臨牀消化器内科 32巻8号 (2017年6月)

特集 胆膵EUS の進歩

巻頭言 糸井 隆夫

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超音波内視鏡(EUS)は,胆膵疾患の画像診断に不可欠なモダリティーとなっており,専用スコープ,超音波観測装置とも十分な画質と多彩な機能を装備したものが市販されている.EUSガイド下に処置具を用いて行う診断,治療はinterventional EUS と呼ばれる.このうち,EUS‒FNA(超音波内視鏡ガイド下穿刺吸引術)は,これまでアプローチ困難であった部位に対する生検診断としての有用性がほぼ確立され,各社から穿刺針が市販されている.EUS ガイド下治療としては,膵周囲液体貯留ドレナージ,EUS ガイド下ドレナージ術などが行われている.しかし処置具については,現状ではEUS‒FNA 用穿刺針やERCP 関連手技用のものが代用されており,安全かつ確実な手技となるためには専用処置具の開発が急務である.

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超音波内視鏡(EUS)の膵疾患に対する役割は,① 膵腫瘍の診断,とくに早期(小さな時期の)診断,② 膵腫瘍の局所進展度診断,③ 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の壁在結節の診断,④ 粘液性膵囊胞腫瘍(MCN)では,結節,隔壁の診断に加えて,内容液の粘稠度により点状高エコーが認められることがある.⑤ 漿液性膵囊胞腫瘍(SCN)では,病変が囊胞の集合体であることが診断できる.とくに,膵癌においては,その5 年生存率が約7%と低く,死亡率が罹患率に近く,がん死亡の第4 位にまで上昇してきている.膵癌の根治のためには,いわゆる“早期膵癌”の診断が臨床的急務であり,EUS がこの領域で威力を発揮するものと考えられる.またIPMN においては,その経過観察において結節の診断,併存膵癌の診断に有用である.膵神経内分泌腫瘍のうち,insulinoma,gastrinoma などは小さな腫瘍であることが多く,EUS が有用である.また,造影エコーにより,膵癌との鑑別においても臨床的価値があると考えられる.

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超音波内視鏡(EUS)は空間分解能が高く優れた局所観察能を有し,胆道疾患の診療には有用な検査である.EUS を用いた診断としては,胆囊や胆管の結石診断,腫瘍性病変の質的診断や進展度診断などに用いられる.最近では超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS‒FNA)による病理診断にも用いられている.さらに治療としては,EUS 下胆道ドレナージが試みられており,今後EUS 関連手技の発展が期待される.EUS の手技習得は容易ではないが,胆道の解剖学的理解と標準的描出法の理解を深めることが大切である.

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超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS‒FNA)が診断に有用であるおもな膵疾患として,通常型膵癌(PDAC),膵神経内分泌腫瘍(pNET),自己免疫性膵炎(AIP),膵囊胞性疾患が挙げられる.PDAC に関しては,穿刺針の改良に加え遺伝子解析を組み合わせることにより診断率がさらに向上してきている.また,pNET では,質的診断のみならず悪性度診断が治療方針に大きく関わるためEUS‒FNA の果たす役割は大きい.AIP においては,EUS‒FNA はPDAC の除外診断として重要なツールであるが,既存の穿刺針のみでは採取される組織検体量不足の問題があり質的な確定診断に至らない場合も少なくない.一方,膵囊胞性疾患における粘液性状判別や良悪性鑑別のための囊胞液分析や囊胞液細胞診はいずれも感度が低く,現状の診断ツールでは有用性に乏しいため積極的には推奨されない.

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胆道病変に対する診断のゴールドスタンダードは内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)による胆汁細胞診や生検である.しかし,進行胆道癌に対する化学療法導入前の病理組織学的根拠の取得,あるいは良悪の鑑別がERCP で困難な症例,閉塞性黄疸非合併例に対する診断などには超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS‒FNA)は有用なオプションとなりうる.施行に当たっては,胆道は管腔臓器であるため,内腔を貫かないようにすること,乳頭部では主膵管を損傷しないように留意することが,胆汁漏や急性膵炎の偶発症防止,播種の観点からも重要である.さらなる大規模な前向き試験による検証が必要ではある.

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急性膵炎後局所合併症の感染例や有症状例は侵襲的ドレナージが必要となる.近年,EUS ガイド下ドレナージと内視鏡的ネクロセクトミーによる経消化管的治療が開発され,普及してきている.さらに,専用の大口径メタルステントを用いた治療や追加内視鏡ドレナージテクニックにより,多くは内視鏡治療単独で治癒可能となってきた.内視鏡技術や処置具のさらなる進歩,標準化により,安全かつ根治性の高い低侵襲治療が確立されることが望まれる.

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interventional EUS は診断のみならず治療分野まで,その適応が拡大している.従来,膵管へのアプローチはERCP が中心であったが,膵管や術後吻合部の高度の狭窄,結石の存在,などにより,ERCP 手技ではアプローチが困難な症例も存在する.このような症例に対し,EUSを用いた膵管ドレナージ法(EUS‒PD)が新たなアプローチ法として報告されている.EUS‒PDは,EUS‒guided drainage technique( drainage法)とEUS‒guided rendezvous 法(rendezvous法)に大別され,さらにdrainage 法は,pancreaticoenterostomyと,transenteric antegradestenting に分けられる.EUS‒PD は有用な方法であるが,専用の処置具は存在せず,手技の難易度も高く,また重篤な偶発症も存在するため,十分な技量を有する術者が慎重に適応を決定し施行すべきである.

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閉塞性黄疸に対する超音波内視鏡下胆管ドレナージ術(EUS‒BD)は,超音波内視鏡(EUS)ガイド下に,経消化管的に胆道にアプローチし,ドレナージを行う手技である.本法は,endoscopicretrograde cholangiopancreatography(ERCP)不成功あるいは困難例に対する代替胆管ドレナージ法として近年多くの報告がある.EUS‒BD は以下の四つに分類される.① 経十二指腸的に肝外胆管を穿刺してステントを留置する方法,② 経胃的に肝内胆管を穿刺してステントを留置する方法,③ 経胃もしくは経十二指腸的に胆管を穿刺し,順行性にガイドワイヤーを乳頭から出してそのガイドワイヤーを利用して経乳頭的に胆管にアプローチする方法,④ 経胃的に肝内胆管を穿刺し,そのルートを使って順行性にステントを留置する方法である.いずれの方法においても,高い成功率と臨床的有効性が報告されているが,その一方で偶発症発生率は決して低くはない.EUS‒BD の今後の発展は大いに期待されるが,現時点では患者の状態,術者の熟練度などを考慮してその適応を決定することが重要である.

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急性胆囊炎に対するEUS を用いた経消化管的な胆囊ドレナージは,成功率が高く内瘻化が可能であるという特徴をもち,とくに手術不能の症例に対する緩和医療として最近注目を集めている.また,手術可能症例に対する術前ドレナージとしても有用性が報告されている.胆囊と消化管は癒着していないため,胆汁性腹膜炎の予防のために,covered metallic stent,とくに瘻孔形成能力の高いlumen-apposing metallicstent が有用であると報告されているが,保険適用の問題があり,また長期予後に関しては不明な点も残っている.今後は,患者の医学的・社会的背景に応じた最適なドレナージ法についてさらなる検証が必要である.

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EUS ランデブー法は胆管ドレナージにおけるサルベージ手技の新しい選択肢として注目されつつある.穿刺経路には,経胃ルート,経十二指腸球部から,経十二指腸下行脚からの3 通りがあり,状況に応じてこれらを使い分ける必要がある.EUS ランデブー法と他のサルベージ手技との比較臨床試験は現在のところほとんど報告されてきておらず,今後の手技の標準化が待たれる状況にある.手技の適応については他の方法と比較検討したうえで,十分なインフォームド・コンセントのもとに行う必要がある.

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腹腔神経叢ブロック(CPN)は,腹腔神経叢に薬剤を注入し,腹部内臓由来の疼痛を緩和する治療法であり,2016 年に改訂された「膵癌診療ガイドライン」においても,膵癌による上腹部痛に対して,神経ブロックを実施することが提案されている.超音波内視鏡ガイド下CPN(EUS‒CPN)は,リアルタイムに介在血管や臓器を避け針先をEUS で確認しながら穿刺を行い,エタノールなどの薬剤を注入する手技である.近年,神経節に直接薬剤を注入するEUS ガイド下腹腔神経節ブロック(EUS‒CGN)や,上腸間膜動脈よりも下方まで針を進め薬剤を注入するEUS ガイド下広範囲神経叢ブロック(EUS‒BPN)なども新たな手技として報告されており,癌性疼痛の有用な治療選択肢となりつつある.

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EUS ガイド下の抗腫瘍療法は,緩和医療を目指したものと腫瘍そのものに対する治療に分類される.腫瘍そのものに対する治療としては,腫瘍の物理的・化学的破壊を目指すものと,細胞・ウイルス・遺伝子などを注入し,腫瘍の縮小などを目指すものに分類される.腫瘍そのものに対する後者の治療は今後,全身的な免疫賦活などと結びついていく可能性を有する.

学会だより

第89回 日本胃癌学会総会 片井   均

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はじめに 大腸腫瘍の診断には,通常光内視鏡観察が世界的にもっとも一般的に行われている.本邦ではさらなる精密診断としての色素散布によるpit pattern 観察が普及しており1),2),それらの内視鏡診断に応じて経過観察,内視鏡治療および外科切除が選択されている.昨今登場したNarrow Band Imaging(NBI)およびBlueLASER Imaging(BLI)は色素散布が不要であり,それらを用いることで腫瘍・非腫瘍の鑑別,T1b 癌の鑑別を高い精度で行うことができる3)〜6).しかしながら,分類が複数あったり,所見が複雑であるなどの理由から十分に普及しているとはいえない.本稿では,NBI による内視鏡診断をT1b 癌の鑑別を中心に詳説する.

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はじめに 大腸腺腫に対する内視鏡的ポリープ切除術として,わが国では粘膜下層局注(submucosalinfection)を行ったうえで,高周波凝固装置を用いて通電して切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)を広く用いてきた.近年では,小型ポリープに対して,粘膜下層局注や通電を行わずに切除するcold polypectomy が普及しつつあるが,10 mm 以上の中・大型ポリープについては,cold polypectomy で完全に粘膜を離断することは難しく,EMR を施行することが多い.しかしながら,平坦型腫瘍に対して粘膜下層局注を行うと,正常粘膜と病変部の段差が消失することでスネアが滑り,病変を把持しにくい状況を経験する.内視鏡熟練者では,局注部位と局注量を的確に判断することができ,病変対側にpre‒cut を置きスネアの先端を固定する方法などの手段を講じることで病変を把持することができるが,内視鏡初学者には困難である.

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はじめに肝臓は糖代謝の中心臓器であるので,さまざまな原因により肝障害が起こると肝細胞機能の低下や血行動態の変化などにより糖代謝異常が容易に生じうる.とくに慢性肝疾患の終末像である肝硬変においては,ほぼ全例に肝細胞の壊死,脱落による肝細胞数の減少や門脈大循環シャントが存在することから,なんらかの糖代謝異常が起こっている可能性が高い1).このような糖代謝異常はその後の肝発癌2)や睡眠障害などQOL 低下3)と関連することが知られていることから,肝硬変患者の日常診療において血糖状態を把握しておくことは患者の予後にとって重要である. しかし糖尿病患者の通常診療で用いられる平均血糖マーカーであるヘモグロビンA1c(HbA1c)や糖化アルブミン(GA)は,以下に述べる理由により単独では肝硬変においては必ずしも正確な血糖状態を反映しない.本稿ではこれらの血糖マーカーを利用して肝硬変における血糖状態をいかにして把握するか,また逆にこれらのマーカーから肝病態を推測しうるかについて述べることとする.

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目次

英文目次

次号予告

編集後記/奥付

基本情報

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臨牀消化器内科
32巻8号 (2017年6月)
電子版ISSN:2433-2488 印刷版ISSN:0911-601X 日本メディカルセンター

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