INTESTINE 18巻6号 (2014年11月)

腸管ベーチェット病と単純性潰瘍

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近年,全ゲノム解析の手法を用いて,多因子疾患であるベーチェット病の病因が少しずつ解析されている.これまで,多くの報告のあったHLA-B51などの疾患感受性遺伝子のほかに,Th1関連遺伝子をはじめ,多くの疾患感受性遺伝子が同定された.なかでも,小胞体アミノペプチダーゼをコードする遺伝子は,抗原(ペプチド)をHLAにはめ込む前に,トリミングする酵素であること,さらに,HLA-B51陽性の症例でリスクアリルの頻度に相乗効果が認められることから今後の研究の発展が期待される.また,ベーチェット病の病因として自己炎症が注目を浴びているが,IL-1やMEFVなど自己炎症の中心的役割を担う遺伝子も疾患感受性遺伝子として同定され興味深い.

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腸管(型)ベーチェット病・単純性潰瘍は,いずれも典型例では,大型の円形または類円形の深掘れ潰瘍を回盲弁やその近傍に,また随伴する潰瘍を回腸末端に,ともに腸間膜対側にみることが多い.組織学的に主潰瘍は慢性活動性の非特異性炎症所見を示すUl-IVの深い潰瘍であり,潰瘍底は壊死層,肉芽組織層と線維組織層の3層からなる.両疾患の肉眼像および組織所見はきわめて類似しているため,組織学的な鑑別は困難である.鑑別診断として回盲部にみられる種々の腸疾患があげられるが,腸管(型)ベーチェット病・単純性潰瘍には特異的な組織所見はない.臨床情報も含めた典型例では診断を確実にすること,非定型例ではクローン病など他の疾患を鑑別するために検査所見,症状や経過などの臨床情報を総合的に判断することが肝要である.

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腸管に定型病変を認める完全型・不全型ベーチェット病(DBD)11例とベーチェット病疑い(SBD)4例における臨床像と小腸カプセル内視鏡(CE)所見を遡及的に比較した.DBD群はSBD群と比較し罹病期間が長く,小腸CE所見で小腸粘膜傷害陽性例が多い傾向がみられた(p=0.057).小腸の部位別罹患率として,空腸では2群間に差を認めなかったが,回腸ではDBD群で多い傾向を認めた(p=0.057).一方,小腸全体,あるいは空腸・回腸の区域別におけるびらん,潰瘍の病変数は2群間で差はなかった.以上より,小腸病変の点からSBDとDBDに明らかな違いはなく,同一の病態とみなすべきと考えた.DBDとSBDの異同について,文献的考察も加えた.

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腸管ベーチェット病(腸管BD)と単純性潰瘍(SU)の異同を明らかにする目的で,長期経過観察しえた腸管BD29例,SU18例の臨床像および臨床経過,内視鏡所見,手術率,再発率について検討した.腸管BDは臨床徴候により完全型BDと不全型BDに,SUは口腔内アフタの有無により分けて検討したところ,臨床経過中に病型が進展したものは口腔内アフタ(-)SUでは認めなかったが,口腔内アフタ(+)SUから不全型BDが4例,不全型BDから完全型BDが1例存在した.また口腔内アフタ(+)SUおよび腸管BDでは37.5%(15/40)に回盲部以外の消化管病変を有していたが,口腔内アフタ(-)SUでは回盲部以外に病変を認めた症例はなかった.さらに口腔内アフタ(-)SUは口腔内アフタ(+)SUや腸管BDと比較して手術率,再発率ともに低く,口腔内アフタの有無により疾患の病態が異なることが示唆された.

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腸管ベーチェット病(intestinal Behcet's disease;腸管BD)および単純性潰瘍(simple ulcer;SU)の上部消化管病変について自験例と文献報告例の検討を行い概説した.潰瘍やびらんなどの胃・十二指腸病変は薬剤や他の要因との関連があり今後の検討が必要である.しかし,食道病変は6.7~18.5%の頻度でみられ,回盲部の定型的潰瘍に類似した病変も多く特徴的であり,積極的な上部消化管検査で食道病変を検索し重要視することは腸管BD・SUの診断向上に寄与すると考えられる.

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腸管ベーチェット病(腸管BD)と単純性潰瘍(SU)の下部消化管病変は,典型的には回盲部に発生する大型の打ち抜き様潰瘍(定型的病変)である.なお腸管BDは,回盲部以外の下部消化管にも多発する潰瘍を合併したり,縦走潰瘍や潰瘍性大腸炎類似の腸管病変(非定型的病変)を認める場合があり,SUより病変の分布や形態が多様性を有している.また腸管病変が狭窄や瘻孔などの腸管合併症へ進展する頻度が比較的高く,経過観察を行ううえで注意が必要である.消化管造影や内視鏡による腸管BDとSUの鑑別は,定型的病変の評価のみでは困難であり,回盲部以外の消化管の精査や,腸管外病変の確認を行うことが必要である.

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腸管ベーチェット病は特殊型ベーチェット病に分類され,穿孔や出血を合併し,しばしば腸管切除など外科的治療が必要となる.再手術率も高く患者の予後やQOLに大きな影響を与えることがわかっている.症例が希少であり,治療法やマネージメントに関して十分なエビデンスは得られていなかった.わが国では2007年に専門医によって協議された結果がコンセンサス・ステートメントとして発表された.さらに抗TNFα抗体の有効性が報告されるに伴い抗TNFα抗体を標準治療に組み込んだ2012年度改訂版が,またアダリムマブの承認が明記された2013年度改訂版が作成された.改訂版についての解説と今後の課題について考察する.

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抗TNFα抗体薬(インフリキシマブ,アダリムマブ)は,腸管型ベーチェット病患者に対して有効であることが症例報告や前向き試験で示されている.とくにアダリムマブは,既存治療抵抗性腸管型ベーチェット病に対する前向き臨床試験の検討で24週時の著明改善率は45.0%,消化器症状,回盲部潰瘍がともに消失した完全寛解率は20.0%であった.消化器症状以外のベーチェット病症状についても早期から高い消失率を示した.また重篤な有害事象の発生もなく高い有効性とともに安全性も示された.抗TNFα抗体薬は,腸管型ベーチェット病に対する治療オプションの一つである.

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腸管ベーチェット病の病変は,定型的には回盲部に深い円形または類円形の境界明瞭な打ち抜き様潰瘍を認める.このような定型的病変のほかに,炎症性腸疾患類似の広範な腸病変を呈する非定型的病変も少なくない.本稿では,腸管ベーチェット病の非定型例につき,症例の画像を提示しながら解説する.

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48歳,男性.大腸内視鏡検査にて上行結腸に腫瘍径12mm大のやや発赤調の平坦な病変を認めた.インジゴカルミン散布像でIIa+IIc型病変と診断した.陥凹内にはNBI拡大観察像でsparse patternを,クリスタルバイオレット染色下拡大観察像でVI高度不整pit patternおよびVN型pit patternを認めた.超拡大内視鏡(Endocytoscopy;EC)観察ではEC分類でのEC3bを認めたため,SM深部浸潤癌と診断し,腹腔鏡補助下結腸切除術を施行した.最終病理組織診断はadenocarcinoma(tub2>tub1),sm2,pSM,1,375μm,ly0,v0,budding:G2,pN0であった.内視鏡所見と病理像を比較対照したところ,病理像で癒合管状傾向を示す癌腺管が表層に露出している部位に一致して不整な核腫大を伴うEC分類でのEC3bの所見が観察され,表層組織の推定にEndocytoscopyが有用と考えられる1例であった.

基本情報

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INTESTINE
18巻6号 (2014年11月)
電子版ISSN:2433-250X 印刷版ISSN:1883-2342 日本メディカルセンター

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