Brain and Nerve 脳と神経 51巻3号 (1999年3月)

総説

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はじめに

 脳卒中は非常に罹患頻度の高い疾患であり,急性期治療からリハビリテーション(以下,リハと略す)まで,幅広い知識をもって治療に当たらなければならない。

 急性期治療,生命予後に関しては膨大な情報が集められ,最新の治療プロトコールとその成果が示されている。リハの関わる領域ではどうであろうか。急性期からリハを開始するとどのような経過を辿るかのデータは発表されている1)ものの,残念なことにリハを行うと機能予後が良くなるか否かについても明確な成果が示せていない2,3)

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 目的:愛媛県郡部在住の健常高齢者に対してMMSEと日本語版Short-Memoly Questionnaire(SMQ)を施行し,年齢,性,教育年数の影響を検討した。方法:65歳以上の健常者613名について対象者本人に医師がMMSEを,同居家族に保健婦がSMQを施行した。結果:MMSEは27.6±2.5点,SMQは44.5±2.1点(平均得点±標準偏差)であった。統計解析の結果,MMSEでは年齢,教育年数,性の主効果と年齢×性の交互作用を認めた。SMQでは性,教育年数の主効果は認めたが,交互作用は認めなかった。結論:MMSEの低得点は,低い教育年数と高齢の女性との関連を認めた。一方SMQの低得点は,加齢の影響を受けず,低教育年数,男性の影響を受けた。両検査共に教育年数と性の影響を認め,加えてMMSEでは年齢の影響も認めた。今後両検査の施行にあたっては年齢,教育年数および性差に配慮が必要である。

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 大阪大学と大阪府立母子保健総合医療センターで,出生前に診断された中枢神経系異常の51症例に外科的対応を行った。胎児の肺成熟を評価して早期娩出後に水頭症手術を行い,在胎週数による分類で早期産児水頭症として加療を行ってきた。このうち追跡調査が可能であった43症例の水頭症病態患児の現況を検討した。

 追跡調査した画像診断から形態学的改善を客観的に評価するため,治療前後での大脳側脳室幅比cerebroven-tricular index(CVI)を比較すると,excellent 18例(脊髄髄膜瘤を伴うもの10例),good 13例(脊髄髄膜瘤を伴うもの5例),fair 8例(脊髄髄膜瘤を伴うもの5例),poor 4例でpoor群には脊髄髄膜瘤を伴う症例はなかった。また運動機能としては,脊髄髄膜瘤を伴っていた20症例中,装具を利用しながら歩行が可能なのは5例であった。一方脊髄髄膜瘤を伴っていない23例をみると,CVI比のexcellent群で8例中6例,good群8例中6例が独歩可能であった。しかしfair, poorに分類される7例は全て独歩は不可能であった。これら水頭症病態患児の運動機能の獲得は,画像診断の数量的評価上で拡大脳室の改善が必須であった。また拡大脳室の改善は全前脳胞症病態においても得られた。

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 神経学的に異常所見を認めない30〜79歳までの200例において,Magnetic resonance angiography(MRA)を行い,MRAの血管描出における加齢や高血圧の影響および血管描出能の脳血流に対する影響を検討した。MRAにおける血管描出状態は,描出良好(grade 4)から描出不良(grade 1)までの4段階で評価した。内頸動脈,中大脳動脈水平部,中大脳動脈末梢部のMRA描出能と年齢の間には負の相関が認められ,加齢によって血管描出能は低下した。また,高血圧の既往は各血管の描出能を有意に低下させた。一方,非高血圧群においても,中大脳動脈水平部,中大脳動脈末梢部の描出能は加齢とともに低下していた。また,中大脳動脈末梢部のMRA描出と中大脳動脈灌流領域の脳血流の間には有意な相関関係を認めた。MRAにおける脳血管の描出は加齢とともに低下し,動脈硬化の関与が考えられた。

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 脊髄円錐繋留解除術を施行した乳児脊髄脂肪腫44症例のうち,当センター開設後に追跡調査が可能であった36症例で,術前後の腎・膀胱超音波検査,排尿時膀胱尿道造影検査,膀胱内圧測定検査を施行し排尿機能の評価を行った。36症例のうち総排泄腔形成異常や脊髄髄膜瘤修復術後の排尿障害を有していた6症例が含まれていた。これらを除いた30症例中,術前に排尿障害なく泌尿器科的検査でも異常を認めなかったものは18例(60.0%)であった。しかし無症状ながら,排尿時膀胱尿道造影検査で膀胱逆流現象を認めた症例が7例(23.3%)あった。術後はいずれもその消失と改善をみたが,7例中1例では術直後に一過性の排尿障害を呈した。また腎・膀胱超音波検査では症状がないにもかかわらず5例(16.6%)で腎盂拡大が指摘されたが,術後4例で消失し1例で残存していた。総排泄腔形成異常の4症例では,術後失禁状態のままでストーマ管理が必要な2例,腹圧排尿に移行した1例と自己排尿可能となった1例があった。一方脊髄脂肪腫のみでも術後に間歇的自己導尿が必要となった2例があった。

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 多発性硬化症(MS)5例に対する計13回のリンパ球除去療法(LCP)の臨床的効果と治療前後の末梢血白血球分画,リンパ球サブセット,および末梢血単核球(PBM)IL−2産生能を検討した。臨床的重症度はex-panded disability status scale(EDSS)を用いて評価した。LCP治療後重症度は5例全例で改善した(p<0.05)。LCP後好中球数,CD 11bCD 8(%)は有意に上昇し(p<0.05,p<0.05),PBM IL−2産生能およびCD 4/8比は有意に低下した(p<0.05,p<0.05)。このCD 11bCD 8上昇,PBM IL−2産生能およびCD 4/8比の低下は,MSに対するLCPの有効性を示唆する所見である。しかしリンパ球サブセットおよびPBM IL−2産生能の変動は他の自己免疫疾患に対して行った免疫吸着法(IAT)後の変化と同様である。LCPはMSに対して有効と考えられるが,LCPにより生じるリンパ球サブセットおよびPBM IL−2産生能の変動は体外循環共通の現象である可能性がある。

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 Guillain-Barré症候群(GBS)から回復後2年間の無症候期間をおいて再発し,その際に心筋炎を合併した症例を報告する。症例は35歳男性。感冒様症状に引き続き四肢の筋力低下,腱反射低下を呈しGBSと診断され,血漿交換で完全に回復した。2年後に再び感冒様症状,心不全症状,四肢筋力低下をきたしGBSの再発と診断した。入院後4日目から筋力低下は自然に改善傾向を示したため,心不全の回復を待って血漿交換を施行し,約3カ月で完全回復した。発症1カ月の時点で施行した心筋生検では心筋炎の回復期の所見であった。心筋炎を伴ったGBSは稀で,再発性GBSに心筋炎を合併した例は本報告が初めてである。文献上心筋炎を伴ったGBSは死亡率が高く,厳密な管理が必要と考えられるが,本例は良好な経過をとった。

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 症例は5歳男児。生後間もなく髄膜炎を発症し水頭症となり,側脳室-腹腔シャント術,第4脳室-大槽シャント術などが施行されたが,経過中に両側外転神経麻痺が出現し,その後の頭部CT, MRIにてtrappedfourth ventricleと診断された。この両側外転神経麻痺は,第4脳室縮小時に出現し,拡大時に消失するという特異的な病態を示した。われわれは,髄膜炎によりくも膜下腔で外転神経が高度に癒着したため,第4脳室が縮小した状態でも外転神経の牽引が生じているものと考え,第4脳室を至適な大きさに維持することで症状を改善させようと試行錯誤を繰り返したが,結局,on-offバルブを適宜に操作することで対処するに至った。今後このような症例に対処するため,より高圧に設定できる圧可変バルブ,あるいは低流量バルブの開発が望まれる。

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 総頸動脈圧迫椎骨動脈撮影および神経内視鏡が,内頸動脈瘤とenlarged infundibular dilatation(EID)の鑑別に有用であった1例を報告する。症例は57歳女性,MRAにて左内頸動脈瘤が疑われたため脳血管撮影を施行した。左総頸動脈撮影,椎骨動脈撮影では後交通動脈の描出が不十分だったが,総頸動脈圧迫椎骨動脈撮影にて動脈瘤遠位端から後交通動脈が分岐していることが示唆された。術中,顕微鏡下では後交通動脈の確認は困難だったが,神経内視鏡下にて後交通動脈の全長,内頸動脈接合部を確認,EIDと診断した。本症例の診断における総頸動脈圧迫椎骨動脈撮影と神経内視鏡の有用性について検討した。

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 発作コントロールが良好であった症候性全般てんかんを合併した15番染色体由来過剰染色体(47,XX,+inv dup(15)(q 13))のモザイク例を報告する。患者は23歳女性。精神・運動発達遅滞,非定型欠神,脱力発作,強直発作を認め,睡眠時脳波にはrapid rhythmが出現した。月経は正常で小奇形もない。過食傾向はなかったが肥満を認めた。Phenytoinの十分量の投与により,発作は抑制された。Battagliaら(1997)はLen-nox-Gastaut症候群,精神遅滞,小奇形を特徴とするinv dup(15)syndromeを報告している。本症例はこの症候群のモザイクに相当し,本症例の発作がコントロール良好であったのは,モザイクであったためと思われた。症候性全般てんかんにはinv dup(15)が少なからず存在しうることに注意すべきと考えられた。

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 症例は死亡時60歳男性で1994年5月頃(58歳)より歩行時ふらつき,構音障害が出現し,全経過2年で死亡。神経学的に小脳症状,錐体路徴候,自律神経症状を認め,自律神経機能検査,123I-metaiodobenzyl-guanidine心筋シンチグラフィーで交感・副交感神経障害を確認,脳MRIで小脳・橋の萎縮を認め多系統萎縮症と臨床診断した。神経病理学的にはオリーブ橋小脳病変,自律神経病変,glial cytoplasmic inclusionなどを認めたことより多系統萎縮症と確定診断した,本例では123I-metaiodobenzylguanidine心筋シンチグラフィーで非常に急速な心臓交感神経の障害が確認され,このような急速な自律神経障害の進展が罹病期間の短さの原因の一つであると考えられた。

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症例 40歳,女性

主訴 複視

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 多発性硬化症の1例で典型的な球後視神経炎のMRI所見が確認できたので呈示する。

 症例 27歳,(日本人)女性

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 パーキンソン病は歩行異常や振戦での発症が一般的とされていますが,私たちは間欠性の呼吸苦を訴えた症例を経験しました。症例:62歳の男性。48歳時に肺結核,54歳時にじん肺。平成7年3月頃から頻回に呼吸促迫を伴わない呼吸苦発作が出現し,連日当院に救急受診。心肺系の検査では以前からの陳旧性結核とじん肺の所見,また血液ガスで軽度の酸素濃度低下(発作時,非発作時を通じてPaO270 torr, PaCO240torr程度)のみ。心気症の疑いでマイナートランキライザーの投薬や注射を受け,改善をみるも一時的ですぐに再発を繰り返した。平成7年の9月の系統的神経診察記録に「顔面はマスク様だが,無動症・振戦・姿勢異常はない。強剛は増強法でわずかに認められる」。頭部CT・MRIともに正常。平成9年10月の再度の診察で,四肢に左側優位のcogwheel rigidityがあり,levodopa 300mg/Hとpergolide 150μg日の投与を開始したところ呼吸苦発作は劇的に消失した。パーキンソン病における呼吸異常に関する報告は古くからありますが2),本例では初発症状から呼吸苦を訴えたところに特徴があり,もともと肺結核やじん肺があるところに基底核障害による呼吸筋の制御異常1)や,上気道抵抗の異常3)などが症状発現の機序となったと考えています。

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症例呈示

 主治医(日本医大) 症例は54歳の男性で,不動産業を営んでいました。利き腕は右利き(プリントにある"右手利き"の"手"は削除して下さい)で,主訴は発熱,複視,浮動性のめまい(dizziness),構音障害です。

 現病歴ですが,1998年3月末,37〜38℃の発熱が3日間続いていました。ただ,これは今回の病態との関係ははっきりしません。

基本情報

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Brain and Nerve 脳と神経
51巻3号 (1999年3月)
電子版ISSN:2185-405X 印刷版ISSN:0006-8969 医学書院

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