臨床放射線 63巻10号 (2018年10月)

特集 薬剤関連顎骨壊死の画像診断up to date

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薬剤に関連して発症し,治療に難渋する顎骨壊死が注目されるきっかけになったのはMarxらが2003年にビスホスホネート製剤投与の患者にみられる下顎骨や上顎骨の露出と疼痛を訴える症例を報告したことによる。現在ビスホスホネート製剤(BP製剤)に限らずほかの骨吸収抑制薬(デノスマブなど)や血管新生阻害薬(ベバシズマブなど)が原因となり,同様の顎骨壊死が生じることからbisphosphonate-related osteonecrosis of the jaw(BRONJ)からmedication-related osteonecrosis of the jaw(MRONJ)やanti-resorptive agents-related osteonecrosis of the jaw(ARONJ)という名称が使用されるようになっている1)2)。国内の発生頻度は0.01~0.02%(BP製剤内服),1~2%(BP製剤注射)と報告されている。デノスマブ投与でも同様の発生頻度が報告されている3)(柴原論文参照)。発生頻度は低いが長期にわたる疼痛や不快感に加え摂食,咀嚼,などの口腔機能に大きく影響してQOLの低下を招く。骨壊死を伴う骨髄炎であるが通常の骨髄炎と比べると様相が異なり治療への反応が悪く,増悪や慢性化して,進行すると顎骨切除に至る重篤な病変である。診断として様々な画像検査が用いられている。MRONJ/ARONJにおける画像診断として求められるのは病変の範囲判定,炎症の範囲,手術時の情報,病状の推移,発症の予測などが挙げられる。

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ビスホスホネート(BP)は,破骨細胞に特異的に作用し,アポトーシスを誘導,骨吸収・リモデリングを抑制する薬剤である(図1)。BP製剤は,骨粗鬆症(予防を含む)や悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症・骨転移に関連した骨関連疾患,多発性骨髄腫における溶骨性疾患,骨の脆弱性を特徴とする疾患など,広く用いられており,多くの種類がある(表1)。2003年にMarxがBP製剤関連顎骨壊死(bisphosphonate-related osteonecrosis of the jaw:BRONJ)について初めて報告し,それ以降多くの症例が発表されている。ONJは,BP製剤だけではなく,BP製剤と同じく骨吸収抑制作用を示す抗RANKL(receptor activator of nuclear factor κB ligand)抗体デノスマブや,血管新生阻害薬としてチロシンキナーゼ阻害薬,抗VEGF(vascular endothelial growth factor)ヒトモノクロナール抗体,mTOR(mammalian target of rapamycin)阻害薬が報告されている。デノスマブは,RANKLに対するヒト型モノクローナル抗体で,破骨細胞の形成・機能・生存を阻害し,骨吸収を抑制する。デノスマブは全身に分布するが,BP製剤とは異なり骨と結合せず,RANKLに特異的に作用する(図2)。デノスマブによるONJも報告されており,デノスマブ関連顎骨壊死(denosumab-related ONJ:DRONJ),BP製剤とデノスマブの骨吸収抑制薬によるONJを骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(anti-resorptive agents-related ONJ:ARONJ),さらに血管新生阻害薬を含めた薬剤関連顎骨壊死(medication-related ONJ:MRONJ)と総称されている(図3)。

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慢性顎骨骨髄炎は今日の診断,治療法の発展にもかかわらず,口腔顎顔面領域の炎症性病変の中では最も難治性の疾患の一つである。

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薬剤関連顎骨壊死(medication-related osteonecrosis of the jaw:MRONJ)は,ビスホスホネート関連顎骨壊死(bisphosphonate-related osteonecrosis of the jaw:BRONJ)や抗RANKL抗体製剤デノスマブ関連顎骨壊死(donosumab-related osteonecrosis of the jaw:DRONJ),血管新生阻害薬による顎骨壊死を含む総称として米国顎顔面外科学会(American Association of Oral and Maxillofacial Surgeons:AAOMS)が提唱している名称である1)。日本の顎骨壊死検討委員会ポジショニングペーパーでの(血管新生阻害薬を含まない)骨吸収抑制剤関連顎骨壊死(antiresorptive agent-related osteonecrosis of the jaws:ARONJ)に相当する2)。AAOMSの診断基準においては臨床所見・情報によってなされ,診断基準項目に画像所見の記載は含まれていない1)。その一方,臨床所見のみでは粘膜下における病変の詳細な進展範囲評価は困難であり3)4),実臨床としてCT,MRIが診断,病変の進展範囲,活動性の評価などを目的に施行される。本稿ではARONJ/MRONJのCT,MRI所見に関して文献学的考察および我々の検討を交えて概説する。

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薬剤関連顎骨壊死(medication-related osteonecrosis of the jaw:MRONJ)は骨吸収抑制薬や血管新生阻害薬の重要な副作用であり,詳細については本特集の他稿を参照いただきたい。MRONJは進行すると難治性であるものの,早期に発見して対処できれば予後改善に結びつく。本稿では,MRONJの早期発見における骨シンチグラフィおよびFDG-PET(18F-fluorodeoxyglucose positron-emission tomography)の有用性について紹介する。

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ビスホスホネート(bisphosphonate:BP)やデノスマブなどの骨吸収抑制薬は骨粗鬆症治療として第一選択薬で,骨折予防だけではなく生命予後の改善や健康寿命の改善に寄与する。また,転移性骨腫瘍における骨吸収抑制薬は骨破壊に起因する骨関連事象の発現の抑制に有効で,長期にわたって投与されることが多い。一方,BPの長期投与により骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(anti-resorptive agents-related osteonecrosis of the jaw:ARONJ)および非定形大腿骨骨折(atypical femoral fracture:AFF)リスクが高まることが知られている1-3)。両者の病態ともに明らかになっていないが,共通するのが骨吸収抑制薬による骨リモデリングの抑制と,過度の破骨細胞活性の抑制である1-3)。骨吸収抑制薬は全身の骨リモデリングに影響すると思われるが,顎骨にARONJが発生し,大腿骨にAFFが発生するメカニズムについては,充分には明らかにされていない。ARONJやAFFは生体力学的あるいは生物学的な部位特異性のメカニズムも発生の一因と考えられ,また骨吸収抑制薬による骨代謝への影響に部位特異性があることも考えられる。

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ガリウムシンチグラフィは,口腔顎顔面領域の良性腫瘍や炎症性疾患と悪性腫瘍との鑑別診断に有効な検査である1)。頭頸部扁平上皮癌においては,特に腫瘍再発や遠隔転移の評価に有用である2)3)。扁平上皮癌以外にも悪性リンパ腫,サルコイドーシスやほかの炎症性疾患におけるガリウムシンチグラフィの有用性の報告もみられる4-7)。しかしながら,顎骨の悪性腫瘍と炎症性疾患の鑑別診断においては,ガリウムシンチグラフィ,CT,MRIなどのマルチモダリティによる総合的な画像診断の報告はあまりみられない8-11)

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近年の癌治療の進歩に伴い,生存率は以前に比して大幅に改善されるようになってきた。とりわけ放射線治療と化学療法は物理学・生物学の進歩に伴い癌を根治できるようにまで発展した1)。一方,放射線治療や化学療法は以前よりも治療期間が長くなるようになってきた。例えば放射線治療においては強度変調放射線治療(IMRT)によってこれまで以上に癌病巣に対して放射線線量を上げることができるようになった2)。化学療法においても分子標的薬剤などの出現により3rdラインや4thラインの治療まで様々な種類の薬剤を投与することができるようになってきた。このように治療の進歩に伴って患者の治療期間も長くなるようになってきている。

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乳腺の低悪性度(線維腫症様)紡錘細胞癌は,紡錘細胞癌の一亜型であり,WHO分類(第4版)で化生癌の項目に入るまれな組織型の乳腺腫瘍である。今回我々は,画像的に悪性腫瘍が疑われたにもかかわらず,針生検では癌細胞を認めず,腫瘍摘出生検後に低悪性度(線維腫症様)紡錘細胞癌と診断された症例を経験した。

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膵神経内分泌腫瘍の多くは造影CTや造影MRIで境界明瞭な多血性腫瘍の像を示し,腫瘍径が大きいものでは嚢胞変性をきたすことが知られている。単房性嚢胞性腫瘤の像を呈し,粘液性嚢胞腫瘍と鑑別を要した膵神経内分泌腫瘍を経験したので報告する。

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膵リンパ上皮嚢胞(lymphoepithelial cyst:LEC)は膵嚢胞性病変全体の0.5%程度とされるまれな疾患である1)。良性ではあるが腫瘍マーカーが上昇することがあり,悪性疾患との鑑別に難渋することがある。その一方で,典型的な画像所見に着目することで,腫瘍マーカーの上昇が逆に正確な診断への手がかりとなることもある。今回我々は典型的な画像所見を呈し,腫瘍マーカーの上昇を伴ったLECの症例を経験した。文献的考察を加えて報告する。

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傍神経節腫は神経外胚葉由来の神経内分泌腫瘍の一種であり,全腫瘍の0.3%と非常にまれな腫瘍である1)。クロム親和性組織である神経冠に由来する腫瘍のうち,副腎由来のものを褐色細胞腫,副腎外原発のものを傍神経節腫と呼ぶ2)。傍神経節腫は機能性と非機能性のものに大別するが,機能性傍神経節腫は褐色細胞腫と同様に腫瘍からアドレナリン,ノルアドレナリンを分泌し,臨床的に高血圧や頭痛,発汗過多,代謝亢進,高血糖を呈するのが特徴的である。一方,非機能性傍神経節腫は腫瘍の増大による腹部腫瘤や心窩部不快感,腹痛,嘔気などの非特異的な症状を主訴とすることが多い3)。傍神経節腫のうち15~30%程度が転移をきたし悪性傍神経節腫と呼ばれる4)

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医師の働き方に改革が必要である。この認識が生まれた背景は様々あるが,他職種において働き方改革が謳われているなか,医師の働き方にも改革の必要性が示唆されている。理由としては,過重労働が労働者の健康を精神的にも肉体的にも損なう可能性が高いからである。

連載

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画像所見 ダイナミックCT:肝S5/6内側に約8×6cmの比較的境界明瞭な腫瘤を認める。以前のCTと比較すると緩徐に増大傾向である。動脈相では強い濃染を認める。腫瘤辺縁から右肝静脈へ連続する濃染がみられ,右肝静脈が流出路と考えられる(図1A~C)。腫瘤の濃染はその後wash outされ,遅延相では肝実質より低吸収となっている(図1D)。

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編集後記

基本情報

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臨床放射線
63巻10号 (2018年10月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0009-9252 金原出版

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