皮膚病診療 40巻1号 (2018年1月)

特集 心に残る症例-40周年記念特別号

臨床例

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<症例のポイント>ストーマ周囲に生じた腸上皮化生による大型の難治性潰瘍を報告した。ストーマ周囲皮膚の衛生管理や保護の不徹底により一次刺激皮膚炎や細菌感染を繰り返し、びらんや潰瘍を形成する。表皮再生とともにストーマの腸上皮も進展・浸潤し腸上皮化生が生じる。腸上皮化生による潰瘍の特徴は、杯細胞による腺管構造を有する紅色びらん性丘疹が集簇するため凹凸不整局面を示す。面上に過角化と表皮肥厚を示す残存表皮および下床の過剰肉芽組織による白色角化性丘疹が点在する。ストーマ周囲の腸上皮化生部分に良性あるいは悪性腫瘍が生じることがある。また既存の潰瘍性大腸炎など腸疾患が生じることもあるので注意を要する。ストーマ周囲皮膚の管理に皮膚科医は積極的に介入し、腸上皮化生などを未然に防ぎ、また治療するべきと考えた。

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<症例のポイント>疣状黄色腫様現象を伴った基底細胞癌を報告した。黄色腫細胞は腫瘍周囲の間質のみならず、腫瘍胞巣内の壊死巣にもみられた。疣状黄色腫様現象は腫瘍巣内外の腫瘍壊死あるいは変性組織処理の過程でマクロファージが関与すると考えられた。

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<症例のポイント>急速に全身にびらんが拡大したため、皮膚からメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)が侵入し、敗血症を思わせる重症感染症を発症した尋常性天疱瘡(pemphigus vulgaris;PV)の重症例を報告した。発熱、倦怠感、全身のびらんの疼痛から、一時は危険な状態となったが、早期の適切な抗菌薬治療により感染症から回復した後は、天疱瘡の臨床症状スコア(PDAI)および血清中自己抗体価(ELISA値)は急速に改善した。自験例では、同時期に行われたステロイドパルス療法、免疫グロブリン大量療法(intravenous immunoglobulin;IVIG)が奏効した可能性は除外できないが、劇的に病勢のコントロールが得られ、退院後も再発・再燃の徴候がみられなかったことから、重症感染症に伴って自己免疫反応が減弱した可能性が考えられた。

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<症例のポイント>足底に生じた紅色の腫瘤で、臨床的には有棘細胞癌、汗孔癌、無色素性悪性黒色腫を考えた。患者が、経済的、社会的問題のために積極的治療を拒否した。出血をコントロールするための最低限の原発巣切除を行い、無色素性悪性黒色腫と病理診断した。その時点で、遠隔転移が確認され、ステージIVであった。その後も積極的治療を拒否し、初診から約23ヵ月後に悪性黒色腫の全身への転移のために死亡した。その時点で最小限の切除しか行っていなかった原発巣には病変はなかった。

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<症例のポイント>若年発症の関節リウマチ(RA)患者の難治性下腿潰瘍を報告する。疼痛コントロールが不良のため下腿切断に至った。RAの関節外皮膚合併症に対する認識を深める必要がある。RAに対する早期からの適切な治療の重要性を強く示唆している。

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<症例のポイント>深在性エリテマトーデス(LEP)は慢性円板状エリテマトーデス(DLE)と近い関係にあり皮膚限局性または軽症型の全身性エリテマトーデス(SLE)に伴うことが多いが、広範囲に病変が多発して表皮変化が乏しい汎発性LEPは重症のSLEに伴いやすい。LEPは皮下脂肪織の変性、萎縮により不可逆的陥凹をきたしやすいため、早期から強力な治療が必要である。患者と家族のQOLを改善するために、整容的な面から治療介入を検討することも皮膚科医の役割である。

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<症例のポイント>自験例は患者自身が皮膚科医であり、生検や金属パッチテストなどは施行できなかったが、掌蹠膿疱症の発症から進展、歯科治療による劇的な改善まで観察しえた貴重な症例報告である。また患者の父親もほぼ同年代に掌蹠膿疱症を発症し、歯科治療が奏効したと考えられ、遺伝的な免疫応答の関与が考えられ、今後の同様の症例の解析が望まれる。

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<症例のポイント>心身相関が推定される難治性アトピー性皮膚炎患者に対し、分析心理学的な面接と家族療法を含む心身医学的治療を導入したところ、心身ともに著明な改善が認められた。うつに対し選択的セロトニン再取り込み阻害薬が投与されたことにより、強い妄想を伴う賦活症候群を発症し、警察の介入を含む種々の混乱をきたし、最終的に双極性障害と診断されるに至った。ただし、先行した心理治療も影響を与えた可能性は否定できない。心身医学的アプローチは皮膚科において極めて重要であるが、個々の症例については注意深い対応が必要と考える。

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<症例のポイント>重症の強皮症合併間質性肺炎に対して、リツキシマブによるB細胞除去療法を行った。リツキシマブ投与により、呼吸機能の著しい改善を得た。皮膚硬化と皮膚潰瘍に関しても改善が認められた。リツキシマブにより除去されていたB細胞が、末梢血中に出現するタイミングと一致して、強皮症合併間質性肺炎、皮膚硬化、皮膚潰瘍の再燃を認めた。これらの症状は、B細胞を再度除去することにより改善した。強皮症に対するリツキシマブの、プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験が医師主導治験として行われる予定である。

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<症例のポイント>初診より3年余りで、植皮部に3度繰り返し再発した右拇指爪部melanomaを報告した。いずれも植皮部にin situとして再発し、やがて植皮部真皮内汗管にMelan A陽性細胞の浸潤を認めた。4度目の右拇指腹側を含む全周性切除術を施行し、局所再発は認めなくなった。初診から4年で、同側腋窩リンパ節に転移した。切除端辺縁から植皮部へのmelanoma cellsの遊走、汗腺系付属器への浸潤につき考察する。

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<症例のポイント>white fibrous papulosis of the neck(以下、WFPN)は、中高齢者の頸部に両側性に多発する粟粒大から帽針頭大、白色ないし黄白色調、弾性やや硬、表面平滑、円形ないし楕円形を呈する境界明瞭な扁平隆起性丘疹である。病理組織学的には、真皮上・中層の膠原線維束の粗大化と増加が病変の主体である。加齢に伴う老人性皮膚変化の1つと考えられる。頸部に好発すること、表皮のLangerhans細胞が減少すると報告されていることから、日光曝露などの要因も考えられる。

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<症例のポイント>色素再生の経過とパターンが特異的であったロドデノール(RD)誘発性脱色素斑の症例を経験した。美白化粧品の効果は極めて限定的と多くの皮膚科医師が考えていたために発見が遅れてしまったことを教訓とする必要がある。長期間にわたって色素再生がみられない完全脱色素斑であっても、色素再生は期待できる。

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<症例のポイント>間質性肺炎と関節痛があり、関節リウマチ+リウマチ関連間質性肺炎として治療中の症例で両下腿に浸潤を触れる紅斑が多発した。抗Jo-1抗体高値と抗CCP抗体陽性および病理組織学的所見から皮膚筋炎と関節リウマチの合併例に生じた持久性隆起性紅斑と診断した。持久性隆起性紅斑に対しジアフェニルスルホン(DDS)が著効を呈した。初診から1年半後、爪囲紅斑、mechanic's handsなど皮膚筋炎の皮疹が認められた。

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<症例のポイント>尋常性白斑は日常診療でよくみる疾患であるが、分節型は治療抵抗性のことが多く、治療に難渋する。とくに小児の顔面の分節型白斑は、日常生活にも影響を与えるため、治療に工夫が必要である。今回、顔面の固定化した分節型尋常性白斑に対して、超音波メスを使った手術治療を行った。植皮後約1ヵ月から色素再生を認め、3ヵ月で完治した。その後再発はない。尋常性白斑に対する治療には、患者年齢、尋常性白斑の経過時間、発症部位などを考慮して治療を選択する知識と技術が必要である。

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<症例のポイント>3歳、女児。B型肝炎ウイルス(HB)ワクチン接種後10日目に、上下肢・顔・臀部にやや大きめの丘疹が出現し、Gianotti-Crosti症候群と診断した。2回目のワクチン接種では皮疹は出現しなかった。文献的に乳児から3歳の小児で、HBワクチン接種6日~3週間後に、小児丘疹状肢端皮膚炎が出現し、2回目以降のワクチンではおこらないことが報告されている。HBワクチンによるGianotti-Crosti症候群は、現在ではほぼみかけることのない本来の姿のGianotti病といえよう。

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<症例のポイント>血漿交換療法施行直後に大量免疫グロブリン静注療法を施行する治療法が著効し救命しえた。治療抵抗性で重篤な尋常性天疱瘡の若年日本人女性症例を報告した。この症例は、初めは軽症の尋常性天疱瘡であったが、ステロイド内服、大量免疫グロブリン静注療法、シクロスポリン、ミゾリビンの治療を行ったにもかかわらず重症化し全身症状を伴う重篤な状態に陥った。ときに、各種治療が奏効せず、生命を脅かすほど重症化する難治性尋常性天疱瘡の症例に遇遭する。そのような症例では、血漿交換療法施行直後に大量免疫グロブリン静注療法を行う治療法は試すべき治療法と思われる。

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<症例のポイント>陰茎部の潰瘍に対して自己判断で市販外用薬を長期間外用することによりアレルギー性接触皮膚炎を合併し難治化した陰茎、亀頭部の潰瘍の症例を報告した。自験例は美容形成クリニックにて施行された内容の詳しい経過を話したがらず現病歴の聴取、診断に苦慮した。10%クロタミトン含有クリームのパッチテストが72時間後に陽性であった結果より、クロタミトンに感作されアレルギー性皮膚炎を合併していたと考えられる。OTC(over the counter)外用薬は添加物が多数含まれており、また、容易にコンビニエンスストアー、スーパーマーケットで購入されるため、多くの人に使いまわされる可能性があり、今後スイッチOTC外用薬に含まれる添加物による光線過敏症、接触皮膚炎などの副作用が高頻度に出現することが危惧される。

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<症例のポイント>小児掌蹠丘疹性紅斑性皮膚炎(砂かぶれ様皮膚炎)は1~2歳前後の幼児の手のひらが真っ赤になり、手指にも痒い丘疹が生じステロイド外用薬にはまったく反応せず、2~3週間で落屑して自然治癒する疾患である。本症は原因不明であるがウイルス感染症と思われる皮膚反応を示すことが多いことからEBウイルスを含むウイルス初感染と考えられてきたが、今回の症例検討で93%が1~2歳と年齢に偏りがあり、92%が12~5月の寒い時期に集中しており、寒冷刺激が発症の誘因に関与していることがうかがわれた。

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<症例のポイント>玉川温泉は高濃度の塩素および塩素イオンを含むpH1.2の強酸性硫黄泉であり、さまざまな疾患の患者が湯治に訪れている。湯治者の間では玉川温泉で湯治を行うと、いわゆる「玉川皮膚炎」を生じると知られている。自験例では玉川温泉での湯治後に多発する紅色丘疹を認め、皮疹は萎縮性瘢痕を残し自然消褪するものもみられた。同温泉の湯治者の間では広く知られているとされるものの学術的に検討された例は少なく、今回報告した。

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<症例のポイント>メラノーマ(MM)の早期病変はメラノーマ細胞の増殖が表皮内に限局されるmelanoma in situとして認められる。melanoma in situ病変はすべての病型において認めることができる。筆者が経験したmelanoma in situ病変を6例紹介した。ほとんどのmelanoma in situは、良性の母斑とは区別できる色素斑状病変としてみられ、比較的容易に診断を確定できる。日本人(非白人)に好発する掌蹠MMの早期病変(acral lentiginous melanoma in situ)の検出にはダーモスコピーでのparallel ridge patternの所見が役立つ。melanoma in situは小範囲切除のみでほぼ完治する。爪部MMもin situ段階ならば、指趾を切断する必要はない。早期診断は、予後の改善と生活の質の向上にも大きく貢献する。

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<症例のポイント>診断に苦慮して、忘れられない症例である。H-E染色所見は島嶼状ないしロゼット形成傾向のある部位や線維芽細胞様の部位があり、多彩である。酵素抗体法の所見から、悪性黒色腫の皮膚転移を疑ったが、電顕でmelanosomeはみつからなかった。最終的に、peripheral neuroectodermal tumorを疑っている。

乾癬の最重症型 山本 俊幸
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<症例のポイント>膿疱性乾癬と乾癬性関節炎を併発した30歳代女性患者。関節症状は強直性脊椎炎型で関節変形の進行が速かった。重篤な心臓病とブドウ膜炎も併存してみられた。

英文抄録

editorial

40周年を迎えて 斉藤 隆三

蝶の博物詩

生態31 西山 茂夫

随想

忘れえぬ症例 石川 治
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忘れえぬ症例 その1 ~人生の伴走者として~ 最初の出会いは今から36年前,皮膚科医として3年目の初夏の診察室でした.春に高校に入学したばかりのその少女は顔面の皮疹を主訴に受診しました.駆け出しの皮膚科医でしたが,問診すると発熱や関節痛もあり,全身性エリテマトーデス(SLE)を強く疑いました.血液検査をオーダーして1週間後の来院を約束しました.検査結果は抗核抗体,抗DNA抗体ともに陽性で,末梢白血球数と血清補体価も低下していました.母親と彼女にSLEの説明をして大学病院での精査加療を勧めました.彼女こそが私が自分自身で診断したSLEの1例目です.

診察室の四季

初詣 斉藤 隆三

皮膚科のトリビア

第151回 浅井 俊弥

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目次

編集後記・次号予告

基本情報

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皮膚病診療
40巻1号 (2018年1月)
電子版ISSN:2434-0340 印刷版ISSN:0387-7531 協和企画

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