデヒドを用いた皮膚テストで陽性所見を得,根管治療剤によるアナフィラキシーショックと診断した.パラホルムアルデヒドは体温で徐々にホルムアルデヒドを遊離し,ホルムアルデヒドに対してI型アレルギーが成立している個体でアナフィラキシーショックを誘発する.ホルムアルデヒドの遊離は極めて徐々であるため,根管治療剤の使用からショック症状の発現までは数時間を要し,即時型反応のメカニズムでありながら症状の発現までに長時間を要する点に留意すべきである.

症例報告

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 36歳女性に発症したトラネキサム酸による固定薬疹を報告した.初診時右鼻翼部,頬部および右上腕外側に浮腫性紅斑が認められ,過去に合計3回風邪薬で同様の皮疹の既往があった.トラネキサム酸での内服試験は陽性であり,調べえた過去の風邪薬にもトラネキサム酸が含まれていたことが判明した.過去の報告例をまとめるとともに,市販の薬剤にも含有されることから,今後固定薬疹の原因薬の一つとしてトラネキサム酸も注意する必要があることを述べた.

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 34歳,女性.4年前より慢性関節リウマチで治療されていた.ブシラミン(リマチルR)300mg/日の投与開始2週間後に,口腔内のびらんと背部の紅斑が出現した.紅斑は直径1cmまでであった.皮膚・粘膜症状はブシラミンの投与中止により速やかに消退した.貼布試験はブシラミン20%,10%,1%で陽性を示し,リンパ球刺激試験はブシラミンでS.I.254%であった.ブシラミン100mg内服で皮疹の再現が見られた.健常人13名におけるブシラミンの貼布試験を行った結果,20%濃度で15%に,10%濃度で8%に陽性反応を認めたが,1%濃度では陽性反応はみられなかった.ブシラミンの貼布試験は健常人においても高濃度では陽性反応が認められることがあるので注意を要する.

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 33歳女性の中毒性表皮壊死剥離症の1例を報告した.発症前に上気道炎様症状があり,胸部X線像では肺炎を疑わせる陰影は見いだせなかったが,血中抗マイコプラズマ抗体価の約6カ月間の高値が持続した.皮疹は熱傷様で,多形滲出性紅斑を思わせる虹彩様病変を欠いていた.発症前に投与された薬剤11種の単刺・貼布試験は陰性で,内服試験は施行していないが,抗体価よりマイコプラズマ感染との関連を考えた.治療は臨床経過からはステロイドパルス療法が著効したように見えた.皮疹の改善後に口角癒着と眼,口腔の乾燥症状が出現し,改善に約1年を要した.

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 ステロイドの大量投与が発症の誘因となったと考えられる後天性魚鱗癬の2例を報告した.症例1:11歳男.Schonlein-Henoch紫斑病および紫斑病性腎炎に対してステロイドパルス療法後プレドニゾロン60mg内服中に全身に魚鱗癬が出現.活性型ビタミンD3軟膏の外用が有効であった.症例2:15歳女.血小板減少症にて発症,抗RNP抗体高値を認め,ITP/MCTDの診断でプレドニゾロン55mgで開始し,漸減中に臀部,下肢を中心に魚鱗癬が出現.尿素軟膏が有効であった.2例とも家族歴なく,悪性腫瘍などの他の基礎疾患を認めず,他の薬剤投与もなく,ステロイドスルファターゼ値の低下は認められなかった.また魚鱗癬の消長は,原疾患の活動性と並行しなかった.このため,免疫異常をその基盤として,ステロイドの大量投与が魚鱗癬様皮膚の形成に何らかの役割を果たしている可能性が考えられた.

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 26歳,男.結膜炎,関節痛,慢性前立腺炎,乾癬様皮疹を伴ったReiter病の1例を報告した.CRP5.15mg/dl,血沈58mm/h,IgAクラミジア抗体陽性,HLA-B27陰性,骨シンチグラフィーでは膝蓋部の腱付着部およびアキレス腱付着部に99mTcの集積像を認めた.関節痛悪化のためエトレチナート,非ステロイド系抗炎症剤の投与を試みたが効果なく,サラゾスルファピリジンの投与にて関節痛,CRP,血沈が軽快した.

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 49歳,女性の抗リン脂質抗体症候群の1例を報告した.34歳と49歳時に脳梗塞,44歳時に一過性脳虚血発作を生じ,2回流産の既往がある.35歳頃より両下肢に網状の皮疹が出現し,その後両上肢へ拡大した.同時期よりレイノー症状も出現した.検査所見にて,抗カルジオリピンIgM抗体3.6,同IgG抗体3.0と高値を示し,ループスアンチコアグラント陽性であった.左前腕の網状皮斑部の生検組織像では,真皮乳頭層から脂肪織にかけて軽度の血管拡張が認められた.本邦で報告されている抗リン脂質抗体症候群の皮疹につき検討を加えた.

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 11歳,女子.限局性強皮症を合併し,抗核抗体陽性を示した進行性顔面片側萎縮症の1例を報告した.副腎皮質ホルモン剤の内服を試み,若干進行が抑制された時期もあったが,最終的には萎縮が進行し中止した.自験例では発症に免疫異常の関与が強く疑われた.

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 65歳,女性.20歳代後半より頸部の皮膚がザラザラし,腋窩,腹部の皮膚に大きく皺がよるのに気づいた.平成2年より右視力が低下し,平成6年8月より左視力も低下している.腋窩皮膚の病理組織検査で真皮に不規則に凝集する弾力線維物質が存在し,両眼底所見で典型的な網膜色素線条(allgioid streaks)と黄斑部変性を認めた.網膜色素線条に随伴した黄斑部変性に基づく視力障害をきたした弾力線維性仮性黄色腫(pseudoxan—thoma elasticum)と診断した.弾力線維性仮性黄色腫の患者を診察する機会の多い皮膚科医にとって網膜色素線条に伴う黄斑部病変に基づく視力障害が起こる前の比較的早期に,眼底病変発見のために眼科的診察を受けるように指導することが重要である.

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 C型肝炎の加療中インターフェロン—α(以下IFN—α)の筋注部位に一致して発症した皮膚潰瘍の1例を報告した.症例は51歳男性.基礎疾患に糖尿病.6ヵ月前より慢性C型肝炎の治療のためIFN—αの臀部への筋注を開始した.初診の2週間前より注射部位に一致して皮下の硬結,壊死が出現した.デブリードマンおよび分層植皮術を施行し約2ヵ月の経過で治癒した.潰瘍形成へのIFN—αの関与について考察を行った.

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 35歳,日系ブラジル人女性のBL型らいの1例を報告した.初診7日前より全身に不整形の紅斑が出現した.初診時,顔面を含む全身に不整形の浸潤性紅斑が多発し,掻破痕を伴っていた.紅斑部には灼熱感と掻痒がみられ,同時に知覚鈍麻もあり,尺骨神経の肥厚も認めた.ツ反は陰性.液性および細胞性免疫は正常範囲内であった.紅斑部の生検では真皮上層から皮下脂肪組織にリンパ球を主とする小円形細胞浸潤に取り囲まれた肉芽腫反応が広汎に認められ,その主体は泡沫状組織球と類上皮細胞であった.また,泡沫状組織球内に多数のらい菌を検出した.治療開始直前,妊娠が判明したため,ステロイド外用のみで経過観察したところ,7ヵ月後には浸潤を伴った紅斑は紅褐色斑ないしは色素沈着となった.

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 14歳,男.初診の2年前より金魚を飼育.4ヵ月前より右第2指背に難治性の紅色結節を認める.新鮮凍結組織の抗酸菌PCR法をシオノギバイオメディカルラボラトリーズに依頼し,抗酸菌群の16SrRNAおよび結核菌群のMPB70蛋白遺伝子を増幅させるプライマーを用いてnested PCR法を施行した.その結果,抗酸菌群DNA陽性,結核菌群DNA陰性であり,皮膚生検4日後には皮膚非定型抗酸菌症と確定診断し得.Ziehl—Neelsen染色,および小川培地での組織培養はともに陰性であった.本PCR法は感度および迅速性ともに優れた検査法として臨床的価値が高いものと思われた.

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 69歳男性の手背に発症したMycobacteri—un ckelonae皮膚感染症の1例を報告した.患者は喘息のため副腎皮質ホルモン剤を内服中で,外傷をきっかけに発症し,手背の発赤,腫脹と皮下の小結節が散在していた.生検組織中に抗酸菌染色陽性の菌体を確認.組織片からの分離株同定によりMycobacterium chelonae subsp.abscessusと判明した.ミノマイシン内服は効果なく,抗結核剤内服で軽快した.

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 63歳,男性.治療に用いたアシクロビルで精神神経症状を呈した帯状疱疹の1例を報告した.慢性腎不全があり,アシクロビルの血中濃度の上昇によると考えられた.また,既往歴に脳梗塞があったことから脳梗塞の再発あるいはヘルペス性脳髄膜炎とアシクロビルによる精神症状との鑑別が必要であった.

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 症例1:2歳男.項部から下背部にかけて一部不完全環状を呈した赤褐色紅斑と赤色丘疹が散在.症例2:5歳女.両腰に卵円形淡褐色紅斑.症例3:28歳,症例1,2の母親.左前腕屈側部に卵円形浸潤性赤褐色局面が2個あり.酪農業の親子で,牛に皮膚病変がある.3例とも鱗屑からTri—chophyton verrucosumが分離され,本菌による体部白癬と診断した.症例1,2は牛に直接触ることはないが,牛舎内で遊んでいた.症例3は酪農業に携わっていないが,体部白癬にステロイドホルモンを外用していた症例1を毎日腕枕で寝かせていた部位に発症.ヒトからヒトへの感染が明らかであった例で,その発症の一因子としてステロイド外用剤の関与が考えられた.

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 43歳,女.約5年前より右第2趾に皮疹が生じ腫瘤形成を認め当科を受診.初診時,右第2趾の爪甲は破壊されMP関節より5mm末梢側から肉芽腫様隆起性病変を認め,X線所見で末節骨は破壊されていた.また右鼠脛部に拇指頭大の弾性硬のリンパ節が3ヵ所触知された.組織学的には,典型的な扁平上皮癌の組織像と腺様構造を呈する部分が混在して認められ,棘融解型有棘細胞癌と診断された.棘融解型有棘細胞癌は一般に高齢男性の露光部に好発し,老人性角化症との関連が高率に認められるが,自験例は,比較的若年女性の下肢に生じ,リンパ節転移もきたしていることより,典型的な棘融解型有棘細胞癌とは臨床経過,症状とも異なると考え,若干の文献的考察を行い報告する.

連載

Clinical Exercises・45—出題と解答 塩原 哲夫
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 89 次のうち強皮症様病変をきたす可能性を指摘されているのはどれか.

  ①ブレオマイシン

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スペルチェック,患者と医療保険,コンピューター情報

 最近“Spell It Right”(Harry Shaw著)の第3版を手に入れました.これは大変有効な本ですが,これから先第4版よりもコンピューターのスペルチェックのほうを皆さんはお使いになられるでしょう.しかしコンピューターのスペルチェックにはまだ若干の問題があります.それは非常に似通った単語の場合識別できないということです.将来もっと進んだ賢いコンピューターができてくるとは思いますが,今のところaccedeやexceed,complimentやcomplementなどはコンピューターは判断できず,間違いを指摘することができません.したがって皆さんご自身で正しい単語を選ばなければならない訳です.

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 眼瞼黄色腫12例を炭酸ガスレーザーを用いて治療した.うち7例は,金病変部の照射を終了し3〜14ヵ月月経過している.残りの5例については病変の半分以上は既に照射を終え,現在,残存病変も治療中であるが,2〜12ヵ月月経過を観察している.従来の治療法である内服療法,液体窒素冷凍凝固術に比し,治療期間が短く,腫瘍切除術に比し,簡便で術後の腫脹も少なく,病変部の大きさや形に制限されないことが特長である.全例,照射部位での再発はない.炭酸ガスレーザーは眼瞼黄色腫に対して,第1選択の治療であると考えられた.

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基本情報

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臨床皮膚科
50巻13号 (1996年12月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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