臨床放射線 63巻11号 (2018年11月発行)

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特集　粒子線systematic reviewと先進医療

はじめに大野　達也 , 石川　仁 63巻11号 , 2018年11月 , pp.1161-1162

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粒子線治療施設の数は先進国を中心に世界的に増加傾向にある。平成30年10月現在，国内では16の陽子線治療施設，5つの重粒子線治療施設，1つの陽子線・重粒子線治療施設が設置されている（表1）。現在の診療体制は，臨床試験，先進医療，保険診療，自由診療（主に国外患者）と様々であるが，最も重要な流れは，「先進医療」から「保険診療」への移行をどのように進めていくかにある。

日本の粒子線治療の現状―保険診療，臨床試験，統一治療方針櫻井　英幸 63巻11号 , 2018年11月 , pp.1163-1169

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日本における粒子線治療は，臨床研究を経て先進医療となり，2015年には年間約5,000例（陽子線治療3,000例，重粒子線治療2,000例）に実施されるようになった（図1）。2016年からは，先進医療Aとして実施されている粒子線治療は，日本放射線腫瘍学会が定めた全国統一方針に従って実施されるとともに，特に重点的な評価が必要な分野に関しては先進医療Bとして実施されるようになった。また，2016年および2018年の保険改定では，いくつか重要な疾患が保険収載された。2018年4月には，国内に14箇所の陽子線，5箇所の重粒子線治療施設が稼働中であり，実施予定施設は現在でも増加傾向にある。

頭頸部癌小藤　昌志 63巻11号 , 2018年11月 , pp.1171-1178

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頭頸部領域は様々な臓器や機能が集中しているため，機能温存や審美性を保ちつつ，癌に対して根治治療が期待できる放射線治療が活躍している領域である。実際，頭頸部癌の大半を占める咽喉頭や口腔の扁平上皮癌に対しては，化学療法や分子生物薬など薬物療法を併用した放射線治療の有用性が報告され，確固たる地位を築いている^1-3）。また強度変調放射線治療（intensity modulated radiation therapy：IMRT）の普及により有害事象の軽減も図られている。一方で，放射線治療に抵抗性の非扁平上皮癌が頭頸部癌の10％ほどではあるが発生する^4）。唾液腺癌や粘膜悪性黒色腫，嗅神経芽細胞腫がこれに該当する。また扁平上皮癌であっても鼻副鼻腔原発の腫瘍は視神経，眼球，脳といった重要臓器が隣接しており，これらの機能温存が放射線治療では困難なことがある。

肺癌に対する粒子線治療の現況と展望原田　英幸 , 荒屋　正幸 , 萩原　靖倫 , 中村　直樹 , 小宮山　貴史 , 齋藤　淳一 , 赤松　弘朗 , 大出　泰久 , 塩山　善之 63巻11号 , 2018年11月 , pp.1179-1184

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2018年7月現在，肺癌に対する粒子線治療は，日本放射線腫瘍学会が定めた病態を対象に，定められた線量分割法で治療を実施する場合に先進医療Aとして実施できる。また，特に観察・評価が必要な病態については先進医療Bとして厳格な臨床試験として実施することとされている。

膵癌篠藤　誠 63巻11号 , 2018年11月 , pp.1185-1191

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膵癌治療における放射線治療の役割は，切除可能膵癌あるいは切除可能境界膵癌に対する術前（あるいは術後）補助療法，切除不能局所進行膵癌に対する根治的照射，そして緩和照射が挙げられる。いずれも重要な役割を担っているが，特に切除不能局所進行例に対する根治的照射としての意義は大きい。しかし，膵癌に対する放射線治療には多くの課題が存在する。

肝癌渋谷　圭 , 大野　達也 , 中野　隆史 , 加藤　弘之 63巻11号 , 2018年11月 , pp.1193-1201

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本稿では，肝細胞癌を中心に肝癌の粒子線治療の治療成績に関する知見を整理し，現状と課題を明らかにしたうえで普及に向けた解決策を探索する。粒子線治療には重粒子線治療と陽子線治療が含まれるが，現時点では治療成績やその適応において大きな差異はないと考えられる。肝癌診療における放射線治療自体の位置づけが明確でない現状において，実地臨床上，重粒子線治療と陽子線治療を区別する意義は乏しいと考えられるため，本稿ではまとめて粒子線治療として扱うこととする。

前立腺癌石川　仁 , 辻　比呂志 , 村山　重行 , 溝口　信貴 , 村上　基弘 , 櫻井　英幸 63巻11号 , 2018年11月 , pp.1203-1211

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前立腺癌に対する放射線治療後の腫瘍制御には線量依存があるが，その一方で，前立腺の周囲に存在する直腸や膀胱の晩期障害にも線量体積効果があるため，放射線治療を成功させる手法には，線量集中性を高め，標的となる前立腺および精嚢腺にのみ高線量を投与することが重要である。陽子線，および炭素イオン線を利用した粒子線治療は，X線と比較して線量集中性が良好であるため，直腸出血や尿路系有害事象の発生頻度はX線と比べて少ないとする報告が多い。しかしながら，これまでは施設数が限られていたことや，X線と直接比較した臨床研究の報告が存在しなかったため，その有効性，特にX線に対する優位性を評価することは困難であった。さらに，我が国では，粒子線治療は先進医療として1999年から前立腺癌にも適用されてきたが，先進医療技術としての粒子線治療を見直すように先進医療会議で決議されたことで，日本放射線腫瘍学会では臓器別にワーキンググループを作り，適応病態と統一治療方針を定め，重要疾患については，これまでの知見をまとめることとした。また，一部のいわゆるコモン・キャンサーでは，これまでの先進医療Aから外れ，先進医療Bとして前向き多施設共同研究が計画され，肝細胞癌と同様に，前立腺癌についても中リスク群に対する陽子線治療，高リスク群に対する炭素イオン線治療の臨床研究が開始された。本稿では，このような取り組みのもとで行われたシステマティックレビューの概要について解説する。

骨軟部腫瘍出水　祐介 63巻11号 , 2018年11月 , pp.1213-1219

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原発性悪性骨軟部腫瘍（肉腫）は，年間に発生する全悪性腫瘍の1％未満という非常にまれな腫瘍である^1）。根治的治療の第一選択は外科的切除であるが，部位によっては困難なことも多い（頭蓋底，脊椎，骨盤部など）。切除不能例または不完全切除例に対する選択肢の一つが放射線治療であるが，従来の放射線治療（X線治療）は，単独では骨軟部肉腫に対する効果は不十分と考えられており，主として術前照射または術後照射として用いられてきた^2）3）。

総説

乳癌・術後照射の実践的テクニック（2）関口　建次 , 藤田　幸男 , 三浦　正史 , 新井　学 , 齊籐　勉 63巻11号 , 2018年11月 , pp.1221-1231

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前稿では，乳癌術後照射の治療計画の基礎となる臨床的標的体積（CTV）のコンツーリングおよび標的内線量の適合基準やリスク臓器の線量制約について述べた^1）。今回は標準的な照射手技について概説する。

診療

アルツハイマー型認知症診断における視床血流評価の有用性の検討高木　愛子 , 長町　茂樹 , 野々熊　真也 , 高野　浩一 , 吉満　研吾 , 川添　美紀 , 坪井　義夫 63巻11号 , 2018年11月 , pp.1233-1238

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アルツハイマー型認知症（AD）を脳血流SPECT用いて診断する際に，重要な領域として，縁上回，角回などの頭頂葉や側頭葉に加えて，帯状回後部，楔前部などの疾患特異領域が挙げられる^1-3）。これらの領域は，ADでは発症早期から血流が低下することが知られているが^3）4），一方で，小脳，大脳基底核，一次運動感覚野の血流は進行期でも保たれることが知られている。視床血流については定まった見解はないものの，低下することも報告されている^5）。また，FDG-PETを用いた研究でも，糖代謝が低下することが報告されている^6）。そこで，本研究では，ADにおける視床血流低下の頻度，臨床的および画像上の特徴について，レビー小体型認知症（DLB）を対照として後顧的に検討した。

症例

上咽頭アミロイドーシスの1例笠井　尚史 , 篠﨑　賢治 , 牧角　健司 , 井上　公代 , 平賀　聖久 , 渥美　和重 , 小田原　裕子 , 水島　明 63巻11号 , 2018年11月 , pp.1239-1243

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一般にアミロイドーシスは全身性，限局性に区別される。生命予後へ大きな影響を与えるのは全身性アミロイドーシスであり，脳アミロイドーシス（Alzheimer病）のような例を除けば，限局性アミロイドーシスの大部分は良性疾患である。頭頸部領域におけるアミロイドーシス好発部位は喉頭や舌であり，上咽頭ではまれとされている。我々は，上咽頭に発生した限局性アミロイドーシスの1例を，若干の文献的考察を加えて報告する。

胃癌を契機に発見された副腎血管腫の1例梶田　聡一郎 , 向井　敬 , 丸中　三菜子 , 清水　光春 , 新屋　晴孝 , 柿下　大一 , 永喜多　敬奈 , 金澤　右 63巻11号 , 2018年11月 , pp.1245-1248

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副腎血管腫は副腎間質を発生母地とし，内分泌的に非活性な良性腫瘍である。そのため症状に乏しく，画像検査で偶然発見されることのあるまれな腫瘍である。今回我々は，胃癌の精査中にCT検査で指摘された副腎血管腫を経験したので，若干の文献的考察を加えて報告する。

両側卵巣線維腫に両側卵巣線維腫症が合併した1例鈴木　琴音 , 椎名　丈城 , 横山　久朗 , 日紫喜　裕子 , 永井　康一 , 向田　一憲 , 鈴木　理絵 , 奥田　美加 63巻11号 , 2018年11月 , pp.1249-1253

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骨盤部腫瘤の画像診断では，両側の正常卵巣が同定されれば卵巣腫瘍は鑑別から外されるのが一般的である。しかし，卵巣線維腫においては同側の正常卵巣を認める場合がまれではないという報告がある^1）。今回我々は両側卵巣線維腫に両側卵巣線維腫症を合併したまれな1例を経験したので，文献的考察を加え報告する。

化学放射線治療により長期生存した原発不明肺門縦隔リンパ節扁平上皮癌の1例赤木　由紀夫 , 小野　薫 , 小山　矩 , 大成　妙 , 直樹　邦夫 , 廣川　裕 , 中井　志郎 63巻11号 , 2018年11月 , pp.1255-1261

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原発不明癌の組織型は，腺癌あるいは低分化癌のことが多く，扁平上皮癌の頻度は少ない^1）。原発不明扁平上皮癌のほとんどは，頸部・鎖骨上窩リンパ節あるいは鼠径部リンパ節腫大で発見され，肺門縦隔リンパ節腫大で発見される頻度も少ない^2）。今回我々は，原発不明肺門縦隔リンパ節扁平上皮癌に対して化学放射線治療を実施し，長期生存が得られた1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

連載

今月の症例田口　遼 , 山　直也 , 小野寺　麻希 , 小野寺　耕一 , 小山　奈緒美 , 畠中　正光 , 江森　誠人 , 三品　泰二郎 , 長谷川　匡 63巻11号 , 2018年11月 , pp.1263-1266

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画像所見　骨肉腫術後1カ月の胸部CT（図1）では，左S9b気管支動脈束に沿った樹枝状・棍棒状の結節を新規に認めたが，肺転移にしては非典型的な形態であり，炎症性変化の可能性も考えて経過観察となった。術後2カ月の胸部CT（図2）では，上記結節の増大を認めた。肺転移にしては非典型的な形態であったが，術後新規に出現しており，増大したことから骨肉腫の肺転移を第一に考え，当院呼吸器外科紹介となった。

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文献紹介 63巻11号 , 2018年11月 , pp.1262-1262

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目次 63巻11号 , 2018年11月

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英文目次 63巻11号 , 2018年11月

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臨時増刊号予告 63巻11号 , 2018年11月

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2019年臨時増刊号予告 63巻11号 , 2018年11月

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次号予告 63巻11号 , 2018年11月 , pp.1262-1262

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投稿規定 63巻11号 , 2018年11月 , pp.1269-1269

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編集後記 63巻11号 , 2018年11月 , pp.1270-1270

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基本情報

臨床放射線
63巻11号
(2018年11月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0009-9252 金原出版

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