臨床放射線 64巻12号 (2019年11月発行)

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特集　これから研究・論文執筆をはじめる先生へ

はじめに今井　裕 64巻12号 , 2019年11月 , pp.1397-1398

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日常の臨床業務が忙しい多くの医師にとっては，研究や論文執筆といわれても時間がない，何を始めたらよいのかわからない，これらの活動が自分のためになるのか，あるいは医療の中で患者さんのために役に立つのだろうか，といった気持ちをもつことは当然であろうと思う。しかし，日常診療の中での研究の第一歩は，1枚のメモであることが多い。目の前の患者さんの診断をしたけれども不安がある場合，我々はよく患者IDをメモに残し，後日に最終結果を確認し，自分の診断が正しかったか，間違っていたのかを知り，さらに深く学ぶことができる。そして，症例数が増えてくるとメモはやがてノートになり，それぞれの症例に共通点や相違点を見つける，あるいはまったく異なる側面から症例をあらためて眺め考えることができる。読者の皆さんが日頃行っているこのような作業こそが，まさに研究のはじまりである。

論文作成に関わる倫理，現在の問題点―研究・論文執筆に際しての留意すべきこと栗原　泰之 64巻12号 , 2019年11月 , pp.1399-1404

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「Fellowship in Radiology Journalism」ということばをきいたことがあるだろうか？　簡単にいえば，放射線科領域における学会誌，医学誌の編集や出版に関することを学ぶフェーローシップである。AJRでは，1990年から自国人（米国人）に対してFigley fellowshipがスタートし，遅れて2008年に外国人を対象としたLee F. Rogers international fellowshipが開始され，2年おきに1人が選ばれている。またRSNAでも，William R. Eyler editorial fellowshipとレジデントなどの学習者が対象のRSNA editorial fellowship for traineesがある。医学出版や編集に関して体系的に勉強する機会のない我が国において，若輩時にFigley fellowshipの存在を教えてもらったときから将来参加する機会がないものかと考えていたが，2012年に運良く前述のRogers fellowshipに参加することができた。その4週間のトレーニングと，その後のAJRの編集委員の末席に加えていただいた経験，さらには現在多くの我が国の放射線科関係の雑誌編集にかかわる立場となり，これらの経験を元として，以下に医学編集の諸問題の一部を紹介させていただいた。

研究の進め方から論文作成・投稿まで玉木　長良 64巻12号 , 2019年11月 , pp.1405-1409

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これから研究を始める方，あるいはある程度まとまった研究成果があり，これから論文執筆に進まれる先生方に対して，研究の進め方や論文作成，投稿までの取り組みについて，私なりの考え方をまとめてみたい。

核医学論文の投稿傾向と論文を書くにあたって絹谷　清剛 64巻12号 , 2019年11月 , pp.1411-1416

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どの分野にも，はやりのキーワードがあると思う。医学全体の例を挙げるとnext generation sequencer，immune checkpoint inhibitor，放射線ではradiomics，texture analysis，artificial intelligence，deep learningというのも大流行。核医学では特にtheranostics。キーワードに沿った論文を書けば通りやすいのだが，実際のところどのような論文が掲載されているのか，日本の核医学にかかわる先生方が投稿先に選ぶ頻度の多い雑誌で，数年の傾向を眺めてみた。いわゆるトップジャーナルでは「Journal of Nuclear Medicine（JNM）」と「European Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging（EJNMMI）」，また，日本核医学会機関誌の「Annals of Nuclear Medicine（ANM）」を検証した。なお，放射線総合誌，放射化学専門誌，放射物理専門誌，癌関係誌，脳科学関係誌等々にも核医学関連論文が多く掲載されるが，サーベーが膨大になりすぎるため割愛した。

放射線治療に関する論文投稿の傾向佐々木　良平 , 赤坂　浩亮 , 吉田　賢史 64巻12号 , 2019年11月 , pp.1417-1424

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放射線治療に関する論文は，その著者が放射線腫瘍医である場合，医学物理士である場合，放射線治療技師である場合，放射線生物学などの基礎系の研究者の場合などがあり，その内容に関しても多様性に富むことがその魅力の一つと考えられる。それゆえ，投稿されてきた原稿を審査することも容易ではないが，それぞれのエキスパートが意見交換しつつ，放射線腫瘍学という学問が発展していくことをリアルタイムに感じ取ることができる。

デジタル時代の医学文献管理ソフトの誤解―EndNoteかMendeleyか？関口　建次 64巻12号 , 2019年11月 , pp.1425-1434

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論文執筆の有無を問わず，医学の道を歩む限り，医学情報（文献）の収集，整理は必須であり，年を重ねるにつれその量は膨大となる。最近は電子媒体が多くなり，机の上に倒れそうなくらいにコピーが堆く積まれている光景は少なくなった。しかし紙媒体でも同様であるが，いざ論文を探そうとしてもなかなか出てこないこともしばしば経験する。私の周りにも英語論文を頻繁に投稿している優秀な医師がいるが，普段の文献整理はフォルダーごとにフルテキストPDF（以後，PDF）を整理し，論文執筆時に文献管理ソフトを使用している。そこで今回，管理ソフトへの誤解を解き，古くからの定番ソフトEndNoteと，最近話題になっている無料のMendeleyの違いについて概説し，これから使い始める若い研究者の一助になることを期待したい。ただし，ほかにも頻用されているZoteroやRefWorksについて筆者はまったく知識を持ち合わせていないことをお断りしておく。

論文執筆のためにオンラインツールを使いこなす早川　威士 64巻12号 , 2019年11月 , pp.1435-1446

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いまや論文を書くためにインターネットは必須といってよいが，単に調べ物をするだけでなく，効果的に情報を収集し，管理し，そして保存，共有することがほぼオンラインでできるようになっている。本稿では，これから研究や論文執筆に取り組まれる方々を対象に，執筆活動に役立つオンラインツールを紹介する。

総説

放射線誘発悪心・嘔吐への対応―5-HT₃受容体拮抗薬の利用の実際小野寺　俊輔 , 西山　典明 64巻12号 , 2019年11月 , pp.1447-1453

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本稿は，放射線治療による悪心・嘔吐に対する5-HT₃受容体拮抗薬の有効性について，2019年6月29日開催の放射線治療談話会勉強会で講演させていただいた内容を整理し総説として執筆したものである。

症例

副腎皮質腺腫に腫瘍内転移をきたした大腸癌の1例大森　真理 , 石井　裕朗 , 松田　恵治 , 湯浅　直未 , 森本　真美 , 橋村　伸二 , 田村　麻衣子 , 金澤　右 64巻12号 , 2019年11月 , pp.1455-1459

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腫瘍内転移はまれな現象である。今回我々は，大腸癌の加療中に左副腎腫瘤の増大を認め，副腎摘除術を施行し，大腸癌の副腎皮質腺腫内転移と診断された症例を経験したので報告する。

診断に苦慮した膵内副脾由来の類表皮嚢胞の1例大島　健史 , 三田村　知佳 , 高山　幸久 , 田中　厚生 , 渡辺　秀幸 , 植田　圭二郎 , 西原　一善 , 田宮　貞史 64巻12号 , 2019年11月 , pp.1461-1466

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膵内副脾に発生する類表皮嚢胞は比較的まれな疾患といわれているが，最近の画像診断技術の進歩に伴い報告例は増加している。この疾患は良性の嚢胞性疾患であるが，ときに悪性の嚢胞性疾患との鑑別が難しく，術前に診断がつかないまま手術に至る例も少なくない。そのため術前の画像診断における役割は大きい。今回，我々は非典型的な画像を呈し，診断に苦慮した膵内副脾由来の類表皮嚢胞の1例を経験したので報告する。

急性膵炎を併発した膵動静脈奇形の1例松田　恵治 , 大森　真理 , 湯浅　直未 , 森本　真美 , 石井　裕朗 , 林　英博 , 田村　麻衣子 , 金澤　右 64巻12号 , 2019年11月 , pp.1467-1472

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膵動静脈奇形（以下，膵AVM）はまれな疾患とされているが，近年，各種画像診断検査の発達・普及に伴い報告が徐々に増加している。今回，急性膵炎を併発した膵AVMの1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

正常膵類似形態を呈したまれな腸間膜内異所性膵の1例鎌村　真帆 , 乘金　精一郎 , 本田　理 , 山本　博道 , 清水　慎一 , 脇　直久 , 園部　宏 , 金澤　右 64巻12号 , 2019年11月 , pp.1473-1477

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異所性膵は解剖および血管支配において正常膵と異なる膵組織と定義される。異所性膵は主に上部消化管に好発する粘膜下腫瘍の一つである^1）。画像検査ではほかの粘膜下腫瘍と類似した所見を呈することがあり，鑑別はしばしば困難であるとされる^2）。今回我々は，造影CT（早期相，後期相）にて空腸の腸間膜に正常膵と類似形態を呈する腫瘤を認め，摘出後の病理所見で腸間膜内の異所性膵と診断された症例を経験した。腸間膜内の異所性膵はまれであり，特徴的な画像所見が術前診断に有用であったため，若干の文献的考察を加えて報告する。

腎洞部に発生した血管筋脂肪腫の1例岩政　理花 , 平方　良輔 , 濱砂　良一 , 山元　英崇 64巻12号 , 2019年11月 , pp.1479-1483

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血管筋脂肪腫（angiomyolipoma：AML）は血管・平滑筋細胞・脂肪細胞から構成される間葉系腫瘍で，血管周囲類上皮細胞（perivascular epithelioid cells：PEC）に由来する腫瘍である^1）。腎臓に好発するが^2），腎洞部に発生するAMLは極めてまれである^3-10）。偶然発見され，4カ月後に腎盂腎炎を併発し腫瘍の増大を認め，手術となった症例を経験したので，文献的考察を加えて報告する。

孤立性卵管捻転の1例井出　直宏 , 檜垣　文代 , 藤原　寛康 , 羽原　理佐 , 上田　裕之 , 徳毛　敬三 , 小田　和歌子 , 金澤　右 64巻12号 , 2019年11月 , pp.1485-1489

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女性骨盤領域の急性腹症の原因として，卵巣出血などの出血性病変と，各種の捻転疾患による虚血性病変がある。捻転疾患では，正常卵巣捻転，卵巣腫瘍茎捻転，傍卵巣嚢腫捻転，子宮筋腫茎捻転の頻度が高い。卵管捻転は，卵巣腫瘍や傍卵巣腫瘍に伴う卵管捻転が多く，卵管単独の捻転は非常にまれである。

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文献紹介 64巻12号 , 2019年11月 , pp.1466-1466

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目次 64巻12号 , 2019年11月

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英文目次 64巻12号 , 2019年11月

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次号予告 64巻12号 , 2019年11月 , pp.1492-1492

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投稿規定 64巻12号 , 2019年11月 , pp.1493-1493

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編集後記 64巻12号 , 2019年11月 , pp.1494-1494

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基本情報

臨床放射線
64巻12号
(2019年11月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0009-9252 金原出版

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